簡単な概要
実数についての厳密な説明は結構難しいので、特に高校の段階では簡単な説明をされることが多く、「数直線上の数」や「有理数と無理数を合わせたもの」といった簡単な説明がされる。この場合、無理数の説明としては「有理数以外の実数」というと定義が循環して不適切なので、「循環しない無限小数」などという説明がされる。
具体的に言えば、有理数だけでは、「2乗して2になる正の数」や「円の円周/直径の値」や「(1+1/n)nのn→∞における収束先」を表現できないので、これらの数も扱えるように「無理数」を導入し、「有理数と無理数を合わせて実数」という説明がなされることも。
大ざっぱに言えばそのような理解で支障ない。
更に、実数は「複素数」という数体系の一部である。実数でない複素数のことを虚数といい、実数と虚数単位を使って表す。詳細は虚数及び虚数単位の項目を参照。
詳細
もう少し詳しく説明すると、実数を特徴づける要素は「連続性」や「完備性」などと呼ばれ、この性質を持って実数が定義されることとなる。
有理数は稠密性を持ってはいるものの、この完備性を持っていないので、√2や円周率πや自然対数の底eといった数をカバーすることができずに隙が生じてしまうことになる。連続性・完備性はこのような隙を埋め合わせたものともいえる。
関数の連続性や微分積分について議論する際にも、この実数の連続性が前提となる。
連続性・完備性と同値な命題はたくさんあり、以下のようなものが実数の説明として使われる。
以下、(やや説明不足かもしれないが)「有理数だけの世界と実数の世界の違い」を重視して分かりやすく説明する。
デデキントカットを用いた説明
実数の集合におけるデデキントカット(A,B)について、「Aに最大元がなく、Bに最小元がある」「Aに最大元があり、Bに最小元がない」のいずれかとなる。
まず有理数の集合を定めておいて、「Aに最大限がなく、Bに最小元がない」切断を導入し、この切断が無理数を表すと説明されることも。
詳細はデデキントカットを参照。
上限・下限を用いた説明
実数の上に有界な集合は上限※を持つ。
例えば、x2<2を満たす実数xの集合は、全てのxについてx<√2なので上に有界で、上限√2を持つが、xを有理数とすると上限は存在しなくなる。
「下に有界な集合は下限を持つ」でも同じ。
※上限は最大値、下限は最小値と似た概念であり、詳細はwikipedia等参照。
有界単調数列を用いた説明
有界な単調数列は収束して実数の極限値を持つ。
例えば、数列(1+1/n)nについて、各項は有理数であり、3より小さいことが示せるため上に有界であり、また単調増加であることも示せる。収束し極限値を持つのであるが、極限値は有理数ではなく、実数まで数を広げることで初めて極限が存在すると言える。
「下に有界な単調減少数列」でも同じ。
コーシー列を用いた説明
コーシー列とは、「自然数m,nについて、m,n→∞のとき|am-an|→0となる数列(厳密にはε-δ論法で定義)」のことで、大ざっぱに言うと「十分先で値がほとんど変化しなくなる数列」のこと。
実数の世界では、コーシー列は必ず極限値を持ち、収束すると言えるが、有理数の世界ではコーシー列であっても極限値が有理数の世界には存在せず、収束するとは言えなくなることもある。
なお、アルキメデスの公理「任意の正の数a,bに対し、na>bとなる自然数nが存在する」が前提となる。
その他
その他の性質
有理数の濃度が可算無限であるのに対し、実数の濃度は非可算無限であることが知られ、自然数と対応させて番号をつけて数えていくのは不可能である。対角線論法によって示される。
詳細は可算無限と非可算無限を参照。
直観的に当然であるが、α、βを実数として(ただしβ≠0とする)、実数の加減乗除の結果α+β、α-β、αβ、α/βは実数となる。
また、これも直観的に当然であるが、実数は必ず大小関係が定まる。しかし複素数にまで世界を広げると、大小関係は必ずしも定まらなくなる。
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関連項目
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