世界一大きな塔(仮)
絵・お話: あいん
あるところに、絵を描くのが大好きな犬がいました。
「とってもとっても高いところから、世界一美しい絵を描きたい」
あるところに、歌を歌うのが大好きなカナリアがいました。
「とってもとっても高い所から、世界中にきぼうの歌をとどけたい」
「一緒に、世界一高い塔を建てよう!」
運命の出会いでした。
でも、ふたりで塔を作るのは大変です。
そこで、犬とカナリアは、ほかのなかまたちにも呼びかけました。
たくさん集まりました。
「そうか。きっと気持ちいいだろうね」 犬は笑顔で答えました。
カナリアは、リスに聞いてみました。「あなたはどうして塔に登りたいのかしら?」
「私は、お兄ちゃんを探してるの。とっても高い所からなら、見つかるかな、と思って」
「そうなんだ。見つかるといいね」 カナリアは優しくうなづきました。
「ゴホンゴホン。私も、入れて下さい」
「どうしても、やりたいことがあるの」
「いいわよ。いっしょにがんばりましょう」 カナリアはほほえみました。
みんな、やりたいことはばらばら。
でも、気持ちはひとつでした。
みんな、いっしょうけんめい働きました。
塔は、がんじょうな土台が出来ました。
みんな、いっしょうけんめい働きました。
みんな、いっしょうけんめい働きました。
塔は、どんどん高くなっていきました。
ある日、台風がやってきました。
雨がざーざー降ってきます。
風がびゅうびゅう吹いています。
夜だから、まっくらです。
「飛ばされないように気を付けてね!」 カナリアも呼びかけました。
冷たい雨にたたきつけられながら、がまん。
みんな、疲れていました。
「僕もやだやだ!」 「私もやだやだ!」
「大変なのは、みんないっしょだよ!がんばろうよ!」 そう言いながら、犬も泣いていました。
「そうよ!もうちょっとだけ、しんぼうしましょう!」 カナリアも、泣いていました。
みんな、大泣きしました。
その中で、もくもくと、塔を作りつづけている仲間がひとりいました。
「君、強いんだね」 犬が言いました。
ウサギは、はをくいしばって答えました。
「だって、これ作らないと、みんなの夢、かなわない」
みんな、泣くのをやめて、立ち上がりました。
みんな、いっしょうけんめい働きました。
塔は、山をこえました。
みんな、いっしょうけんめい働きました。
「終わったー」「やったー」「できたー」「わーい」
みんな、笑顔で喜びました。
いよいよ、やりたいことがかなうしゅんかんです。
でも、みんなつかれきっていたので、眠ってしまいました。
「あれ…」 犬はびっくりしました。「夜なのに…何で明るいんだろう」
「みんなが怖がっていた夜を、明るく照らしたかったの」
「それが、君のやりたいことだったんだね」
「うん」
まるで、にっこりと笑っているようでした。
「…ありがとう」
世界一大きな塔は、月あかりに照らされて、世界一美しい塔になりました。
(おしまい)
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