固定利付債とは、債券の一形態で、発行時に決められた表面利率に従って利子が定期的に支払われるものをいう。確定利付債とも呼ばれる。
中央政府や地方自治体や企業が、資金調達を目的として、金銭債権の内容を券面上に実体化させて発行する有価証券のことを債券という。中央政府が発行する債券は国債、地方自治体が発行する債券は地方債、企業が発行する債券は社債という。
債券には様々な形態があるが、利付債と割引債というのが代表的な形態となっている。利付債とは定期的に利子が支払われて償還期日になると額面金額が支払われる債券である。
利付債には変動利付債と固定利付債の2種類に分かれる。
変動利付債は、定期的に利子が支払われるが、利子を決める表面利率が市場の動向に合わせて変化していく利付債である。
固定利付債は、定期的に利子が支払われるが、利子を決める表面利率が市場の影響を一切受けず発行したときに設定した数値で固定されている利付債である。
以上のことを表にまとめると、次のようになる。
債券 | |||
利付債 | 割引債 | その他の形態の債券 | |
変動利付債 | 固定利付債 |
利付債には、償還期日と額面金額と表面利率が決まっている。
償還期日は、発行日よりも後に設定される。
額面金額とは、償還期日に支払われる金額のことをいう。
表面利率とは、発行日から償還期日までの期間に支払われる利子を決める数値である。額面金額を分母にして利子の1年分を分子にして百分率(%)に表したものである。固定利付債なら表面利率がずっと一定である。
償還期日が3年後で額面金額100万円で表面利率が2%の固定利付債があるとする。1年目は利子として合計2万円が払われ、2年目も利子として合計2万円が払われ、3年目は利子が合計2万円払われて償還期日に100万円が支払われる。
ちなみに、債券というのは償還期日が来る前に売り飛ばすことができる。「100万円の10年債券を買ったけど8年目で現金が必要になった」という場合は(買い手が見つかれば)売却できる。買い手が少ない場合は90万円とかで売らざるを得ない。
利付債は、発行日から償還期日を迎えるまでの間、定期的に利子が支払われる。そのため投資家は、利付債を額面金額と同じ額で購入したとしても収益を出すことができる。利付債を発行して額面金額と同じ金額で売却することをパー発行という。
また、表面利率がかなり高い場合、発行された利付債を額面金額よりも高い金額で購入したとしても投資家は収益を出すことができる。利付債を発行して額面金額より高い金額で売却することをオーバーパー発行という。
発行元の信用が低くて返済能力が疑われている場合がある。その場合の投資家は利付債が発行されたときもなかなか購入しようとしない。それでも利付債を売りさばきたいのなら額面金額よりも低い金額で売り出さざるを得ない。利付債を発行して額面金額より低い金額で売却することをアンダーパー発行という。
ちなみにパーとは英語でparと書き、ゴルフの世界で「規定打数」という意味で使われる用語である。
以上のことをまとめると、次のようになる。
名称 | 内容 | 収益 | 信用度 |
オーバーパー発行 | 額面金額より高い金額で売り出される | 償還差益を全く得られず、それどころかマイナスになる。表面利率が十分に高いので、それでも収益が出る | 債券発行者の信用が高い |
パー発行 | 額面金額と同じ金額で売り出される | 償還差益を全く得られない。表面利率が十分に高いので、それでも収益が出る | 債券発行者の信用が高い |
アンダーパー発行 | 額面金額より低い金額で売り出される | 償還差益を大きく得られる。それに加えて、利子でも収益が得られるので、投資家の得が多い | 債券発行者の信用が低い |
ちなみに割引債は定期的に支払われる利子が存在しないので、必ずアンダーパー発行になる。
日本では国債が発行されている。その国債の中で償還期間が1年を超える国債は多くが利付債の形態で発行されている。変動利付債と固定利付債の両方が販売されているが、固定利付債の方が多い。また、利子の支払い方は1年に2度支払う形態が多い。「表面利率が2%の固定利付債の国債」なら、春に額面金額の1%の利子を支払い、秋に額面金額の1%の利子を支払い、年間合計2%の利子を支払うとすることが多い。
米国でも国債が発行されていて、米国債と呼ばれている。日本の国債の形態と良く似ており、償還期間が1年を超える国債は多くが利付債の形態で発行されている。変動利付債と固定利付債の両方が販売されているが、固定利付債の方が多い。また、利子の支払い方は1年に2度支払う形態が多い。
