利回りとは、次の4つに分けることができる。
本記事では1.について記述する。
政府や企業が資金調達のため「お金を支払う事を約束する負債証明書」を発行して市場に売却することがある。この負債証明書を債券という。
債券は利付債と割引債に大別され、利付債の代表は固定利付債である。
債券には「発行した者がこれだけの金額を支払います」という意味の金額が書いてある。これを額面金額という。
投資する者が債券を購入するときは額面金額とは異なる金額で購入することが多い。この金額を購入金額という。
債券には発行した者が支払う時期が書いてある。これを償還日とか償還期日という。
利付債の所有者に対して発行者は定期的に利子を支払う。その利子は額面金額に表面利率を掛けて計算される。
利回りというのは表面利率とは異なる概念である。
単利利回りとは、投資するお金が1年あたりでどれだけの収益を生むかを百分率で表示したもので、定期的に支払われる利子を再投資しないことを前提としたものである。
複利利回りとは、「お金を利率r%で複利運用したときのn年後の金額」と、「お金でn年物固定利付債を購入して定期的に支払われる利子を利率r%で複利運用しつつn年後に額面金額の償還を受けた場合の累計受領金額」が等しくなるとき、債券額面金額と債券購入金額からただ一つに決まるrの値を指す言葉である。
償還期日まで債券を保有し続ける投資家が、債券を購入するときに額面金額と等しい金額で購入していれば、単利利回りでも複利利回りでも、利回りと表面利率が全く同じになる。
償還期日の前に債券を売却する投資家が、購入金額と等しい金額で売却していれば、単利利回りでも複利利回りでも、利回りと表面利率が全く同じになる。
しかし、以上の例は少ない。
償還期日まで債券を保有し続ける投資家のほとんどは、債券を購入するときに額面金額と異なる金額で購入していて、額面金額と購入金額の差額を収益にしている。
償還期日の前に債券を売却する投資家のほとんどは、購入金額と異なる金額で売却していて、購入金額と売却金額の差額を収益にしている。
このため、ほとんどの場合で、単利利回りと表面利率が一致しないし、複利利回りと表面利率も一致しない。
表面利率だけで「1年分の収益」を把握することができない。逆に言うと、債券投資における「1年分の収益」を把握するために作り出された概念が単利利回りである、ということができる。
債券における利回りは、債券を所有する期間によって3種類に分けられる。
応募者利回りは、新規発行債券(新発債)が発行された時に購入し、その債券を償還期日まで持ち続けたときの利回りである。
最終利回りは、既存発行債券(既発債)が誰かの手によって市場に売却されたときに購入し、その債券を償還期日まで持ち続けたときの利回りである。
所有期間利回りは、流通利回りともいうもので、新規発行債券(新発債)が発行された時に購入したり、既存発行債券(既発債)が誰かの手によって市場に売却されたときに購入したりするが、その債券を償還期日より前の日に売却したときの利回りである。
三者を図で示すと次のようになる。
発行日 | 途中の日A | 途中の日B | 償還日 | |
応募者利回り | 購入 | 受け取り | ||
最終利回り | 購入 | 受け取り | ||
所有期間利回り その1 | 購入 | 売却 | ||
所有期間利回り その2 | 購入 | 売却 |
利回りの計算方法には2種類があり、単利で計算する単利利回りと、複利で計算する複利利回りがある。
日本で利付債を扱う債券市場では単利利回りを採用している。これは世界的に見ても珍しいことである。
欧米諸国では複利利回りを使うことが主流で、利付債を扱う債券市場でも割引債を扱う債券市場でも複利利回りを採用している[1]。
単利利回りでも複利利回りでも、債券の価格が下がると利回りが上がり、債券価格が上がると利回りが下がるという傾向がある。
新聞の経済欄では「国債が買われて国債価格が上昇(利回りは下落)」などと括弧で補足説明することが多い。
以下のことを頭に入れておくと、国債についてのニュースを読みやすくなる。
単利利回りとは、投資するお金が1年あたりでどれだけの収益を生むかを百分率で表示したもので、定期的に支払われる利子を再投資しないことを前提としたものである。
単利利回りの計算式の基本形は次のようになっている。
「収益の1年分」は、表面利率で得られる利子収入(インカムゲイン)1年分と債券の売買の差額または債券の償還金額と購入金額の差額で得られる収入(キャピタルゲイン)1年分の合計額である。
ゆえに次のように書き直すことができる。
ネット上には、次のような利回り計算式が紹介されている(記事1、記事2)。
この利回り計算式が成立するのは、額面金額または売却金額を100にして購入金額を「額面金額または売却金額を100としたときの修正値」にした時だけである[2]。
