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ムスカリン(Muscarine、Muscarin)とは、「目が、目がぁ~!」な毒である。
概要
ムスカリンは、1869年にベニテングタケから単離された、副交感神経に作用するアルカロイドである。名前の由来はベニテングタケの学名Amanita muscaria から。muscaria は「ハエの」という意味。
ムスカリンは、ムスカリン性アセチルコリン受容体(ムスカリン受容体)に結合し、副交感神経を刺激する。ムスカリン受容体とは、脳や副交感神経終末に存在する受容体(なんらかの刺激を受け取り情報を変換して伝達する器官)である。ムスカリンは血液脳関門を通過できないため中枢作用はないものの、副交感神経終末に存在するムスカリン受容体に作用する。
ベニテングタケなどの摂食によりムスカリンを経口摂取した場合、短期的(15~30分後)には、腺分泌の亢進によって発汗、唾液や涙の分泌増加が見られる。大量に摂取していた場合、消化管運動や消化液分泌の亢進による腹痛や下痢、気管支平滑筋の収縮による呼吸困難、瞳孔括約筋収縮による縮瞳(目の前が暗くなる)などが起こる。まれに心臓発作や呼吸困難で死亡することがある。半数致死量は0.2mg/kg(静脈内投与)、ヒト経口推定致死量は0.5g[1]。ムスカリン中毒の治療には、アトロピンのような抗コリン薬(ムスカリン受容体に競合的に結合することでムスカリン作用を抑える医薬品)が用いられる。
ムスカリンは、ベニテングタケの毒として知られる。しかし、実際にはベニテングタケに限らず、フウセンタケ科アセタケ属、キシメジ科カヤタケ属、イッポンシメジ科などのキノコにもムスカリンを含むものがある。また、ムスカリン受容体の名称の由来であるため、医学・薬学の分野においてもよく知られた名前だと言える。
なお、ムスカリン様作用(ムスカリンと同様の作用)のある物質として、ベタネコール、ピロカルピンがある(これらはムスカリン同様にニコチン様作用を示さない、あるいは弱い)。ベタネコールは腸管麻痺や尿閉に適応、ピロカルピンは緑内障などに適応の医薬品である。
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脚注
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