MIM-104 単語

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MIM-104とは、アメリカ開発された地対空ミサイルシステムである。

概要

正式名称は、MIM-104 Patriot。「Patriot」はPhased-Array TRacking and Intercept Of Target (対フェイズドアレイ追跡・迎撃)の略。

80年代まで使用されていたMIM-14 ナイキ・ハーキュリーズ(日本でもナイキJとして運用されていた)のあとを受けて開発された。

1980年代に配備がスタートしたが世間に知れ渡ったのは湾岸戦争からだろう。イラクが各地に隠蔽したスカッドミサイルによる攻撃を防ぐためにアメリカはペトリオット部隊を配備、このペトリオットによる迎撃シーンは当時のTVニュースでも取り上げられた。

使用するミサイルは数度の良を受けており、PAC-1PAC-2弾道ミサイル防衛に特化したPAC-3開発されている。

航空自衛隊ナイキJの後継として採用。日本では「パトリオット」ではなく「ペトリオット/ペトリ」と呼んでいる。部隊は6個高射群24個高射隊が存在し、2000年代からはミサイル防衛(BMD/MD)構想の一環としてPAC-3への移行が進められている。

システム[1]

アメリカ陸軍1967年から開発しており、1982年から生産されている。ファイアユニットは4連装ミサイルランチャー5基、レーダー、ウェポンコントロールECSEngagement Control System)、電で構成される。いずれも車載なので、半固定式だったナイキべ機動性が向上している。

ナイキホークでは最低5基は必要だったレーダーは1基の多機フェイズドアレイレーダーにまとめられており、このレーダー標の捜索、補足、追跡、発射した迎撃ミサイルの追跡と誘導を行う。5基のランチャーにはVHFのデータリンクを送る。

標を識別した後は、脅威度と撃破率までコンピュータが計算し、指揮官が自動モードを選択すればシステムが計算に応じて自動的にミサイルを発射する。対応する標の高度は30mから30km以上。

発射されたミサイル線で誘導され、標に近づくとアクティブレーダーホーミングで誘導する。ミサイル標からの反射波を受信して標との度を出し、データリンクで地上に送信、ECS側のコンピュータで最適コースを計算し、地上レーダーを通じてミサイルを制御する。

PAC-2[2]

初期のペトリオットは、発射後10速度マッハ5になる。ただし、その時点でロケットモーター燃え尽き、あとは惰性で飛行する。したがって、ミサイルは発射直後に高度をとり、上から惰性でダイブして標に命中する。つまりこのやり方では、落下速度がマッハ8.5以上にもなるスカッドミサイルのような弾道ミサイルに対しては命中するかどうかがそもそもきわどい。

PAC-2では、近接信管の反応をくして相対速度マッハ10に合わせ、爆発弾頭の破片をより重く、大きくくし、フェイズドアレイレーダービームの対応高度も良した。

このPAC-2湾岸戦争に持ち込まれている。おそらくロケットモーター燃え尽きない射程までスカッドをひきつけてペトリオットを発射していたと思われる。FU(ファイアユニット)が配備された地点に落ちてきた弾道弾に対してはヘッドオンに近い度で交戦でき、補足しやすかっただろうが、FU配備地点から離れたところに落下する弾道弾については見送る以外になかっただろう。また、ペトリオットがスカッドに最接近して自爆した場合でも起爆タイミングが遅れ、破片群が空振りしたケースが多かったようだ。

湾岸戦争でのペトリオット1発あたりのスカッド撃破率は、9%~65%と、研究者の間で評価が大きく別れている。自分で実験できない立場の日本人は、9%以下なのだろうと思っておけば間違いはないだろう。

PAC-3

湾岸戦争では、パトリオットの弾頭破片がスカッドに命中することで落下コースを逸らせたり弾体をボロボロにすることはできても、弾頭そのものを「化」することはできず、もし生物兵器化学兵器弾頭が使用されていたら、被害が広域に及ぶ可性があった。そこでPAC-3では従来と同じ炸裂弾頭とするのか、それとも直接衝突とするかが大きなテーマとなり、最終的に直接衝突が採用された。これはERINT(Extended Range Intercepter:射程延長迎撃ミサイル)と呼ばれ、細長い形状なので従来のペトリオットのコンテナに4発を収容できる。[3]

ERINTの全長は約5.2m、弾体直径255mm、重量312.4kgであり、従来のペトリオット用ミサイルより小軽量だが、ペトリオット用の発射機と、良された射撃統制装置をそのまま使用できる。射程は15km、弾道ミサイルに対する迎撃高度は15000~2000m以下。[4]

PAC-3MSE

MSEは、「ミサイル部分向上Missile Segment Enhanced)」の略。従来のPAC-3より直径が大きくなり、コンテナ1基当たりの収容数は3発に減っているが防護範囲や高度が拡大している。弾道ミサイルだけではなく、巡航ミサイル航空機への対処もある。防衛省平成29年度の概算要MSEの取得費を計上している。[5]

その他

日本では2023年12月に「防衛装備移転三原則」の運用針を正し、PAC-3ライセンス元のアメリカに輸出することを決定している。[6]

関連動画

関連リンク

関連項目

脚注

  1. *自衛隊最新兵器ワールドフォトプレス光文社文庫 1985
  2. *「『新しい戦争』を日本はどう生き抜くか」兵頭二十八 2001 筑摩書房 pp.179-181
  3. *兵器常識・非常識(下)」江謙介 並木書房 1998 pp.592-599
  4. *日本TMD構想の現実性」垣大成 軍事研究1998年11月
  5. *高度も射程も2倍! 北ミサイルを迎え撃つ地対空誘導弾(PAC3MSE) それでも「100%」は保証されないexit 2016.6.26
  6. *「防衛装備移転三原則」の運用指針改正 PAC3を米へ輸出も決定exit 2023.12.22
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