ピクサー・アニメーション・スタジオ 単語

ピクサーアニメーションスタジオ

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ピクサー・アニメーション・スタジオ (Pixar Animation Studios) とは、アメリカ・カリフォルニア州エメリービルのアニメーション制作会社である。現在は、ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下。

歴史

1979年に設立されたルーカス・フィルムのコンピュータ・アニメーション制作部門が前身である。

1986年、アップルコンピュータを退社したスティーブ・ジョブズが、1000万ドルでこの部門を買収したことにより、初めて「ピクサー」と名付けられた。当初はアニメーション制作スタジオではなく、「ピクサー・イメージ・コンピュータ」という政府機関や医療機関などを顧客にCG専用の高級コンピュータを販売する会社であった。この頃の顧客のひとつが、当時アニメーション制作にCGを使った手法である「CAPS」への切り替えを目指していたディズニーであった。

この頃からピクサーに在籍していたジョン・ラセターは、売り上げ促進のためにコンピュータの性能をデモンストレーションする短編CGアニメ「ルクソー Jr.」を制作し、SIGGRAPH86で公開した (ちなみにこの短編に登場する電気スタンドは、「PIXAR」の「I」を踏みつぶすことでおなじみである)。また、「ピクサー・イメージ・コンピュータ」のソフトウェア部分のみを抜き出した「RenderMan」の販売を始めた。

しかし当初の売り上げは芳しくなく、会社の業績は悪化する一方であった。そこで外部の企業のコマーシャルをCGで制作する事業を始めるが、この間もディズニーとの関係を継続し、CAPSへの切り替えを支援する重要な技術参加企業となった。

その後の1994年、ピクサーは、2600万ドルでディズニーとアニメーション映画制作の契約を交わす。こうしてはじめて制作され、1995年に公開されたピクサーの長編映画作品が、ピクサーの名声を決定づけた世界初のフルCG長編映画「トイ・ストーリー」である。本作はジョン・ラセターが監督を務め、RenderManで制作された。

この契約は「10年間で5作品を制作し、興行収入は均等に2分配する」という内容であったが、この間ディズニーの映画制作部門は大ゴケ連発といっていいほど振るわず、2004年には手描きアニメーションから撤退して大量のアニメータを解雇する壊滅的な自体に。その一方でピクサーは世に出した映画のすべてが大ヒット作となり、ディズニーの稼ぎ頭になるまでに大躍進していた。そして10年が経過し契約が切れる頃、お互いの制作方針の違いや、「ピクサーを手放したくないディズニー」と「ディズニーから離れて自立したいピクサー」との行き違いにより、関係がこじれるようになった。

一時は悪い形で縁が切れかけ、当時のディズニーのCEOであったマイケル・D・アイズナー (不仲だったのはだいたいこいつのせい) によって、嫌がらせのようにピクサー抜きで「トイ・ストーリー3」の制作が企画されるところまで来ていたが、稼ぎ頭のピクサーを手放すことにディズニーの株主は猛反発。ディズニーのCEOの交代劇 (正確には任期切れの前倒し) にまで発展し、これに伴い双方の関係は修復。

最終的にピクサーはディズニーの傘下となり、かわりにスティーブ・ジョブズがディズニーの筆頭株主と役員、エド・キャットムル (ピクサーの共同設立者、RenderManの主要開発者) がウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ社長、ジョン・ラセターが同スタジオの制作部門すべてを統括する立場を兼務することになり、実質的にピクサーがディズニーの制作部門の実権を握るという形に落ち着いた。

なお、ピクサー抜きで制作が進んでいた「トイ・ストーリー3」はピクサーの子会社化により白紙撤回となった。2010年に公開された同作は、もちろんピクサー自身の手によって制作されたものであり、「ピクサー最高傑作」と名高い。

ちなみに、ラセターはディズニーの前経営者が一度撤退させた手描きアニメーションの復興を宣言し、解雇されていたアニメータたちを再雇用して新作長編アニメの制作を進めている。2009年に全米公開された「プリンセスと魔法のキス」は、5年ぶりのディズニー長編手描きアニメ作品であり、ラセターによる手描き復興の成果である。

