アメリカンファラオ 単語

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アメリカンファラオ

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アメリカンファラオ(American Pharoah)とは、2012年生まれの米国競走馬種牡馬である。

37年間閉ざされていたをこじ開けた名

概要

Pioneerof the NileLittleprincessemmaYankee Gentlemanという血統。
パイオニアオブナイル2015年まで日本にいた*エンパイアメーカーアメリカ時代の産駒で、現役時代はGIサンタアニタダービーを勝ち、ケンタッキーダービーでも2着に好走した経歴を持つ。アメリカンファラオは2世産駒である。リトルプリンセスエマは未勝利で、そのに2頭の重賞がいるが、牝系を相当遡らないと活躍は出てこない。ヤンキージェントルマン重賞勝利で入着歴もなし。良血かどうかは判断が分かれるところだろう。

エジプト人のオーナーブリーダーであるアハメド・ザヤット氏によって生産されたこの時代は手がかからない大人しいだったという。セリに出される数週間前に脚をぶつけてコブが出来ていたために買い手からは敬遠されており、「有望な100万ドル以下では売らない」というザヤット氏がこのとき30万ドルで買い戻したというから、たぶんそれなりに期待されていたと思われる。

育成牧場で既に「何をさせても完璧」と評判になっていた2歳、アメリカンファラオはと同じく名伯楽ボブバファート調教師に預けられた。数々の名を育ててきたバファート師もこのの動きに惚れ込み、「こんな動きをするを管理したことがない」と絶賛したという。

8月、デルマ競馬場未勝利戦デビューするが、9頭立ての5着。どうもブリカーが合わなかったらしい。というわけで2戦ブリカーを外してに綿を詰め込み(そういうのもアリなのか)、上にビクターエスピノーザを迎え、未勝利ながらGIルマフューチュリティに出走。未勝利が9頭中4頭を占めたせいか2番人気に支持されると、ここを4余りの差をつけ圧勝。初勝利GIになってしまう。確かに海外では初勝利重賞ってのはままあるが、GIで初勝利となると最近はそう多くないのではなかろうか。続くGIフロントランナーSも逃げて楽勝。BCジュヴェナイルは故障で回避したが、この2勝の勝ちっぷりとBCジュヴェナイルを勝ったTexas RedフロントランナーSで一蹴していたことが評価されて最優秀2歳を獲得する。

明けて3歳、初戦のGIIは6身差で逃げ切ると、ケンタッキーダービーの前戦アーカンソーダービーは単勝1.1倍の評価に応えて後続を8ぶっちぎり圧倒。大本命として堂々ケンタッキーダービーへ乗り込んだ。

本番、アメリカンファラオは当然1番人気だったが、オッズは3.9倍と案外割れた。同厩で6戦敗のサンタアニタダービーDortmund、BCジュヴェナイル2着で前走GIブルーラスS勝ちのCarpe Diemなど強ライバルが多かったからであろう。チャーチルダウンズ競馬場には史上最多となる17万513人が詰めかけたというから、このレースへの期待がうかがえる。

からスタートしたアメリカンファラオ。飛び出していくがハナは奪えず、外3番手の競馬になる。レースはDortmundが逃げを打ち、前走GIIIを14身差で勝ったFiring Lineが2番手。ペースはかなりスローだったのだが、後続はついていくのがやっとという感じ。3コーナーでは前3頭の競馬になる。直線に向くや否やアメリカンファラオが外から2頭をかわすと、連れて間のFiring Lineも脚を伸ばす。Dortmundはこらえきれず徐々に後退。2頭の叩き合いにもつれ込むが、アメリカンファラオがもう一脚を使って競り落とし、1身差で優勝した。Dortmundも3着を死守。結果的に前3頭の強さばかりが際立つレースになった。Mubtaahij?ああ、いたなそんなの。

