ヤマノシラギクとは (ヤマノシラギクとは) [単語記事]

ヤマノシラギクとは、1979年生まれの日本の元競走馬・繁殖牝馬である。

主な勝鞍：京都大賞典（GⅡ）（1983・1985）、小倉大賞典（GⅢ）（1984）

概要

生涯

原則旧年齢(実年齢+1歳)で表記する

JRAは名馬にキャッチコピーをつけた「ヒーロー列伝」というシリーズのポスターを作成している。1981年からほぼ毎年1～3頭ほどがピックアップされており、現在その数は80を超えている。並み居る名馬の中にあって、2020年現在ただ1頭だけGⅠ級競走を勝てなかったのに「ヒーロー列伝」に取り上げられた競走馬。それがこのヤマノシラギクである。

父オーバーサーブ、母ホンマルクイン、母父ソロナウェーという血統。父は当時日本が次々と輸入していたニジンスキー産駒。輸入された多くの産駒の例に漏れず、この馬も13戦4勝とパッとしない。母もビユーチフルドリーマー系の由緒正しい牝系だが活躍馬は周囲に少なく良い血統ではなさげである。遠い近親には桜花賞馬タマミがいる。

栗東の大久保正陽厩舎に所属し、生涯で55戦7勝。3歳6月のデビューから7歳の有馬記念で引退するまでタフに走り続けた。5歳のシーズンなど年間16戦も走っている。重賞も3勝しているが、京都大賞典で2勝(グレード格付け前に1勝、格付け後のGⅡで1勝)、GⅢ小倉大賞典で1勝という内容で、当時の牝馬としては頑張った方だが名馬と呼ぶには物足りない。

繁殖牝馬としても目立った産駒は残せず、1999年に21歳で死亡。牝系は今でも残っているそうだがやはり活躍馬はいない。

このように決して傑出した実績を残した馬ではなかったのだが、ではなぜ彼女は「ヒーロー列伝」に取り上げられたか？

旅役者ヤマノシラギク

この馬が頑健に走り続けている間に達成していた記録がある。それが

全10競馬場重賞出走である。

JRAが競走を開催するのは札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉の全10場。その全てで重賞が開催されているが、ヤマノシラギクは全ての競馬場で重賞に出たことがある稀有な競走馬なのである。同じ記録は後にアラタマワンダーも達成しているが、ヤマノシラギクは10場中中山競馬場を除く9場で入着を記録する善戦を見せた(アラタマワンダーは6場)。この記録が評価され、GⅠ勝利はないながら「ヒーロー列伝」に選ばれたのである。

このようにローカル競馬場を巡ったヤマノシラギクではあったが、京都大賞典で2勝しているようにどちらかというと京都でこそ本領という馬だった。また、非常に幅の広い流星が白粉を塗ったようにも見えたことから、「ドサ回りをしながら本拠地の京都に戻っては人々を魅了する女旅役者」に擬せられることが多かった。ヤマノシラギクの「ヒーロー列伝」にコメントを寄せた作家の宮本輝も「いかなる舞台に立たされても、自分だけの花を咲かせ続けた女優であったように考えてしまう」と語っている。

すべての競馬場で走り、そして最後は秋の淀で

自分らしい見事な花を咲かせたね･･････。

宮本　輝
JRAポスター「ヒーロー列伝コレクション」

余談だが、ヤマノシラギクはゲーム「ウイニングポスト8」シリーズの攻略において初期に獲得すべき牝馬として名前が挙げられることが多かった。これは、「ウイニングポスト8」シリーズが1982年スタートの設定だったこと、ウイニングポストのレースプログラムが年代に関係なく現代に合わせされていることから、ヤマノシラギクを持っていると早い段階から重賞やGⅠを勝ち、資金やアイテムを早期に獲得できたからである。