リアルクワイエット 単語


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リアルクワイエット

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リアルクワイエット(Real Quiet)は、1995年生まれのアメリカの元競走馬・元種牡馬。

ケンタッキーダービー・プリークネスステークスを制して三冠に王手をかけたが、ベルモントステークス史上最小着差の大接戦に敗れて三冠を逃した。

概要

血統

父Quiet American(クワイエットアメリカン)、母Really Blue(リアリーブルー)、母父Believe It(ビリーヴイット)という血統。「真の沈黙」という馬名は両親からの連想と思われる。

父クワイエットアメリカンはNYRAマイルハンデキャップ(GI)を勝ち、他にGI2着2回。種牡馬としては本馬の他に1997年エクリプス賞最優秀古馬牝馬のHidden Lake(ヒドゥンレイク)などを出している。

母リアリーブルーは競走馬としては大したことがないが牝系が結構な名牝系で、まずリアリーブルーの伯父(リアルクワイエットの大伯父)に無敗でケンタッキーダービー・プリークネスステークスを制したMajestic Prince(マジェスティックプリンス)がおり、更にリアリーブルーの3代母Your Hostess(ユアホステス)は英ダービー馬Secreto(セクレト)、おなじみスカーレット一族の祖であるスカーレットインクなどの牝系祖先という血統。母父ビリーヴイットは一応GI馬(ウッドメモリアルS)だが、正直それ以外には競走馬としても種牡馬としても書くことがあんまり無い成績である。

低評価からスピード出世

幼少期のリアルクワイエットは膝が曲がっていて、馬体も平べったく力強さが感じられなかったらしい。1歳時のキーンランド・セプテンバーセールにてワシントンDCの実業家であるマイケル・E・ペグラムという人物に1万7000ドルという値段で落札されたが、ペグラムはあまりの馬体の貧相さに何らかの持病があるのではないかと疑ったという。
そんな馬を何故、と言いたくなるのだが、実はこの馬に目を付けたのは代理人のボブ・バファート調教師であり、バファート師は1歳のリアルクワイエットを見て、厩舎の1歳上の先輩で後にケンタッキーダービー・プリークネスステークス・ドバイワールドカップとGIを3勝するSilver Charm(シルバーチャーム)と同じくらいの素質がありそうな馬だと感じていたそうである。そんな評価を受けるくらいだから、バファート師にとってはかなりの安値だったと言える(6万ドルほどの値段が付くことを想定していたとか)。歩様の雰囲気が熱帯魚のようだったことから、バファート師によって「ザ・フィッシュ」というあだ名がついた。

デビュー戦は3番人気で7着に敗れ、そこから10~20日程度の間隔で4連戦するも4連続で勝ち馬と大きく離された3着。6戦目でも4着となったが、7戦目でようやく初勝利を挙げた。そして次戦のケンタッキージョッキークラブステークス(GIII)こそ3着に敗れたものの、ハリウッドフューチュリティ(GI)では後にブリーダーズカップ・スプリントを勝つ快速馬Artax(アータックス)を退けGI勝利。初勝利に4ヶ月、レース数にして7戦を要した馬が、初勝利から2戦でGI馬となるというスピード出世を見せた。

二冠達成

3歳初戦のゴールデンゲートダービーでは不良馬場に苦しんで終始後方のままシンガリ負け。サンフェリペステークス(GII)では逃げるアータックスを好位から追って直線では一騎打ちとなったがアタマ差で2着。サンタアニタダービー(GI)ではアータックス、リアルクワイエット、3連勝中の同厩馬Indian Charlie(インディアンチャーリー)、サンラファエルステークス(GII)の勝ち馬Orville N Wilbur's(オーヴィルンウィルバーズ)の4強対決となり、アータックスやオーヴィルンウィルバーズは大きく引き離したものの、番手から抜け出したインディアンチャーリーに全く追いつけず2着に敗れ、3歳シーズン未勝利でケンタッキーダービーを迎えることとなった。

迎えたケンタッキーダービーではインディアンチャーリーとアータックスに加え、ケンタッキージョッキークラブSで本馬を破った後にフロリダダービー(GI)を勝ったCape Town(ケープタウン)、前年にブリーダーズカップ・ジュヴェナイルなど8戦8勝の成績を残し、2歳ながら年度代表馬に選ばれたFavorite Trick(フェイヴァリットトリック)などの有力メンバーが揃っていた。いかにGI馬といえどもこのメンバーでは流石に近走成績の印象が悪く、リアルクワイエットは15頭立ての5番人気となった。

