結局、戦争はなくならなかった。
地球という惑星の隅々まで開発の手が伸び、
一部の権力者が月面に別荘を建てる時代になっても、人と人の心の隙間までは埋まらなかった。
でも、変化はあった。
────超大型兵器オブジェクト。それが、戦争の全てを変えた。
『ヘヴィーオブジェクト』とは、鎌池和馬著のライトノベルである。イラスト・キャラクターデザイン・オブジェクトデザインは「アルトネリコ」シリーズの凪良。2009年10月から電撃文庫より刊行。
略称は「HO」。キャッチコピーは「近未来アクション・ボーイミーツガール」。
超大型兵器「オブジェクト」と生身で戦う兵士を描いた物語。
時は現代ではなく、国連が崩壊した後の近未来。
再編された4つの世界的勢力やそれらに属さない勢力の「戦争」を軸としたミリタリーSF仕立ての作品となっており、本作では著者の前作にあるような魔術・超能力は一切存在せず、代わりに科学方面に傾倒している。
本作を紹介する上で著者の前作『とある魔術の禁書目録』の浜面仕上が例に挙がる事が多い。これは、本作の主人公たちが普通なら到底敵わないような強大な敵に立ち向かい、頭脳・知識・技術を駆使して勝利を掴むなど、どこか彼の設定を想起させるためである。
ただしこちらはほぼ固定された相棒役がいてバディ要素が強く、作風もとあるシリーズから大きく変わっている。
1巻発売後、作者に「続きを書きたい」と言われたので編集がOKを出した。数日後にメールが来たのでプロットかと思いメールを開くと300P超の完成原稿だった、という逸話を持つ。
なお、著者は1巻が基本設定や世界観の説明をするスターターパック、あとの巻は拡張パックのような扱いを想定して書いているとの事。(3巻・巨人達の影あとがきより)
1章完結の短編形式だが、大枠のストーリー自体は単巻丸々使用して完結する。章ごとにスポットが当たるキャラも異なり、1人のヒロインが最後までメインでいるのも9巻にあたる『氷点下一九五度の救済』が初だったりする。
章・エピソードの区切りがはっきりしているという面では、同作者の長編シリーズである『インテリビレッジの座敷童』が近いかもしれない(あちらは主人公3人の一人称視点という違いもあるが)。
コミカライズは原作1巻の1章を描いた犬江しんすけ版、その後のエピソードが描かれたさいとー栄版(S、A)が刊行されている。両氏とも原作を上手くアレンジして漫画に落としてこんでおり、ファンからの評価も高い。
続編となる『A』では原作2巻の『採用戦争』はすっ飛ばされ、3巻『巨人達の影』から始まっている点に注意。
2014年10月5日、「電撃文庫 秋の祭典2014」鎌池和馬の10周年企画10大展開の最後に、ヘヴィーオブジェクトのアニメ化が発表された。
→詳細は「オブジェクト(ヘヴィーオブジェクト)」を参照。
『島国』が開発した超大型機動兵器。
サイズは本体だけで50m、機体にもよるが全長は100~180mはある弩級サイズとなる。核兵器にも耐え、百もの砲を全身に装備し、その上フットワークも軽いという反則的な性能を誇る。
原初の機体は『pro_be_12(十二支計画)』で開発された、『子(ね)』と呼ばれる“始祖の十二機”の内の一機。
『子』は全方位の核攻撃にも耐えられる装甲を誇り、核の炎に身を包まれ砲身を溶かしながらも敵対する14国からなる連合艦隊を沈め続けた。
このオブジェクトの登場によって“核の時代”は終焉を迎え、戦車や戦闘機などの既存兵器も一掃された。
「戦争の代名詞はオブジェクトである。生身の兵隊などに価値はない」。これは極論ではあるが、この世界観の戦争を一言で表現していると言える。
近未来の戦争はオブジェクト同士の戦闘で勝敗が決する「クリーンな戦争」を謳っており人死にが少ない。しかしそれでも死人が出ないわけではない。作中でも歩兵同士の争いではよく死んでいる。
しかし、それが対オブジェクトになると話が変わってくる。核の時代を終わらせた化物兵器には歩兵だと対抗できない事が分かっているため、各世界的勢力間では基地の速やかな明け渡し・投降(白旗)などで、無駄な死人が出ないようにすることが「暗黙の了解」となっているのである。
だが本作の主人公は巨大兵器「オブジェクト」には搭乗しない。
