ロサイル・インターナショナルサーキットとは、ペルシャ湾湾岸のカタールにあるサーキットである。
3月下旬にMotoGPの開幕戦がナイトレースで開催される。
カタールは中東のペルシャ湾湾岸に位置する国家である。国旗・国章ともにえんじ色を採用している。
かつては真珠採取と漁業しか産業がなかったが、1940年代に油田が発見されてから全てが一変した。
ナショナルフラッグであるカタール航空は、常に最新の航空機を買いあさっており、安全性が高い。
機内サービスも非常に充実しており、世界中の航空会社の中でも最高峰の格付けを誇る。
天然資源に頼った経済体制を危惧しており、現在の国策として観光業に力を入れている。
サッカーカタールリーグを経営したり、2022年サッカーワールドカップを誘致したり、
MotoGPを開催したりするのはその一環といえる。
首都ドーハは海に面した場所にあり、夜になって水分を乾かす日差しが無くなると湿度が急上昇する。
冷房の効いた部屋から一歩外に出ると眼鏡のレンズが一気に曇る蒸し暑さで、旅行者を驚かせる。
ラーメン屋なみの湿度であるという。
カタールに限らず熱帯の国に共通することだが、冷房を効かせることが富の象徴と考える風潮がある。
空港などの施設は冷房が効きまくっていてやたらと寒い。旅行の際にはジャケットを持っていきたい。
本サーキットに近いロサイルは、娯楽施設がいくつか点在している。
詳しくは、ロサイルの記事を参照してください。
2018年のMotoGP開催時にMotoGPの大恩人であるタミーム首長殿下がサーキットを訪問された。
詳しくは、タミーム首長殿下の記事を参照してください。
MotoGPが開催されている本サーキットにはいつも複数のラクダがいる。
ドーハ市内にはラクダ市場があり、柵に覆われた広場の中にラクダが飼われていて、売買されている。
売却が決まったラクダはクレーンで吊り上げられて外に出される。
いまだに乗りものとして市民の間で利用されている。
ロサイル・インターナショナルサーキットにもラクダでやってくる地元住民がいる。
カタールの首都ドーハから北に25km程度離れた場所に位置している。
周囲を砂漠に囲まれている。航空写真を見てみるとサーキットの周りが砂だらけであるとよく分かる。
海岸線から2kmしか離れていない海沿いのサーキットである。
海から吹き込む風によって砂がサーキットへ舞い込み、路面は常に砂埃で汚れている。
カタール全域が砂漠の平野であり、最も高い地点で標高海抜103メートルしかない。
Googleの地形図を見ても、カタールが真っ平らな国であるとよく分かる。
こういう平坦なところには、風をせき止めるようなものが無いので、風がどんどん流れ込む。
かなりの強風が海から吹き込むことがある。
カタールでは2月から7月までの間に砂嵐が吹き荒れることがたまにある。
こんな感じに砂が舞い上がり、多くの住民がぜんそくなど呼吸器疾患の症状になり病院へ駆け込む。
Youtubeで「Doha sandstorm」と検索するとこんな動画もヒットする。
5月から10月までのドーハはとんでもない暑さになり、日中に外を出歩くのは危険なレベルになる。
MotoGPが開催される3月下旬の昼は最高気温26度程度で、夜は20度程度になる。
東京の6月や9月に相当し、わりと過ごしやすい。
こちらやこちらが現地の天気予報。
2008年から2017年までMotoGPの3クラス全てをナイトレースで開催していた。
産油国特有の資金力を発揮し、1,000本の照明灯を立て、540万ワットの明るさを確保した。
サッカースタジアム70個分の照明というのがロサイルナイトレースの宣伝文句である。
闇夜にぽっかりとサーキットが浮かび上がり、マシンはキラキラと輝き、幻想的で美しい。
こちらのオンボード動画を見ても、数々の白い照明が鮮やかに光を放っていることが分かる。
いつもの昼間のレースと違う点は、路面に映るライダーの影の様子である。
昼間のレースなら太陽が唯一の照明だから、一方向に伸びる影だけが濃く発生する。
