DNA鑑定とは、ヒトの細胞内のDNA(デオキシリボ核酸)に存在する個人的特徴を、個人識別や親子関係の判断に利用することである。
概要
細胞内に存在するDNAの配列が各人で異なることに注目し,これを分析することで個人識別を行なう鑑定方法。DNAをPCR(遺伝子増幅法)を用いて分析可能な量にまで増やすことにより,ごく微量の血痕や体液,毛髪などがあるだけで検査ができる。
犯罪捜査への利用
特に殺人事件や強姦事件の犯人特定にきわめて有効とされ、日本では警察庁が1992年にDNA鑑定法に関するガイドラインを作成し、全国の都道府県警察本部に通達してから本格的に使われるようになった。鑑定結果を証拠に有罪判決をくだした裁判例や、1980年に確定した判決について証拠捏造の疑いがあることを立証し2014年に再審にこぎつけた袴田事件のような例もある。
逆に、だれがどこにいたかがわかるため、むやみな使用はプライバシーを侵害するおそれがあるほか、DNA鑑定結果に頼りすぎて重要参考人を早々に容疑者リストからはずしていた事件の例もあり、利用上の問題も指摘される。
犯罪捜査以外にも活用されており、血縁関係の特定では出生時の産院での取り違えが約50年たってから立証された例もあるほか、ブランド米と偽って販売される米の摘発など種苗法上の権利保護にも役立っている。
DNA鑑定の原理
ヒトの細胞の核の中には、23対46個の染色体がある。1つの染色体は2本の鎖状分子が絡まっており、4種類の塩基が直線状に連なった分子の構造をしていて、総塩基数は30億個である。その30億個の塩基のうち、3%の情報がタンパク質の設計図として使われ、97%のうち一部が生命メカニズムにかかわる部分、そしてその残りが生命メカニズムに関わらない部分である。
ヒトの染色体は、遺伝子座(マイクロサテライト)と呼ぶ繰り返し配列を多く含むが、その遺伝子座のうち、生命メカニズムに関わらない部分をDNA鑑定で用いる。複数の遺伝子座の繰り返し回数で判別する。例えば、ある遺伝子座は繰り返し回数を10~19回とすると、2つの遺伝子がセットになるので、1/10*1/10=1/100だが、父型母型の区別ができないので、1/100*2=1/50となり、これに13遺伝子座を用いると、(1/50)13=1/(2.4*1020)となる。実施には、繰り返し回数の発現頻度の偏りや遺伝子タイプ数が10種類以下であることから1兆分の1~5兆分の1となる。
DNA鑑定の手順
- 検体の収集
検体の収集工程では綿棒などを用い、口腔内から粘膜細胞を採取する。
- DNA抽出
検体の収集工程では、磁性体ビーズを利用し、DNAが溶出した溶液と混合することにより、DNAがビーズに絡め取り、その後、DNAのみを移送する。
PCR工程では、生物の細胞分裂のときに起こっているDNA複製の工程を人工的に特定の遺伝子座のみを増幅する試薬を用い、DNAを増幅する。
- 電気泳動
増幅した遺伝子座の繰り返し部のDNAの長さを計測し、繰り返し回数を特定する。長さ計測のために、ポリマーを充填した非常に細い(100μm)流路にDNAを導入し、電気泳動により、短いDNAが短時間で検出ポイントに到達し、長いDNAは遅く検出ポイントに到達するが、その到達時間を計測することによって、DNA長を計測する。
関連動画
ニコニコ動画では、アメリカのテレビ番組「Maury Show」の動画が人気である。これは「生まれた子どものDNAを鑑定し、男性ゲストが父親であるか否かを調べ、スタジオにいる双方に宣告する」というぶっ飛んだ内容のバラエティである。父親ではなかったため、養育費や慰謝料を回避した男の反応は必見である。
関連項目
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