ホワイトフーガ(White Fugue)とは、2012年生まれの日本の競走馬。芦毛の牝馬。
2023年現在クロフネ産駒唯一のダートGI級勝ち馬であり、名騎手・蛯名正義に最後のGI級勝利を届けたダートの名牝。
主な勝ち鞍
2015年:JBCレディスクラシック(JpnI)、関東オークス(JpnII)
2016年:JBCレディスクラシック(JpnI)、TCK女王盃(JpnIII)、スパーキングレディーカップ(JpnIII)
2017年:さきたま杯(JpnII)、マリーンカップ(JpnIII)
概要
父クロフネ、母マリーンウィナー、母父フジキセキという血統。
父は2001年のNHKマイルカップを制しマル外開放初年度の日本ダービーにも挑んだ外国産馬。しかしそれ以上に天皇賞(秋)を除外になったために挑んだ武蔵野Sで神がかり的な圧勝をし、続くジャパンカップダートもレコード圧勝して僅か2戦でダート史上最強馬として伝説になったことで知られる。
種牡馬としても大成功を収めたが、産駒の活躍馬は芝のスプリント~マイルに偏っており、自身の適性から期待されたダートでは勝ち星こそ多いものの(産駒JRA通算1400勝ちょっとのうち1000勝超がダート、地方では3000勝を記録している)、交流重賞を含めても重賞勝ち馬は2022年現在8頭だけと重賞レベルの活躍馬はあまり出なかった。
母は船橋の所属で5戦2勝。
母父は4戦4勝、無敗のまま皐月賞前に故障引退した「幻の三冠馬」で、こちらも種牡馬として大成功したが産駒の活躍馬は概ね芝のマイラーに偏っている。一方、母父としての活躍馬はサウンドトゥルーを筆頭にダートが中心。
2012年3月28日、浦河町の梅田牧場で誕生。オーナーはニシケンモノノフ、ヒカリオーソなどを所有する西森鶴(高知の建設会社社長)。主戦騎手は大野拓弥(デビュー~2016年6月まで)→蛯名正義(それ以降)。父譲りの芦毛の馬体に黄色いメンコが目印であった。
白き遁走曲
2歳~3歳春・勝利への遁走曲、始まる
美浦・高木登厩舎に入厩し、デビューは2014年12月6日の中山競馬場の新馬戦(ダート1800m)。大野拓弥を鞍上に、悠々と逃げて後続を突き放し、7馬身差の圧勝デビューを飾る。
明けて3歳、1月の黒竹賞(500万下・中山ダート1800m)は2番手追走から直線抜け出すもゴール手前でアンヴァリッドに差し切られて2着。中2週で府中ダート1400mの500万下を勝つと、3月のフラワーカップ(GIII)で芝に挑戦したが、3番手追走から直線でみるみる失速し最下位16着に惨敗した。
ダートに戻り、中1週で向かった伏竜ステークス(OP)は先手を切って逃げたが直線で捕まり7着。
5月の端午ステークス(OP)では蛯名正義に乗り替わり、中団の内に控えると直線で狭いところを抜け出して、牡馬を蹴散らし快勝。蛯名騎手は「すごくいい馬」と絶賛する。
鞍上を大野拓弥に戻し、6月の関東オークス(JpnII)に参戦。断然の1番人気はNHKマイルカップ2着でダート初参戦のアルビアーノ(1.4倍)で、ホワイトフーガは3.9倍の2番人気。クロフネ産駒だし2100mは長いんじゃない?という懸念もなんのその、スタート直後は中団につけながらホームストレッチで前に出て行き1コーナーで一気に先頭に出ると、そのまま逃げて後続を置き去りにし、なんと2着に2.3秒差をつける大差楽勝、大圧勝を飾る。
3歳秋・目標、打倒サンビスタ!
