10式戦車(TK-X)とは、日本国の最新主力戦車(MBT)である。
(2010年4月に政府資料に10式戦車の表記が使われたことを受け、本記事名および記事内での呼称もTK-Xから10式戦車に変更。掲示板での呼び方も順次替わっております。ご注意ください)
数の上では90式戦車よりも多い74式戦車の後継としてTK-X(次世代戦車)として開発が行われることになった。
現状で漏れ伝わる内容から、現行の90式戦車と同等レベル以上の戦闘能力を持ちつつ、湾岸戦争以後の新しい役割をもとめられている戦車として開発されていると考えられる。
2008年3月に初めて公開された10式戦車(TK-X)の特徴は以下の通り。
1.については、各国の戦車が50t~60tオーバーの重厚長大なものになっていくのに対して、現行の90式戦車以上のサイズ、重量の車輌では国内の運用が難しい点と、北海道以外は74式戦車を主に運用している都合上、戦車輸送時に使用するトランスポーターの73式特大型セミトレーラーなどの既存装備を極力生かす形でなおかつ運用に支障が生じない形として求められたと思われる。
外装式モジュラー装甲をはずしたTK-Xは40tという重さで、74式戦車と同様に73式特大型セミトレーラーにそのまま乗せることが出来る。これは90式戦車が73式特大型セミトレーラーで輸送させる場合は車体と砲塔を取り外さなければ移動できなかったことにくらべると大きな利点である。
ちなみに防衛省の資料によると、全国主要国道にある橋(17,920箇所)のうち10式戦車(TK-X)が通過できる箇所は84%ときわめて高く、90式戦車の65%、M1など60t級では40%程度という数値に比べるとどれだけ全国での運用に注意を払ったかがうかがい知れる。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/dai5/siryou1.pdf (P9を参照)
2.については、90式戦車が複合素材による装甲を内装式モジュラー装甲としていたのと異なり、TK-Xでは外装式モジュラー装甲を選択しているのが特徴である。モジュラー装甲とは入替えが出来る装甲のことで、装甲の入替えにより防御力の強化を図ることが出来る形である。外装式モジュラー装甲を導入することで装甲の取り外し、損害時のすばやい交換が出来るだけでなく、装甲の改良も比較的容易になっている。ちなみに公開されたTK-Xの装甲状態で44t。重装甲化することも出来るといわれ、その場合は48tになるといわれているが定かではない。
3.については、第3.5世代以降の戦車に求められるデータリンクを当初から踏まえた形として作られているとされる(C4I及びデータリンクについては後述)。特徴的なのは砲塔四隅に設置されたセンサ。これはいままでの戦車に見られない取り付け方法で360度全周に対応している。おそらく戦車やミサイ ルが照準をつける際に発するレーザーを察知するための対レーザーセンサ、対戦車ミサイル、ロケット弾を感知するセンサ、熱源などを感知する複数のセンサが あると思われるが定かではない。また車内にいながらにして全周情報が取得できるという話もある。
4.パワーパックが2サイクルV10エンジン+オートマチック変速機から4サイクルV8エンジン+無段変速機にわざわざ変えたのはパワーパックの高効率化によって1馬力あたりの排気量を減らし、排気ガス中の赤外線を減らすことで相手に探知されにくくするため、と予測されてる。
また防衛省技術研究本部(TRDI)の発表では、スプロケット出力では現有戦車に比べて格段に向上という文言がある。これは、エンジン出力を効率的に起動輪(スプロケット)に伝達できるという意味で、90式戦車に比べると格段の進歩を遂げたと解釈していいだろう。
また120mm滑腔砲を運用するためには50t以上の車体でなければ発射時の反動を抑えられないといわれていたが、TK-Xはアクティブ・サスペンションによって反動を能動的に抑えており、すでに公開された映像ではモジュラー装甲無しの状態(40t?)で、90式戦車による発射時よりも素早く 反動を抑えている。さらに衝撃を和らげる役割を果たす転輪が90式戦車より一つ少ない5輪にもかかわらず不整地走行では90式戦車と同様あるいはそれ以上に車体の上下動が少ないなど、アクティブ・サスペンションの効果は大きいと思われる。
以上の点を踏まえると10式戦車(TK-X)は「性能は既存MBTと同等、あるいはそれ以上に。かつ最大20t近く軽量化する」という従来にない野心的なコンセプトで作られつつある戦車といえるだろう。
しかしTK-Xが世界初の「第四世代(G4)」戦車になるかは諸外国の戦車開発がスローペースであることなどを踏まえるとまだ確かではない。
2010年度、正式採用化された10式戦車(TK-X)がどのような形となって現れるか楽しみといえよう。
| 74式戦車 | 90式戦車 | 10式戦車 | |
|---|---|---|---|
| 重量 | 約38 t | 約50 t | 約44 t(装甲付) |
| 主砲 | 51口径105mmライフル砲 | 44口径120mm滑腔砲 | 44口径120mm滑腔砲 (90式戦車より高威力) |
| 装甲 | 流線装甲 | 複合装甲(内装式モジュラー装甲) |
複合装甲(外装式モジュラー装甲) |
| エンジン | 空冷エンジン | 水冷エンジン | 水冷エンジン |
| 最高速度 | 53 km/h | 70 km/h | 70 km/h (90式戦車と同等) |
| 馬力 | 720 ps / 2200 rpm | 1500 ps / 2400 rpm | 1200 ps / 2300 rpm |
| 懸架方式 | 油気圧式 | ハイブリッド式 | 油気圧式 (能動型) |
| 乗員 | 4名 | 3名 | 3名 |
| C4I | × | × | ○ |
| コスト | 3.5~4億円 | 8~9億円 | 予定7億円 |