ところがロサイルのナイトレースでは、2ヶ所以上の照明灯によって2つ以上の影が薄く発生する。
ライダーというのは「走っているときは後ろを振り返るな」と教育されているものであり、
レース中もあまり後ろを振り返らない。
自分の後ろに他のライダーが迫っていることは、路面に映る影を確認することで認識する。
その影が、いつもと違う。ライダーは少し戸惑うことになる。
ある新人ライダーが路面の影を見て「抜かれそうだ!」と警戒したらその影は自分の影だった・・・
そんなコメントを残している。
2008年から2010年まではmoto3決勝が20時、moto2決勝が21時、MotoGP決勝が23時に行われた。
2011年から2014年まではmoto3決勝が19時、moto2決勝が20時、MotoGP決勝が22時に行われた。
2015年から2017年まではmoto3決勝が18時、moto2決勝が19時、MotoGP決勝が21時に行われた。
年を重ねるごとにレース開始時刻が早まっている。
(本当は2009年までmoto2ではなく250cc、2011年までmoto3ではなく125ccだが見やすくするためにこう書いている)
本サーキットは海に近く、夜になると湿度が上がって蒸し暑くなり、路面に夜露が発生する。
すると、転倒者が増えてしまうことがわかってきた。
そこで夜露を回避するため、レース開始時刻を早める措置がとられた。
時刻が進むにつれて気温と路面温度が下がっていくという、通常のレースとは真逆の現象が起きるので、
タイヤメーカーなどのメカニックたちは戸惑いやすい。
ライダーたちは体調管理にも気を遣う。
いつものヨーロッパ外のレースなら朝早く目を覚ましてホテルで食事してからサーキットに行き、
日が暮れるまで忙しく作業して、夕方にホテルへ帰って食事して、早めに就寝する。
しかしロサイルのナイトレースは違う。
夜の22時まで走行し、それからチームのメカニックと打ち合わせして、ジャーナリストの質問に答える。
ホテルに辿り着くのは深夜1時~2時となり、レストランなど開いていない。
朝目を覚ますのは11時ぐらいであり、もうホテルのレストランは朝食を提供してくれない。
ホテルのレストランで食事するのが難しく、どこかで食べものを買い込んでそれを食べるしかない。
MotoGPの最大排気量クラスの各チームはホスピタリティという料理人集団を抱えていて、
美味しいご飯を作ってくれる。画像検索すると素晴らしい御馳走がいくつもヒットする。
ところが彼らはヨーロッパ以外のレースには帯同してくれない。
頼みの綱のホスピタリティもなく、エネルギーバーやバナナをかじる生活になる。
いつもは明るいうちに作業するのだが、ロサイルでは18時程度まで何もしないで待たねばならない。
集中力を保つのが難しいという。
さらに大変なのがメカニック達で、夜に予選が行われたあと、データを全て調べ、マシンを整備する。
結局明け方まで作業することになり、完全に昼夜逆転の生活になってしまう。
ヤマハワークスの中島雅彦監督は2008年に「予選が終わるのが真夜中12時。そこから仕事をするので
翌朝5時とか8時まで作業することになる。すごく大変です」と語っている。
MotoGPの3クラス全てをナイトレースで行うので、練習走行や予選もナイトレースで行う必要がある。
カタールの3月の日没時刻は17時50分頃なので、18時になってやっとレーススケジュールが始まる。
人間のほとんどが夜型生活に慣れないので24時まで走行するのが限界である。
18時から24時の6時間にレーススケジュールをギチギチに詰め込むか、
あるいは練習走行の時間を減らしてしまうか、どちらかであった。
2008年から2010年までは各クラスの練習走行を減らして金・土・日の3日間でレースを行っていた。
しかし、これでは各チームから「練習走行が少なすぎる」と文句が出た。
このため、2011年からは木・金・土・日の4日間に渡ってレースを行うことにした。
こんな措置をとるのはカタールGPだけである。
3月のカタールは昼の最高気温が26度程度で、昼間のレースを行う事に何ら不都合がないのだが、
