ケイアイノーテック

ケイアイノーテック（Keiai Nautique）とは、2015年生まれの日本・オーストラリアの競走馬。鹿毛の牡馬。

NHKマイルカップで藤岡佑介に中央GⅠ初制覇を贈ったあと、長い苦闘を経て豪州に渡り、フランスで種牡馬入りしたディープインパクト産駒。

主な勝ち鞍
2018年：NHKマイルカップ（GⅠ）

概要

父ディープインパクト、母ケイアイガーベラ、母父Smarty Jonesという血統。
父は説明不要、無敗三冠馬にして2010年代の無敵のリーディングサイアー。
母はアメリカからの持込馬で、牡馬相手にコースレコード勝ちを含む中央ダート重賞2勝を挙げたなかなかの女傑。オーナーにとっても初めての重賞馬であった。ケイアイノーテックが第2仔。
母父スマーティージョーンズは2004年のアメリカ二冠馬。種牡馬としてはあまり目立った結果は残せなかった。
1歳上の全兄に、日本で生産されてイギリスでデビューし豪州でG1を3勝したFierce Impactがいる。

2015年4月7日、新冠町の隆栄牧場で誕生。牧場時代は賢く手の掛からない馬だったそうである。
オーナーは母と同じく、「ケイアイ」冠名を用いる啓愛義肢材料販売所代表・亀田和弘。ちなみに生産牧場のケイアイファームとは特に関係はない。

馬名意味は「冠名+水上の(仏)」。

水上の啓愛

デビュー～NHKマイルカップ

カレンブラックヒルなどを管理した栗東・平田修厩舎に入厩。仕上がりは早く、2017年最初の新馬戦である6月3日の阪神・芝1600mにて福永祐一を鞍上にデビュー。単勝2.5倍の1番人気に支持されると、どスローの流れを逃げ馬の後ろのインで進め、直線内ラチ沿いから抜け出して2馬身差で完勝。世代の新馬勝ち一番乗りとなる。

じっくり5ヶ月休み、11月のデイリー杯2歳ステークス（GⅡ）へ。川田将雅を迎えて5.2倍の3番人気に支持され、1番人気フロンティアと同じような位置でレースを進めたが、4角のペースアップに対してやや遅れてしまい、直線盛り返したもののジャンダルムの3着。
そのまま朝日杯フューチュリティステークス（GⅠ）に幸英明を迎えて乗りこんだが、中団から脚を伸ばしたもののダノンプレミアムの圧勝の後ろで4着。幸英明も「勝った馬が強かったです」のコメントであった。

明けて3歳となり、NHKマイルカップを目指してまずは自己条件の500万下から出直し。福永が騎乗した初戦の京都・芝1600mのこぶし賞（500万下）は後の重賞馬パクスアメリカーナに敗れ2着に終わったが、川田が騎乗した3月の阪神・芝1600mの平場500万下を1.2倍の断然の支持に応え、直線後方大外からぶっちぎりの上がり最速で薙ぎ払い4馬身差で圧勝、2勝目を挙げる。

NHKマイルCの優先出走権を確保するためニュージーランドトロフィー（GⅡ）へ。戸崎圭太がテン乗り、初の関東輸送で馬体重-12kgながら3.2倍の1番人気に支持されたが、中団から4角を捲るように進出し抜け出し押し切りを図ったものの、大外から追い込んできたカツジに競り負けアタマ差の2着。とはいえ優先出走権を獲れたので陣営的にはOKであった。

そんなこんなで迎えた本番・NHKマイルカップ（GⅠ）。これまでに彼に騎乗した福永も川田も戸崎も他にお手馬がおり、鞍上には新たに武豊を迎える予定だったのだが、その武豊が騎乗停止になってしまい、急遽藤岡佑介を迎えることになった^[1]。1番人気はアーリントンCを勝ってきたタワーオブロンドン。ケイアイノーテックは12.8倍の6番人気である。
藤岡佑介は中団より前でレースを進めたいと考えていたが、スタートで行き脚がつかず、予定外の最後方の位置取りに。仕方ないので腹を括り、大外を回して直線で長く伸びる末脚に賭ける策に出た。この日の東京競馬場は直線が強い向かい風で差しが決まりにくい状況だったが、ケイアイノーテックは4角から仕掛けた藤岡佑介の追い出しに応えて脚を伸ばす。直線で馬群の中から2番人気ギベオンが抜け出し、そのまま混戦の後続を引き連れて押し切りを図ったが、最後の最後、外からそれをクビ差捕らえきったところがゴール板だった。

デビュー15年目の藤岡佑介は、交流GⅠ級は2勝していたが、中央GⅠはこれが通算86度目の挑戦で待望の初制覇。ゴールの瞬間は勝ったかどうか確信が持てず、内のギベオン鞍上のミルコ・デムーロに確認して「アナタ、勝ってるよ！」と言われたそうな。
亀田オーナーも嬉しいGⅠ初制覇。隆栄牧場は1974年の桜花賞をタカエノカオリで勝利しているが、グレード制以降ではGⅠ初制覇となった。

3歳秋～5歳

さて、かくして世代マイル王に輝いたケイアイノーテックだったが……その後の彼の戦績には、正直語るべきことは少ない。3歳秋は毎日王冠（GⅡ）から始動したが5着、マイルチャンピオンシップ（GⅠ）は11着撃沈。阪神カップ（GⅡ）も6着に終わり、4歳となってからは根岸ステークス（GⅢ）でダートを試してみたり（10着）、2000mに距離延長して天皇賞(秋)（GⅠ）やチャレンジカップ（GⅢ）に挑んだり（9着、7着）といろいろ模索したものの、マイルでも掲示板にも載れない凡走が続いた。

