フェイヴァリットトリック(Favorite Trick)は、1995年生まれのアメリカの競走馬・種牡馬。
8戦全勝でブリーダーズカップ・ジュヴェナイルを制し、セクレタリアト以来となる2歳でのエクリプス賞年度代表馬となった。
通算成績16戦12勝[12-0-1-3]
主な勝ち鞍
1997年:ホープフルS(GI)、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル(GI)、サラトガスペシャルS(GII)、ブリーダーズフューチュリティ(GII)、バシュフォードマナーS(GIII)
1998年:ジムダンディS(GII)、キーンランドブリーダーズカップマイルS(GII)、スウェイルS(GIII)
概要
父Phone Trick(フォーントリック)、母Evil Elaine(イーヴィルエレイン)、母父Medieval Man(メディーヴァルマン)という血統。父フォーントリックはかなり仕上がり早タイプの種牡馬であり、本馬も2歳2月のセリで購入された2ヶ月後には早速デビューの態勢が整っていた。
2歳時
2歳4月のデビュー戦は4.5ハロン戦で、ここでは1番人気に支持され危なげなく勝利。以後も5ハロン→5.5ハロンと少しずつ距離を延長しながら連勝し、初の重賞挑戦となった6月末のバシュフォードマナーS(GIII・6ハロン)も4馬身半差で完勝した。
更にサラトガスペシャルS(GII・6.5ハロン)をトップハンデで勝利した後、初のGI挑戦となるホープフルS(GI・7ハロン)も好位から抜け出して快勝しGI制覇。8.5ハロン戦のブリーダーズカップ・ジュヴェナイルを見据えて一気に距離を延長したブリーダーズフューチュリティ(GII・8.5ハロン)でも3馬身差で快勝し、本番となるブリーダーズカップへ乗り込んだ。
そのブリーダーズカップ・ジュヴェナイルでは、フェイヴァリットトリックとの対戦を避けた陣営が多かったのか、対戦相手は僅か7頭のみであり、現在でも最少頭数タイである8頭でレースが行われた。この7頭の中には未勝利馬すら混じっているというメンバーであり、単勝人気はフェイヴァリットトリックとGI連勝中のグランドスラム、GIIを連勝してきたスーヴェニアコピーに集中した。
しかし蓋を開ければ、フェイヴァリットトリックは3番手から3角で先頭を奪い、そのまま最後は5馬身半差を付けて完勝。着差は2006年にストリートセンスに破られるまでの最大記録であり、勝ち時計1分41秒47はダート8.5ハロンで行われた本競走の最速記録であった。
この大活躍により、当然年末のエクリプス賞では最優秀2歳牡馬を受賞。そして年度代表馬の選考でも、ブリーダーズカップ・クラシックを含む当年GI2勝のスキップアウェイや二冠馬*シルバーチャームを抑えて選出され、エクリプス賞創設以来ではセクレタリアト以来25年ぶり2頭目(それ以前を含めても7頭目)となる2歳での年度代表馬が誕生した。レーティングもセクレタリアトの1ポンドだけ下の128ポンドという高レートを与えられ、この時点でケンタッキーダービーの最有力候補と呼ばれるようになった。
3歳時
3歳になると、それまで管理していたパトリック・バーン調教師がフランク・ストロナックというカナダの実業家(ゴーストザッパーなどの馬主)の専属調教師となったために、フェイヴァリットトリックはウィリアム・モット厩舎に転厩した。転厩しても特にトラブルはなく、3月のスウェイルS(GIII)を1馬身3/4差で勝利し、デビューからの連勝を9に伸ばした。
しかし、単勝1.4倍で迎えたアーカンソーダービー(GII)では途中から先頭に押し出されると最後の競り合いで後れを取ってヴィクトリーギャロップのクビ差3着に敗退。僅差だったためケンタッキーダービーには出走したが、そのケンタッキーダービーでは勝ったリアルクワイエットから10馬身以上離れた8着と惨敗。この結果を受け、残りの二冠は早々に回避が決定した。
2ヶ月半の休養の後、8.5ハロンのリステッド競走で復帰してアタマ差で勝利したが、この時の2着馬トゥモローズキャットは前年のホープフルSで18馬身半も後方の5着に一蹴した馬であり、勝ち方としては満足なものとは言い難かった。続けて出走したジムダンディS(GII・9ハロン)もハナ差の辛勝という結果となり、陣営は距離短縮を決断した。
