核は持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃあない 単語

アオキセイジョウナルセカイノタメニ

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お前は何を言っているんだ

 

 

注意 この記事には『機動戦士ガンダムSEED』最終盤の
ネタバレが記載されています。

 

概要

『機動戦士ガンダムSEED』第47話(HDリマスター版45話)『悪夢は再び』における、ムルタ・アズラエルのセリフ。ナチュラルが中心の地球連合と、コーディネイターが組織したザフトの戦争が、それぞれの種族の絶滅戦争に変貌する一歩手前の状況で放たれた暴言である。

本来は敵の抑止が主目的となっている核兵器を「敵の化け物共くっそ強ぇんだしさぁ、とっとと核使ってぶっ殺そうぜ」と強弁する、ムルタ君のコーディネイターコンプレックス極まれりな危険思想。聡明なニコ厨の諸兄なら背筋が寒くなったことだろう。
一応アズラエルも使用を決断する理由のためそれっぽい論理武装をしてはいるのだが、結局のところ当人の行動理由の根底が「危険なコーディネイターを殺したい」という狂気であるだけに、なおのことタチが悪い発言になっている。

ガンダムシリーズでも特に荒んだ世界観(倫理観)で有名なコズミック・イラ世界。とうとう連合に最低限残った倫理観を投げ捨てさせるこの台詞は、「やめてよね」だの「目の色が違うわ!」だの「ナチュラルの捕虜なんか要るかよ!」だのと並んで、『SEED』ファンが作品の名セリフ・名シーンを語る際に話題に上ることが多い。

作中の流れ

ザフトから地球軍にニュートロンジャマーキャンセラー(NJC)の設計データが流出してから数日後。地球に戻ったアズラエルは連合国理事会に出席し、プラントへの総攻撃を提案していた。

Nジャマーキャンセラーのデータを手に入れたというのは、
確かに大手柄だよ? アズラエル。しかし……

うぅん…「核で総攻撃」というのは

それよりも。深刻になっている地上の
エネルギー問題の解決を、優先させた方が……

前線の兵士や軍高官の間にはブルーコスモスの過激派思想が蔓延し、戦場ではコーディネイターの捕虜虐殺が行われている状況ではあるが、流石に各国理事は大局的な視点と理性を残していた。ニュートロンジャマーによる生存圏への大打撃は未だ回復していないのである。
だが、アズラエルは勢いよく机を叩き、彼らの発言を遮って立ち上がる。

 何を仰ってるんですか皆様は。この期に及んで…… 
 撃たなきゃ勝てないでしょうがこの戦争 
 敵はコーディネーターなんですよ。徹底的にやらなきゃ 

 大体、核なんてもう前にも撃ったんだ。それを何で今更躊躇うんです? 

いや…「血のバレンタイン」 アレ ブルーコスモス君たちが……!

この戦争が泥沼化するそもそもの原因となった「血のバレンタイン」の図星を突かれたアズラエルは、物凄い形相で発言者を睨みつける。演説を再開したアズラエルの口調は明らかに怒気を帯びていた。

 核は持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃあない 
 強力な兵器なんですよ。兵器は使わなきゃ 
 高い金かけて作ったのは、使うためでしょ? 

 さぁ…さっさと撃って、さっさと終わらせて下さい 
 こんな戦争は…… 

とうとう理事会はアズラエル……ひいてはブルーコスモスに押し切られた。
奪還したビクトリア基地からは続々と戦力が月面基地へ送られているが、NJCを組み込まれた核ミサイルもかなりの数がその中に混ざるようになっていった。

1200ヒトフタマルマルを期して、第6ならびに第7機動艦隊は、月周回軌道を離脱
プラント防衛要塞ボアズ、及びプラント本国への直接攻撃を開始する

月面基地司令官に作戦が通達され、地球軍宇宙艦隊はザフト宇宙要塞ボアズ方面への進出を開始する。

お話の補足

劇中では描かれないが、設定ではアズラエルがNJCデータを入手したのが7月12日、理事会が同月16日の出来事。アズラエルはかなり頑張って地球にとんぼ返りしていたわけである。
また、プラント本国攻撃を最終目標とした「エルビス作戦」の発動が9月11日。ボアズ攻防戦の開戦が同月23日。上記引用した月面基地司令官のセリフはこの間に発せられたことになる。