続くプリークネスSは1.9倍の1番人気。絶対的大本命になったが、あまりにダービースローだったことでレース自体のレベルを疑う者もいないではなかったという。まあ、このにそんなものは関係なかったわけだが。
結論から言えば、逃げて7身差で圧勝。直前からの田んぼかと思うような馬場なのに、楽な手応えで伸びる伸びる。他は3コーナーでおっつけ通しだったのに、この一発も入れずに突き放してるんだからどうしようもない。しかも後続はと泥で騎手もドロドロなのに、逃げ切ったアメリカンファラオとエスピノーザ騎手は(でビショビショだけど)まっさらなまま。もうこのの独壇場というほかに言葉が見当たらない。このレース後には種牡馬の権利がクールモアに売却されることが決定。お値段なんと24億円。まだ3歳なのに。わけがわからないよ

こうなれば狙うは最後の一冠ベルモントステークス、すなわちアメリカ三冠である。1978年Affirmed以来、37年間三冠馬は誕生していなかった。79年以降12頭が二冠馬としてベルモントSに挑んだが、いずれも弾き返された。1頭は屈腱炎で挑戦もできなかった。厳しいローテ、ダート2400mという長距離、成長するライバル……。越えなければいけないハードルは限りなく高い。

輸送前に調整を全て終え、直前輸送でベルモントパーク競馬場に乗り込んだアメリカンファラオ。競馬場には入場制限がかかり、9万枚用意された入場券も飛ぶように売れ、前日時点で売。論断然の1番人気。この年の三冠レースすべてに出たのはこのただ1頭という事実三冠というの厚さを物語る。まあその壁もこのには(ry
ん中からダッシュよくハナを奪ったアメリカンファラオ。そのまま楽にリードを取る。後ろに取り付いたは露に前をマークしていたが、知ったこっちゃないとばかりに逃げていく。3コーナーで後続が一気に手綱をしごき始めた……んだが、持ったままのアメリカンファラオに全く追いつけない。というか、さらにリードが開いてないか!?

直線、エスピノーザ騎手がひょいひょいと押すだけでグングン加速。後続はすら踏めない。結局5余りの差をつけて逃げ切り勝ち。この間、第12代アメリカ三冠馬が誕生し、37年間の二冠の呪縛は解き放たれた。ちなみにボブバファート調教師過去4回、ビクターエスピノーザ騎手は3回三冠に挑戦して敗れており、念願かなっての三冠だった。勝ちタイムは史上6番に速かった。それでもレコードホルダーのセクレタリアトとは26も違う。あいつは本当にだったのだろうか……。

この後一休みして、3歳の大舞台の一つハスケル招待Sから始動。中楽に2番手を進むと、3コーナーで軽く仕掛けて先頭を奪い、直線は独走。最後に詰められたため着差こそ大きくなかったが……この、直線は全に持ったままだったのだ。動画を見てもらえばわかるが、最ただの弱い者いじめである。

続いて「ダービー」ことトラヴァーズSに出走。ここも楽勝……と思いきや、特に暑くもないのに発するというフラグ臭漂う現が発生。そしてそれに不安を抱いたエスピノーザ騎手の懸念は的中してしまい、ベルモントS2着のFrostedに執拗に絡まれてペースを乱され、直線で前走2着に下した1勝Keen Iceに差し切られ2着に敗れてしまう。初勝利以来続いていた連勝は8でストップFrostedを突き放す意地は見せたものの、まさかの敗戦にファンは肩を落とした。それはオーナーも同様で、トラヴァーズS出走を提案したのが自分だったこともあってか「これで引退させるかもしれない」とこぼすほどショックを受けたようだ。

気を取り直し、王者の意地を懸けてBCクラシック@キーランド競馬場に直行。年内での引退が決まっており、これが正正銘のラストラン。現役最強Beholderこそ出走取消となったが、前述のKeen IceFrosted、英2000ギニーなどGI4勝の愛国代表Gleneaglesなど、8頭立ての少頭数ながら不足のないライバルった。
そして本番、4番からスタート。いつも通り先手を奪い逃げの態勢に入る。今度はさほど競り掛けるもおらず、楽な逃げに持ち込む。こうなればもう敵はなし。4コーナーで仕掛けると一で後続を置き去りにし、直線も差は開くばかり。最後にはスタンドの大歓を一身に浴びながら、2着のEffinexに6身半差をつける圧勝。絶対王者を存分に示し、有終の美を飾った。