「ナイトレースだと見栄えが良く、カタールのイメージにとって望ましい」ということで
ナイトレースが続けられることになった。
MotoGPの運営者であるドルナにとってもナイトレースは大歓迎である。
ナイトレースにすれば、ヨーロッパのゴールデンタイムにMotoGPを放送することができる。
MotoGP視聴者の数が多い中央ヨーロッパ諸国とカタールの時差は2時間または3時間。
3月最終週日曜日にサマータイムが始まる国がほとんどなので、
3月最終週日曜日以前の開催なら時差2時間、3月最終週日曜日以降の開催なら時差3時間になる。
本サーキットで23時決勝開始なら、中央ヨーロッパ諸国では20時かまたは21時に決勝放送開始。
本サーキットで22時決勝開始なら、中央ヨーロッパ諸国では19時かまたは20時に決勝放送開始。
本サーキットで21時決勝開始なら、中央ヨーロッパ諸国では18時かまたは19時に決勝放送開始。
最も視聴者数が多い19~22時(ゴールデンタイム)に最大排気量クラス決勝を放送できて、
ドルナの首脳陣はホクホク顔になるというわけである。
2017年の記者会見でヴァレンティーノ・ロッシも「昼間のレースが安全上望ましいんですけど、
運営がナイトレースをやりたがっているからしょうがないですね」と語っている。
ちなみに最大排気量クラス決勝を中央ヨーロッパ諸国のゴールデンタイムに放送することができるのは、
ロサイル・インターナショナルサーキットで行われるカタールGPと、
サーキットオブジアメリカズで行われるアメリカGPと、
アウトドローモ・テルマスデリオオンドで行われるアルゼンチンGPの3つに限られる。
カタールの首都ドーハは年間降水量75mm(ちなみに東京の年間降水量は1,500mm)で、
滅多に雨が降らない。
そのため、かつて2016年までは、タイヤメーカーもレインタイヤを持ち込んでいなかった。
しかしながらそんな土地でも、10年に1度ほどの確率で雨が降ってしまうようである。
雨が降ってしまうとライダーも主催者も大慌てになるハプニングレースになってしまう。
雨が降ると濡れた路面が乱反射してライダーを惑わせてしまい極めて危険と信じられていたため、
「雨が降って路面が濡れたらレース中止」というのが鉄則であった。
2009年4月12日の125ccクラス決勝の3周目にいきなり雨が降り出し、わずか4周でレース成立となった。
雨が止んだ250ccクラスは13周でレースが終わったが、
MotoGPクラス決勝の直前にまた雨が降って路面が濡れ、MotoGPクラス決勝のみ翌日月曜日に順延した。
2017年3月25日(土)の夕方に雨が降って路面が濡れてしまい、そのまま日が暮れてしまった。
予選が始まる時刻になると雨が止んだが、日差しがないのでいったん濡れた路面がなかなか乾かない。
しかも排水のことを全く考えていないサーキットであるらしく、コース脇の人工芝やグラベルの下に
水が溜まり、そこから水がじわじわと湧き出てコースの中にどんどん進入してくる。
作業員が必死にかきだしてもキリがなく、どんどん水が溢れてくる。
排水設備が完備されているサーキットでは考えられないような光景が展開された。
結局、この日の予選は全クラスで中止になった。
2017年3月26日(日)のMotoGPクラス決勝の直前にもパラパラと雨が降ってしまった。
本サーキットのナイトレースでは「路面が濡れたら即レース中止」なので、誰もが非常に神経質になる。
スタート前のウォームアップを2周(いつもは1周)行って路面が乾いていることを慎重に確かめるなど、
異例の進行となった。
moto3クラスがデイレース(昼間のレース)、moto2クラスが夕暮れのレース、
最大排気量クラスがナイトレースという形式になったのが2018年である。
| moto3クラス決勝 | 16時00分開始 | 16時40分頃終了 | 昼 |
| moto2クラス決勝 | 17時20分開始 | 18時00分頃終了 | 夕暮れ |
| 最大排気量クラス決勝 | 19時00分開始 | 19時40分頃終了 | 夜 |