これで一躍牝馬ダート戦線の注目株となったホワイトフーガ。続いて8月のブリーダーズゴールドカップ(JpnIII)で古馬戦線に参戦。当時のダート牝馬最強格・サンビスタ(2.6倍)とあまり差のない2番人気(3.2倍)に支持されたが、直線で4番人気アムールブリエとサンビスタの叩き合いに置いていかれて5馬身突き放された3着に敗れる。
10月、JBCレディスクラシックを目指して前哨戦・レディスプレリュード(JpnII)へ。2番手追走から直線抜け出しを図ったが、ぴったりマークしてきたサンビスタにあっさりと置いていかれ、トロワボヌールにもかわされて3着。
2戦ともサンビスタの前を行き、直線に入ったところで捕まって突き放されるというパターンでサンビスタに格の違いを見せ付けられるような着差をつけられたホワイトフーガ。しかしこの3歳牝馬、2歳上のダート女王打倒へ虎視眈々と牙を研いでいた。
そんなわけで11月、大一番のJBCレディスクラシック(JpnI)。全2走の反省からこのレース、ホワイトフーガと大野騎手はこれまでの先行策を止め中団に控え、サンビスタに前を行かせてガッチリとマークする作戦に出る。直線でサンビスタが抜け出そうとしたところで、その内を突いて一気に加速。これまでやられてきた展開をやり返すようにあっという間にサンビスタを突き放し、そのままなんと5馬身差をつけてゴール板へと飛び込んだ。
3歳馬の勝利はレース史上初。断然人気のダート女王を圧倒して前2走のリベンジを果たし、ホワイトフーガは3歳にして新たなダート女王に戴冠した。
なお敗れたサンビスタは翌月、このJBCレディスクラシックでホワイトフーガがやったレースをそのまま再現するかのような走りでチャンピオンズカップを制し、JRA史上初の牝馬によるダートGI制覇を果たすのだが、それについてはサンビスタの記事に譲る。
またJBCレディスクラシック4着だったアムールブリエもこのあと12月の名古屋グランプリで牡馬を蹴散らして勝利。結果として両者に大一番で完勝したホワイトフーガの評価も高まることとなった。
4歳・牡馬の壁は高いけど、女王の座は譲らない
4歳初戦はTCK女王盃(JpnIII)。スローペースで想定より前目につけることになったが、直線であっさり抜け出すと後続を歯牙にも掛けず完勝。単勝1.2倍に応えて女王の貫禄を見せる。
続いては牡馬に混ざってフェブラリーステークス(GI)に挑戦。混戦ムードの中、単勝9.0倍の5番人気に支持される。サンビスタのチャンピオンズC制覇もあってGIとなって初の牝馬によるフェブラリーS制覇もあるのでは?と、事前の予想では狙い目に挙げる記事も多かった。しかしレースでは中団後方から内を突いたものの前に進路が開かず伸びあぐね10着と完敗。
少し休んで6月のさきたま杯(JpnII)に向かったが、ここもスタートで出遅れるとそのまま特に見せ場なく5着。このレースを最後に、デビューから主戦を務めてきた大野拓弥が降板となった。
牝馬戦線に戻り、7月のスパーキングレディーカップ(JpnIII)は端午S以来の蛯名正義が騎乗。以降、引退まで蛯名が鞍上を務めた。初の58kgを背負わされながらそれをものともせず、2番手追走から3コーナー手前でもう先頭に立ってそのまま押し切るという、格の違いを見せ付けるような完勝。
JBCレディスクラシック連覇を目指し、9月の前哨戦・レディスプレリュード(JpnII)へ。単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持されたが、トップハンデ57kgが響いたか、大外から4番人気タマモブリュネットに差し切られ、逃げた9番人気の地方馬トーコーヴィーナスと同着の2着。
前哨戦で敗れはしたが、本番のJBCレディスクラシック(JpnI)では単勝2.2倍の1番人気。その支持に応え、好位先行から4コーナーで早くも先頭に抜け出すと、一緒に抜け出したダート初挑戦の2015年桜花賞馬レッツゴードンキをあっさりと振り落として、力強くゴール板へ先頭で飛び込んだ。
第1回・第2回のミラクルレジェンド以来2頭目となる連覇達成。改めてダート牝馬最強の座を確かなものにした。
……ただ、このレースの前から、ホワイトフーガにはいわゆるノド鳴りの症状が出始めていた。
5歳・打ち破れ牡馬の壁、そして女王の落日
明けて5歳となった2017年。初戦は連覇を目指してTCK女王盃(JpnIII)に臨んだが、またも斤量58kg。直線で外から抜け出そうとしたがワンミリオンス、地方馬リンダリンダとの叩き合いの末ワンミリオンスに抜け出され、リンダリンダにもアタマ差届かず3着。
