駆逐艦単語

1209件
クチクカン
2.3千文字の記事
  • 11
  • 0pt
掲示板へ

駆逐艦(Destroyer)とは、軍艦の一種である。

概要

第二次世界大戦以前・以後で性質が大きく変わる艦種である。
ごくごく乱暴に書けば、戦前の駆逐艦は「海軍のフネでは下っ端の便利屋」、戦後の駆逐艦は「質・量ともに実質的な海軍役、何でもこなす汎用艦種」である。

どちらの時代の話題であるかをよく確認して使おう。

歴史

19世紀半ばに実用的な雷(Torpedo、いわゆる魚雷)が開発されると、それを搭載する雷艇(Torpedo Boat)という小・高速の軍艦が登場した。

雷艇はその高速力を生かして戦艦薄し、その必殺の魚雷で撃沈をす、というコンセプトで建造されたが、これは当の戦艦からみると大変な脅威であった。戦艦の巨大なは軽快に動く雷艇を撃つには全く不向きであったし、浅い沿域や泊地で襲われると浮かべるもただの鈍重な的でしかないからだ。

雷艇に対抗する艦種として重武装な小艦「砲艦」も誕生したが、2026ktで航行する雷艇に対して砲艦は18kt程度と速度が低く、対雷艇艦種としては役に立たない艦に終わった。

水雷駆逐艦の誕生

そこで、雷艇に対抗するために考案されたより高性な艦種が雷艇駆逐艦(Torpedo Boat Destroyer)、のちの駆逐艦であった。雷艇駆逐艦はその名が表す通り、雷艇を駆逐するために生まれた軍艦で、1894年にイギリスで建造された「ハヴォック」がその嚆矢だと言われている。
その誕生には、後に戦艦の建造にも大きく関わるジョン・アーバスノートフィッシャー卿も大きく関わっていた。

ハヴォック排水量約240tと当時の標準的な雷艇の2倍ほどの体に12ポン魚雷を搭載し、27ktという雷艇に勝るとも劣らない速力を発揮する艦だった。
また姉妹艦の「ホーネット」は従来の横置きボイラー(汽車)よりも大容量の蒸気を発生させられる管ボイラーを搭載するなど、従来の雷艇や砲艦とは一線を画す設計の艦級であった。
こうして生まれた雷艇駆逐艦であったが、実際に使ってみると非常に使い勝手の良い艦だった。小ゆえに外洋航行力に著しく欠けていた雷艇(元が沿防衛、泊地奇襲用途のため仕方がないのだが)にべて雷艇駆逐艦は力艦に随伴可最低限の外洋航行力を有していたし、その高速力は攻撃・・護衛など、あらゆる任務に耐えうる汎用性を与えた。

さらに、その高速力を以て搭載した魚雷で敵戦艦を攻撃するという、本来なら駆逐すべき雷艇の任務すら与えられ、雷艇の存在意義をほとんど消し飛ばしてしまい、本当に「雷艇」を「駆逐」してしまうほどだった。

水雷駆逐艦から駆逐艦へ

このようにして誕生した雷艇駆逐艦だが、その多用途性から単に「駆逐艦」とだけ呼ばれるようになり、次第に海軍の中で重要な艦種として扱われるようになった。

実際、1914年に勃発した第一次世界大戦ではドイツのU-ボート対策として駆逐艦は爆雷とソナーを積み潜水艦狩りにも投入されており、この頃になると各海軍にとって駆逐艦はなくてはならない存在になっていた(後年結ばれたロンドン海軍軍縮条約では駆逐艦の保有数が制限され、各海軍力を左右する大きな要素の一つとなっている)。
この時代に登場した空母、そこから発進する航空機という新たな脅威にも駆逐艦は柔軟に応え、艦隊や商団を敵機から守る対の任務も与えられた。

戦後・現在

以上のような経緯で、次第に重要な軍艦と見なされるようになった駆逐艦だが、第二次大戦後、その地位は決定的となった。ミサイルの登場である。
ミサイルにより駆逐艦はかつての戦艦以上の対艦火力と、艦載戦闘機に迫る対力、ソナーや対潜ミサイルをはじめとする強力な対潜捜索力・対潜火力を与えられ、対艦・対・対潜、さまざまな任務に投入できる汎用艦種としての立場を確立し、海軍水上戦闘艦艇戦力の中心を担うようになった。第二次大戦後、戦艦巡洋艦といった大水上戦闘艦艇が姿を消し、駆逐艦、空母潜水艦海軍力となったが、空母潜水艦はどこのでも作れるわけではないからだ。
つまり、駆逐艦は(フリゲートと並んで)海主力艦の位置を占めるようになったのである。

もちろんこの背景には、駆逐艦が対艦、対潜、対、更にはミサイルラットフォームとして多くの任務をこなす汎用性を備え、何よりそれらの変化に高いコストパフォーマンスで対応できたからに他ならない。そして、最近では対弾道ミサイル力すら獲得した駆逐艦が海軍の中心を占める姿は当分の間かわらないだろう。