そればかりか、戦車や戦闘機が束になろうが敵わないオブジェクトを考え得る限りの方法を駆使して生身で倒す、という作中においても非常識極まりない事を何度もやらかしている(後述)。
当然、自軍にもオブジェクトは存在しているのでそれらと協力した上での戦闘が多い。
オブジェクトによる「クリーンな戦争」や「暗黙の了解」により、生身の兵は戦争状態でありながらも生ぬるい状態に陥り、クウェンサーもヘイヴィアもその状態を享受していた。
──こちら側のオブジェクトであるベイビーマグナムが破壊され、「暗黙の了解」が破られるまでは。
生き延びるために、クウェンサー、ヘイヴィア、そしてお姫様ことミリンダは生身でオブジェクトを破壊することになる。
※原作でイラストのあるキャラクターを中心に説明する。(例外あり)
主人公達の隊。どでかいトラックが何台もあってそれでベースゾーンを作ったり各地を移動したりしている。オブジェクトの整備兵の他に戦闘機やら歩兵もいる(アラスカ事件を機に衛生兵や医療設備も充実させ始めた)が、オブジェクト中心の世界であるためこの隊のようにオブジェクト+旧時代系兵装一通りの方が珍しい。最低限の歩兵+整備兵だけの隊もある。
Wikipediaも参照。
| 通称 | 所属 | 備考 |
|---|---|---|
| ベイビーマグナム | 正統王国 | ミリンダが搭乗する第一世代。スタンダードな総合型。丸いボディから沢山の副砲が出ていて、後ろから7本のアームが伸びていて先端から様々な主砲を放てる。 |
| ブライトホッパー | 正統王国 | 正統王国第57機動整備大隊に所属する第二世代。後部に取り付けた3本のバッタ脚ユニットで移動を行う。 |
| フォレストローラー | 正統王国 | アマゾンに配置されている物騒な名前のオブジェクト。 |
| インディゴプラズマ | 正統王国 | 第24機動整備大隊の第二世代オブジェクト。下位安定式プラズマ砲の性能を最大限に発揮させる為の機体。 |
| ブロードスカイサーベル | 正統王国 | ディミクシ=ニコラシカが操縦するオブジェクト。第二世代とされているが、ディミクシ自身は第三世代だと公言している。 |
| アサルトシグナル | 正統王国 | 第一世代。操縦士のエリートは爆破テロにより死亡。 |
| セーブ・ザ・ロジティクス | 正統王国 | 第二世代。端的に言えば輸送機の役割を兼ねる変則的な機体。 |
| ガトリング033 | 情報同盟 | おほほが操縦。正統王国からはラッシュと呼ばれている。第二世代。主砲は名前のとおり二つのガトリングを左右につけている。 |
| スナイプレーザー051 | 情報同盟 | 第二世代。オブジェクトの『全方位からの核攻撃に耐える』特性を放棄して圧倒的なスピードを実現した。フォトニック結晶を利用して自由に高出力レーザを屈折させることにより、障害物を迂回して攻撃可能。 |
| シンプルイズベスト | 情報同盟 | 音速で接近し、敵を殲滅する第二世代。前面装甲はリアクティブアーマー技術の塊。惑星探査用イオンクラスターを採用しており、出力がケタ違いに高い。 |
| ディープオプティカル | 資本企業 | 正式名称は『シャーベティ』。レーザーを重視した機体で、レーザーを屈折させるレーザーパリーの他、複数の防御システムを持つ。鈍重だが一部のパーツを変形させることにより推進方式が変わり、速度が上昇する。 |
| ホーネットストーム | 資本企業 | クリーンな戦争を根底から覆す物騒な対人用オブジェクト。 |
| ウォーターストライダー | 信心組織 | 氷雪地帯特化型第二世代。アメンボやクモのように動く。ベイビーマグナムを一度大破させた。このオブジェクトが暗黙の了解を破ったことが全ての始まりでもある。 |
| ストラテジックアンテナ | 信心組織 | 正式名称は『アフロディテ』。ギリシャ神話系部隊が使用する。 |
| ウイングバランサー | 信心組織 | 跳躍力が異常に高い第二世代。 |
| サラスバティ | 信心組織 正統王国 |
プタナが搭乗する第二世代。惑星開発用でリ・テラ計画の一環として開発された。視線恐怖症のプタナと10本以上の各種高感度センサーの連携により、向けられた視線を感知する事も出来る。後にプタナと共に正統王国の手に渡る。 |
