Sardの定理(Sard's theorem)とは可微分写像の臨界値の測度に関する定理である。
f : M → N を、m 次元 Cr 級第二可算多様体 M から、n 次元 Cr 級多様体 N への Cr 級写像とする。
このとき、r ≧ max(m-n+1,1)ならば 、f の臨界値の集合 f( Cf ) は測度が 0 である。
この定理の条件 r ≧ max(m-n+1,1) を覚えることにはあまり意味がない。多様体論において扱われるのは多くの場合C∞級写像だからである。写像がC∞ 級の場合の証明は[2]に見通しの良い証明が載っている。(ポントリャーギンによる証明らしい)微分可能性が一般の場合の証明はSardの定理の原論文である[3]や、[1]に記述されてており、参考文献[0]には原論文の方針に沿った証明が解説されている。
参考文献[0]は微分可能性の制限も込めた場合のSardの定理の証明が日本語で書かれている唯一の文書だと思われる。
応用上、f( Cf ) の測度は 0 ということよりも、「測度0の集合の補集合は稠密である」ということを用いて、f( Cf ) の補集合、つまり正則値全体が稠密であるということをよく用いる。正則値というイイ感じの点がが稠密になっているというのが、この定理の嬉しいところである。
f : M → N が十分高い微分可能性をもてば臨界値の集合 f( Cf ) の測度は 0 であるということが定理の要点である。例えば、f が C∞ 級なら、そうなっている。
[0]S.スターンバーグ著,高橋恒郎訳,微分幾何学,吉岡書店,数学業書,1974(微分可能性の制限も含めた、Sardの定理の証明が載っている)
[1] B.Malgrange, Ideals of differentiable functions, Tata Institute of Fundamental Research Studies in Mathematics 3, Oxford University Press, 1967
[2] J.Minor,Topology from the differentiable viewpoint,Section3,The University Press of Virginia,1965(邦訳が「ミルナー微分トポロジー講義」として出版されている)
[3] A.Sard, The measure of the critical values of differentiable maps, Bull. Amer. Math. Soc. 48, 1942, pp883-890
掲示板
25 ななしのよっしん
2016/06/25(土) 21:50:53 ID: I6xemFq+PD
参考文献に挙げられているミルナーの本には写像がC^∞の場合しか証明してない気がするのだが、誰か写像の微分可能性が制限されてる場合の証明が載ってる本などを知らないだろうか
26 ななしのよっしん
2016/07/12(火) 14:26:20 ID: I6xemFq+PD
微分可能性に関する条件が間違っています。正しくは
r≧max{m-n+1,1}
としなければならないです。
r>m/n-1と言う仮定で定理が成り立たないことを示す例はSardの原論文
A.sard, The measure of the critical values of differentiable maps, Bull. Amer. Math. Soc. 48 (1942), 883-890
の一番最後の反例のm=3,n=2の場合を考えると分かります。
27 ◆CBGbQXRNEo
2020/02/12(水) 09:52:34 ID: Kc5M2z6mb3
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/06(土) 10:00
最終更新:2025/12/06(土) 10:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。