※この項の資料・・・日本国財務省ウェブサイト、ITMediaビジネス記事
利回りとは、固定利付債を購入することで投資するお金がどれだけの利益を生むかを示す数値である。
利回りには単利利回りと複利利回りがある。詳細は利回りの記事を参照。
この項目では、年1回利払いの固定利付債の利回りを計算し、単利利回りと複利利回りの違いなどを確認していく。
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使って数値を計算する。B1のセルに購入金額、B2のセルに額面金額、B3のセルに表面利率(%)、B4のセルに残存年数を入れる。
単利で運用したときの利益は=B2+B2*0.01*B3*B4-B1という数式になる。
複利で運用したときの利益は、エクセルなら=B2+B2*0.01*B3*(1-(1+0.01*YIELD(DATE(2001,1,1),DATE(2001+B4,1,1),B3*0.01,B1*(100/B2),100,1,1)*100)^B4)/(1-(1+0.01*YIELD(DATE(2001,1,1),DATE(2001+B4,1,1),B3*0.01,B1*(100/B2),100,1,1)*100))-B1という数式になり、オープンオフィスなら=B2+B2*0.01*B3*(1-(1+0.01*YIELD(DATE(2001;1;1);DATE(2001+B4;1;1);B3*0.01;B1*(100/B2);100;1;1)*100)^B4)/(1-(1+0.01*YIELD(DATE(2001;1;1);DATE(2001+B4;1;1);B3*0.01;B1*(100/B2);100;1;1)*100))-B1という数式になる。
単利利回りは=(B2*0.01*B3+(B2-B1)/B4)*100/B1という数式になる。
複利利回りは、エクセルなら=YIELD(DATE(2001,1,1),DATE(2001+B4,1,1),B3*0.01,B1*(100/B2),100,1,1)*100という数式になり、オープンオフィスなら=YIELD(DATE(2001;1;1);DATE(2001+B4;1;1);B3*0.01;B1*(100/B2);100;1;1)*100という数式になる。
残存年数を1年にすると、額面金額や購入金額や表面利率をどのような数値にしても、単利利益と複利利益がぴったり同じになり、単利利回りと複利利回りがぴったり同じになる。
残存年数が1年以上の場合は発生した利子を再投資して複利効果が発生するので、単利利益と複利利益が異なる数値になり、単利利回りと複利利回りが異なる数値になる。
額面金額100円で表面利率3%で残存年数10年にして、購入金額をいろんな数値に変化させると、次の表のように各種数値が変化した。
購入金額 | 単利利益 | 複利利益 | 単利利回り(%) | 複利利回り(%) | |
115 | 15 | 17 | 1.304 | 1.384 | オーバーパー発行 |
110 | 20 | 23 | 1.818 | 1.893 | |
105 | 25 | 29 | 2.381 | 2.431 | |
100 | 30 | 34 | 3.000 | 3.000 | パー発行 |
95 | 35 | 40 | 3.684 | 3.604 | アンダーパー発行 |
90 | 40 | 46 | 4.444 | 4.248 | |
85 | 45 | 53 | 5.294 | 4.937 |
単利利益よりも複利利益のほうが必ず大きい数値になっている。複利運用するときは発生した利子を再投資するので、単利利益よりも大きい利益になる。
しかし、必ずしも「単利利回り<複利利回り」であるわけではない。オーバーパー発行の場合は「単利利回り<複利利回り」となるが、パー発行の場合は「単利利回り=複利利回り」となり、アンダーパー発行の場合は「単利利回り>複利利回り」になってしまう。単利利回りと複利利回りは定義そのものが異なるので、こうした現象が起こる。
額面金額と購入金額が等しいパー発行の場合は、単利利回りも複利利回りも表面利率と同じ数値になる。
購入金額が減るたびに単利利回りも複利利回りも上昇していく。「国債などの債券は、価格が下がると利回りが上昇する」といわれるが、その通りになっている。
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最終更新:2024/04/24(水) 22:00
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