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スイス

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基本データ
正式名称 スイス連邦
Confoederatio Helvetica(ラテン)
Schweizerische Eidgenossenschaft(独)
Confédération Suisse(仏)
Confederazione Svizzera(伊)
Confederaziun Svizra(ロマンシュ)
国旗
国歌 スイス讃歌
公用語 ドイツ語
フランス語
イタリア語
ロマンシュ語
首都 ベルン(Bern)
面積 41,290km²(世界第132位)
人口 約808万人(世界第94位)
通貨 スイスフラン(CHF, Fr.)

スイスとは、西ヨーロッパ中部にある連邦制国家である。

概要

正式名称はスイス連邦(仏:Confédération Suisse)あるいはスイス誓約者同盟(独:Schweizerische Eidgenossenschaft)。 26のカントン(州)から構成される連邦共和国であり、永世中立国としても有名。

公用語

スイス連邦はドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の4つの言語を公用語とする。そのためか売店のおばちゃんがトライリンガル(三言語話者)だった、なんて話はザラにある。ただ州ごとの訛りが強い。

異言語の話者の間では英語が実質的な共通言語となっている。

地理

面積は九州より少し小さいくらい。日本の10分の1の大きさ。国土の南半分はアルプス山脈、北半分はスイス高原である。北部のフランスとの国境沿いはジュラ山脈。マッターホルンなど有名な山がある。つまりほとんど山。気候は概して穏やか。

最大都市はチューリヒ。あとにジュネーブ、バーゼル、ベルン、ローザンヌと続く。

政治

スイス連邦の政治制度は直接民主制、比例代表制、議会統治制、地域分権を特徴としている。

直接民主制

日本で国民投票といえば憲法改正のときくらいしか機会がないが、スイスでは憲法に限らず一般の法律でも頻繁に国民投票(レファレンダム)が行われ、ときに国民から立法が発議(イニシアティブ)される。比較的人口が少ないこと、企業や組合などの中間団体による集票システムが整っていること、政情が安定していることなどがこれらの直接民主制を可能にしている。

議会統治制

スイス連邦は議会統治制という世界的にも稀有な政治体制を採用している。一般的な議院内閣制では勝者総取り方式(Winner-take-all)で最多議席数を持つ政党あるいは連立与党が全ての政府閣僚を輩出するが、スイスでは上下両院の合同会議により、各政党の議席数に応じた数の閣僚(連邦参事)が選出される。

スイスの内閣にあたる連邦参事会は議会の解散権を持たず、構成員たる連邦参事はそれぞれ所属する政党を代表するため、なるべく議会の総意に従って政府を運営しなければならない。かように、スイスは行政府が立法府に統制される制度となっている。ちなみに、首都ベルンにある連邦院(Bundeshaus / Palais fédéral)は議事堂と行政庁舎が一体化した建物であり、スイス議会統治制の象徴になっている。

連邦議会

立法府である連邦議会(Bundesversammlung / Assemblée fédérale)は国民を代表する国民議会(Nationalrat / Conseil National)と州を代表する全州議会(Ständerat / Conseil des Etats)によって構成される。両議会の地位は対等であり、議員任期は4年である。

国民議会の議席数は各州へ人口に応じて割り振られるが、全州議会は各州2名(準州は1名)と定員が決まっているため、「一票の格差」が非常に大きい。

連邦議会は比例代表制・多党制を基本とするため、毎回の選挙ごとに大きな議席数の変動はないが、近年は移民・難民の流入制限を訴える国民党が躍進して第一党になっている。

下院にあたる国民議会では以下の四大政党が過半数の議席を占める。

  • 国民党(Volkspartei / Union Démocratique du Centre):保守主義
  • 社会民主党(Sozialdemokratische Partei / Parti socialiste):中道左派
  • 自由民主党(Freisinnig-Demokratischen Partei / Les Libéraux-Radicaux):古典的自由主義
  • キリスト教民主党(Christlich Demokratische Volkspartei / Parti Démocrate-Chrétien):中道右派

連邦参事会の閣僚数分配比率は各党の議席数に応じて決められるため、現在は7名の参事会メンバーのうち国民党、社会民主党、自由民主党から2名ずつ、キリスト教民主人民党から1名が選出されている。

