輸送密度とは、公共交通機関がどの程度多くの人員を運んでいるかを示す数値である。
概要
輸送密度の定義は以下の通り。
輸送密度 = 対象区間の対象期間の人キロ / 対象区間のキロ数 / 対象期間の日数
このことからわかる通り、輸送密度の単位は人/日となる。
A駅-B駅-C駅と2km間隔にある路線aがある。毎日A駅・C駅間を通し利用している人が1000人、A駅・B駅間の区間利用が500人、B駅・C駅間の区間利用が100人だったとする。また、毎日以外で利用している人員はいないものとする。
この時、路線aの輸送密度は1300人/日となる(通し利用が4000人キロ/日、A・B間の区間利用が1000人キロ/日、B・C間の区間利用が200人キロ/日なので、合計5200人キロ/日でありこれを4kmで割ると求まる)。
営業係数とは直接結びつかない概念である(営業係数は売上100円を立てるための売上原価である)が、往々にして輸送密度が低い路線は営業係数が高くなりがちである。
こうしたことから、特定地方交通線はこの輸送密度による足切りを基本とした。具体的には以下の通り。
- 共通の除外基準
- ピーク時の乗客が1方向1時間あたり1000人以上 - 要するに通勤ラッシュで捌けないレベルの乗客がいる
- 代替輸送道路未整備 - バス転換しようにも道路がなければバス転換はできない
- 冬季に積雪などにより道路輸送が困難 - 上記はそもそも道路がない場合だが、こちらは積雪などで道路が冬に使えない場合。この場合も、バス転換してしまうと冬季に輸送ができなくなる
- 平均乗車キロが30kmを超え、かつ輸送密度1000人/日以上 - そこそこお客さんが乗っていて、しかも長距離であるならば、バスよりも鉄道の方が良い
- 貨物輸送密度が4000t/日以上 - 貨物の輸送密度はトンキロをキロ数と日数で割ったもの。4000t/日以上ならばそれは幹線であり地方交通線ではない
- 第1次特定地方交通線
- 第2次特定地方交通線
- 輸送密度2000人/日未満
- 第3次特定地方交通線
- 輸送密度4000人/日未満
早い話が、4000人/日未満の路線は、原則としてバス転換、もしくは第三セクター鉄道(一部私鉄)への転換という形がとられた。これにより、JR各社はお荷物となる大赤字路線を原則引き継がずに(例外として、転換までの一時期JRに属した路線はあったが)再出発を図った。
だが、時が経つにつれて、代替輸送道路が整備されたり、過疎化で沿線人口が減少するなどした結果、維持することが困難な路線が出てきた。
例えば留萌本線はもともと輸送密度2000人/日未満ではあったが、「平均乗車キロが30kmを超え、かつ輸送密度1000人/日以上」の除外基準に当てはまったため路線存続となったが、
という有様になっていた。このため、2016年には留萌・増毛間が廃止。残りの区間も2段階に分けて2026年までに全線廃止の予定になっている(2段階に分ける理由は、深川・石狩沼田間の代替交通の整備に時間を要するためである。石狩沼田・留萌間は2023年3月末をもって営業終了)。
JR北海道では、2016年に以下のように在来線の路線を区分している。
- 200人/日未満 - 「赤色」線区。鉄道というモードが適しているとは言えず、バス転換などを念頭に地元の地方自治体と相談をする
- 200人/日以上2000人/日未満 - 「黄色」線区。鉄道というモードの維持に必要な費用が賄えておらず、利便性促進、費用削減のための駅廃止、上下分離や、他の公共交通機関への転換を念頭に地元の地方自治体と相談をする
- すでに話し合いを始めている線区 - 「赤色」線区と同様だが、このお知らせを出している段階ですでに話し合いを行っていた線区
- 単独で維持可能な線区 - 「黒色」線区。鉄道の大量輸送のモードが適しているため、JR北海道が自社で維持する線区
- 北海道高速鉄道開発関連線区 - 「緑色」線区。簡単に言えば、北海道高速鉄道開発という第三セクターの関与のもと高速化事業を行ったものの、JR北海道単独では維持が困難な線区。北海道高速鉄道開発とも話し合った上で方向性を決定する
- 北海道新幹線並行在来線 - 「紫色」線区。北海道新幹線開業に合わせて経営分離もしくは他の公共交通機関への転換を行う予定
また、この輸送密度は鉄道に使われることが多いが、バスにも使うことがある。1日あたりの輸送量という言い方をしているが、要するに平均乗車密度(バスを通しで乗っていると計算できる人数)に便数を掛け算して出してることから、要するに輸送密度と同義である。国土交通省の生活交通路線維持国交補助金という補助金が出るための条件は以下の通り。
つまり、広域バスの存続可能な限界値は、補助金ありきであっても15人/日の輸送密度が限界である、というのが基本である。というか、15人/日を下回るなら片方向の1日あたりに運んでいる人員は7人以下なので、ジャンボタクシー1台で足りるレベルである。
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