ただ近年は、現在の親会社直系にあたるウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが3DCGアニメーションで記録的ヒット作品を連発したこともあり、一部ではピクサー作品とこちらを混同されている場合がある。『プレーンズ』、『アナと雪の女王』や『ベイマックス』は前者のスタジオ制作によるものであり、ピクサー作品ではない。ただし、どちらも(前述の通り)ラセターが深く制作に関わっているため、これらにピクサー・カラーを彷彿とさせる者は少なくないかもしれない。

評価など

一見、題材などの第一印象で「子供向け」というイメージを受ける作品が多いが、12人で分業して2~3年かけて練り込まれるというハートフルな脚本や、非常に個性豊かで魅力的なキャラクター、そして職人技ともいえるキャラの豊かな表情付けや、世界最高峰レベルのアニメーション技術など、極限まで上質に作り込まれたピクサー作品群は決してただの「子供向け」の範疇ではない。

ストーリーには子供目線だけでなく、大人目線も持ち合わせており、家族揃って安心して鑑賞できるのはもちろん、大人の鑑賞に余裕で堪えるどころか、老若男女のハートをがっちりつかんでしまうことで非常に定評がある。

通常は字幕で補うことが多い「劇中に映像として登場する文字 (看板に書かれた文字など)」は律儀にも各国語向けにローカライズされており、さらにはエンドロール用にわざわざ「NGシーン集」を作ったり、予告編用に新しく短編映像を作ったりといったサービス精神にも満ちあふれている。

これまで制作した長編映画作品のその全てがスマッシュヒットを記録していて、作品としての評価も総じて高い。「ピクサー映画にハズレなし」の栄冠をほしいままにしている制作スタジオである。

豆知識

  • 『トイ・ストーリー』の監督であり、ピクサーの主要人物であるジョン・ラセターは、スタジオジブリの宮崎駿と1980年代から交流があり、同時に宮崎駿の大ファンである。ピクサーのスタッフにも宮崎ファンが多い。『千と千尋の神隠し』が米国で公開された際、ラセターは広報活動や翻訳総指揮を担当している。
    また、その縁もあり「トイ・ストーリー3」ではスタジオジブリ作品の「となりのトトロ」のキャラクター、トトロがおもちゃとして出演している。 
  • 『バグズ・ライフ』のストーリーは、「七人の侍」など黒澤明監督のいくつかの映画のオマージュが盛り込まれている。
  • スティーブ・ジョブズがピクサーに密接に関わっていることもあり、アップルとの関係が作中で表現されることがある。『モンスターズ・インク』ではかつてのアップルの「Think different.」をもじったキャッチコピーが登場し、『ウォーリー』ではMacの起動音やiPodが登場する。また、iMac の米国版コマーシャルをピクサーが制作したこともある。
    逆に、アップル製品の広告にしれっとピクサー作品が登場する機会も多い。たとえば、iPhoneのCMで、iPhoneの画面に「モンスターズ・インク」や「カールじいさんの空飛ぶ家」のワンシーンが再生されていたりする。
  • 作品内に度々登場する「A113」という英数字は、ジョン・ラセターの母校であるカリフォルニア芸術大学の仲間内ジョークであり、ピクサー作品以外にも様々な作品で登場する。 
  • 「A113」以外にも、各映画には「ピザの宅配車」「ルクソーボール」「次回作のヒント」が必ず隠されている。