連邦大統領

スイスは個人の国家元首を持たず、連邦参事会が一体となって国家元首の役割を果たすと定められている。外遊や元日・建国記念日の演説など、誰かひとりが連邦政府を代表しなければならない場合は連邦大統領(Bundespräsident / Président de la Confédération)がその任に当たる。大統領職は連邦参事による1年ごとの持ち回りで、担当の連邦参事は閣僚職と大統領職を兼任する。連邦大統領はあくまで「同輩中の首席(First among equals)」に過ぎないため、他の連邦参事と比べて特別の権限は持たないが、緊急事態かつ連邦参事会を招集できない場合のみ単独で決定権を行使できる。

副大統領(Vizepräsidentin / Vice-président)は翌年の次期大統領候補が就くことが慣例になっている。

連邦参事会

連邦参事(Bundesräte / Conseillers fédéraux)は各政党から議席数に応じて7名が任期4年で選出される。なお、選出に際しては国内の地域・言語の多様性を尊重することが慣習として定着している。7名の連邦参事は7つの連邦省(外務省、内務省、法務・警察省、防衛・市民保護・スポーツ省、財務省、経済・教育・研究省、環境・運輸・エネルギー・通信省)をそれぞれ所管する。

連邦参事会(Bundesrat / Conseil fédéral)は毎週水曜日の午前に定例会議を行う。連邦大統領が議長を務め、議事進行と仲裁をする。会議の結果は連邦官房を通じて速やかに議会・各省・メディアに伝えられる。連邦官房の長たる連邦官房長官(Bundeskanzler / Chancelier fédéral)は官僚機構のトップであり、連邦議会によって選出される。連邦官房長官は投票権こそ持たないものの連邦参事会に出席して議論に加わるため、「8人目の連邦参事」と呼ばれる。

参事会メンバーは水曜日の定例会議後に一緒に昼食を取ることが慣例になっている。また、たまにメンバー全員で国内旅行に行くなどして、メンバー間で友好的な信頼関係を築くように努めている。すべては参事会が円滑に行政を運営し、一体となって国家元首の役割を果たすためである。

地域分権

カントン(州)は連邦政府に委ねられない全ての権限を有するとされ、独自の憲法と高度な自治権を持っている。州政府は連邦憲法および州憲法の範囲内で立法・行政・司法を担っている。これはスイス連邦の起源が各州の緩やかな連合体だったことに由来している。

州議会は一院制で、州政府は住民投票で選出された閣僚で構成される。州は独自の税制、教育制度、医療福祉制度、警察制度を持っている。

州はさらに多数の自治体(市町村)から構成される。ほとんどの自治体では住民から代表がひとり選出され政務にあたるが、大きな自治体では評議会が置かれる。自治体の権限は州によって異なるが、一般に道路・学校建設、水道・電気料金、教育、医療、交通、治安などに関する決定権を持つ。

スイス人の政治観

スイスでは「政治家もまた一市民」という意識が根強く、連邦議員や連邦参事といえども仰々しい警護が付くことは滅多にない。彼らは一般市民と同じようにベルン市内に住居を借りて住み込み、公共交通機関を利用して通勤する。また、連邦議員は十分な報酬があるにもかかわらず全員が「兼業政治家」であり、何かしら別の職を持っている(ただし、連邦参議は職務の性質上兼職が禁止される)。

スイス人は一般に国や州より自治体への帰属意識が強く、スイスの分権体制に強い影響を及ぼしている。

安全保障

国民皆兵

20~30才の男子には兵役の義務があり、ほぼ全員が予備役軍人。ちなみに女性は志願制で、外国人は免除となっている。
更に各家庭には自動小銃が貸与され、対戦車兵器などの大型兵器は地区単位の武器庫に保管されている。ただし昨今のテロ事情に鑑みて、近年では弾薬は有事の際にのみ貸与されることになっている。

重武装

「侵略するなら相応の損害を覚悟しておけ!」というのが国是の国。
民家には銃眼があったり、スイッチ一つでトーチカに変形したり、山をくり抜いて臨時の飛行場を造るなどして国土全体を要塞化している。更に万が一に備えて食糧貯蔵は常識となっており、どのご家庭にも缶詰や長期保存食が常備されている。
だが最近は核シェルターの設置率が100%ではなくなったり、弾薬は軍で管理になったりなど、冷戦終結の煽りはそれなりに受けているようである。
詳しくは関連商品の「民間防衛」で。

永世中立

外交・安全保障の基本方針として、普遍性・永続性のある超国家的共同体(国際機関・軍事同盟)以外には加盟しないとしている。EFTAの結成当初からの加盟国であり、現在に至るまでEUやNATOには加盟していないが、パートナーシップは結んでいる。
国連に加盟するときすら大論争になったというのだから、筋金入りの独身主義者である。