スタートするとインディアンチャーリーとフェイヴァリットトリックが好位につけ、リアルクワイエットはこれらをマークするようなポジションを確保。向こう正面で上がっていくインディアンチャーリーを見ながらじわじわ仕掛け、3コーナーで早々に先頭に立って直線での叩き合いに持ち込むと、直線半ばでインディアンチャーリーは先に脚が上がって後退。代わって前走でフェイヴァリットトリックに初黒星をつけていた7番人気馬Victory Gallop(ヴィクトリーギャロップ)が外から追い込んできたがこれを半馬身差凌ぎきり、見事第124代ケンタッキーダービー馬の座を手にした。

プリークネスステークスではケンタッキーダービー組がほぼ不在であり、続戦したのはリアルクワイエット、ヴィクトリーギャロップ、ケープタウン、そしてダービー最下位のBasic Trainee(ベーシックトレーニー)の4頭だけだった。他路線組にも目ぼしい馬はおらず、ヴィクトリーギャロップ1番人気、リアルクワイエット2番人気、ケープタウン3番人気とケンタッキーダービー組が上位人気を独占した。
レースではヴィクトリーギャロップをマークしながら進み、ほぼ同時に動くと直線ではヴィクトリーギャロップを突き放して完勝し難なく二冠達成。馬主のペグラムは一連の快進撃を「醜いアヒルの子が美しい白鳥に成長した」と形容している。

運命の4インチ

三冠を賭けたベルモントステークスでは、ここまでの三冠レース2戦とも2着だったヴィクトリーギャロップ、2歳時にGIを2勝したGrand Slam(グランドスラム)、プリークネスステークスの3着馬Classic Cat(クラシックキャット)などを抑えて単勝1.8倍の断然人気に支持され、8万人の大観衆がベルモントパーク競馬場に詰めかけた。

好スタートを切るとリアルクワイエットはいつも通り中団につけてレースを進め、そして向こう正面から徐々に位置を上げていった。見る見るうちに位置を上げていき、4角では先頭に立って突き放す。三冠馬の誕生を誰もが確信した。

しかしそこへ、1頭の馬が物凄い勢いで飛んできた。その馬とは、末脚に賭けたヴィクトリーギャロップだった。3番手以下は6馬身離したもののヴィクトリーギャロップとの差は逆に縮まるばかりであり、そして完全に並ばれたところがゴールだった。

レースは長い写真判定に突入。そしてその結果、4インチ(約10cm)という僅差で先着していたのは……ヴィクトリーギャロップ。リアルクワイエットは、奇しくも30年前の大伯父マジェスティックプリンスと同じく三冠を賭けたベルモントステークスで涙を呑む格好となった。
また勝ったヴィクトリーギャロップの鞍上のゲイリー・スティーヴンス騎手は、皮肉にも1年前に三冠を賭けたベルモントステークスで2着に敗れたシルバーチャームの主戦でもあった。

ちなみにゴール前でよれて一瞬ヴィクトリーギャロップの進路を覆う場面があったことから、競馬場側はレース後に「仮にリアルクワイエットが先着していても降着だった」と表明している。実際にスタミナ切れのためかよれてしまう場面があったことからデザーモ騎手は早仕掛けだったと批判されたそうだが、実際の映像を見るとこのレースでのヴィクトリーギャロップが強すぎただけのようにも見える。

このレースの後の調教中に軽度のケガを負ったこととこれまでの使い詰めを考え、トラヴァーズステークスやブリーダーズカップなどには出走せずにシーズンを終えた。それでも二冠が評価されて最優秀3歳牡馬となった。

4歳時

4歳時は3月のニューオーリンズハンデキャップ(GIII)から始動し、トップハンデながら単勝1.5倍の人気に支持されたが、前年のオークローンハンデキャップ(GI)の勝ち馬Precocity(プレコシティ)に差し切られて2着に終わった。

このレースを最後にデザーモ騎手が騎乗することはなく、代わってベルモントステークスで三冠を阻んだスティーヴンス騎手と新コンビを組んでドバイワールドカップを目指したが、ここはシルバーチャームが招待されたため出走を取り止めた。代わって4月のテキサスマイルステークス(GIII)に出走すると、この年重賞2着1回だけだったのが強調されたのかトップハンデではなく、それもあって再び単勝1.5倍に支持された。しかしレースでは前走オークローンハンデキャップでプレコシティに先着していたLittlebitlively(リトルビットライヴリー)との長い競り合いでクビ差後れを取り2着に敗れた。

続けて5月のピムリコスペシャルハンデキャップに出走した。ここでは1歳上で三冠路線こそ3着→2着→3着という善戦続きだったもののここまでにGIを3勝していたFree House(フリーハウス)が本馬より約2kg重いトップハンデとなり、単勝人気もフリーハウスが1.6倍で1番人気、リアルクワイエットは2.9倍で2番人気だった。レースは最後の直線一杯にフリーハウスとの叩き合いを展開したが、何とかクビ差で競り勝って約1年ぶりの勝利を挙げた。

