ビング=長田=スミルノフの距離化定理(Bing-Nagata-Smirnov metrization theorem)とは、位相空間が距離化可能であるための必要十分条件を与えた定理である。具体的には、正則T1空間が距離化可能であるためには、それがσ疎(またはσ局所有限)な開基を持つことが必要十分である、という定理である。
まずは、定理の主張を理解するために、位相空間の部分集合族に対する言葉の定義を与えておく。
・素であるとは、どの二つの元も交わりを持たないことである。
・局所有限であるとは、任意の点x∈Xに対しその近傍Vが存在して、Vと交わるAの元が有限個となることである。
・疎であるとは、素かつ局所有限なることである。
・σ局所有限であるとは、局所有限な部分族の可算和となることである。σ疎も同様。
素であっても局所有限とは限らないという点は注意すべきである。例えば、半開区間[0,1)における{(1/(n+1),1/n)|n∈N}などは素であるが局所有限でない。
また、任意の開被覆がσ疎かつ局所有限な開被覆により細分される空間をパラコンパクトであるという。
定義から、σ疎な開基を持つならばそれはσ局所有限な開基である。次に、A.H.Stoneの定理より距離空間はパラコンパクトなので、開被覆{S(x,1/n)|x∈X}はσ疎な開被覆Bnにより細分される。∪n=1∞Bnはσ疎な開基となる。あとはσ局所有限な開基を持つとき距離化可能であることを示せば良い。まずは次の補題を示す;
【補題】
T0空間X上定義された擬距離の族dn,n∈Nが次を満たすとする。
(1) 任意の自然数nと任意のx,y∈Xに対してdn(x,y)≦1
(2) 各nについて、dn:X×X→R≧0は連続。
(3) 任意の閉集合Aと任意の点x ∈X-Aに対し、あるi∈Nが存在してdi(x,A)>0となる。ここでdi(x,A)=inf{di(x,a)|a∈A}である。
このとき、d(x,y)=Σi=1∞di(x,y)/2i はもとの位相と合致するX上の距離である。
(証明)
各diが擬距離であるからdは擬距離である。XはT0空間なので、xが{y}の閉包に含まれないか、またはyが{x}の閉包に含まれないかの一方は成立する。このとき(2)よりx≠yに対してd(x,y)>0であることがわかる。以上でdは距離となる。位相が等しいことを示すには、任意のA⊂Xに対してCl(A)={x∈X|d(x,A)=0}となることを示せば良い。Cl(・)は閉包作用素である。A'={x∈X|d(x,A)=0}と置く。
f(x)=d(x,A)は、xの連続関数di(x,A)が有界な関数d(x,A)に収束することから、連続となる。したがってCl(A)⊂f-1(0)=A'である。x∈X-Cl(A)をとれば、(3)よりdn(x,Cl(A))>0となるnがあり、するとd(x,A)≧d(x,Cl(A))>0となるのでA'⊂Cl(A)。以上よりCl(A)=A'となり、位相は合致する。◻︎
本題を示す。Xはσ局所有限な開基を持つとする。
σ局所有限な開基を持つときパラコンパクトであるから正規、つまり完全正則となる。
σ局所有限な開基をB=∪nBn、Bn={Ua|a∈A(n)}は局所有限、と置く。完全正則であるから、各Uaに対してUa=fa-1((0,1])となる連続関数fa:X→[0,1]がとれる。ρn(x,y)=Σa∈A(n)|fa(x)-fa(y)|と置けば、Bnの局所有限性から、この和はwell-definedでありρnは擬距離となって補題の条件(2)を満たす。Bが開基であることから、擬距離の族ρnが(3)を満たすことがわかる。したがって、dn(x,y)=min{1,ρn(x,y)}は補題の条件を満たす擬距離の族となる。これからXが距離化可能であることがわかる。◻︎
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最終更新:2025/05/16(金) 18:00
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