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ビッグウィーク

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ビッグウィークBig Week)とは、2007年生まれの日本の競走馬。青鹿毛の牡馬。

「障害送りになったクラシックホース」「最弱の菊花賞馬」といった主に不名誉な称号で語られがちだが、その存在がある名馬の生まれる未来への道を繋いだ馬。

主な勝ち鞍
2010年:菊花賞(GⅠ)

概要

父*バゴ、母タニノジャドール、母父*サンデーサイレンスという血統。
父は2004年の凱旋門賞などG1を5勝したフランスの馬。日本軽種馬協会に輸入され、日本で種牡馬入りした。ビッグウィークはその初年度産駒である。
母は芝・ダートの短距離を走って36戦3勝。半兄(ビッグウィークから見て伯父)にタニノボレロ(92年新潟記念)、タニノクリエイト(95年神戸新聞杯)と2頭の重賞馬がいる。
母父は説明不要。

2007年3月20日、新ひだか町のカントリー牧場で誕生。オーナーは母と同じく、「タニノ」冠名で知られるカントリー牧場代表の谷水雄三。黄色いメンコがトレードマークで、頭の高い走りをする馬であった。

馬名意味は「重大な週」。スペシャルウィーク産駒みたいな名前だが全く関係はない。

大いなるただ一週

デビュー~菊花賞まで

アグネスフライト・アグネスタキオン兄弟やその母アグネスフローラなどで知られる、栗東の長浜博之厩舎に入厩し、2009年9月27日、阪神・芝1600mの新馬戦で武豊を鞍上にデビュー。6番人気で8着という地味な結果に終わったが、武豊はレース前の調教で「この馬、ゆくゆくは走ってきますよ」とコメントしていたとか。

その後、同じ芝1600mの未勝利戦に挑むも3戦続けて2着と勝ちきれず、ソエ(管骨骨膜炎)に悩まされていたこともあって一旦放牧に出すことに。5ヶ月休んで3歳の6月に復帰すると、復帰初戦はまた2着だったが、川田将雅に乗り替わった7月10日の6戦目で無事に勝ち上がる。

続いて小倉へ向かい、都井岬特別(500万下)と玄海特別(1000万下)をあっさりと連勝。3連勝で一気に準OPに勝ち上がる。2戦とも川田騎手曰く「直線ではフワフワして遊びながら走っていた」とのことで、気性に幼さを抱えながらの連勝には力があることを感じさせた。

準OPに適鞍がないということもあり、続いて菊花賞トライアルの神戸新聞杯(GⅡ)へ。ダービー馬エイシンフラッシュとダービー2着の2歳王者ローズキングダムが揃って出走したこのレース、12.7倍の5番人気だったビッグウィークは最内枠からハナを取り、そのまま良馬場なのに1000m63秒1という超スローペースで逃げる。あまりのペースの遅さに後ろのネオヴァンドームとサンディエゴシチーが我慢しきれず、向こう正面でハナを譲る展開になったが、そのまま3番手のインで進めたビッグウィークは直線でネオヴァンドームを捕まえて先頭に立ち、川田も「勝ったと思った」そうだが、そこで外から襲いかかってきたローズキングダムとエイシンフラッシュの叩き合いにはあっさり置いて行かれてしまう。結局2着エイシンフラッシュに3馬身離されたが、後続は抑えきって3着

ともあれ優先出走権を確保したので、そのまま菊花賞へと向かうことになった。

2010年菊花賞・重大な週

迎えた菊花賞(GⅠ)。良馬場ながら小雨の降る京都競馬場、皐月賞馬ヴィクトワールピサは凱旋門賞へ、ダービー馬エイシンフラッシュは筋肉痛で回避となり、クラシックホース不在となったレースの1番人気は前走トライアルを制したローズキングダム。ビッグウィークは23.2倍の7番人気である。鞍上の川田はダッシャーゴーゴーに騎乗したスプリンターズSで降着&騎乗停止を食らい、その騎乗停止明けだった。

好スタートを切ったビッグウィークは、ハナを主張するコスモラピュタに前を譲って3番手に構えると、そのままコスモラピュタを好きに行かせてゆったりとしたペースでレースを進めた。結果、別にハイペースでもないのにコスモラピュタがどんどん後ろを離した大逃げになる。2009年エリザベス女王杯で3番手のクリストフ・スミヨンとリトルアマポーラが抑えたことでクィーンスプマンテとテイエムプリキュアが平均ペースで大逃げしてしまった、あの展開を思い出していただければわりと近い。