最大排気量クラスだけはナイトレースにして、その他のクラスはデイレースにする。
「ナイトレースにすると希少性があって好ましい」というカタール側の意向も汲むことができるし、
「夜露が増えるのでデイレースが多い方がいい」というライダーたちの要望にも応えられる。
ドルナにとっては放送時間がヨーロッパのゴールデンタイムから僅かに外れてしまうが、我慢できる。
全てが丸く収まるのでこの形式が固定されていくと思われる。
最近は便利なもので、Googleで「ドーハ 日没」と検索するだけでその日の日没時刻が分かる。
2018年3月18日の日没時刻は17時44分だった。
つまり、moto2クラスは決勝レースの最中に日没を迎えたのである。
正確に言うと残り8周の時点で日没時刻になった。
| 開始の様子の動画 | 終了の様子の動画 | |
| moto3クラス決勝 | 明るい | 明るい |
| moto2クラス決勝 | 明るい | 暗い |
| 最大排気量クラス決勝 | 暗い | 暗い |
雨に祟られたとき、「濡れた路面が照明で乱反射」という状況を経験することになる唯一のクラスが
最大排気量クラスである。
このため、2017年3月3日のカタールテスト最終日に、水を路面にまいてライダーに走ってもらった。
砂漠の国で水は貴重品なのだが惜しげもなく路面に放水した。じゃんじゃんホースでまいた。
その上をライダーが走った。
ライダーたちの感想は「確かに光が反射するが、まあ、なんとかなるでしょう」「大丈夫」
といった反応がほとんどで、これで最大排気量クラスも雨天決行となる見通しが立った。
2008年からMotoGPの開幕を飾ることが定着している。
すでにカタールとドルナとの契約が結ばれ、2026年までMotoGPが開催される事になった。
ナイトレースの開幕戦であることも変わらない。
カタールはドルナにとって大スポンサーであり、まさに御大尽様である。
カタールから支払われる金によって、全てのチームが年間を通じて移動に使用する経費を賄っている。
開幕戦なので記念撮影が行われる。日本の学校の卒業アルバムみたいな写真を撮るし、
サーキット内の仮設スタジオにバイクを持ち込んで格好いい映像も撮る。
2011年、2014年、2016年、2017年のビデオは格好いい。ラーメン屋ポーズが多い。
2018年のビデオはこれ。謎センス動画に仕上がっている。馬を持ち込んで撮影したのか・・・
中東の産油国ということで、白い服を着た、いかにも産油国の富豪といった人たちが登場する。
かつてカタールは真珠の名産地であったから、トロフィーは真珠をかたどったものが恒例となっている。
イスラム教のお国なのでアルコールは御法度であり、2014年までシャンパンファイトは行われなかった。
しかし2015年になって、とうとうシャンパンファイトが解禁された。
ただ、中身はノンアルコール飲料であり、Freixenet社のAishalというドリンクで、
いわゆるハラール(イスラム教に適合した食品)である。
コースの形状は、体内で真珠を作り出すアコヤガイを模した形になっている。
前半は低速コーナーが多いストップアンドゴーのレイアウトで、
後半は高速コーナーが並ぶテクニカルコースであり、二面性を持つ。
この動画をでも示されているように、
チェッカーラインから3コーナー立ち上がりまでがセクター1、
3コーナー立ち上がりから7コーナー立ち上がりまでがセクター2、
7コーナー立ち上がりから13コーナー立ち上がりまでがセクター3、
13コーナー立ち上がりからチェッカーラインまでがセクター4となっている。
セクター1とセクター2がストップアンドゴー、セクター3とセクター4が高速レイアウトである。
路面の起伏は少ない。
路面のカント(左右の傾斜)が付いているコーナーがわりと多く、高速コーナーリングが可能である。
近年は安全性重視のためカントを付けないフラットなコーナーばかりのサーキットが増えたが、
2004年開業の本サーキットはカントのあるコーナーが多い。
