日本推理作家協会賞とは、日本推理作家協会が主催する推理小説の賞。
概要
1947年に江戸川乱歩が探偵作家クラブを設立するとともに、探偵作家クラブ賞として1948年に開始。1955年から日本探偵作家クラブ賞、1963年から現在の日本推理作家協会賞という名前になった。
現存するミステリー関係の文学賞では最も歴史ある賞である。第1回長編賞受賞作は横溝正史『本陣殺人事件』(金田一耕助の初登場作)、第2回長編賞は坂口安吾『不連続殺人事件』と書けばその歴史を実感していただけるかもしれない。
レギュレーションは何度か変更されているが、現在は「長編および連作短編集部門」「短編部門」「評論その他の部門」の3部門に分かれている。1999年までは連作短編集は短編部門だったりするのでややこしい。なお、一度受賞すると、それ以外の部門でも候補になることはできなくなる。また「2作目以降を対象とする」という規定があり、デビュー作で候補になることはできない(この規定ができたのはおそらくレギュレーションの変わった第36回以降。それ以前は檜山良昭(第32回長編賞)などがデビュー作で受賞しているが、それ以降は原尞、北村薫、山口雅也、京極夏彦などデビュー作が有名な作家でも候補になっていない)。
基本的には若手ミステリー作家の出世作に与えられる賞だが、ベテランになってから受賞することもある。特に有栖川有栖、法月綸太郎、麻耶雄嵩など新本格の主要な作家は初期作をほぼスルーされており、21世紀になってから受賞している。また受賞作は必ずしも本格ミステリ系ばかりではなく、ハードボイルドや冒険小説から、果てはSF(菅浩江『永遠の森 博物館惑星』など)やファンタジー(古川日出男『アラビアの夜の種族』など)が受賞することもあり、わりと何でもありである。吉川英治文学新人賞や山本周五郎賞、大藪春彦賞、日本冒険小説協会大賞あたりとダブル受賞、トリプル受賞になることも稀によくある。
短編部門は受賞作なしになることも多い。ミステリ短編の絶対数が多くない上、前述の通り他の部門で賞を獲った作家は候補にできないためである。なお、受賞において日本推理作家協会の会員である必要はない。
選評は日本推理作家協会のサイトで読むことができる。過去の受賞作は「日本推理作家協会賞受賞作全集」として双葉文庫でも刊行されている。
大百科に記事のある受賞作家・受賞作
- 山田風太郎 (第2回短編賞 「眼中の悪魔」「虚像淫楽」)
- 星新一 (第21回 『妄想銀行』および過去の業績)
- 小松左京 (第27回 『日本沈没』)
- 泡坂妻夫 (第31回長編賞 『乱れからくり』)
- 天藤真 (第32回長編賞 『大誘拐』)
- 西村京太郎 (第34回長編賞 『終着駅殺人事件』)
- 連城三紀彦 (第34回短編賞 「戻り川心中」)
- 北方謙三 (第38回長編部門 『渇きの街』)
- 皆川博子 (第38回長編部門 『壁・旅芝居殺人事件』)
- 岡嶋二人 (第39回長編部門 『チョコレートゲーム』)
- 船戸与一 (第42回長編部門 『伝説なき地』)
- 佐々木譲 (第43回長編部門 『エトロフ発緊急伝』)
- 大沢在昌 (第44回長編部門 『新宿鮫』)
- 北村薫 (第44回短編および連作短編集部門 『夜の蝉』)
- 綾辻行人 (第45回長編部門 『時計館の殺人』)
- 宮部みゆき (第45回長編部門 『龍は眠る』)
- 高村薫 (第46回長編部門 『リヴィエラを撃て』)
- 加納朋子 (第48回短編および連作短編集部門 「ガラスの麒麟」)
- 京極夏彦 (第49回長編部門 『魍魎の匣』)
- 黒川博行 (第49回短編および連作短編集部門 「カウント・プラン」)
- 真保裕一 (第50回長編部門 『奪取』)
- 桐野夏生 (第51回長編部門 『OUT』)
- 東野圭吾 (第52回長編部門 『秘密』)
- 福井晴敏 (第53回長編及び連作短編集部門 『亡国のイージス』)
- 横山秀夫 (第53回短編部門 「動機」)
- 法月綸太郎 (第55回短編部門 「都市伝説パズル」)
- 浅暮三文 (第56回長編及び連作短編集部門 『石の中の蜘蛛』)
- 有栖川有栖 (第56回長編及び連作短編集部門 『マレー鉄道の謎』)
- 歌野晶午 (第57回長編及び連作短編集部門 『葉桜の季節に君を想うということ』)
- 伊坂幸太郎 (第57回短編部門 「死神の精度」)
- 貴志祐介 (第58回長編及び連作短編集部門 『硝子のハンマー』)
- 恩田陸 (第59回長編及び連作短編集部門 『ユージニア』)
- 平山夢明 (第59回短編部門 「独白するユニバーサル横メルカトル」)
- 桜庭一樹 (第60回長編及び連作短編集部門 『赤朽葉家の伝説』)
- 今野敏 (第61回長編及び連作短編集部門 『果断 隠蔽捜査2』)
- 道尾秀介 (第62回長編及び連作短編集部門 『カラスの親指』)
- 田中啓文 (第62回短編部門 「渋い夢」)
- 貫井徳郎 (第63回長編及び連作短編集部門 『乱反射』)
- 麻耶雄嵩 (第64回長編及び連作短編集部門 『隻眼の少女』)
- 米澤穂信 (第64回長編及び連作短編集部門 『折れた竜骨』)
- 深水黎一郎 (第64回短編部門 「人間の尊厳と八〇〇メートル」)
- 湊かなえ (第65回短篇部門 「望郷、海の星」)
- 恒川光太郎 (第67回長編及び連作短編集部門 『金色機械』)
- 月村了衛 (第68回長編及び連作短編集部門 『土漠の花』)
関連商品

関連項目
- 文学賞
- 小説
- 小説家の一覧
- 推理小説
- ミステリー
- 江戸川乱歩賞