小田急30000形とは (オダキュウサンマンケイとは) [単語記事]

小田急30000形とは、小田急電鉄の所有する特急用車両である。1996年に登場した。

概要

愛称はEXE(EXE ファイルEXcel ent Express)である。大きな特徴は6両編成と4両編成で組成されている点、ロマンスカーのアイデンティティでもある展望室が存在しない事である。

この車両の登場以前の在籍車両はNSEこと3100形、LSEこと7000形、HiSEこと10000形、RSEこと20000形の4形式であった。RSEを除けばいずれも展望室、連節台車を備えた電車であるが、このうち3100形は製造から30年以上が経過し、更新こそしていたが老朽化が進んでいた。また、ロマンスカーはこれまで観光輸送がメインであったが、沿線の開発が進み、通勤用途に使用されるケースに使用されると11両であっても実質20m車8両分のNSEやLSE、HiSEはどうしても輸送力としては不足気味であった。

そこで登場したのが30000形であった。IGBT-VVVFインバーターを採用し、静寂性を高めたほか、車体は20mのボギー車を採用、平凡ではあるが定員の大幅増を果たし、内装に関してもデザイナーを交えて、高級感の演出が行われた。当初は喫煙車が設置されていたが、禁煙化の流れを受けて現在は全車禁煙車となっている。

6+4の強みを生かし、箱根方面系統と江の島方面系統の列車を分割できる運用にもついた。なお、後年登場している60000形は30000形との共通運用をにらんでおり、編成数などで共通する所がある。

評判

こうして登場した30000形はNSEの置き換えを行い、ロマンスカーとしては最大勢力となる7編成が存在している。定員増やシックな内装で通勤などでの利用者からの評判はおおむね良好である。一方でマニアや観光客からの受けはいま一つである。

置き換えの対象車がロマンスカーの代名詞でもあったNSEであった事もあるかもしれないが、そのロマンスカーのアイデンティティである展望車が連結されていない事や21世紀にあっても十分先進的である連節台車が装備されていないなど、良くも悪くも「平凡」な車両であるがゆえに非日常への水先案内人たるロマンスカーを心待ちにしていたであろう観光客が「普通」の車両を宛がわれようものなら、旅の醍醐味も削がれてしまう事は想像に難くない。実際に通勤利用は増えたが、観光でロマンスカーを利用する数が減っており、特急の戦略の難しさをうかがわせるものであった。当の小田急もやはりこの点を深刻にとらえていたようで2005年に伝統の展望車や連節機構を備えた50000形を導入した。

他にもこれまでロマンスカーは鉄道友の会のブルーリボン賞常連であったが、この車両に限っては表彰されておらず、また当時の箱根への観光ポスターにも最新の30000形ではなく、2世代前の10000形を採用している。

このようにどこか地味・らしくないという印象が先んじてしまうが、時代の変化による多様化したロマンスカーのあり方に対する一つの回答である事は確かであり、ことに沿線住民への通勤サービスと言う面では大きく貢献した点は無視する事は出来ない。実際、時間帯によってはすぐに満席になってしまうホームウェイ号ではその着席数の多さがプラスに作用している点は特筆される。