メインストレートは1,068mと長い。
流れるような高速セクションから長いメインストレートに入っていくので、最高速が良く伸びる。
MotoGPが開催される18ヶ所のサーキットの中でもトップクラスの最高速の高さになる。
2004年の開業から2018年までずっと同じ舗装を使っていて、グリップが悪い。
2018年は路面の凹凸が顕著になっていて、10コーナー走行中の各ライダーの前輪が上下していた。
どのライダーのフロントタイヤもこんな具合に上下していて、うねりの激しさが分かる。
こちらがドルナ公式サイトの使用ギア明示動画である。1速に落とすのは6コーナーのみとなっている。
主なパッシングポイントは、メインストレート、メインストレートエンドの1コーナー、
4コーナー、6コーナー、10コーナー、12コーナーとなっている。
ドゥカティワークスの成績が良いサーキットとして知られる。
開幕戦のこのレースで躍進して「今年のドゥカティは違うぞ」と印象づけることが毎年の恒例である。
ドゥカティのクラウディオ・ドメニカーリ社長も毎年のようにこのサーキットを訪れている。
2018年には念願叶ってドゥカティワークスが9年ぶりに優勝した。
ドメニカーリ社長も嬉しそうに表彰式に参加している。
この動画で左へ立ち去っていく白シャツ・ジーンズの人がドメニカーリ社長。
コース幅が広く、ライン取りの選択肢が広く、1つのコーナーでミスしてもなんとか取り返しが付く。
ゆえにドゥカティワークスのようなコーナーリングがイマイチのマシンでも乗り切ることができる。
本サーキットと正反対なのはヘレスサーキットで、コース幅が狭く、ライン取りの選択肢が狭い。
1つのコーナーでミスすると続くコーナーがさらに遅くなり、取り返しが付かない。
ゆえに全てのコーナーで綺麗に旋回せねばならず、コーナリングが悪いマシンにとって鬼門になる。
ヨーロッパはコース幅の狭いサーキットが多く、そうしたサーキットに比べると
ロサイル・インターナショナルサーキットはすこし異質な感じのサーキットと言える。
海岸線から2kmと近く、周囲が真っ平らな地形で、強風が吹き荒れることが多いサーキットである。
2輪のライダーが走行中に浴びる風は横殴りの風、向かい風、追い風の3種類である。
横殴りの風を受けるとマシンを傾けることができなくなり、コーナーリングしにくくなり、
グラベル(砂)へ一直線となってしまう。
特に体重が軽いライダーは強風で煽られやすく、不利を被りやすい。
横殴りの風で煽られるため、カウルに小さな穴を多く開けて風通しを良くしたライダーもいる。
向かい風を受けると予想以上にマシンが早めに止まってしまい、コーナーへの進入速度が遅くなり、
コーナーリング速度が落ち、タイムを損してしまう。
追い風を受けるとブレーキを掛けてもマシンが止まらなくなる。
そこで慌ててブレーキレバーを強く握り混むとフロントタイヤがロックし、フロントから転ぶ。
こういうスリップダウンの転倒を「握りゴケ」という。
「握りゴケ」をしてはならないのでブレーキレバーを強く掛けるわけにも行かず、
ブレーキングポイントが奥にずれてしまい、オーバーランの危険が高まってしまう。
また、風が強く吹き込んで路面温度が急に低くなり、タイヤのグリップが一気に低下することもある。
風が強いということは2輪のレースにとって良いことなど一つもない厄介な現象である。
ちなみに、風速の目安は以下のようになっている。
風速が20km/h(秒速にすると5.6m/s)を越えると風力4の和風となり、はっきりと風の強さを感じる。
風速が30km/h(秒速にすると8.3m/s)を越えると風力5の疾風となり、バイクの走行に強く影響する。
風速が40km/h(秒速にすると11.1m/s)を越えると風力6の雄風となり、おそらくレースは中止される。
風速が54km/h(秒速にすると15.0m/s)になると日本の気象庁が「強風域」と表現するレベルである。
MotoGPはレース開始直前のサイティングラップのとき、気温と路面温度と風速(km/h)が表示される。