衛兵と傭兵と

スイス軍は現在でもヴァチカン市国に衛兵隊を派遣している。これは現存する国軍の中でも最古(1505年創設)である。
黄と青のストライプが特徴的な軍服、赤い羽根飾りの兜(モリオン)とプレートメイル、ハルバードを装備した姿がつとに有名。なお近年では情勢に鑑みて催涙スプレーや小型拳銃を携行、教皇の身辺警護にあたっている。
給料は月約11万円程度と控えめだが、保険免除や住宅・食費保証などの特権があり、外国での職業訓練にもなる為に志願者が多いそうな。

上記の衛兵隊派遣からも解るように、かつては外貨を獲得する手段として傭兵部隊がヨーロッパ各地に派遣されていた。
ヴァチカンと並んで有名なのがフランス王家に仕えたスイス傭兵歩兵連隊、通称「ギャルド・スイス」。フランス革命においてフランス人の衛兵隊が民衆に味方してテュイルリー宮殿を攻撃した際、宮殿を守って900人以上の傭兵が戦死した。
スイスのルツェルンには「嘆きの獅子」と呼ばれる、矢を受けながら百合の紋章の盾をかばう瀕死のライオンをかたどった記念碑が立てられ、彼らの悲劇と忠節を今に伝えている。

経済

「金よりも堅い」と称されるスイス・フラン(CHF)を通貨としている。

スイスはかつては貧しい農業国だったが、のちに鉄道、繊維、時計、金融などの産業が開花した。現在は国民一人あたりの所得額で世界第5位に位置するなど、小国ながら経済的に豊かな国である。
主要な産業は金融業・保険業のほか、製薬業、精密機器・電子機器産業、観光業など。

有名なスイスの企業はUBS(金融)、クレディ・スイス(金融)、ピクテ(金融)、ロンバー・オディエ(金融)、アクサ・ヴィンタートゥール(保険)、チューリヒ(保険)、バロワーズ(保険)、ヴォードワーズ(保険)、グレンコア(商社)、アデコ(人材)、ネスレ(食品)、ノバルティス(製薬)、ロシュ(製薬)、ABB(電力・電機)、パテック・フィリップ(時計)、オーデマ・ピゲ(時計)、ヴァシュロン・コンスタンタン(時計)、スウォッチ(時計)、ロジテック(デジタル周辺機器、日本ではロジクールで展開)など。
企業の99%は中小企業で、全労働人口の3分の2を雇用している。

スイスの銀行

数々のスパイ映画などで描写される通り、世界の富裕層を得意先にしたスイスのプライベート・バンクは、顧客情報を厳格に守ることで知られてきた。
しかし、こうした秘密保持が脱税や資金洗浄の温床になったため、現在は顧客情報の開示について柔軟になっている。特に、外国人顧客の情報守秘義務はほとんど廃止された。

スイスの時計

「時計といえばスイス」と謳われるほど、ジュラ山脈付近に集中するスイスの時計産業は世界的に有名である。そんなスイス時計産業も、かつて市場を席巻した日本製クォーツ時計には大打撃を与えられ、瀕死の状態に陥った。
現在はクォーツ式時計と機械式時計の市場で棲み分けができているため、スイスの時計企業は富裕層を狙った高級機械式腕時計を中心に生産し、業績は回復している。

「始業時間はスイス製時計で○○時だ! 日本製時計での○○時じゃないぞ!」

主要都市

スイスの諸都市は国有企業であるスイス連邦鉄道(Bundesbahnen / Chemins de Fer Fédéraux)によって結ばれ、市内はバスとトラムの交通網が発達している。どの都市にも中世の町並みがよく残っている。

チューリヒ(Zürich)

スイス中央部に位置する連邦最大の都市。市域人口は約38万人、ドイツ語圏。

チューリヒ国際空港と国内最大のターミナル駅であるチューリヒ中央駅があり、スイスの玄関口である。

市中心部のパラデ広場周辺には大銀行や保険会社、証券取引所が軒を連ね、欧州屈指の国際金融センターを形成している。ドイツ語の主要な新聞社、テレビ・ラジオ局も多くがチューリヒに本社を置く。

ジュネーヴ(Genève)

スイス西端に位置する連邦第二の都市。市域人口は約19万人。フランス語圏。

アルプス山脈とジュラ山脈に挟まれた湖畔の小さな街だが、国際連合欧州本部(旧国際連盟本部)、世界貿易機関(WTO)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、難民高等弁務官事務所(UNHCR)、赤十字社など多くの国際機関が本部・事務局を置く世界都市でもある。