駆逐艦の記事一覧

軍用艦艇の一覧も参照。

日本(旧海軍)

海上自衛隊の駆逐艦に当たる艦種は「護衛艦」を参照。

アメリカ

ロシア

欧州

アジア

フィクション
(宇宙船含む)

関連動画

関連商品

関連コミュニティ

関連項目

【スポンサーリンク】

  • 11
  • 0pt
記事編集 編集履歴を閲覧

ニコニ広告で宣伝された記事

天外魔境II (単) 記事と一緒に動画もおすすめ!
提供: memi
もっと見る

この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ

この記事の掲示板に最近投稿されたピコカキコ

ピコカキコがありません

駆逐艦

128 ななしのよっしん
2019/10/13(日) 14:57:21 ID: kuawC6Da/5
いだてんで駒沢オリンピックスタジアム建設に1000トン必要→陸軍次官?「駆逐艦が何隻作れるか」という話をしてましたが、何隻作れるんですか?
昭和13年の話で、当時建造してたのは陽炎型駆逐艦排水量2000トン2000トン必要と思ったんですが。
あるいは、海軍を使い過ぎるという陸軍からの嫌味ととらえるべきでしょうか。
👍
高評価
1
👎
低評価
0
129 ななしのよっしん
2020/09/22(火) 02:43:33 ID: ixodfSnz2P
駆逐艦ニュースで上がったのかな。
👍
高評価
0
👎
低評価
0
130 ななしのよっしん
2022/12/28(水) 18:05:46 ID: rh3EG5vVvF
今の戦艦フリゲートは実質巡洋艦(=大戦闘艦)だよな。
👍
高評価
0
👎
低評価
0
131 ななしのよっしん
2022/12/28(水) 18:08:04 ID: rh3EG5vVvF
現代の駆逐艦フリゲート巡洋艦日本国外のを含めて全部「護衛艦」でいいんじゃないかな

人民解放軍フリゲート護衛艦呼びしてるらしいし
👍
高評価
0
👎
低評価
0
132 ななしのよっしん
2023/01/28(土) 13:22:19 ID: lTF2keJ3kg
そこまで行っちゃうと既に普及してる「軍艦」という語と何が違うん?という話になりそう
👍
高評価
0
👎
低評価
0
133 ななしのよっしん
2023/07/05(水) 09:21:02 ID: GzcPDhHE6R
軍艦空母潜水艦補助艦艇徴用された非武装の元民間まで含み、同艦種でも正規の軍隊に所属してないと含まれない定期
👍
高評価
1
👎
低評価
0
134 ななしのよっしん
2023/08/02(水) 17:39:50 ID: rDs1cevNMr
水上戦闘艦の括りの中で中較的大のやつ
駆逐艦フリゲート巡洋艦護衛艦といろいろあるけど各好きなように名乗ってるだけだな
👍
高評価
0
👎
低評価
0
135 ななしのよっしん
2023/08/26(土) 07:16:39 ID: oZG9EIt3/T
航空機が現代における戦の力なら、いっそ空軍を吸収して防海軍が担えば良いのではないかと思うことがある。海軍陸上航空基地を運用しているし、空母駆逐艦陸上含めて防に貢献するし。空軍と被って戦闘機攻撃機を多数保有するなら、なぜ空軍海軍と別に存在するのか疑問だ。
👍
高評価
0
👎
低評価
0
136 ななしのよっしん
2023/09/28(木) 20:59:08 ID: GzcPDhHE6R
守る対が基本的にだから、そしてを一番守れるのは水上の艦艇だからだね(あと潜水艦もある)
陸軍陸上戦力の行動に活動が左右されるようなヘリコプターや防機材は陸軍所有になってる

相手の航空戦力や潜水艦が優勢だと上活動の自由度はかなり下がるが、自軍に水上戦力がなければ活動はほとんどできない
水上艦艇が中心になって水中、防しなければ航空機が飛んで来るまで生き残れないので、海軍空軍に統合するのは難しい

海軍が管轄する航空機材は「水上水中標にする航空機対潜哨戒機)」「艦艇から発射されるミサイル空母から発艦する航空機」がで、艦艇を起点に作戦を考える必要がある…逆に言えばそれ以外の要素は消去法的に決めやすい
つまり艦艇活動からの制約が薄いその他の航空活動(沢山ある)は独立した空軍が担当した方がやりやすい
むしろ水上標を攻撃する対艦攻撃機でも陸上発進の物なら現代だと空軍所属が多い(哨戒機が相手にする敵の潜水艦は味方の水上戦力以外への力が低いが、その他の敵の水上艦艇の活動は
(省略しています。全て読むにはこのリンクをクリック!)
👍
高評価
0
👎
低評価
0
137 ななしのよっしん
2024/02/02(金) 03:57:08 ID: 88SBsMQ2UZ
駆逐艦にフーシのミサイル迫る、最後の防衛線「CIWS」で撃墜
https://www.cnn.co.jp/usa/35214653.htmlexit
👍
高評価
0
👎
低評価
0

ニコニコニューストピックス