通算11戦9勝、GI8勝。とにかくが圧倒的で、楽に逃げてしまえばもうもついて来られない、正しく絶対王者と呼ぶにふさわしい強さを誇った。今後はクールモアが所有するアシフォードスタッドで種牡馬として繋養される。

2019年産駒デビューアイルランドMonarch of Egyptが初出走初勝利を挙げたほか、本でもSweet MelaniaBCジュヴェナイルフィリーズターフで3着に入るなど滑り出しは上々である。日本にも産駒が輸入され、初年度産駒7頭中6頭が勝ち上がった。その後世界的にダートGIが出ずファンをやきもきさせていたが、2021年に入って*カフェファラオフェブラリーSを制し産駒初のダートGI勝ちを決めている。怪物再来へ向けて、ひとまず筋は明るそうだ。

2021年引退から5年が経過し選考対となった初年度で米国競馬殿堂入りを果たした。

馬名について

このるとき、必ず話題に上るのが名の登録ミスにまつわる問題である。

エジプト人である馬主のアハメド・ザヤット氏は、この名を募し、「アメリカンファラオ」という名を選んだ。ご存知の通りファラオとは古代エジプトの王のことである。アメリカの王になろうというのだから壮大な名前だなぁ。それはいいとして、アメリカンファラオは英語では「American Pharaoh」である。しかし、ザヤット氏が名を電子登録する際に「American Pharoah」と間違って登録し、それがそのまま通過してしまった。「Pharoah」をそのまま読めば「ファロア」、もしくは「フェイロア」となるため、日本においても「アメリカンフェイロア」としている例がある。もっとも、通販サイトなどで「Pharoah」と検索すると結構な数のエジプトっぽい商品がヒットすることから、このスペルミスは割とよくあるっぽい。

なお、三冠達成時に彼にかけられたには「12th Triple Crown WinnerAmerican Pharaoh」と記されていた。製作スタッフが気を利かせたのか、単にスペルミスなのかは定かでない。ちなみにアメリカでは「三冠競走を勝ったと同じ名前を名付けることはできない」というルールがあるが、このが活躍した後、「American Pharaoh」も使用禁止名となったらしい。

また日本の媒体だと、大体半分くらいが「アメリカンファラオ」、半分が「アメリカンフェイロー」と表記しているが、これはスペルミスとは関係ない。「フェイロー」は「Pharaoh」のアメリカ訛りの発音であり、本来の意味からくる表記とより現地読みに近い表記によって「アメリカンファラオ」と「アメリカンフェイロー」という二通りの読み方が現れてしまったのである。イージーゴアイージーゴーアのように伸ばすか伸ばさないかくらいの違いはよくあるが、ここまで全く違う読み方をされるのもしい。

まあ名はともかく、今やアメリカンファラオを「アメリカ競馬の王」と呼ぶことに異論はあるまい。

血統表

Pioneerof the Nile
2006 黒鹿毛
*エンパイアメーカー
2000 黒鹿毛
Unbridled Fappiano
Gana Facil
Toussaud El Gran Senor
Image of Reality
Star of Goshen
1994 鹿毛
Lord at War General
Luna de Miel
Castle Eight Key to the Kingdom
Her Native
Littleprincessemma
2006 栗毛
FNo.14
Yankee Gentleman
1999 鹿毛
Storm Cat Storm Bird
Terlingua
Key Phrase Flying Paster
Sown
Exclusive Rosette
1993 栗毛
Ecliptical Exclusive Native
Minnetonka
Zetta Jet Tri Jet
Queen Zetta
競走馬の4代血統表

クロスNorthern Dancer 5×5(6.25%)

主な産駒

2017年産

2018年産

2019年産

2020年産

関連動画

バケモノだ……

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関連項目

脚注

  1. *正確にはRidgling(停留睾丸)
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