手形貸付とは (テゲタカシツケとは) [単語記事]

手形貸付とは、銀行や貸金業者が行う融資の一形態で、債務者の振り出す手形を債権者が受け取って行う融資のことをいう。略称は手貸（てがし）。

債務者から見た場合の表現は、手形借入である。

※本記事において、銀行とは、預貯金取扱金融機関すべてを指す。

※また、本記事において、貸金業者とは、「ノンバンク」という通称で呼ばれる存在で、貸金業法に基づいた制度に登録して金銭貸付を生業とする業者のことを指す。
　

概要

企業が、銀行・貸金業者から融資を受けるとき、手形を振り出して銀行・貸金業者に渡すのが、手形貸付である。

銀行・貸金業者は利息を計算して、手形の支払金額から利息を引いた金額のお金を企業に貸し付ける。融資した時点で利息を貸し手に支払うわけであり、こういう利息の取り方を「利息の先取り」という。

手形を不渡りにしたら、つまり手形の債務を履行しなかったら、手形交換所規則に基づいて厳しい制裁が科せられる。不渡りを出したという情報が手形交換所を通じて全国の金融機関に通知され、全国の金融機関からの融資を受けづらくなる。6ヶ月以内に2度の不渡りを出すと銀行から取引を停止される処分が2年間続き、事実上の倒産となる。つまり、銀行・貸金業者は、債務者の手形を確保することで、手形交換所規則による援護を受けることができる。

手形貸付は、手形交換所規則による援護を受けることができるので、銀行・貸金業者にとって短い審査で済ますことができ、素早く融資することができる。手形貸付の際は、貸し手が手形以外の担保や連帯保証人を要求しないことが多い。

手形貸付は、銀行・貸金業者が企業に対し1年以内の短期融資を行うときに、よく使われる方法である。返済が長期にわたる巨額な融資を行うときには、手形貸付という形態を使わないことが多い。

手形貸付は、当然ながら、借り手が手形を振り出すことを必要とする。つまり、借り手がどこかの銀行から厳しい審査を受けた上で当座勘定契約を結び、当座預金口座を開設していなければならない。
　

証書貸付との比較

銀行・貸金業者が企業に対して行う融資の方法は、手形貸付の他に、証書貸付というものがある。略称は証貸（しょうがし）。

証書貸付は、銀行・貸金業者と企業の間で金銭消費貸借契約を結び、金銭消費貸借契約書（借用書）を作成して、その上で融資を行う。

手形を不渡りにしたら、先述の通り、手形交換所規則に基づいて厳しい制裁が科せられる。ところが、証書貸付による融資の債務を履行しなかった場合、手形のときほどは厳しい罰が科せられるわけではない。つまり、銀行・貸金業者は、証書貸付をする場合、業界団体の制定した規則による援護を受けることができない。それゆえ、証書貸付を行うときの審査は、手形貸付のときよりも入念に行われる。また、担保（返済できないとき、代わりに徴収する財物）や連帯保証人を融資申込者に要求することも多い。

証書貸付は厳しい審査が必要なので、融資の実行まで時間がかかる。

証書貸付は1年を超える長期融資に使われることが多い。設備投資を行うための設備資金を借りるには、やはり10～15年程度の返済期間を設けないといけないので、証書貸付で融資してもらうことが多い。

手形貸付の際は利息を先取りすることが多いが、証書貸付の際は利息を後取りすることが多い。つまり、証書貸付の返済は、毎月の返済に利息を上乗せする。

証書貸付の場合、借り手は、どこかの銀行に当座預金口座を開設している必要がない。ただの普通預金口座を開設しているだけの状態でも、証書貸付による融資を受けることができる。

手形貸付と証書貸付の比較をまとめた表は、以下の通りになる。
　

	手形貸付	証書貸付
交わされるもの	債務者が振り出した手形	金銭消費貸借契約書（借用書）
債務不履行の際の制裁	手形交換所規則に基づいた厳しい制裁がある	手形交換所規則に基づいた制裁が債務者に科されず、融資者の自己責任となる
審査の厳しさ	緩い	厳しい
審査の時間	短い	長い
担保や連帯保証人	要求されない	要求される
融資の期間	1年以内の短期融資	1年を超える長期融資
利息の取り方	利息の先取り。手形の支払額から利息を引いた額を融資される	利息の後取り。月々の返済のときに利息を支払う
借り手が開設している銀行口座	厳しい審査を受けた上で、当座預金口座を開設する必要がある	当座預金口座を開設する必要がない。誰でも開設できる普通預金口座でよい