このとき風速が20km/hを越えたら風に要注意ということになる。
また、風速が20km/hを越えているようなときは、風車が凄い勢いで回るのが映し出され、
グリッドガールの髪が横になびき、グリッドガールが持つ傘がゆさゆさと揺れるといった状況になる。
2018年のカタールGPは20km/h程度の強風が吹き荒れていた。
moto3のスターティンググリッドの様子の動画はこちら。
moto2のスターティンググリッドの様子の動画はこちら。
グリッドガールが傘を両手で持って、吹き飛ばされないように頑張っている。
強風なので片方の手は傘の根本を持っている。そのグリッドガールの髪が真横になびいている。
先述のように風向きも非常に気になるところである。
本サーキットのピット施設の上にはカタール国旗があり、デイレースならその旗を見れば良い。
この画像の場合は、旗が横になびいていて強風、陸から海へ吹いているので4コーナーで追い風、
最終コーナーで向かい風、とすぐに分かる。
ナイトレースの場合はこの画像のようになる。真っ暗でよく目を凝らさないと旗が見えない。
メインストレート向かい風の強い風が吹いているのだが、旗がよく見えないので困る。
そのためドルナの発表する風向き表示が唯一の頼りになる。
2018年からのMotoGPはデイレースとナイトレースが混在するようになった。
ごく一般的にいうと、昼の方が寒暖差があって風が起こりやすく、夜は寒暖差が無くなり微風になる。
このことは湖の近くにちょっとでも滞在するとよく分かる。
夜明けや朝方は風が吹かないので湖が鏡のようになっているが、昼になると風が吹いて湖面に波が立つ。
デイレースとなるmoto3やmoto2は風に用心しなければならない。
周囲が砂漠で、そこを強風が吹き荒れると、砂塵が舞い上がることがある。
2018年3月17日(土)のMotoGP各クラス予選は砂塵が舞い上がっていた。
そのため白く靄(もや)がかかっているように見えた。画像1、画像2、画像3、画像4
砂塵が巻き上がると呼吸器系の病気にかかりやすくなる。
人間の体は胃腸のような消化器系に異物が入りこんでもスルッと出て行ってくれることが多いのだが、
肺のような呼吸器系に異物が入りこむとなかなか出てくれず、長期間にわたって咳をすることになる。
その辛さを現地の人たちはよく分かっていて、砂塵の多い日はマスクをしたり覆面をしたりして
ちゃんと砂塵の対策をする。
2018年3月17日(土)や2018年3月18日(日)には覆面をしたコースマーシャルが多かった。
こんな感じの覆面コースマーシャルが次々と出てきて、視聴者を驚かせた。
周囲が砂漠で、そこを強風が吹き荒れるので、路面は常に砂埃で汚れることになる。
本サーキットのコース脇には人工芝が敷かれている。
この人工芝で砂の進入を食い止めるつもりだったらしいが、そんな小細工が通用するわけがなかった。
情け容赦なく砂が空気で飛んできて、路面はいつも砂まみれになる。
路面に砂が溜まっているため、タイヤに厳しいサーキットとして知られている。
紙に砂粒のような粒子を貼り付けてジョリジョリと研磨できるようにしたものを紙やすりというが、
砂埃の付いた路面が紙やすりのようにタイヤをこすり、タイヤをすり減らしてしまう。
さらにはアブレーション(abrasion 「摩耗」の意味)といって、タイヤが荒れる現象が発生する。
タイヤが荒れてしまうと、その荒れた部分を中心にどんどん消耗が進んでしまう。
ちなみに、紙やすりを英語でabrasive paperということがある。
コース脇の人工芝がたっぷりと砂を含んでいる。
ライダーがコースを外れてコース脇の人工芝に乗り上げると砂がパッと舞い上がる。
レースウィーク序盤は路面に砂埃が多く、マシンが砂埃を巻き上げながら走ることになり、滑りやすい。
決勝当日になると、多くのマシンによって路面の砂埃が掃除された格好になり、
さらには走行ラインの路面の上にべったりとタイヤのラバーが乗って黒くなり、グリップが良くなる。
多くのマシンが通った走行ラインは砂埃が少ないが、その走行ラインを外してしまうと砂埃が多く、