昔から商工業の盛んな都市であり、スイス時計産業の中心地であるほか、世界的に有名なスイスのプライベート・バンク(無限責任を負うパートナーが所有・経営する銀行)の本店が集中している。

バーゼル(Basel)

スイス北端、フランス・ドイツとの国境沿いに位置する連邦第三の都市。市域人口は約16万人。ドイツ語圏だが、フランス語話者も多い。

ライン川の最上流に位置する交通の要衝であり、古くから水運・水力を利用した繊維・織物産業や製紙業が栄えた。織物の染色技術がのちに化学工業に発展し、いくつもの製薬会社の誕生につながった。

国際決済銀行(BIS)の本部が置かれるほか、金融システムに関する種々の国際委員会の開催地になっている。各国の中央銀行総裁が集まり市中銀行の自己資本比率やリスク管理の指針を定めるバーゼル銀行監督委員会の決定は開催地の地名から取って「バーゼル合意」と呼ばれる。

国内最古の大学、美術館、動物園に加えて多彩な博物館を擁する学芸・文化の中心地でもある。

ベルン(Bern)

スイス北西部に位置するスイス連邦の首都。市域人口は約13万人。ドイツ語圏。クマー

湾曲したアーレ川の半島部が街の発祥地であり、ここにユネスコ世界文化遺産に登録されたベルン旧市街と物理学者アインシュタインの家がある。連邦政府庁舎である連邦院は半島の付け根部分に所在する。

ローザンヌ(Lausanne)

スイス西部、レマン湖の北端に位置する連邦第五の都市。市域人口は約13万人。フランス語圏。

国際オリンピック委員会本部や各種スポーツの連盟本部が集まるスポーツの中心地であると同時に、様々な劇場や芸術系の学校、美術館のある文化都市でもある。また、連邦最高裁判所が置かれている。

モータースポーツ禁止の国

1955年にル・マン24時間レースにおいて発生した大事故以来、この国ではモータースポーツを危険で環境に悪影響を及ぼす行為とし、国内でのレースイベント開催を一切禁止する法律が施行された。以来、レーシングドライバーやライダーは職種として存在しないものとされ、納税の義務が無いという制度になっている。なので、ミハエル・シューマッハ、セバスチャン・ベッテル、キミ・ライコネンと言った名だたるF1ドライバーたちがこの国に居を構えている。多額のサラリーを受け取る著名ドライバーにとって、この国は一種のタックスヘイブンなのである。
しかし、実際は多くのスイス人がヨーロッパにおけるレースに四輪・二輪を問わず参戦している。何しろ他の国と地続きなので、ちょっと遠征すればいくらでもレースには参加できるからだ。また1980年代にF1で「スイスGP」が開催されたこともあったが、これは近辺の他国(フランス)で開催したものを便宜上そう名乗ったものである。

そして、2018年にこの半世紀以上に渡る「禁止令」が解かれようとしている。フォーミュラEのチューリヒE-Prixが行われることが決定している。安全性が当時とは比較にならぬほど向上し、フォーミュラEが騒音・排ガスなどの環境問題もクリアしていることが決め手になった。

スイスの著名人

  • レオンハルト・オイラー(数学者)
  • ファビアン・カンチェラーラ(宇宙人自転車プロロード選手)
  • ブルーノ・ガンツ(俳優)
  • フェルディナン・ド・ソシュール(言語学者)
  • マルチナ・ヒンギス(テニスプレイヤー)
  • ロジャー・フェデラー(テニスプレイヤー)
  • アンディ・フグ(K-1選手)
  • サラ・マイヤー(フィギュアスケート選手)
  • ステファン・ランビエール(フィギュアスケート選手)
  • ペーター・ザウバー(F1チームオーナー)
  • セバスチャン・ブエミ(元F1ドライバー、WEC・フォーミュラEドライバー)
  • フランク・ミュラー(時計技師)
  • ハンス・ルドルフ・メルツ(政治家、元大統領・財務相)
  • カール・グスタフ・ユング(精神科医)
  • ジャン=ジャック・ルソー(哲学者、作曲家)

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関連項目

  • 国の一覧
  • ヨーロッパ
  • 中央ヨーロッパ
  • リヒテンシュタイン
  • スイス・フラン
  • レマン湖
  • アルプスの少女ハイジ
  • 低燃費少女ハイジ
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