| ステルスオブジェクト | マスドライバー財閥 | どんな手段を使っても発見できない、謎のオブジェクト。 |
| ブレイクキャリアー | マスドライバー財閥 | 超高出力マスドライバーを搭載した第二世代。 |
| 0.5世代 | オセアニア軍事国 | オブジェクトの低価格版。巨大なガスタンクに車輪をつけただけのダミーがある。 7巻『亡霊達の警察』にてラッシュの劣化コピーである事が判明。 |
| トライコア | 不明 | 海上特化型第二世代。180mにも及ぶ巨大さを誇る。メンテナンスも自分で済ます。 実は第二.五世代に挙がるほど挑戦的な設計で、第三世代に近かった。 |
| 通称 | 備考 |
|---|---|
| オブジェクト |
核の時代を終わらせた巨大兵器。専用のエリートが操縦する。どんな場所でも戦える万能型の『第一世代』と特定の場所でのみ戦える特化型の『第二世代』がある。 |
| エリート | オブジェクトを操るために科学的に調整された人間。エレメントという特殊な資質を持つ者が選出される。専用のオブジェクトを操作する。台詞は基本ひらがなで、少し漢字が混ざる。 |
| 世界的勢力 | 国連崩壊後に再編された以下の4つの連合体の事。一国の地方ですら所属する勢力が異なるケースも発生しており、「割れたステンドグラス」と表現されている。 |
| 正統王国 | 主人公達が所属する貴族が支配している勢力。『貴族』と『平民』に分かれており、何より血統と名誉を重んじる。王族もいるが実質『評議会』が実権を握っている。 |
| 情報同盟 | あらゆる情報を収集し、情報の真偽を重んじる勢力。主な所属キャラは“おほほ”。民はバーチャルな娯楽を楽しんでおり、エリートがアイドルをしていたりする。最終目標はあらゆる問題を『パーフェクト・ブラウジング』の情報検索一つで対処する事にある。戦略AIの開発に力を注いでいる。 |
| 資本企業 | 資本企業の集合体である資本第一の勢力。傭兵も登録式。金さえあれば誰でも伸し上がれるが、金を持ってない者には厳しい。主な所属キャラはマリーディ等。 |
| 信心組織 | 宗教で構成された勢力。様々な宗教団体の集合体であり、思想を最も重んじている。衰退した宗教の復活を推進しているが、最大派閥の十字教勢力にとってはあまり面白くない事らしい。 |
| 島国 | 最初にオブジェクトを開発・採用したガラパゴス国家。現在は移民により技術・文化が表向きオープン化している。その技術力は底知れず、もはやブラックボックスと言っても差し支えない。国連崩壊前後の世界のラスボス。資本企業に所属しているが、政治情勢が非常に不安定。 |
| オセアニア軍事国 | 国連崩壊後の世界でいずれの勢力にも属してない軍事独裁国家。実は裏で「MIB」という世界の警察の復活を企む集団組織が暗躍していた事が7巻『亡霊達の警察』で明かされる。 |
| 一霊四魂 | 『島国』で開発されたAIとは似て非なる予測検索ソフトウェア。5人の天才開発者が20~30年程前に組み上げた。あたかも人格を持つように会話するが、思考している訳ではなく質問や周囲の状況に応じて文字列を組み変え、先んじて答えを返している。情報同盟は『島国』の一霊四魂の影を垣間見て、戦略AIの開発に力を入れ始めたようだ。 |
2015年10月2日よりTOKYO MX、MBS、テレビ愛知、BS11、AT-Xにて順次放送中。
| 放送局 | 放送開始日 | 放送時間 |
|---|---|---|
| TOKYO MX | 2015年10月2日 | 金曜 24:30~25:00 |
| テレビ愛知 | 2015年10月3日 | 土曜 26:20~26:50 |
| MBS | 土曜 27:28~27:58 | |
| BS11 | 2015年10月4日 | 日曜 24:00~24:30 |
| AT-X |
| 話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 動画 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1話 | ガリバーを 縛る雑兵たち アラスカ極寒環境雪上戦 |