額面金額が2000で、購入金額が1800だとする。この場合、利回り計算式Aにそのまま数値を代入してはならない。額面金額と購入金額をそれぞれ200で割って、「額面金額は2000÷20=100、購入金額は1800÷200=90」と計算して、額面金額に100、購入金額に90を入れなければならない。
日本の債券市場では「額面金額を100円と表現し、それに対して購入金額を●円とする」といったように額面金額を100円と固定して考える慣習がある。そうすれば「購入金額は額面金額の●%である」といった具合に百分率で把握しやすい。そうした慣習から生まれた公式である。
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使っている人が、B1のセルに購入金額、B2のセルに額面金額または売却金額、B3のセルに表面利率(%)[3]、B4のセルに購入日から償還期日または売却日までの残存年数を入れた場合、単利利回り(%)の数式は=(B2*0.01*B3+(B2-B1)/B4)*100/B1となり、単利の合計収益は=B2+B2*0.01*B3*B4-B1となる。
B1のセルの数字を減らしていくと、単利利回りがどんどん上昇していく。表面利率による利子収入が一定であるが、額面金額と購入金額の差額が広がってその分の収益が増えていくからである。「債券価格が下落して購入金額が減ると債券利回りが上昇する」ということを実感できる。
「期待インフレ率から考えられる最低限の単利合計収益」は=B1*(1+B5*0.01)^B4-B1で計算できる。この数字を上回る合計収益を出せないとインフレで損失を被ってしまう。
「期待インフレ率から考えられる最低限の購入金額」は=(B2+B2*0.01*B3*B4)/((1+B5*0.01)^B4)で計算できる[4]。この数字を下回る金額で購入しないとインフレで損失を被ってしまう。
「期待インフレ率から考えられる最低限の単利利回り」は=100*((B2*0.01*B3+(B2-((B2+B2*0.01*B3*B4)/((1+B5*0.01)^B4)))/B4)/((B2+B2*0.01*B3*B4)/((1+B5*0.01)^B4)))で計算できる[5]。この数字を上回る利回りが出ないとインフレで損失を被ってしまう。
また、keisan.casio.jpでは単利利回りを計算するサービスを提供している。
表計算ソフトにはYIELDMAT関数(イールドマット関数)があり、それを使って固定利付債の単利利回りを計算できる。
B1のセルに購入金額、B2のセルに額面金額または売却金額、B3のセルに表面利率(%)、B4のセルに購入日から償還期日または売却日までの残存年数を入れた場合、単利利回り(%)の数式は、エクセルなら=YIELDMAT(DATE(2001,1,1), DATE(2001+B4,1,1) ,DATE(2001,1,1), 0.01*B3, B1*(100/B2),0)*100、オープンオフィスなら=YIELDMAT(DATE(2001;1;1); DATE(2001+B4;1;1) ;DATE(2001;1;1); 0.01*B3; B1*(100/B2);0)*100になる。
表計算ソフトにはINTRATE関数(イントレート関数)やYIELDDISC関数(イールドディスク関数)があり、それらを使って割引債の単利利回りを計算できる。
B1のセルに購入金額を入力し、B2のセルに額面金額または売却金額を入力し、B3のセルに購入日から償還期日または売却日までの残存年数を入力した場合、割引債の単利利回り(%)の数式は、エクセルなら=INTRATE(DATE(2001,1,1), DATE(2001+B3,1,1) ,B1*(100/B2),100,0)*100という数式や=YIELDDISC(DATE(2001,1,1), DATE(2001+B3,1,1) ,B1*(100/B2),100,0)*100という数式になり、オープンオフィスなら=INTRATE(DATE(2001;1;1); DATE(2001+B3;1;1) ;B1*(100/B2);100;0)*100という数式や=YIELDDISC(DATE(2001;1;1); DATE(2001+B3;1;1) ;B1*(100/B2);100;0)*100という数式になる。
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使っている人が、B1のセルに額面金額または売却金額、B2のセルに表面利率(%)[6]、B3のセルに購入日から償還期日または売却日までの残存年数、B4のセルに単利利回り(%)を入れた場合、購入金額の数式は=(B1*0.01*B2*B3+B1)/(1+0.01*B4*B3)となる。
