レインボーダリア(Rainbow Dahlia)とは、2007年生まれの日本の競走馬。栗毛の牝馬。
長い下積みを経て、土砂降りのエリザベス女王杯でヴィルシーナを破り京都に虹を架け、父ブライアンズタイムに歴代1位タイとなる大記録を贈った馬。
父*ブライアンズタイム、母アローム、母父*ノーザンテーストという血統。
90年代後半ぐらいの馬ですか? いいえ、2007年産です。
父も母父も説明不要の大種牡馬だが、父と同時期の大種牡馬であるサンデーサイレンス×ノーザンテーストにダイワメジャーやデュランダル、トニービン×ノーザンテーストにはエアグルーヴやサクラチトセオーがいるのに比べると、このブライアンズタイム×ノーザンテーストの配合には超大物はおらず、GⅠ馬はレインボーダリアのみである。
あと母は1993年のエルフィンS(OP)勝ち馬で7戦2勝。
……すなわち、出生時点で父22歳、母17歳というなかなかの高齢配合で生まれたのが彼女である。まあブライアンズタイムは28歳で亡くなる直前まで種付けをしていたというツワモノなので、彼女と同じ2007年産の産駒も60頭以上いるのだが。母も彼女のあとにさらに3頭の仔を20歳まで産んでいる。
2007年4月27日、新冠町の大栄牧場で誕生。大栄牧場はこのBT×NT配合で重賞2勝のブリリアントロードや2012年の菊花賞2着馬スカイディグニティなどを生産しており、牧場の社長いわく「父母共に高齢でしたが、どうしてもこの配合で後継繁殖が欲しいと種付けしました」とのこと。当歳の頃は華奢で見栄えのしない馬体だったが、大きな怪我も病気もなく、育成場に移る頃には立派な馬体に育っていたという。
オーナーはメガネスーパーの創業者・田中八郎の妻である田中由子で、かつては経営していた牧場名の「サムソン」、その牧場が廃業して以降は「ダリア」冠名を用いていた。他の所有馬にはサムソンビッグなどがいる。
馬名意味は「虹+冠名(花名)」。冠名は70年代の欧州の名牝・ダリアにもちなんでいるらしい。『ルーンファクトリー3』のダリアはおそらく関係がない。
エルコンドルパサーやナカヤマフェスタで知られる、美浦の二ノ宮敬宇厩舎に入厩。デビューはやや遅めで3歳1月のことだった。
新馬戦は1番人気に支持されたが5着に敗れ、未勝利戦も3着→3着と勝ちきれず、3月下旬の中山の4戦目で突破。オークスを目指してトライアルのスイートピーS(OP)に挑んだが4着に終わり、自己条件に戻って初戦の府中の500万下を2着に敗れたあと北海道へ向かう。
500万下を3戦目、8月の函館の湯浜特別で勝ち抜け。引き続き札幌の1000万下に挑み、10月はじめの3戦目・摩周湖特別で勝ち抜ける。
ここで果敢に秋華賞(GⅠ)に挑戦したが、アパパネの三冠達成の後ろで特に見せ場なく8着。
明けて4歳、半年休んで新潟開催の福島牝馬S(GⅢ)で復帰するが6着。自己条件の1600万下に戻ったがクビ差2着に敗れて1000万下に降級となる。再び北海道へと向かい、1000万下を4戦目の大倉山特別(札幌)で勝って準OPに復帰する。
1600万下を4着に敗れたあと、鞍上に川田将雅を迎えてエリザベス女王杯(GⅠ)に参戦。前年覇者スノーフェアリーに秋華賞馬アヴェンチュラ、前年の三冠牝馬アパパネに復帰戦となる無敗の2歳女王レーヴディソール、イギリスオークス馬ダンシングレインといった超豪華メンバーの中、ただの準OP馬のレインボーダリアは単勝238.8倍のブービー17番人気だったが、シンメイフジが大逃げを打った展開を内ラチ沿いの経済コースで進め、スノーフェアリーの連覇の後ろで5着の健闘を見せた。
明けて5歳も自己条件の1600万下を2戦するが3着、5着。相変わらず準OPのままヴィクトリアマイル(GⅠ)に参戦したが、今度は特に見せ場なく12着に敗れる。続く府中の1600万下も1番人気で3着。
……と、5歳の春までは鞍上をコロコロ変えながら条件戦で勝ちきれないまま、隙を見て牝馬限定GⅠに出てくるというだけの馬であった。
さて、この年も北海道に向かったレインボーダリアは、木幡初広が騎乗した7月の五稜郭S(1600万下)を勝利、ようやくオープンに昇格する。ここまでの5勝のうち4勝が北海道ということで、一部メディアでは「北の女」とか言われたこともあった。
引き続き木幡初広とクイーンS(GⅢ)に挑み、3番人気に支持されたが直線では同じような位置にいた馬たちと同じような脚色で抜け出せず4着に終わる。
続いて向かった府中牝馬S(GⅡ)で柴田善臣が初騎乗。大外枠の後方待機から上がり32秒9の末脚で追い込んだが、これが上がり2位タイで勝ち馬も33秒0を出しているようなレースだったので届ききらず4着まで。とはいえ柴田善臣騎手はこの末脚に手応えを感じていた。
というわけで迎えたエリザベス女王杯(GⅠ)。8枠15番とまた大外枠のレインボーダリアと柴田善臣のコンビは、単勝23.0倍の7番人気に支持されていた。
……ん? 去年は健闘したとはいえ、5歳でようやくオープンに上がって前2走はともに4着、重賞未勝利の実績で大外枠にしちゃ人気高くない? と思ったかもしれない。それもそのはず、この年のエリザベス女王杯は前年とは打ってかわって、はっきり言ってメンバーが超手薄だった。
