負の所得税とは、累進課税制度を拡張したものである。給付付き税額控除ともいう。
ベーシック・インカムとは色々な意味で別物だが、比較することで理解の助けにはなるだろう。
グラフがないとわかりづらいので、こちらのサイト
を参照の上で読むことをすすめる。現行の「累進課税+生活保護」制度、ベーシック・インカム、負の所得税それぞれの利点欠点がグラフと共にわかりやすくまとめられている。
累進課税+生活保護の制度では、貧困層において、働いて所得を増やしても生活保護の支給額が減るために総収入が増えず、労働意欲が減るという「福祉の罠」が発生する。
これを避けるために考案されたのが負の所得税である。
この制度では、所得税が免除される所得以下では、所得が減るほど多く給付を与える。しかし、所得と給付の合計額は、所得が上がるとつねに増えるように給付額を設計するのである。
累進課税制度を課税が免除されるラインより下まで拡張し、負の課税、つまり給付金を所得に応じて支給するから「負の所得税」というわけである。
ベーシック・インカムもグラフの形は似ている。しかし、経済的効果が同一だというのは間違い
である。
労働意欲を妨げる福祉の罠を回避できるのは同じだが、世帯ごとに所得税に応じて給付する負の所得税では、家庭内役割分担が影響して給付額に差が生じる。また子供などにも支給されない。
また、社会的効果も異なる。個人単位の支給と世帯単位の支給では、影響が質的に異なってくる。
さらに、運営コストも異なる。ベーシック・インカムは個人単位で、全国民に無条件で一律に同額を給付するため、コストがほとんどかからない。一方、各世帯の経済状況に応じて課税するかどれだけ給付金を出すか決める負の所得税は、生活保護制度と同様に調査コストがかかる。
必要な財源も大きく異なる。ベーシック・インカムは、負の所得税に比べてはるかに大きな財源が必要になる。配る量も多いので、正確には財政規模、つまり政府を通して動くお金が大きくなると言える。
| 政策 | 生活保護 | 負の所得税 | ベーシック・インカム |
|---|---|---|---|
| 所得が増えても総収入が増えない状況 | 貧困層で発生 | なし | なし |
| 財源の規模 | 中 | 中 | 莫大 |
| 調査などの運営コスト | 中 | 中 | ほぼゼロ |
| 支給単位 | 世帯 | 世帯 | 個人 |
| 経済状況・扶養関係の調査 | 要 | 要 | 不要 |
| 受給の敷居 | 高い | 中 | 低い |
| 専業主婦など無所得者への配分 | 中 | 中 | 大 |
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最終更新:2025/12/07(日) 02:00
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