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サンテミリオン(Saint Emilion)とは、2007年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牝馬。
同期の三冠牝馬と樫の冠を分け合い、そしてその後の明暗も分かれた史上初のGI1着同着馬。
主な勝ち鞍
2010年:優駿牝馬(GI)、フローラステークス(GII)
父ゼンノロブロイ、母*モテック、母父*ラストタイクーンという血統。
父は2004年に史上2頭目の秋古馬三冠を達成した名馬。サンテミリオンはその初年度産駒である。同父の同期にはペルーサなどがいる。
母はフランスからの輸入繁殖牝馬で、フランスGIIIフロール賞の勝ち馬。
母父は1986年のBCマイル、キングズスタンドSなど英米でGIを3勝。種牡馬としてもオーストラリアのリーディングサイアーに輝くなど海外では活躍したが、日本では期待されたほど結果を出せなかった。ただしキングカメハメハの母父として日本の血統図に名を残すことになる。
2007年1月30日、千歳市の社台ファームで誕生。そのまま社台ファーム代表の吉田照哉がオーナーとなった。デュランダルやロゴタイプのような社台グループオーナーズの馬ではなく、あくまで吉田照哉の個人名義での所有馬であるらしい。
生産牧場によると「幼少期から優等生で手がかかった記憶がありません」とのこと。
美浦・古賀慎明厩舎に入厩。デビューはやや遅く、3歳となってからの2010年1月5日、中山芝2000mの新馬戦(鞍上は内田博幸)。ここは2番手追走から楽な手応えで抜け出すと、後続の追撃を押し切り快勝。
2戦目は1月24日の若竹賞(500万下)。鞍上にはここから横山典弘を迎える。ここは前年のホープフルS(OP)2着のミカエルビスティーが断然の1番人気で、紅一点の彼女は3番人気に留まったが、ここも2番手追走から早めに抜け出して牡馬を蹴散らし2馬身半差の完勝。
この連勝で、重賞初挑戦のフラワーカップ(GIII)では単勝1.6倍の断然の1番人気。しかしここは中団馬群の中で揉まれるレースとなってしまい、先行で抜け出したオウケンサクラと、同じような位置から外で先に仕掛けたコスモネモシンに置いて行かれ、追い込んだものの3着が精一杯。
収得賞金を積めなかったことや中2週と間隔が厳しいこともあり、桜花賞は断念。オークストライアルのフローラステークス(GII)に向かった。ここも8枠15番という外枠ながら単勝1.9倍の断然の1番人気。
隣の大外オルレアンノオトメに比べてスタートはそれほどでもなかったが、外枠を活かして押し気味にそのまま2~3番手の好位を確保。直線に入って逃げる同じゼンノロブロイ産駒アグネスワルツをとらえてかわす。アグネスワルツも粘って叩き合いに突入したが、最後は1馬身競り落として後続を完封し快勝。重賞初制覇を挙げ、オークスの優先出走権も確保した。
ちなみにこのレース、2着アグネスワルツ、3着ブルーミングアレーとも社台ファームの生産馬で、社台ファームで馬券内を独占した。
そんなわけで迎えたオークス(GI)。1番人気はもちろん阪神JFと桜花賞を勝ち世代牝馬トップを走るアパパネだったが、血統的な距離不安や折り合い面、8枠17番など諸々あって単勝3.6倍とやや不安視という感じのオッズ。
以下チューリップ賞勝ち馬で桜花賞4着のショウリュウムーン(5.2倍)、前述のフラワーC勝ち馬で桜花賞2着のオウケンサクラ(6.6倍)、クイーンカップ勝ち馬で桜花賞5着のアプリコットフィズ(6.8倍)と続く混戦ムードの中、サンテミリオンは8.5倍の5番人気だった。
フローラSの勝ち方などを見ればもうちょっと人気しても良さそうに思えるが、18頭立てになって以来1頭も勝ち馬がいない大外8枠18番、フローラS(4歳牝馬特別)勝ち馬からのオークス馬も1987年のマックスビューティ以来もう20年以上出ておらず、データ的にはこっちもなかなか買いにくい感じであった。
ちなみにこのレース、サンテミリオンをはじめアグネスワルツ、アニメイトバイオ、ギンザボナンザ、コスモネモシン、ニーマルオトメと18頭中6頭がゼンノロブロイ産駒だった。今では考えられん。
降り続く雨で稍重となったレース本番。逃げると目されたアグネスワルツを制してニーマルオトメが果敢にハナを切り、2番手につけたアグネスワルツと2頭で大きく後続を離し、1000mは60秒7と、府中2400・牝馬限定・稍重ということを考えればかなりハイペースで逃げていく。サンテミリオンは枠なりに中団外目に構え、アパパネはぴたりとその真後ろにつけた。
4コーナー終わりでニーマルオトメが力尽きて沈み、2番手のアグネスワルツが抜け出す。後続が伸びあぐねる中、外から並んで抜け出してきたのがピンクの帽子の2頭、サンテミリオンとアパパネ!
残り200m手前でアグネスワルツをかわすと、あとは完全な2頭の一騎打ち。アパパネが先にサンテミリオンをかわして先頭に躍り出るが、サンテミリオンも粘り腰を発揮して譲らない。最後の200m、必死の追い比べのマッチレース、一度はかわされたサンテミリオンが再び並びかけ、2頭が全くの横並びでゴール板を駆け抜けた。
さあ府中の長い直線コースに入って、今度はアグネスワルツ先頭に変わった、アグネスワルツ先頭に変わる、さらにはアプリコットフィズ、そして外からサンテミリオンとアパパネ! サンテミリオンとアパパネ、2頭が連れて飛んできている!