現在、日本を除く自国で独力で戦車を開発できる9カ国(アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、中国、韓国…インド は除く)においてはMBTの改良、あるいは新規開発が進められている。
アメリカ、ドイツなどでは新規開発ではなく新規開発ではなく既存車輌の改良という方法が選択されている。これにより湾岸戦争やイラク戦争などの戦訓を踏まえてC4I機能の強化、市街地 戦闘の対応、RPGなど携帯式対戦車兵器対策のための側面への増加装甲など各種の改良計画を行い、第3.5世代ともいえる形へ対応している。(また統一ドイツ誕生により余剰化したレオパルド2を配備した周辺各国も同様に増加装甲などの強化を行っている)
これは更新対象の車輌の数が多いことで全面的に乗り換えるには予算や規模の面で問題があるためでもある。
90式戦車がそうだったように戦車だけではなくそれに 付随するさまざまな装備を置き換える必要で、それらの費用を考えると(改良によるデメリットを考えても)既存戦車の改良でとどめておくのが昨今の流れでも ある。また欧州では戦争の可能性が少なくなりつつあるなど社会情勢の変化もあることを頭にいれる必要もある。
しかし現用戦車の改良となると、C4I機能を追加するにしても既存の操作+αでは搭乗員の負担が重くなる。あるいは全ての操作系を更新するには改良費がかさむ原因となる。
また、対戦車ミサイル、ロケット弾に対応するための増加装甲をつけた場合、車重が重くなるためエンジン、トランスミッション・サスペンションに負担がかかって速力が落ちる、燃費が悪くなるケース、はたまた整備に負担がかかり稼働率が落ちるケースもある。
90式戦車の50tのサイズが事実上国内で運用するギリギリのサイズと重さである以上、何かを付け加えるような改良は基本的に難しく、また予算的にも新規開発より経費がかかる。また数の上では一世代前の74式戦車が最も多い日本では74式戦車を改良したところで105mm砲では現有戦車を超えることは難しいし、寿命(耐用年数)も短い。あまり知られていないが74式戦車もわずか数両、74式戦車G型として改造を受けたものの、費用対効果に見合わないとされて元に戻されている事例もある。
またこれとは逆にイスラエル、韓国、中国では新型戦車の導入・開発が行われている(ロシアはつい先頃、開発を中止したが)。この点は国情(国内、周辺各国との問題などなど)があるためでもある。
特に中国は精力的に従来までのロシア系車両技術から旧西側諸国の技術を取り入れ、98式、99(G)式、そして現在0910工程と呼ばれる車両を開発中でもある。
防衛省の判断は、日本国内の地理的条件に踏まえ、なおかつ当初からC4I機能や各種センサを必要十分に組み込んだ新型戦車を開発したほうが、耐用年数も長く運用できるという目算があったためであろう。
(また、ほぼ20年おきでも新規車両を開発していかないと、国内の戦車開発能力の人材が維持できないという面もある…兵器開発はもはや伝統職人の領域とも言える)
ついでに書くと、自衛隊にとって最大の敵対勢力かもしれない財務省などによって日本の戦車数はただでさえ少ない950両からさらに600両に数を減らされたため、数の少なさを性能によって補わざるをえないという現実も書いておかねばならない。
(結局、戦は数だということを半世紀昔に思い知ったはずなのにねぇ)
ちなみにお隣の韓国は戦車数2300両。台湾でも1830両である。逆な意味で圧倒的ではないか…。
予定価格で7億(で、収まるといいなぁ…とは中の人のお話)。つい先頃の資料では導入時初期調達価格でおよそ9億となっており、このまま行けば順調に導入価格は落ちていく(90式戦車では11億→8億)であろう。
公式に比較としてあげられている比較として、米M1A2(C4I導入改修型):10~12億程度(非公開のため予想価格)、仏ルクレール:10億と言われている。
特にルクレールは装甲の構造など、共通点が多いため、よく引き合いに出される。
指揮(Command)、統制(Control)、通信(Communications)、コンピュータ(Computers)、情報(Intelligence)の頭文字を取ったもの。日本国のものはさらにInteroperability〈相互運用性〉がついてC4I2と呼称される。
C4Iシステムはこれを統合的に管理するシステムである。
10式戦車(TK-X)ではこれを戦車単位で導入を行った。これによるメリットははかりしれない。従来までの戦車の意思伝達方法としては基本的には音声通信、あるいは簡単な敵味方識別情報等の信号等であったものが、相互にネットワーク化され様々な情報が自動的にやり取りされることになる。
例えば山の稜線を超えた先にいる敵勢力の情報を上空を飛ぶスカウトヘリやUAVが察知するとその情報が自動的に手元のモニタに表示(データ・リンク)されることで戦場の把握を簡単にしたり、複数戦車が情報を連携することで機動をたくみに行ったり射撃を容易にする。といったことも可能になる。
それまで一両単位で戦ってきた戦車が、いきなりチームプレイが可能になるのだ。この恩恵は計り知れないものになるだろう。
ただ、こういったシステムは戦車間だけで成立するわけではなく、部隊レベル、連隊レベル、師団レベル、と規模を大きくさせたC4Iネットワークの構築が必要で、まだまだ(能力も予算も)道は険しいのが実情であるのだけれど…。
ちなみに陸上自衛隊では北海道の第2師団がC4Iネットワークのテスト中。
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最終更新:2025/12/13(土) 00:00
最終更新:2025/12/12(金) 23:00
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