続いてこの年もフェブラリーステークス(GI)に挑戦したが、ゲート入りを嫌がる様子を見せ、レースでは道中はスムーズに進んだが直線では内で伸びあぐねて9着。うーんやっぱり牡馬相手は厳しいか……。
この連敗に斤量58kgもあってか、4月のマリーンカップ(JpnIII)ではTCK女王盃で負けたワンミリオンスに1番人気を奪われ2番人気に甘んじたが、逃げるララベルを4コーナーで捕まえると直線では突き放して3馬身差の快勝。女王の貫禄を見せつける。
続いて5月、さきたま杯(JpnII)へ。1番人気ベストウォーリア(2.0倍)、2番人気モーニン(2.1倍)と既にGI/JpnIを勝っている牡馬2頭が2強と見られ、ホワイトフーガは少し離れた3番人気(5.8倍)だった。
中団につけたホワイトフーガは、3コーナー前から圧倒的な手応えで進出しあっという間に先頭に立つと、あとはもう後続を置き去りの独走で4馬身差の圧勝。ついに牡馬混合重賞初勝利を挙げ、南関東全4場の重賞制覇も達成。牝馬の勝利は2007年のメイショウバトラー以来2頭目であった。
一線級の牡馬を蹴散らし、あとは前人未踏のJBCレディスクラシック3連覇へ万全……のはず、だった。
だが、このあとホワイトフーガはノド鳴りの症状が悪化していく。
単勝1.4倍の圧倒的1番人気に支持されたスパーキングレディーカップ(JpnIII)は4コーナーで先頭に並びかけるも直線でいつもの伸びがなく、牝馬限定ダート重賞では初めて馬券を外す4着に完敗。
10月のレディスプレリュード(JpnII)は外から追い込んだものの、1番人気の3歳馬クイーンマンボに8馬身も突き放された2着。
そして3連覇のかかったJBCレディスクラシック(JpnI)。クイーンマンボが故障で回避したこともあり、単勝1.8倍の1番人気に支持された。だが……。
中団から先頭に取り付こうと追い上げるホワイトフーガ。しかし、落日の女王にもはや昔日の輝きはなかった。ずるずると直線で沈んで行く黄色いメンコを被った芦毛の馬体。ララベルの地方馬初の同レース制覇という快挙のはるか後ろで11着。その姿はホワイトフーガの時代が終わったことを、これ以上なく残酷に示していた。
ノド鳴りの症状悪化もあり、このレースを最後に現役引退。通算23戦10勝、重賞7勝。
フーガの名の通り好位追走からの抜け出し押し切りというレース運びを得意とし、牝馬限定ダート重賞で馬券を外したのは現役晩年の2回だけ。関東オークス勝ち馬でJBCレディスクラシックを勝ったのは2023年現在もホワイトフーガのみであり、3歳から5歳での引退まで、現役生活を通して牝馬ダート戦線を牽引し続けた名牝であった。
また、2016年のJBCレディスクラシックは、通算GI級31勝(交流・海外含む)を挙げた蛯名正義にとって、最後のGI級勝利となった(中央GIは同年の宝塚記念のマリアライトが最後)。
2020年にnetkeiba.comが行った「JBC歴代最強馬総選挙」では、ミラクルレジェンドやサンビスタを抑え、JBCレディスクラシック部門1位に輝いている。
引退後・子供たちの奏でるフーガ
引退後は故郷の梅田牧場に戻り繁殖入り。2019年産の初仔チャプリ(父*ヘニーヒューズ)がダートでデビュー勝ちを収めており、今後に期待したいところである。
血統表
*クロフネ 1998 芦毛 |
*フレンチデピュティ 1992 栗毛 |
Deputy Minister | Vice Regent |
Mint Copy | |||
Mitterand | Hold Your Peace | ||
Laredo Lass | |||
*ブルーアヴェニュー 1990 芦毛 |
Classic Go Go | Pago Pago | |
Classic Perfection | |||
Eliza Blue | Icecapade | ||
*コレラ | |||
マリーンウィナー 2005 栗毛 FNo.12-c |
フジキセキ 1992 青鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ミルレーサー | Le Fabuleux | ||
Marston's Mill | |||
*ドバイソプラノ 1999 鹿毛 |
Zafonic | Gone West | |
Zaizafon | |||
Ring of Music | Sadler's Wells | ||
Glorious Song |
クロス:Halo 4×5(9.38%)、Northern Dancer 5×5(6.25%)
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