5歳となり、2戦目のダービー卿チャレンジトロフィー（GⅢ）で後方から脚を伸ばして4着に入って久々に掲示板入りすると、単勝177.6倍の11番人気だった安田記念（GⅠ）で5着、中京記念（GⅢ）で4着、富士ステークス（GⅡ）ではNHKマイルカップ以来の馬券圏内となる3着と復調の気配を見せたものの、本番のマイルCS（GⅠ）は13着撃沈。気付けばすっかり影の薄い存在になってしまっていた。

6歳、豪州へ

明けて6歳初戦の京都金杯（GⅢ）もブービー15着に終わったところで、ケイアイノーテックはJRAの登録を抹消し、オーストラリアへ移籍することが発表された。ちなみに向こうの馬主へのトレードではなく、亀田オーナーの所有のままでの移籍である。
なんでまた豪州に？というと、セレクトセールでイギリスに買われていった1歳上の全兄Fierce Impactが、英国では芽が出ず豪州に移籍したところ覚醒。2019年のG1トゥーラクハンデキャップとカンタラステークスを勝ち、豪州最優秀中距離馬を受賞。2020年のG1マカイビーディーヴァステークスも勝利し、G1・3勝を挙げたのである。^[2]兄が輝いた豪州でならもう一花、種牡馬入りの道もあるだろう、と考えただろうというのもまあ納得がいくところ。

というわけで兄と同じマシュー・スミス厩舎へと移籍したケイアイノーテックは、8月の芝1400m戦、ウィンクスステークス（G1）で移籍初戦を迎えると、勝ち馬と僅差の4着に好走。続く前年に兄の勝ったマイル戦・マカイビーディーヴァステークス（G1）は前残りの展開を最後方から7着に終わったが、2000mに距離延長を試みた10月のヒルステークス（G2）も最後方から脚を伸ばし、勝ち馬から2馬身差の4着とまずまずの走りを見せる。

これで陣営は2040mのコックスプレート（G1）に登録。この年の登録馬は11頭でフルゲート割れ、日本なら全く問題なく出走できたはずだったのだが……なんと主催者判断で除外を食らってしまう。主催者側からは「3年勝ってないマイラーが2000mのG1に出てくんなよ、まあ同じ日のマイルのG2だったら出てもいいよ？」的なことを言われ、陣営はガックリ。

そんなド失礼なコックスプレート主催の提案したレースなんぞもちろん蹴り、11月のマッキノンステークス（G1）に向かい、10頭立ての最低人気ながらZaakiの4着に好走。しかし7歳となった2022年は結局レースに出ることのないまま、12月に現役引退が発表された。通算28戦3勝 [3-2-2-21]。

引退後～フランスへ

種牡馬入りすることになったケイアイノーテックの繋養先は、なんとフランスのカーウィンファーム。全兄が豪州で既に種牡馬入りしている一方、ディープインパクト産駒は欧州でも活躍しているが、飽和状態の日本に比べて欧州には後継種牡馬が少ないといった事情もあったものだろうか。
亀田オーナーは種牡馬入りに対して「大変うれしく、新たな活躍を心から期待し、さらに胸が高鳴ります」とコメントを寄せており、おそらく初めてのGⅠをプレゼントしてくれたケイアイノーテックの種牡馬入りに尽力したものと思われる。

ともあれ2023年からフランスで種牡馬生活を送ることになったケイアイノーテック。初年度は34頭、2年目は56頭の牝馬を集めたそうである。ディープの血を欧州に広げていく活躍ができるか、期待したいところである。

血統表

ディープインパクト 2002 鹿毛	*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛	Halo	Hail to Reason
			Cosmah
		Wishing Well	Understanding
			Mountain Flower
	*ウインドインハーヘア 1991 鹿毛	Alzao	Lyphard
			Lady Rebecca
		Burghclere	Busted
			Highclere
ケイアイガーベラ 2006 栗毛 FNo.9-e	Smarty Jones 2001 栗毛	Elusive Quality	Gone West
			Touch of Greatness
		I'll Get Along	Smile
			Dont Worry Bout Me
	*アンナステルツ 1996 鹿毛	Danzig	Northern Dancer
			Pas de Nom
		Edge	Damascus
			Ponte Vecchio

クロス：Northern Dancer 5×4(9.38%)

関連動画

関連リンク

• Keiai Nautique (ケイアイノーテック) | 競走馬データ - netkeiba.com

関連項目

• 競馬
• 競走馬の一覧
• 2018年クラシック世代
• ディープインパクト
• サンデーサイレンス系

脚注

1. *実は藤岡佑介も同日の京都に先約があったそうなのだが、その馬の陣営に相談したところ、快く送り出してもらったのだそうな。
2. *ちなみに他のケイアイガーベラ産駒は全て亀田オーナーが所有しているのだが、なんで初仔の彼だけセリに出されたのかというと、亀田オーナーが初めて馬をセリに出すにあたって、せっかくだから一番よさそうな馬を、と選ばれたのが彼だったということだったらしい。後に豪州での活躍を見て売ってしまったことをめちゃくちゃ反省したとのこと。