もちろんこれは川田騎手の狙い通り。前走の内容から瞬発力勝負では敵わないと見た川田は、3コーナーの下り坂から仕掛けるロングスパートのスタミナ勝負に打って出た。2003年の菊花賞でザッツザプレンティの安藤勝己がネオユニヴァースの三冠を阻んだのと同じ作戦である。2番手に上がったビッグウィークは抜群の手応えでスパートを開始。直線で粘るコスモラピュタを捕まえて先頭に立つ。この展開では、後方に待機していたローズキングダムは届かない。そのまま後ろを寄せ付けず、ビッグウィークは鮮やかに押し切ってみせた。

7月10日に初勝利を挙げてから、僅か3ヶ月半での菊戴冠。初勝利から107日目での菊花賞制覇は、オウケンブルースリの記録を更新する史上最短記録となった。
バゴ産駒はGⅠ初制覇。川田騎手は2008年のキャプテントゥーレの皐月賞に続く中央GⅠ2勝目。長浜師はアグネスフライトの日本ダービー、アグネスタキオンの皐月賞に続いて菊花賞初勝利でクラシック三冠制覇を達成。谷水家も先代の父・信夫とあわせてクラシック三冠制覇となった。

菊花賞後・そして障害へ……

菊花賞後は深管骨瘤の症状が出て3歳シーズンの残りはお休み。明けて4歳、天皇賞(春)を目標に京都記念(GⅡ)から始動したが、直線で一瞬先頭に抜け出したもののすぐに呑まれて6着。
そして続く日経賞(GⅡ)でレース中に故障発生。ブービーから2.5秒も離された大差の最下位10着でゴール、レース後に右第3中手骨罅裂骨折が判明、天皇賞(春)を回避して休養に入る。

半年休み、毎日王冠(GⅡ)で復帰したが……このあとの彼の戦績は、語るだけで悲しくなるものでしかない。復帰戦が毎日王冠というところからわかるように、そもそも陣営は彼の本質は中距離馬と見ていたようで、復帰後は主に1800~2000mを使われていたが、以降6歳の6月まで9戦して2桁着順が8回。長距離に戻してみても4歳時のステイヤーズS(GⅡ)では3コーナー前から全くついていけず、ブービーから14秒遅れの最下位。骨折での能力低下に、もともとのレースに対して集中力を欠く気性の幼さも加わって負の相乗効果になってしまっていたようで、もう完全にどうしようもない感じであった。

そして2013年7月。ビッグウィークの姿は、中京の障害未勝利戦にあった。平地GⅠ馬の障害入りはウインクリューガー以来4頭目、クラシックホースとなると1965年の菊花賞馬ダイコーターが1968年に障害を4戦して以来、実に45年ぶりのことである。レースは非常に危なっかしい飛越ばかりだったものの、途中で先頭に立つとそのまま押し切り、菊花賞以来2年9ヶ月ぶりの勝利を挙げた。

しかしその後は重賞を含めて障害で4戦したがオープンでの2着が最高で、7歳となった2014年5月、最後のレースとなった障害オープンのあとに左前浅屈腱炎を発症、現役引退となった。

引退後

ただでさえ種牡馬としては不遇になりがちな菊花賞単冠馬、さらに勝ち上がりが遅い、菊花賞後はボロボロ、父の後継需要もなしとあってはそもそも種牡馬としての需要はなく、引退後は乗馬になった。

彼を引き取ったのは京都産業大学の馬術部。「ジェミニ」という新しい名前を貰い、馬術競技馬としていくつかの馬術大会への参加の記録が確認できる。一般学生を相手に乗馬の授業を務めたり、不登校の学生相手のホースセラピーの仕事をしたりもしていたらしい。

その後、引退名馬繋養展示事業の対象となり、2020年3月に鳥取県の大山乗馬センターに移動。移動当初は馬術競技のストレスもあってか体調を崩していたが、回復した後はおっとりとして人なつっこい性格で乗馬クラブのお客さんに親しまれているそうである。2022年には島根県の伝統芸能・出雲神楽の面などに使うためにビッグウィークのたてがみが提供されたそうな。

重大なその一週が繋いだ創世記

さて、菊花賞後のボロボロの戦績から「最弱の菊花賞馬」として挙げられてしまうことも多いビッグウィーク。しかし、彼の存在は競馬史に燦然と名を残した、一頭の名馬の誕生に関わっている。

