不等号(ふとうごう)とは、二つの値の関係を表す数学記号である。
概要
右辺と左辺が等しくないことを表す記号。等しい場合は等号「=」で表す。
大小関係のある実数の場合は、具体的な大小関係を示す記号が使われる。
≠
a≠bで、「aとbは等しくない」ことを表す。
文字通り「不等」を表すが、単に不等号という場合下記の大小記号を表し、これは考えないことも多い。
<、>
「く」の字が開いている方が大きいことを表す。
a<bで、「aはbより小さい」ことを表す。左から読む場合は、「<」を「小なり」と読む。
a>bで、「aはbより大きい」ことを表す。同じく、「大なり」とも読む。
3つ以上の数の比較では、a<b<cなど、小さい順か大きい順に並べる(慣例上は小さい順)。
a>b<cと並べることは、aとcのどちらが大きいか分かりづらくなるため避けられる。
≦、≧
等号つき不等号。上か下のいずれかが成立することを表す。
a≦bで、「aはbより小さいか等しい」を表し、「小なりイコール」という読み方もある。まとめた熟語である「aはb以下である」も使われる。
上か下のいずれかが成立していれば真であり、もう一方が成立していなくてもよい。
例えば、2≦2 や、5≧4 は真である。
この場合、もう一方の記号が余計になるが、「余計な物が書かれているから命題は間違っている」などという決まりはない。「アントニオ猪木は新日本プロレスまたは全日本プロレスである」という命題は「全日本プロレス」が余計であるが真であるのと同様である。
なお、≤、≥のように=を一本線で表す場合もある。一本線が斜めになることもある。
等号の成立条件
上記の通り、「≧」は「>」と「=」の論理和であるため、もう一方が成立する条件が存在していなくとも数式上真である。つまり、「a≦bを証明せよ」と言われたら、a<bを証明するかa=bを証明するかしたならば、そこで証明を終了させてよい。
これは、「命題の十分条件を証明したならば(強い証明)、命題そのものを証明したことになる」という数学の根幹であるため、大学受験の採点をする側(よほど特殊な事情がない限りは大学の教員)にも周知されていることである。
例示するならば、「忠犬ハチ公像は日本国内にある」ことを証明するために「ハチ公像が渋谷区内に存在する」ことを証明したならばそこで証明は終了であり、渋谷区外の日本国内に存在する条件を提示する必要はない。「渋谷区内にある」は「日本国内にある」より強い証明だからである。
等号が成り立つ場合が存在することを証明させたい場合、「等号の成立条件も示せ」などのようにそう指示されている(し、すべきである)。
教科書や参考書には、等号の成立条件が括弧書きで付加されている場合もあるが、特に問題に示されていない場合はサービスで、または等号が成立する場合も書いておかないと日本語として気持ち悪いから書いているようなものである。
≪、≫
不等号を二重にすると「非常に大きい、小さい」の意になる。
数学に「非常に」などという曖昧な意味合いがあるのは奇妙だが、つまり近似式において、「十分小さい(大きい)場合は近似できる」と言いたい場合に用いられる。
近似式は高校の理系数学レベルで扱うので、実際にこの記号が書かれている数式を見たことがない人も多い。その一方、「非常に大きい/小さい」という意味合いだけは人口に膾炙していることが、下記のネットスラングとしての意味合いを生んでいる。
ちなみに、「さらに非常に大きい/小さい」を表す「⋘、⋙」という記号もある。
不等号の複号
※以下は対応していないフォントがあることに注意。
記号違いの2つの式をまとめて記述する場合、プラスマイナス記号「±」のように他の等号・不等号を複号する場合がある。「複号同順」とあれば、「すべて上の記号の式」または「全て下の記号の式」という意味である。
例えば、a≷bならば「a>bまたはa<b」を表すが、これだけではa≠bと変わらない(プログラミング言語の場合「><」で「≠」を表すこともある)。実際には、3つ以上の式をつなげて使われたり、条件を表す複数の式と共に使われる。
例えば、a≷b≷c(複号同順)であれば、「a>b>cまたはa<b<c」という意味である。
≦、≧を複号として使用する場合もあるが、上記の「以上、以下」と紛らわしいので、但し書きをつける。
a≦b≦c(複号同順)もしくは(等号は同時にのみ成立)とあった場合、「a<b<cまたはa=b=c」を意味する。
そうでない場合、「a<bでb=c」という場合もあるため、注意が必要(それを明示する「複号任意」という用語があるがあまり使われない)。
この用法に限り、複号を表すためイコールが上についた⋜、⋝という記号がある。
≦と≧の複号は、イコールを間に挟んで⋚、⋛として使われる。
ネットスラング
上記、「非常に大きい/小さい」の意味を借用し、何かが何かに比べて非常に大きい/小さいことを表すあおりとして使われる。
関連項目
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