サンテミリオンとアパパネ、2頭の一騎打ちになるのか!?
さらにその後ろから、アニメイトバイオ現在5番手から4番手、
先頭は、アパパネ! 先頭はアパパネ!
サンテミリオンが食い下がる! サンテミリオンが食い下がる!
3番手アグネスワルツ、3番手アグネスワルツ、
前は、アパパネか、サンテミリオンか!
最後サンテミリオンがグイッと伸びたか、外はアパパネ!
サンテミリオンか、アパパネか! 2頭の壮絶な追い比べ!
最初に出たのはアパパネ! ゴール前、グイッとサンテミリオン!
アパパネ鞍上の蛯名正義は負けたと思い、サンテミリオン鞍上の横山典弘に「おめでとう」と声を掛けたが、結果は写真判定に。15分近くにわたった長い写真判定の末、結果はなんと同着。JRA史上初のGIでの1着同着となった。エイシンワシントンとビービーガルダンが恨めしそうな顔してるぞ。
古賀師は嬉しいGI初勝利、ゼンノロブロイ産駒ももちろんGI初勝利。勝利ジョッキーインタビューは2人同時に受け、フジテレビでは放送時間の都合で途中で打ち切られたが蛯名騎手と横山騎手は抱き合って喜びを分かち合った。ちなみに蛯名騎手と横山騎手は、1992年の帝王賞でもナリタハヤブサとラシアンゴールドで1着同着になったことがあったりする。
蛯名「僕は負けたと思ったんでねえ」
横山「いやぁ儲けもんだったね」
蛯名「もうホント負けなくて良かったです(笑)」
横山「(笑)」
「勝者は必ず、敗者を作る」とは1996年のスプリンターズS、フラワーパークとエイシンワシントンのハナ差1cmの決着を取り上げた2013年のJRAのCMのフレーズだが、2010年のオークスは、こうして2頭の馬が樫の栄冠と歓喜を分かち合ったのであった。
ちなみに賞金は1着賞金9700万円と2着賞金3900万円を合わせて折半し、両者6800万円となった。
かくして2頭の樫の女王となったサンテミリオンとアパパネだったが、その後の明暗は悲しいほどにくっきりと分かれた。
秋華賞(GI)に直行したサンテミリオンは、横山典弘の負傷で藤岡佑介に乗り替わりとなり、三冠を目指すアパパネと、クイーンSを勝ってきたアプリコットフィズに次ぐ3番人気に支持された。しかしゲート内で扉に顔をぶつけて痛恨の出遅れ、最後方から全く走る気配を見せないまま、ブービーから6馬身も離された最下位18着に撃沈。アパパネの牝馬三冠達成をはるか後方で見送るだけだった。
結局、彼女はオークスで燃え尽きてしまったか、この秋華賞で気持ちが切れてしまったのだろう。6歳1月まで現役を続け、このあと12戦したものの、その後の彼女の競走生活に語るべきことはほとんど何もない。netkeibaで戦績のページを見て貰えば充分である。触れないことも優しさだってスティルインラブの記事にもあるし……。
2013年AJCCを最後に現役を引退。社台ファームで繁殖牝馬となったが、こちらでも今のところ目立った産駒はおらず、2022年になってようやく6番仔イヴニングスター(父ロードカナロア)が産駒中央初勝利を挙げた。秋華賞馬アカイトリノムスメを出したアパパネとは、繁殖としても差を付けられてしまっている。
また、父ゼンノロブロイは彼女の後にはこれといった大物が出ず、徐々に種付け数も減り産駒も地方で走ることが多くなり、2022年に老衰で死亡。2024年現在、中央で走っている産駒は数えるほどしかおらず、おそらく彼女が最初で最後のゼンノロブロイ産駒による中央GI馬となりそうである。
そして2024年、2月に10番仔(父*マインドユアビスケッツ)を出産したのち、3月4日、サンテミリオンは病気のため社台ファームで17歳で死亡した。
2024年現在も、JRAのGIでの1着同着は2010年オークスが史上唯一。最後の200mの熾烈な追い比べからの同着という決着は「名勝負」として語られることも多いが、しかし、そこにたとえばこの2年前の大接戦ドゴーン!ウオッカとダイワスカーレットの天皇賞(秋)のような「ライバル同士の」という言葉はつかない。2010年の牝馬三冠といえば「三冠牝馬アパパネ」の印象が強く、サンテミリオンはどうしても忘れられがちである。
三冠牝馬の最大のライバルになりそこねた馬、サンテミリオン。残された彼女の仔がアパパネの仔と、あのときのオークスの決着をつける日が来ることを願いたい。
ゼンノロブロイ 2000 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ローミンレイチェル 1990 鹿毛 |
*マイニング | Mr. Prospector | |
I Pass | |||
One Smart Lady | Clever Trick | ||
Pia's Lady | |||
*モテック 1995 黒鹿毛 FNo.16-g |
*ラストタイクーン 1983 黒鹿毛 |
*トライマイベスト | Northern Dancer |
Sex Appeal | |||
Mill Princess | Mill Reef | ||
Irish Lass | |||
Sudaka 1986 黒鹿毛 |
Garde Royale | Mill Reef | |
Royal Way | |||
Didia Clara | Sea Break | ||
Patria |
クロス:Mill Reef 4×4(12.50%)、Buckpasser 5×5(6.25%)
掲示板
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最終更新:2025/03/23(日) 18:00
最終更新:2025/03/23(日) 18:00
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