PRICEMAT関数(プライスマット関数)を使ってもよい。B1のセルに額面金額または売却金額、B2のセルに表面利率(%)[7]、B3のセルに購入日から償還期日または売却日までの残存年数)、B4のセルに単利利回り(%)を入れた場合、エクセルなら=PRICEMAT(DATE(2001,1,1), DATE(2001+B3,1,1), DATE(2001,1,1),B2*0.01 ,B4*0.01, 0)*(B1/100)という数式になり、オープンオフィスなら=PRICEMAT(DATE(2001;1;1); DATE(2001+B3;1;1); DATE(2001;1;1);B2*0.01 ;B4*0.01; 0)*(B1/100)という数式になる。
固定利付債における複利利回りとは、「お金を利率r%で複利運用したときのn年後の金額」と、「お金でn年物固定利付債を購入して定期的に支払われる利子を利率r%で複利運用しつつn年後に額面金額の償還を受けた場合の累計受領金額」が等しくなるとき、債券額面金額と債券購入金額からただ一つに決まるrの値を指す言葉である。
購入金額96円で額面金額100円で表面利率1%で利払い年1回で残存年数3年の債券がある。単利利回りは2.43%だが、複利利回りは2.39%になる。
購入してから1年後に1円の利子が発生するので、その1円を利回り2.39%の1年物債券に再投資する。
購入してから2年後に1円の利子が発生するので、その1円を利回り2.39%の1年物債券に再投資する。それと同時に「購入してから1年後に発生した1円で購入した1年物債券」が満期を迎えて1.0239円になるので、その償還金を利回り2.39%の1年物債券に再投資する。
購入してから3年後に1円の利子が発生し、「購入してから2年後に発生した1円で購入した1年物債券」が満期を迎えて1.0239円になり、「購入してから2年後に発生した1.0239円で購入した1年物債券」が満期を迎えて1.0483円になる。この時点で債券投資が終わるので、一番最初に購入した額面金額100円債券の償還を受け取る。
以上のことを図で示すと次のようになる。
購入日 | 1年後 | 2年後 | 3年後の償還日 | |
元本 | 100円を受け取る | |||
購入してから1年後に発生する利子 | 1円を受け取る | 1.0239円を受け取る | 1.0483円を受け取る | |
購入してから2年後に発生する利子 | 1円を受け取る | 1.0239円を受け取る | ||
購入してから3年後に発生する利子 | 1円を受け取る |
購入金額96円で額面金額100円で表面利率1%で利払い年1回で残存年数が3年の債券の複利利回りがr%であるとする。その場合、次の数式を書くことができる。
購入金額96円を利回りr%で3年間複利で投資した後の金額=購入して1年目に受け取った利子1円を複利r%で2年運用した後の金額+購入して2年目に受け取った利子1円を複利r%で1年運用した後の金額+購入して3年目に受け取った利子1円+額面金額の100円
購入金額k円で額面金額g円で表面利率h%で利払い年1回で残存年数n年の債券の複利利回りがr%であるとする。その場合1年で支払われる利子はg×(1+0.01×h)で計算できるが、そのまま書くと煩雑なのでCと書くことにする。その場合、次の数式を書くことができる。
k×(1+0.01×r)n=C×(1+0.01×r)n-1+C×(1+0.01×r)n-2+C×(1+0.01×r)n-3+...+C×(1+0.01×r)3+C×(1+0.01×r)2+C×(1+0.01×r)+C+g
以上の数式をもう少し見やすくするため、(1+0.01×r)をRと書くことにする。その場合、次の数式を書くことができる。
k×Rn=C×Rn-1+C×Rn-2+C×Rn-3+...+C×R3+C×R2+C×R+C+g
右辺をCでまとめてみる。
k×Rn=C(Rn-1+Rn-2+Rn-3+...+R3+R2+R+1)+g
(Rn-1+Rn-2+Rn-3+...+R3+R2+R+1)というのは高校数学で習う等比数列である。等比数列の和の公式というものがあり、初項1で公比Rの等比数列の場合、初項から第n項までの和は(1-Rn)÷(1-R)になる(資料)。ゆえに次の数式になる。
k×Rn=C{(1-Rn)÷(1-R)}+g
※ここまでの資料・・・記事1、記事2
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使う人が、B1のセルに額面金額を入力し、B2のセルに表面利率(%)を入力し、B3のセルに残存年数を入力し、B4のセルに複利利回り(%)を入力する場合、年1回の利払いの債券の購入金額は=(B1*0.01*B2*((1-(1+0.01*B4)^B3)/(1-(1+0.01*B4)))+B1)/((1+0.01*B4)^B3)という数式になる。