滑ってしまう。2013年はとくに砂埃の量が多く、走行ラインを外すだけで砂埃が巻き上がっていた。
パッシングは走行ラインを外れ気味になる行為なので、やや難しく、慎重に行わねばならない。
メインストレートは1,068mと長く、スリップストリームがよく効く。
ちなみに「スリップストリームを使う」というのは先行ライダーの背後に入って
空気抵抗を受けない状態にして、車速を伸ばす技術のことである。
スリップストリームを使うと先行ライダーに吸い込まれるようになり、後ろから押される感じになる。
エンジンの動きも軽くなり、単独で走るときよりもエンジン回転数がより高く上がる。
スリップストリームを使ったときにエンジン回転数がどうなるか記憶するのがライダーの仕事である。
スリップストリームを使ったときに加速する車体にするのなら、その高めの回転数を基準にして
マシンセッティングをする。
レース中に後続をぶっちぎるペースで単独走行する自信があるライダーは、
当然ながらスリップストリームを使えないのでエンジン回転数が比較的に低めになることが予想される。
低めの回転数に合わせてマシンセッティングすることになる。
「スリップストリームを使って伸びる」のと「スリップストリームを使わずに伸びる」のは両立しない。
スリップストリームを使うとマシンが加速しやすくなるので燃費が良くなり、ガス欠のリスクが減る。
スリップストリームを使いすぎるとマシンに風が当たらなくなり、
エンジンを冷却するラジエーターの水温が下がってくれず、エンジンが過熱して故障しやすくなる。
スリップストリームを使いすぎるとマシンに風が当たらなくなり、
ブレーキディスクが熱くなりすぎて、ブレーキの効きが悪くなる。
このように、スリップストリームを使う走りには得と損の両方がある。
それゆえわざと先行のライダーの後ろから外れたラインを通り、マシンを冷やす走りをすることもある。
本サーキットのメインストレートはMotoGPの開催されるサーキットの中でも1,2を争う最高速になる。
そこから激しいブレーキングを行うのでブレーキが一気に加熱し、赤熱する。
ナイトレースの場合、周囲が暗いのでブレーキディスク赤熱の様子がよく見える。
2012年のブレーキディスク赤熱の様子 動画1、動画2、動画3
2013年のブレーキディスク赤熱の様子 動画1、動画2、動画3、動画4、動画5、動画6
2014年のブレーキディスク赤熱の様子 動画1、動画2、動画3、動画4
2015年のブレーキディスク赤熱の様子 動画1
2016年以降はブレーキディスクが進化したからか、赤熱があまり見られなくなった。
メインストレートエンドの1コーナーから7コーナー立ち上がりまでは直線と低速コーナーが続き、
低速からの加速力を問われるストップアンドゴーのレイアウトとなっている。
メインストレートは長い。スリップストリームを使ったパッシングが多く、順位変動が盛んに起こる。
1コーナーはMotoGP有数のハードブレーキングポイントになっている。
1コーナー脱出部分に地下道があり、1コーナーで転倒してコース外側に出たライダーは
ここを通ってピットへ戻る。
2コーナーは、使用頻度が低いタイヤ左側を久しぶりに使う場所であり、転倒が多発する場所である。
強めのブレーキをしてタイヤ左側をしっかり揉みこむように使用するのは10コーナー以来久々、
時間にして63秒ほどの間隔が空いている。ゆえにタイヤ左側が冷えていて転倒しやすい。
2コーナー付近は照明の数が少なく、暗くなっていて、そこにグラベル(砂)が広がっている。
暗いグラベル(砂)の上を転倒したライダーがトボトボと歩いていくのを多く見かける。
| スリップダウン転倒 | 暗いグラベル(砂)の上をトボトボと歩く |
| 転倒 | 歩く |
| 転倒 | 歩く |
| 転倒 | 歩く |
| 転倒 | 歩く |
マシンを左に傾けて2コーナーを旋回し、マシンを右に切り返して3コーナーに突入する。
その「右に切り返して3コーナー進入」の部分でグイッと上り勾配がある。
