天津風(あまつかぜ/アマツカゼ)とは、空高く、天を吹く風を意味する単語。僧正遍昭の作になる名歌、『天つ風雲の通ひ路吹き閉ぢよ乙女の姿しばしとどめむ』で知られる。
古語における「つ」は現代語の「の」に相当する上代日本語(奈良時代以前の日本語)の格助詞であり、「津」は「つ」の万葉仮名表記である。従って、現代語に直訳すると天の風となる。
格助詞「つ」は中古日本語(平安時代の日本語)以降は複合語の中で慣用的に用いられるのみとなっている[1]。
なお、「つ」を用いた複合語には「時津風(ときつかぜ)」、「天津神(あまつかみ)」、「国津神(くにつかみ)」、「綿津見(わたつみ、海つ霊)」、「葦原中(津)国(あしはらのなかつくに)[2]」などの例があげられる。「睫毛(まつげ)」も元は「目つ毛」が語源[3]であり、現代でも日常的に用いられている用例である。
ちなみに、中国の都市「天津」は明の時代に燕王・朱棣こと後の皇帝(=天子)・永楽帝が靖難の変の折りに軍勢を率いて河を渡った港(=津)「天子渡津」から来ており、天津風とは全く関係ない。
曖昧さ回避
- 天津風
- あまつかぜ
- 天ツ風
脚注
- *「つ」が往々に万葉仮名で表記されるのは平仮名・片仮名の成立以前の古語であるためなのかもしれない(編集者の想像)
- *「津」は表記せずに「中国」と書いて「なかつくに」と読むことの方が多い。
- *「ま」は「目」の意味。同様の例に「まぶた(瞼、語源は“目蓋”)」「まなこ(眼、語源は“目な子”)「まゆ(眉、語源は“目上”?)」」「まばたき(瞬き、語源は“目叩き”)」など
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