PRICE関数(プライス関数)を使ってもよい。B1のセルに額面金額を入力し、B2のセルに表面利率(%)を入力し、B3のセルに残存年数を入力し、B4のセルに複利利回り(%)を入力する場合、年1回の利払いの債券の購入金額はエクセルなら=PRICE(DATE(2001,1,1), DATE(2001+B3,1,1), B2*0.01 ,B4*0.01,100, 1, 0)*(B1/100)という数式になり、オープンオフィスなら=PRICE(DATE(2001;1;1); DATE(2001+B3;1;1); B2*0.01 ;B4*0.01;100; 1; 0)*(B1/100)という数式になる。
固定利付債の複利利回りを計算するような数式を作りあげることは難しい。そのため表計算ソフトのYIELD関数(イールド関数)を使うことになる。
B1のセルに購入金額を入力し、B2のセルに額面金額を入力し、B3のセルに表面利率(%)を入力し、B4のセルに残存年数を入力し、B5のセルに年間利払い回数を1か2か4の中から選んで入力する場合、固定利付債の複利利回り(%)はエクセルなら=YIELD(DATE(2001,1,1), DATE(2001+B4,1,1), B3*0.01 ,B1*(100/B2), 100, B5, 0)*100という数式になり、オープンオフィスなら=YIELD(DATE(2001;1;1); DATE(2001+B4;1;1); B3*0.01 ;B1*(100/B2); 100; B5; 0)*100という数式になる。
割引債の複利利回りは、固定利付債の複利利回りとほとんど同じである。
割引債における複利利回りとは、「お金を利率r%で複利運用したときのn年後の金額」と、「お金でn年物割引債を購入してn年後に額面金額の償還を受けた場合の受領金額」が等しくなるとき、債券額面金額と債券購入金額からただ一つに決まるrの値を指す言葉である。
購入金額96円で額面金額100円で残存年数が3年の割引債の複利利回りがr%であるとする。その場合、次の数式を書くことができる。
購入金額k円で額面金額g円で残存年数n年の割引債の複利利回りがr%であるとする。その場合、次の数式を書くことができる。
k×(1+0.01×r)n=g
k=g÷{(1+0.01×r)n}
※ここまでの資料・・・記事1、記事2
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使う人が、B1のセルに額面金額を入力し、B2のセルに残存年数を入力し、B3のセルに複利利回り(%)を入力する場合、割引債の購入金額は=(B1/((1+0.01*B3)^B2))という数式になる。
PRICE関数(プライス関数)を使ってもよい。B1のセルに額面金額を入力し、B2のセルに残存年数を入力し、B3のセルに複利利回り(%)を入力する場合、割引債の購入金額はエクセルなら=PRICE(DATE(2001,1,1), DATE(2001+B2,1,1), 0 ,B3*0.01,100, 1, 0)*(B1/100)という数式になり、オープンオフィスなら=PRICE(DATE(2001;1;1); DATE(2001+B2;1;1); 0 ;B3*0.01;100; 1; 0)*(B1/100)という数式になる。
割引債の複利利回りを計算するような数式を作りあげることは簡単である。
購入金額k円で額面金額g円で残存年数n年の割引債の複利利回りがr%であるとする。その場合、次の数式を書くことができる。
k×(1+0.01×r)n=g
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使う人が、B1のセルに購入金額を入力し、B2のセルに額面金額を入力し、B3のセルに残存年数を入力する場合、割引債の複利利回り(%)は=((B2/B1)^(1/B3)-1)*100という数式になる。
YIELD関数(イールド関数)を使ってもよい。B1のセルに購入金額を入力し、B2のセルに額面金額を入力し、B3のセルに残存年数を入力する場合、割引債の複利利回り(%)はエクセルなら=YIELD(DATE(2001,1,1), DATE(2001+B3,1,1) ,0,B1*(100/B2),100,1,1)*100という数式になり、オープンオフィスなら=YIELD(DATE(2001;1;1); DATE(2001+B3;1;1) ;0;B1*(100/B2);100;1;1)*100という数式になる。
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最終更新:2024/12/02(月) 05:00
最終更新:2024/12/02(月) 04:00
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