三冠牝馬ジェンティルドンナはジャパンカップに向かったため、1.9倍の圧倒的1番人気に支持されたのはその牝馬三冠全て2着、悲願のGⅠ制覇を目指すヴィルシーナ。2番人気はこの年の札幌記念を勝った6歳の古豪フミノイマージン、3番人気はこの年のヴィクトリアマイル勝ち馬だが続く2戦は2桁着順の惨敗だったホエールキャプチャ。ふんふん、あとは? ……えーと、福島牝馬S勝ち馬の4番人気オールザットジャスと、前走府中牝馬Sを10番人気で勝ったがフロック視されて10番人気のマイネイサベル、それから昨年のオークス馬だがそれ以降全くいいところのない12番人気エリンコート。以上、出走16頭のうち重賞馬は6頭。逆に条件馬が6頭もいて、そのうちの1頭、前走1000万下を4馬身差で勝ったピクシープリンセスが5番人気になるようなメンバー構成だった。レインボーダリアでも実績上位の部類だったのである。
それはともかく、当日の京都は朝から降り続く土砂降りの大雨。37回目にしてレース史上初の雨での開催となった。馬場は重である。
レースは逃げ馬レジェンドブルーが平均ペースで引っぱり、ヴィルシーナは4番手の先行策。レインボーダリアは大外枠からインに入れていき馬群の後ろ、11番手にじっくりと構えた。3コーナーで池添謙一のエリンコートが捲りを仕掛ける中、レインボーダリアと柴田善臣は再びじわりと外へ出して行き、外を回って直線を向いた。
早め先頭のオールザットジャスが抜け出して押し切りを図り、直線入口でやや位置を下げていたヴィルシーナが再び抜け出してそれを追う。そこへ外から襲いかかるレインボーダリア! 残り200mでヴィルシーナを捕まえると、内のオールザットジャスをかわして馬体を併せての追い比べに突入したが、レインボーダリアは食い下がるヴィルシーナをクビ差振り切ってそのままゴール板へと飛び込んだ。
ゴール直後に柴田善臣は珍しく馬上でガッツポーズ。大雨の重馬場に対し、時計のかかる北海道の洋芝を得意としたレインボーダリアのタフな脚と、外枠から道中はインに入れて脚を貯めつつ勝負どころで外に出す柴田善臣の好騎乗が見事に噛み合っての金星で、重賞初制覇をGⅠで飾ったのだった。そしてジェンティルドンナがいなくても2着のヴィルシーナは重賞5戦連続2着という珍記録を残すことになったのだった。
また、この勝利で父ブライアンズタイムは初年度から20年連続産駒重賞勝利(交流重賞含む)という大記録を達成。2007年皐月賞のヴィクトリー以来5年ぶりの中央GⅠ制覇が、ノーザンテーストと並んで歴代1位タイとなるメモリアル勝利となった。ブライアンズタイムは翌2013年に亡くなったので、これが生前最後の産駒中央重賞勝利でもあった(没後にさらに中央重賞を2勝している)。
5歳でエリザベス女王杯を勝ったとなれば、これを花道に引退・繁殖入りでもおかしくはないが、長い下積みから花開いて即引退はもったいないと陣営も考えたのか、レインボーダリアは6歳も現役を続行した。
しかし残念ながら、6歳時のレインボーダリアの戦績に語るべきことはほとんどない。6戦したが掲示板入りも一度もなし。同じ雨の重馬場のエリザベス女王杯で連覇を目指したが見せ場なく13着に終わり、現役引退、故郷の大栄牧場で繁殖入りとなった。
前述の通り、もともと繁殖として期待した配合で生まれただけに、牧場としても繁殖牝馬としてさらなる活躍を期待していただろうが……。
2015年にハーツクライを種付けしたあと、所有者が田中オーナーから社台系の追分ファームに変わり、以降はそちらで繋養されているのだが、2024年現在、ディープインパクト、ハーツクライ、キングカメハメハ、ドゥラメンテといった超一流種牡馬をつけられているにもかかわらず、産駒8頭が未だ地方ですら未勝利という結果に留まっている。
いくらGⅠ馬とはいえこの繁殖成績では……ということでか、2024年秋、クリソベリルの仔を受胎した状態で繁殖馬セールに出されてしまい、350万円というお値段で鎌田正嗣氏(主な生産馬にテイエムドラゴンなど)に落札された。
晩成だった競走生活のように、繁殖としてもここから大物を出していけるだろうか。
*ブライアンズタイム 1985 黒鹿毛 |
Roberto 1969 鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
Nothirdchance | |||
Ranavaio | Nashua | ||
Rarelea | |||
Kelley's Day 1977 鹿毛 |
Graustark | Ribot | |
Flower Bowl | |||
Golden Trail | Hasty Road | ||
Sunny Vale | |||
アローム 1990 栗毛 FNo.8-h |
*ノーザンテースト 1971 栗毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Lady Victoria | Victoria Park | ||
Lady Angela | |||
*ストロークト 1983 栗毛 |
Riverman | Never Bend | |
River Lady | |||
Her B. | Time Tested | ||
Cetyl |
クロス:Lady Angela 5×4(9.38%)、Nasrullah 5×5(6.25%)
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最終更新:2024/11/09(土) 04:00
最終更新:2024/11/09(土) 04:00
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