というわけで、まずはこの表を見て欲しい。

種付年度 種付頭数 備考
2006 102 供用初年度
2007 47
2008 40
2009 21 初年度産駒デビュー
2010 87 ビッグウィーク、菊花賞勝利
2011 153

おわかりいただけただろうか。これ、父*バゴの種付け数である。初年度こそ102頭を集めたが、2年目からもう種付け数は半分以下。初年度産駒がデビューした2009年は21頭まで落ちこんでいた。
日本軽種馬協会の種牡馬なので、この調子で種付け数が落ちこんだ種牡馬の行き着く先は青森か九州送りである。実際、最近でも似たような推移(初年度100頭超え、2年目から40頭代~それ以下)を辿って結果が出なかった*エスケンデレヤが2022年に青森送りになっている。

しかし*バゴは初年度産駒が結果を出したことで2010年の種付け数は大幅増、そしてビッグウィークが菊花賞を勝ったことで2011年は153頭もの牝馬を集めた。その後も*バゴは重賞馬が出れば種付けが増え、出ないと減るというサイクルで種付け数が乱高下しながらも、北海道で種牡馬生活を続けることができている。

そして2016年に産まれた1頭の芦毛の牝馬は、クラブの募集価格1400万円という地味な立場から大活躍。2019年の秋華賞を制してビッグウィーク以来の産駒GⅠ勝利を挙げると、ついには牝馬初のグランプリ3連覇という競馬史に残る偉業を為し遂げた。そう、言わずと知れたクロノジェネシスである。

なお*バゴの初年度産駒では、2歳時に2勝を挙げて朝日杯出走を果たしたエスカーダや、フラワーCを制して桜花賞2着という結果を残した牝馬オウケンサクラもいた。ビッグウィークが勝ち上がったのは3歳夏だし、上記表の通り2歳戦の結果が出た翌年から種付け数が大きく増えているので、その種牡馬生活を繋いだのがビッグウィーク1頭の功績というのはさすがに言い過ぎである。
しかしビッグウィークの菊花賞勝利が*バゴの種牡馬生活において大きな追い風となったことは、上記の種付け数から見ても明らかである。ビッグウィークがいなければクロノジェネシスは産まれなかった……かどうかはわからないにしても、ビッグウィークがそこへ繋がる道を作った馬であることは疑いようがない。

その競走生活において輝きはただ一度、菊花賞のみだったビッグウィーク。だがその「重大な週」が残したものは、実はとても大きかったのかもしれない。

……あと、今や日本を代表するトップジョッキーである川田将雅騎手だが、長距離が苦手であることはよく知られている。2500m以上の距離になると途端に成績が悪化し、2023年終了時点でビッグウィーク以外に菊花賞で馬券に絡んだのは2019年のヴェロックス(3着)と2025年のエリキング(2着)の二度だけ、天皇賞(春)では馬券に絡んだことすらない。そんな川田騎手に菊花賞を勝たせたということでビッグウィークを再評価する向きもあるとかないとか……。
なお菊花賞のところで記した通り、ビッグウィークの菊花賞は川田騎手の展開読みとロングスパート作戦が完璧に決まった好騎乗であり、2010年菊花賞は「川田騎手がビッグウィークを勝たせた」と言った方が正しい、ということは今一度強調しておく。

血統表

*バゴ
2001 黒鹿毛
Nashwan
1999 栗毛
Blushing Groom Red God
Runaway Bride
Height of Fashion Bustino
Highclere
Moonlight's Box
1996 鹿毛
Nureyev Northern Dancer
Special
Coup de Genie Mr. Prospector
Coup de Folie
タニノジャドール
1998 鹿毛
FNo.2-u
*サンデーサイレンス
1986 青鹿毛
Halo Hail to Reason
Cosmah
Wishing Well Understanding
Mountain Flower
タニノブーケ
1982 鹿毛
*ノーザンディクテイター Northern Dancer
Dictates
タニノヒユールパス Hugh Lupus
*イシユクーダー

クロスHalo 5×3(15.63%)、Northern Dancer 4×4(12.50%)

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関連項目

  • 競馬
  • 競走馬の一覧
  • 2010年クラシック世代
  • バゴ
  • 川田将雅
  • クロノジェネシス
  • ダイコーター
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