Harbingerとは、「先駆者、前触れ」といった意味を持つ英単語。
古フランス語において「宿を提供する人」を示すHerbergeorに由来する。
先駆的な意味を持つことから、英語圏を中心に商品のブランド等でよく用いられる単語である。
本項では上述の言葉を由来に持つ、2006年生まれのイギリス生産・調教の競走馬、ハービンジャーについて記載する。
2010年に行われた真夏の欧州競馬最高峰、「キングジョージ」にて大差勝ちを収めた優駿である。
父Dansili(ダンシリ)、母Penang Pearl(ペナンパール)、母父Bering(ベーリング)という血統。
父のダンシリは世界的成功を収めた大種牡馬*デインヒル産駒で、現役時代はマイル路線でGⅡが最高だったものの種牡馬入り後は凱旋門賞馬レイルリンク等、10ハロン以上の距離を得意とする産駒を送り出した。
母のペナンパールはリステッド競走を勝っており、本馬の曾祖母や高祖母は重賞馬である。
1歳セリで英国の共同馬主グループに18万ギニー(約4400万円)で購買され、*オペラハウスや*ピルサドスキーなどを管理したサー・マイケル・スタウト調教師によって管理されることとなった。
デビューは3歳4月と遅く、ニューマーケット競馬場にてデビュー戦を2着、続く未勝利戦で勝ち上がり、次走のゴードンS(GⅢ)で重賞初制覇と、トントン拍子に勝っていく。
しかし、次戦に選んだグレートヴォルティジュールS(GⅡ)では1着から30馬身近く離された7着最下位、その次のセントサイモンS(GⅢ)は3着だったが勝ち馬からは6馬身以上離されるなど不甲斐ないレースが続く。
一応、グレートヴォルティジュールSの2着マスタリーが英セントレジャーを、4着ジュークボックスジュリーがオイロパ賞(独GⅠ)を勝つなど面子は結構揃っていたのだが……3歳シーズンは5戦2勝で終える。
4月、欧州競馬シーズン開幕を迎えると同時に始動。
すると去年の負けっぷりはどこへやら。直線で先頭に立てば後続の追撃を許さない力強い末脚を以て、ジョンポーターS(GⅢ)、オーモンドS(GⅢ)、ハードウィックS(GⅡ)と連戦連勝。陣営はキングジョージへの参戦を決定した。
真夏の欧州競馬最高峰・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスステークス(GⅠ)、通称「キングジョージ」は本馬を含め僅か6頭立て。しかしその他の5頭もかなりの面子であった。
デビューから手綱を握っていたライアン・ムーアが*ワークフォースを選んだ為、日本でもお馴染みオリビエ・ペリエに乗り替わり。1番人気は前走の英ダービーを圧勝した*ワークフォースの方である。向こうは3歳なので斤量は121ポンド(約55kg)だが、古馬のハービンジャーは133ポンド(約60.5kg)である。欧州の夏競馬は斤量差が凄いのだ。
レース本番ではペースメーカーのコンフロントが先頭に立ち、その後ろに*ワークフォースと*ケープブランコという英愛ダービー馬が併走、本馬ハービンジャーは4番手につけて追走しピッタリマーク。
直線に入りコンフロントと*ケープブランコ、*ワークフォースがスパートをかけたが、3頭の鞍上が必死に追うも手応えが怪しい。その3頭の外に余裕の手応えで先頭に躍り出る鹿毛馬。ハービンジャーである。
残り1ハロン棒を通過した時点で後続を完全に千切り、ペリエが鞭を一叩きするだけで更に加速。
結果、2着ケープブランコに11馬身という大差を付けて完勝。着差はレース史上最大、タイム2分26秒78はトラックレコード。
後にIFHA(国際競馬統括機関連盟)はワールド・サラブレッド・ランキングにて歴代2位となる135ポンドのレーティングを与え、古馬としては歴代最強格という評価が為された。
当然、凱旋門賞やBCターフを望む声が高かったものの、前哨戦に予定していた英インターナショナルSへの調教中に左前脚を骨折。すぐに手術を行い成功したものの、間もなくして引退が決定した。
4歳時は4戦4勝、通算成績は9戦6勝。GⅠ勝利はキングジョージのみだが、そのパフォーマンスは尋常なものではなかった。
引退後は日本の社台グループへ売却され、2011年より社台スタリオンステーションで種牡馬入りする事が決定された。売却額は数億円規模と考えられており、高額ではあるものの世界的名馬となれば10億円以上の実弾が飛び交う種牡馬ビジネスとしては若干ささやかなものではあった。2歳時に走っていないことと、2400mでしか実績がないのが原因とのこと。
日本に到着後はディープインパクトの隣の馬房に入り、種付け料は400万円に設定された。血統的にはロベルトが5代目に1本入ってる程度で、ミスプロは一切入っていない、ダンジグも3代父と遠い為、日本で種付け相手にはほとんど困らない。初年度から200頭以上の牝馬を集めたのがその証か。
初年度からベルーフが京成杯を制する幸先の良いスタートを切ったが、クラシック戦線では微妙。若干期待外れ感が漂っていたものの、3年目の産駒が3歳を迎えた2017年に一気に爆発。
秋華賞をディアドラが、エリザベス女王杯をモズカッチャンが、マイルCSをペルシアンナイトが奪取。
なんとGⅠを3つ奪い獲るという快挙を成す。最終的にリーディングは6位。
さらに4世代目からはノームコアやブラストワンピースを輩出し、ブラストワンピースが有馬記念を勝った2018年にはリーディング5位につけた。