I | 吉野弘幸 | 渡部高志 | 櫻井親良 | 安野将人 | |
| 第2話 | II | 藤本穂高 | 関口雅浩 大原大 |
||||
| 第3話 | III | 櫻井親良 橘秀樹 |
佐々木純人 | 柴田志郎 | |||
| 第4話 | 親指トムは 油田を走る ジブラルタル通行阻止戦 |
I | 佐山聖子 | 鈴木洋平 | 浅川翔/谷向宏志/徳田賢朗 佐野はるか/芝田千紗 |
||
| 第5話 | II | 橘秀樹 二瓶勇一 |
高島大輔 | 上田みねこ/前田義宏 藤部生馬/芝田千紗 |
|||
| 第6話 | 蟻とキリギリス の戦争 オセアニア軍事国攻略戦 |
I | 大河内一楼 | 渡部高志 | 藏本穂高 | ハン・ミンギ 菊池一真 |
|
| 第7話 | II | 橋本敏一 | 安田祥子/園瀬基/浅川翔 鎌田均/糸島雅彦/逵村六 |
||||
| 第8話 | III | 橘秀樹 渡部高志 |
そ〜とめこういちろう | 芝田千紗/小林典昭/徳田賢朗 藤部生馬/谷向宏志 |
|||
| 第9話 | 障害物競走なら 普通は泥まみれ 南極大陸制圧戦 |
横谷昌宏 | 菅井嘉浩 | 佐々木純人 | 平良徹郎/大森英敏 吉田肇/徳倉栄一 小川みずえ/栗井重紀 |
||
| 第10話 | 二人三脚登山 は命懸けで イグアス山岳砲撃戦 |
I | 大河内一楼 | 鈴木洋平 | 山口安奈/山本雅章/上田みねこ 小渕陽介/青木里枝/吉岡幸恵 |
||
| 第11話 | II | 横谷昌宏 | 岡村正弘 | 高島大輔 | 芝田千紗/浅川翔 園瀬基/前田ゆり子 |
||
| 第12話 | III | 渡部高志 | 篠原正寛 | 矢向宏志/徳田賢朗/山本雅章 松岡謙治/上田みねこ 藤部生馬/坂本哲也/芝田千紗 |
|||
| 第13話 | 騎馬戦は足元 を崩すべし アマゾンシティ総力戦 |
I | 吉野弘幸 | そ〜とめこういちろう 渡部高志 |
そ〜とめこういちろう | 浅川翔/上田みねこ 山口杏奈/徳倉栄一/栗井重紀 柴田志郎/矢向宏志/冨岡寛 |
|
| 第14話 | II | 橘秀樹 | 橋本敏一 | 前田ゆり子/芝田千紗/山本雅章 冷水由紀絵/徳田堅朗 |
|||
| 第15話 | ジャンクの墓は レアメタルの山 アラスカ戦場跡迎撃戦 |
I | 田中雄一 | 高島大輔 | 坂本哲也/芝田千紗 冷水由紀絵/小渕陽介 鎌田均/糸島雅彦/謝苑倩 |
||
| 第16話 | II | 高山カツヒコ | 西島克彦 | 鈴木洋平 | 村上雄/徳田堅朗/浅川翔 園瀬基/山口杏奈/青木里枝 |
||
| 第17話 | 札束の散ら ばる炭鉱 カムチャッカ半島 夜間奇襲電撃戦 |
I | 大河内一楼 | 岩崎良明 | 鈴木健太郎 | 芝田千紗/上田みねこ/小渕陽介 佐野はるか/矢向宏志 |
|
| 第18話 | II | 渡部高志 | 奥野浩行 | 冷水由紀絵/村上雄/前田ゆり子 橋本真希/松岡謙治 |
|||
| 第19話 | III | 櫻井親良 橘秀樹 |
高島大輔 則座誠 |
徳田賢朗/林あすか/山口杏奈 芝田千紗/浅川翔/木本茂樹 |
|||
| 第20話 | 名誉に値段は つけられない ビクトリア島緊急追撃戦 |
I | 高山カツヒコ | 岩崎良明 渡部高志 |
森義博 | 梶浦紳一郎/猿渡聖加/糸島雅彦 鎌田均/坂本哲也/佐野はるか |
|
| 第21話 | II | 岡村正弘 鈴木洋平 櫻井親良 |
岩崎良明 | 藤部生馬/上田みねこ/山田杏奈 芝田千紗/冷水由紀絵 小渕陽介/佐野はるか |
|||
| 第22話 | III | 橘秀樹 | 鈴木洋平 鈴木健太郎 |
浅川翔/矢向宏志/木本茂樹 前田ゆり子/森七奈 |
|||
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最終更新:2025/12/13(土) 23:00
最終更新:2025/12/13(土) 22:00
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