平たい長方形をした本来は薬を入れるための小さな容器。上下についている紐を使って腰にぶら下げたり、帯の裏側に入れたりして用いる。数える時は合ないし具とつける。
元々は薬ではなく、印鑑や印章を入れるための箱だったのでこの漢字が当てられているのだが、時代とともに用途が変化し、江戸時代のころには薬入れとして認識されるようになった経緯を持つ。江戸時代中期以降に描かれた浮世絵にもよく登場し、装身具の一つとして広く用いられたことがうかがえる。
あくまで小物入れの一種なので中世までは簡素なデザインなものが多かったが、蒔絵や漆絵、螺鈿細工などの工芸技術が発達した近世(江戸時代)以降においては多様な装飾が用いられるようになり、現在よくみられるような洒落た印籠が一般的なイメージとして定着するようになった。
日本国内においてはその本来の用途というより、かつて定番の時代劇の一つであった『水戸黄門』シリーズの影響で相手をひれ伏せさせるアイテムとしてのイメージが深く浸透している。余談だが、その様式は定着したのは中期以降の話で、初期は印籠をさりげなく見せて黄門の地位を察させたり、もしくは暴れん坊将軍のようにただ単に身分を明かして面通しさせることで認識させるパターンが多かった。
現代においてはもはや印籠を日常に用いてる人はほぼいないが、美術品としての価値に注目して蒐集しているコレクターも存在する。京都の清水三年坂美術館は特に海外に流出した印籠を買い戻して展示を行っている。
ミームとしては時代劇での用法から転化して、相手に権威を見せつけるアイテムや事物を印籠になぞらえて使うことがある。
一見木にみえて、実は数段重なった和紙と漆を固めることでできている。一応木彫りのものも存在はするが、日常で携行する道具であるため直射日光に晒されたり、変質して開けづらくなったりするのを防ぐ為に劣化しにくく、木よりも比重が軽い和紙が用いられるようになったのである。
また印籠はその製作上、重箱のように上下の蓋を含めて5~6段に分けたものを紐でまとめて一つの形にまとめている構造になっている。
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最終更新:2025/12/05(金) 13:00
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