アズラエルの演説の背景では、続々と宇宙に上がる地球軍戦力や、月面基地に搬入される核兵器が描かれているが、当然ながらこの作業はイメージ映像演説と同時に行われているわけではなく、理事会からエルビス作戦発動までの2か月間の出来事である。

ムルタ君の主張について

「強力な兵器は使うためにある」というアズラエルの主張は、部分的に間違っている。
「強力な兵器」は存在それ自体が、敵の攻撃を躊躇わせる抑止力になる。自軍の損害を抑えるには、必ずしもすべての兵器を使う必要はない。ましてや核兵器のようなおぞましい被害が出る戦略兵器は「撃ったら、撃たれる」恐怖による抑止が存在理由になっているのだ。
その辺を軍需企業社長のアズラエルが分かってない筈ないのだが……意図的に忘れているのだろう。

アズラエルの核使用理由をまとめれば「ザフトは強すぎる。もう十分地球軍は疲弊したわけで、これ以上の損害を防ぐためには核を使うしかない」というもの。だが、この頃の地球軍は制式モビルスーツの量産化に成功し、圧倒的な国力差に物を言わせて「防戦」から「反撃」へ移行していた。少なくとも地球上での戦闘は、核兵器無しでも「やや優位」程度には持ち直していた(SEED MSV や ASTRAY)し、ビクトリア基地も奪還して宇宙への橋頭保も確保できていた。明日にも地球軍の命運が尽きるわけではない。

「既に一度撃った(だからもう抑止もクソも無いだろ)」という主張も、その場のノリに近い。
「血のバレンタイン」において農業用コロニーに核ミサイルを撃ち込まれ、無辜の24万3721人を殺害されたザフトは、核兵器を使用不能にするNJを大量散布する報復を行った。その結果原子力システムが機能停止し約10億人の地球人が死亡したものの、核戦争による人類滅亡だけは回避できたのである。
そんな中で地球軍にNJCのデータが渡ったということは、その本来の持ち主であるザフトもNJCを使えるということ。つまり、核兵器が抑止力として機能する環境が再び出来上がっていのだ。

世界にとって不幸だったのは、ブルーコスモスの過激思想に染まった地球軍人が多すぎたことだろう。現場はともかく、せめて宇宙軍上層部にまともな人間がもっと生き残っていれば最後のブレーキが利いたかもしれないが、それは叶わなかった。そもそも連合国理事の一人が指摘した通り「血のバレンタイン」もブルーコスモス派将兵の陰謀だったのが救えない。

そして案の定、ザフトはNJCを用いた超巨大ガンマ線砲台「ジェネシス」を完成させており、いつでも地球を死の星に変えられる体制を整えていた。とはいえ、「血のバレンタイン」で妻を失いナチュラルへの憎しみに凝り固まったザフト国防委員長パトリック・ザラであっても、流石にジェネシスの使用は最終手段として捉えていた節があった(多分)。ボアズに核攻撃が行われるまでは、NJCのデータが漏れたことを知っているのはラウ・ル・クルーゼ(と数人のスパイ)しかいなかった、ということもある。
だが、ボアズ陥落とプラントへの核攻撃未遂によって完全に発狂したパトリックは、遂にジェネシスの引き金を引いてしまうのだった。壊滅した艦隊を見たアズラエルも例によって錯乱し、ジェネシスよりもプラントへの核攻撃を叫び始める。

余談

  • 『悪夢は再び』から最終話までの4話は、(少なくとも映像化された範囲では)ガンダムシリーズ史上最多の核兵器が使用されたお話である。普通のミサイルのノリで核ミサイルが飛んでいく描写にドン引きした視聴者もいるのでは。
    • 『機動戦士ガンダム』の設定では、南極条約で核兵器が禁止されるまで、ザクは核バズーカをメイン武器にしていた(艦艇やコロニー破壊用)。
  • 続編の『SEED DESTINY』でも、ブルーコスモスに牛耳られた大西洋連邦が主体となり、プラントへの再度の核攻撃を敢行している(阻止された)。20年越しの続編となる『SEED FREEDOM』では、とうとう地球の大気圏内で核弾頭が炸裂する描写が劇場予告編で流れている惨状である。

関連動画

クソみたいなサムネイルである
あーあジェネシス撃たれちゃったよ、どうしてくれんのこれ?

関連項目

  • 機動戦士ガンダムSEED
  • 地球連合
  • ブルーコスモス
    • ムルタ・アズラエル
  • 核兵器
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