4コーナーは有力なパッシングポイントで、ブレーキングしつつ先行ライダーのインに入るシーンが多い。
4コーナーと5コーナーはともに90度の直角コーナーで、コの字型の複合コーナーとなる。
ブレーキを緩めにして高速で進入し、高めの旋回速度でクルッと回る。
6コーナーは本サーキットで最も低速になるコーナーで、パッシングポイントの1つになる。
4~5コーナーと6コーナーはツインリンクもてぎの1~2コーナーと3コーナーに似ている。
本サーキットの設計者は「世界各地のサーキットのコーナーを真似て作った」と語っているので、
この部分はツインリンクもてぎを参考にしたことが推察される。
7コーナーもかなりの低速コーナーだが、7コーナーでパッシングに挑むライダーは少ない。
直後の高速S字をリズム良く走行するため、7コーナーで無理をせず綺麗なラインを保つことが多い。
7コーナー立ち上がりから最終コーナーまでは、高速コーナーリングが続く高速レイアウトになっている。
7コーナー(右)を立ち上がると8コーナー(左)~9コーナー(右)の緩いS字になる。
8コーナー(左)の前半は下りなので前輪が浮く。前輪を浮かせながら左に切り返す。
僅かに上りつつ右に切り返して9コーナー(右)に進入する。
9コーナー(右)の脱出は僅かな下り勾配になっている。
9コーナー(右)は右に曲がりつつ山を上り下りするコーナーになっている。
動画を見ると下り・上り・下りの勾配があることが分かる。動画1、動画2、動画3、動画4
10コーナーは低速のコーナーで、パッシングポイントになっている。
8~9コーナーをリズム良く高速で走行して前方ライダーに追いつき、この10コーナーでインに入りたい。
10コーナーは6コーナーと良く似た感じの低速左コーナーだが、
6コーナーはマシンが直立した状態でブレーキを掛けてクルッと回るのに対し、
10コーナーは右から左に鮮やかな切り返しをしてからクルッと回る。
「切り返しがあって躍動感があるのが10コーナー」と憶えておくと見分けやすい。
11コーナーは典型的な「アクセルを開けてパワーを掛けてリアタイヤを滑らせるコーナー」である。
電子制御ソフトが統一化されて数年前のレベルまで電子制御技術が下落した2016年は、
ここで各車のリアタイヤから白煙が上がっていた。それだけリアタイヤがスピンしやすい場所と言える。
特に激しく白煙を上げていたのはスコット・レディングだった。画像1、画像2
緩やかな11コーナーで加速し、先行するライダーの背後にぴたりと付けスリップストリームを使い、
12コーナーでズバッとインに入っていくのが多く見られるパッシングシーンである。
ここは勝負所なのでドルナも2ヶ所にカメラを配置している。
コース内側カメラの動画とコース外側のカメラの動画のどちらも見応えがある。
12~14コーナー(高速の右3連発)は世界でも珍しいほどのコーナー連続地帯で、
最大排気量クラスではずっとマシンが右に傾き続けることになる。
14コーナー立ち上がりから下り勾配になっており、勢いを付けて左へ車体を切り返し、
高速の15コーナーに突っ込んでいく。
最終16コーナーではパッシングを仕掛けずに綺麗なラインを通ることに専念し、
メインストレートでの加速を伸ばすのがセオリーとなっている。
ここで抜きに掛かっても直線の加速が鈍って抜き返されてしまう例が多い。
最終16コーナーにはしっかりとカント(傾斜)が付いており、高速コーナーリングが可能になっている。
また、脱出部分が下り勾配になっていて、スピードが乗りやすい。
最終16コーナー付近に地下道があり、最終16コーナーで転倒してコース外側に出たライダーは
ここを通ってピットへ戻る。
メインストレートの前半部分に歩道橋があり、ここを通ってピットに行くことができる。
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最終更新:2025/12/13(土) 05:00
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