これらの活躍で2018年と2019年の種付け数は再び200頭を超えたが、2016年産の5世代目以降は目立った大物が出ず、種付け数も減少している。しかし2016年産のニシノデイジーが障害に転向して2022年の中山大障害を制覇。2024年にはチェルヴィニアが牝馬二冠を達成、アルマヴェローチェが阪神JFを、ニシノデイジーが2度目の中山大障害を制し、改めて健在ぶりを示した。
また母の父としてもメイケイエールを露払いに、レガレイラ、ベラジオオペラ、アーバンシックと2023年末から続々とGⅠ馬が登場。今後はどんどん「母父ハービンジャー」の活躍馬が増えていくだろう。
産駒の傾向として、サンデー系相手に瞬発力勝負をするとキレ負けするが、洋芝や4コーナー手前から動く小回りの競馬場を得意とし、直線大外一気の末脚は惚れ惚れするくらいである。ちなみにダートはハービンマオが関東オークスを勝っているが、基本的には500万下を超える馬は少ない。
2024年12月現在でGⅠ馬9頭(障害含む)、重賞馬24頭(障害および交流重賞含む)、産駒JRA勝利数は700勝突破。種牡馬としては充分すぎるほど成功を収めていると言えるが、その一方でペルシアンナイトとブラストワンピースがどちらも引退後種牡馬になれず、4戦1勝で引退したアグニシャインが種牡馬入りしたが4年で用途変更と、後継種牡馬が不在の状態。特にブラストワンピースに関しては、有馬記念の勝ち馬が種牡馬になれないのは現役中に死亡したテンポイントを除くと初のことであった。
主流血統の肌馬につけやすいということは、産駒は主流血統が濃いめになるということであり(実際ブラストワンピースはキンカメとサンデー両方入り、ペルシアンナイトも母父サンデー)、種牡馬として需要が見込めないということなのだろうが……。シビアな話である。
ニシノデイジーが2025年から種牡馬入りすることになったので、2頭目の後継種牡馬が誕生することになるが、果たしてどれだけ牝馬を集められるか……というところだが、こちらは前掲の2頭と違い母父にこそアグネスタキオンがいるものの、母系そのものはセイウンスカイとニシノフラワーというマイナーもいいところの血統であり、薄め液としてはかなり有望。むしろこれからどんどん数が増えていくコントレイル産駒・キタサンブラック産駒・ゴールドシップ産駒といったサンデーサイレンスの曾孫世代の繁殖牝馬達に対して、母方の血をほとんど気にせずにサンデーサイレンスの4x3クロスを作れるという逸材であり、あとはどれだけ走る仔を出せるかの勝負となるだろう。
ハービンジャー自身も18歳で既にプライベート種牡馬となっており、今後は種付け数を抑えながらいつまで種牡馬を続けるかという段階。フィリーサイアーとして牝馬の活躍馬を多数出した時点で期待された役目は充分すぎるほど果たしたと言えるのだが、今後、後継種牡馬となれる大物は現れるだろうか。
Dansili 1996 黒鹿毛 |
*デインヒル 1986 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer |
Pas de Nom | |||
Razyana | His Majesty | ||
Spring Adieu | |||
Hasili 1991 鹿毛 |
Kahyasi | *イルドブルボン | |
Kadissya | |||
Kerali | High Line | ||
Sookera | |||
Penang Pearl 1996 鹿毛 FNo.1-k |
Bering 1983 栗毛 |
Arctic Tern | Sea-Bird |
Bubbling Beauty | |||
Beaune | Lyphard | ||
Barbra | |||
Guapa 1988 鹿毛 |
Shareef Dancer | Northern Dancer | |
Sweet Alliance | |||
Sauceboat | Connaught | ||
Cranberry Sauce |
クロス:Northern Dancer 4×4×5(15.63%)、Natalma 5×5×5(9.38%)
直線入口の手応えが寒気がするほど恐ろしい
掲示板
66 ななしのよっしん
2024/12/22(日) 21:44:19 ID: 1Egm9B/ApX
ニシノデイジー種牡馬入りとのこと。結局唯一の後継になってしまった
67 ななしのよっしん
2024/12/22(日) 22:42:41 ID: aptFOli6Sh
いやでもロマン血統を自家生産で繋いでくれる西山オーナーのもとに良いハービンジャー産駒がいて、種牡馬入りできるというのは幸運だったね
68 ななしのよっしん
2024/12/23(月) 14:23:21 ID: yeBA271lS/
>>67
障害競走で大成したとはいえ、平地2歳重賞も勝っていてクラシック三冠皆勤(掲示板入りもした)
だから仕上げるのが早くて長く使える・・・産駒が出れば希望はあるかな?
提供: ナオ( ・ω・)ノⁿ
提供: 樹葉 緑
提供: パラゴン
提供: たかろん
提供: 三丁目のミケ太
急上昇ワード改
最終更新:2025/03/27(木) 14:00
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