しかし7ハロンのキングズビショップS(GII)では先行できなかった上に直線で前が塞がるというレースぶりで5着に敗退。これを受けて今度は芝のマイル戦であるキーンランドブリーダーズカップマイルS(GII)に出走し、3馬身半差で逃げ切って快勝を収めた。
これにより大目標は3週間後のブリーダーズカップ・マイルと定まり、フェイヴァリットトリックは1番人気で出走したが、逃げていた向こう正面で英国馬のケープクロスがかかって暴走気味に競りかけてくると位置取りを下げてしまい、直線入り口で前々年覇者ダホスに交わされるとそのまま伸びあぐねて同馬の8着に敗退。これを最後に引退した。通算成績は16戦12勝、うち8戦8勝が2歳時のものと、3歳以降はやや不完全燃焼気味のキャリアであった。
引退後
引退後はケンタッキー州のウォルマックファームで種牡馬入りしたが、産駒はGIIIの勝ち馬が2頭のみとあまり振るわず、フロリダ州を経て2005年にニューメキシコ州に移動。後年は主にクォーターホースの種牡馬として成功を収めた。
しかし2006年6月6日、繋養されていたJEHスタリオンステーションで火災が発生。これに巻き込まれたフェイヴァリットトリックは、1984年のデルマーフューチュリティ(2歳GI)を勝ったサラトガシックスら5頭の種牡馬とともに焼死してしまった。まだ11歳の若さであった。
悲劇的な最期となったが、クォーターホースは人工授精での繁殖が認められており、死後も保存された精液が活用されている。また日本に輸入された3頭の産駒のうち牝馬の2頭はどちらも繁殖入りして牝系を繋いでいる[1]。
血統表
Phone Trick 1982 鹿毛 |
Clever Trick 1976 黒鹿毛 |
Icecapade | Nearctic | |
Shenanigans | ||||
Kankakee Miss | Better Bee | |||
Golden Beach | ||||
Over the Phone 1965 栗毛 |
Finnegan | Royal Charger | ||
Favorite Trick 1995 黒鹿毛 |
Last Wave | |||
Prattle | Mr. Busher | |||
Tsumani | ||||
Medieval Man 1974 栗毛 |
Noholme | Star Kingdom | ||
Oceana | ||||
Peaceful Sky | Tim Tam | |||
Evil Elaine 1984 鹿毛 FNo.9-e |
Curly Sky | |||
Distinctive Elaine 1972 鹿毛 |
Distinctive | Never Bend | ||
Precious Lady | ||||
Jackie Dare | Prince Dare | |||
Jacoenda | ||||
競走馬の4代血統表 |
- 父Phone Trickは10戦9勝、GII3勝。産駒には本馬や1993年にブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズを勝利して最優秀2歳牝馬となったフォーンチャッターのような仕上がり早のタイプが多いが、ドバイゴールデンシャヒーンを5歳で勝利したコーラーワンのように古馬になって活躍した馬もいる。
- 母Evil Elaineは30戦4勝。近親は8代母の妹まで遡ってようやく凱旋門賞を連覇したコリーダの母ザリバに行き着くぐらいでほとんど活躍馬が出ていない。
- 母父Medieval Manは21戦7勝で、ローレルフューチュリティ(GI)で*ロイヤルスキーの3着という実績こそあるが重賞は未勝利。種牡馬としても活躍した産駒は皆無であり、フェイヴァリットトリックを母父として出したのがほぼ唯一の実績である。
主な産駒
関連動画
※動画名はブリーダーズカップ・ジュヴェナイルだが、正確にはブリーダーズフューチュリティのもの
関連コミュニティ
関連項目
脚注
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