続くマサチューセッツハンデキャップ(GII)では、これも1歳上で、三冠路線には不出走だったがGI2連勝中のBehrens(べーレンズ)と1倍台で人気を分け合い、前年のウッドワードステークスで3着だった3番人気のRunning Stag(ランニングスタッグ)は9.2倍という一騎打ちムードとなった。しかしレースでは逃げたランニングスタッグと叩き合うベーレンズに置き去りにされ、ランニングスタッグも捕まえられず3着に敗れてしまった。

カリフォルニア州に遠征しての出走となったハリウッドゴールドカップ(GI)では、イギリスのマイケル・スタウト厩舎に先約があったスティーヴンス騎手の代わりにジェリー・ベイリー騎手が騎乗。相手はチリのGIを2勝してアメリカに移籍し、この年のドバイワールドカップで2着に入ってヴィクトリーギャロップとシルバーチャームに先着していたMalek(マレク)、同じくチリでGIを3勝して移籍していたPuerto Madero(プエルトマデロ)、重賞2勝馬Budroyale(バドロワイヤル)の3頭だけだった。ここでは4頭立ての最後方を進み、複数回の不利を物ともせず叩き合いから抜け出して勝利した。

この後はパシフィッククラシックステークスとブリーダーズカップ・クラシックに向かう予定だったが、調教中に右前脚の骨にヒビが入ったため両競走とも回避。年明けのドバイワールドカップを目標としたがこれにも間に合いそうになく、結局5歳の2月に引退が発表され、ハリウッドゴールドカップがラストランとなった。4歳シーズンにはGIを2勝したが、エクリプス賞の選考では4戦3勝(うちGI1勝2着1回)のヴィクトリーギャロップに最優秀古馬の座を譲っている。

種牡馬として

アメリカ有数の馬産地であるケンタッキー州で初年度2万5000ドルの種付け料で種牡馬入りしたリアルクワイエットは、ケンタッキー州の他の牧場に移動したりペンシルベニア州に移ったりと繋養地を転々としながら堅実な種牡馬生活を送った。オーストラリアやウルグアイでシャトル種牡馬として供用されたこともある。

産駒の中でも有名なのは2003年生まれのMidnight Lute(ミッドナイトリュート)だろう。出遅れ癖や喘鳴症というマイナスポイントを跳ね返して史上初のブリーダーズカップ・スプリント連覇を達成しており、1度目の2007年には最優秀短距離馬となった。日本にも2003年に生まれたCCAオークスの勝ち馬Wonder Lady Anne L(ワンダーレディアンエル)が繁殖牝馬として輸入されている。

輩出したGI馬はミッドナイトリュート、ワンダーレディアンエル、そしてラブレアS・ヒューマナディスタフH・サンタモニカHとGI3勝のPussycat Doll(プッシーキャットドール)の3頭だけだったものの、それでもリアルクワイエットはペンシルベニア州の人気種牡馬の1頭となっていた。しかしそんな折の2010年9月27日、運動中に突如として発作を起こしたように転倒。この事故で首と肩を骨折してしまい、15歳で安楽死の措置が執られた。
ミッドナイトリュートが後継種牡馬として既にGI馬を複数輩出しており、リアルクワイエットの父系はこれがどこまで伸びるかにかかっていると言えそうである。

ちなみにバファート調教師は、2002年にリアルクワイエット同様に最初の二冠を制したWar Emblem(ウォーエンブレム)でベルモントステークスに敗れてみたび三冠を逃したが、リアルクワイエットの惜敗から実に17年が経った2015年、American Pharoah(アメリカンファラオ)で遂に三冠を達成した。

血統表

Quiet American
1986 鹿毛
Fappiano
1977 鹿毛
Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Killaloe Dr. Fager
Grand Splendor
Demure
1977 鹿毛
Dr. Fager Rough'n Tumble
Aspidistra
Quiet Charm Nearctic
Cequillo
Really Blue
1983 栗毛
FNo.4-d
Believe It
1975 栗毛
In Reality Intentionally
My Dear Girl
Breakfast Bell Buckpasser
Reveille
Meadow Blue
1975 栗毛
Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gay Hostess Royal Charger
Your Hostess

クロス:Dr. Fager 4×3(18.75%)、Raise a Native 4×3(18.75%)、Rough'n Tumble 5×4×5(12.5%)、Cequillo 5×4(9.38%)、Nearco 5×5(6.25%)

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