制作作品

長編

通算 邦題/原題 公開年 監督
1 トイ・ストーリー 百アイコン
Toy Story
1995年 ジョン・ラセター
2 バグズ・ライフ 百アイコン
A Bug's Life
1998年 ジョン・ラセター
3 トイ・ストーリー2 百アイコン
Toy Story 2
1999年 ジョン・ラセター
4 モンスターズ・インク 百アイコン
Monsters, Inc.
2001年 ピート・ドクター
5 ファインディング・ニモ 百アイコン
Finding Nemo
2003年 アンドリュー・スタントン
6 Mr.インクレディブル 百アイコン
The Incredibles
2004年 ブラッド・バード
7 カーズ 百アイコン
Cars
2006年 ジョン・ラセター
8 レミーのおいしいレストラン 百アイコン
Ratatouille
2007年 ブラッド・バード
9 ウォーリー 百アイコン
WALL-E
2008年 アンドリュー・スタントン
2 カールじいさんの空飛ぶ家 百アイコン
Up
2009年 ピート・ドクター
11 トイ・ストーリー3 百アイコン
Toy Story 3
2010年 リー・アンクリッチ
12 カーズ2
Cars 2
2011年 ジョン・ラセター
13 メリダとおそろしの森 百アイコン
Brave
2012年 マーク・アンドリュース
ブレンダ・チャップマン
14 モンスターズ・ユニバーシティ
Monsters University
2013年 ダン・スキャンロン
15 インサイド・ヘッド 百アイコン
Inside Out
2015年 ピート・ドクター
16 アーロと少年
The Good Dinosaur
2015年 ピーター・ソーン
17 ファインディング・ドリー 百アイコン
Finding Dory
2016年 アンドリュー・スタントン
18 カーズ/クロスロード
Cars 3
2017年 ブライアン・フィー
19 リメンバー・ミー 百アイコン
Coco
2017年 リー・アンクリッチ
20 インクレディブル・ファミリー 百アイコン
Incredibles 2
2018年 ブラッド・バード
21 トイ・ストーリー4 百アイコン
Toy Story 4
2019年 ジョシュ・クーリー
22 2分の1の魔法 百アイコン
Onward
2020年 ダン・スキャンロン
23 ソウルフル・ワールド 百アイコン
Soul
2020年 ピート・ドクター
24 あの夏のルカ 百アイコン
Luca
2021年 エンリコ・カサローサ
25 私ときどきレッサーパンダ
Turning RED
2022年 ドミー・シー
26 バズ・ライトイヤー
Lightyear
2022年 アンガス・マクレーン
27 マイ・エレメント 百アイコン
Elemental
2023年 ピーター・ソーン
28 インサイド・ヘッド2
Inside Out 2
2024年 ケルシー・マン
29 星つなぎのエリオ
Elio
2025年 エイドリアン・モリーナ

短編

  • 1984年 アンドレとウォーリーB.の冒険 (The Adventures of Andre & Wally B.)
  • 1986年 ルクソーJr (Luxo Jr.) - 1986年アカデミー短編アニメ賞ノミネート 
  • 1987年 レッズ・ドリーム (Red's Dream)
  • 1988年 ティン・トイ (Tin Toy) - 1988年アカデミー短編アニメ賞受賞
  • 1989年 ニック・ナック (Knick Knack)
  • 1991年 ルクソーJr./Surprise
  • 1991年 ルクソーJr./Light and Heavy
  • 1997年 ゲーリーじいさんのチェス (Geri's Game) - 1997年アカデミー短編アニメ賞受賞
  • 2000年 フォー・ザ・バーズ (For the Birds) - 2001年アカデミー短編アニメ賞受賞
  • 2002年 マイクとサリーの新車でGO! (Mike's New Car)
  • 2004年 バウンディン (Boundin')
  • 2005年 ジャック・ジャック・アタック! (Jack-Jack Attack)
  • 2005年 ワンマンバンド (One Man Band) - 2005年アカデミー短編アニメ賞ノミネート 
  • 2006年 メーターと恐怖の火の玉 (Mater And The Ghostlight)
  • 2007年 リフテッド - 2006年アカデミー短編アニメ賞ノミネート
  • 2007年 Your Friend the Rat 
  • 2008年 マジシャン・プレスト - 2009年アカデミー短編アニメ賞ノミネート
  • 2008年 バーニー (BURN・E)
  • 2009年 晴れ ときどき くもり (Partly Cloudy)
  • 2010年 デイ&ナイト (Day & Night)
  • 2011年 ハワイアン・バケーション (Hawaiian Vacation)
  • 2011年 ニセものバズがやってきた (Small Fly)
  • 2012年 月と少年 (La Luna) - 2012年アカデミー短編アニメ賞ノミネート
  • 2012年 レックスはお風呂の王様 (Partysaurus Rex)
  • 2012年 モンデューの伝説 (The Legend of Mor'du)
  • 2013年 ブルー・アンブレラ (The Blue Umbrella)
  • 2015年 南の島のラブソング (Lava)

短編のいくつかは、長編作品の劇場公開の冒頭におまけとして流され、DVDにも収録されている。

関連動画

関連項目

  • スティーブ・ジョブズ
  • ディズニー
  • アップルコンピュータ
  • アニメ制作会社一覧
  • ピクサーが物語を作る時の22の法則
  • 椅子ピクサー
  • ディズニー関連の記事一覧
  • アニメ映画の一覧

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