コブトリジイサン(学名:Sarcotaces pacificus)とは、面白い名前の寄生生物である。
概要
アンコウ目の魚・カエルアンコウ(学名:Antennarius striatus)の皮膚の下に寄生する寄生虫。
ケンミジンコ目カクレムシ科コブトリジイサン属に分類される甲殻類の仲間であり、寄生性のカイアシ類である。カエルアンコウの皮膚の下にいるので普段は姿を見ることは出来ないが、寄生に特化した体のつくりをしており、特にメスはイボイボの袋のようなとても甲殻類とは思えない見た目をしている(寄生性の甲殻類ではよくあることである)。メスのほうが大きく、メスの成体は13mmほどだがオスは1.1~1.4mmしかない。大抵オスとメスのペアで寄生している。
名前の由来はもちろん昔話のこぶとりじいさん(こぶ取り爺)から。コブトリジイサンに寄生されたカエルアンコウは寄生された場所が膨らんで瘤になり「こぶとりじいさん化」してしまう。コブトリジイサンはその瘤の中で寄生生活を満喫している。かなり痛々しい姿だが、珍しいものでもないようで、宿主にとってはそこまで邪魔なヤツではない…かもしれない。瘤の中は墨のような黒い液体で満たされている。
ちなみに、他のカエルアンコウの仲間からは見つかっていない。当然だが人間にも寄生しないのでご安心を。
コブトリジイサンやカクレムシ科の和名は2016年の論文[1]で提唱されたもの。コブトリジイサン属の種はウツボに寄生するヤマトコブトリ(学名:Sarcotaces japonicus)やヒゲキホウボウやカナダダラから見つかっているコマイコブトリ(学名:Sarcotaces komaii)[2]などが同じ論文で和名を付けられている。和名が付けられる前は学名のSarcotacesそのままのサルコタケス属と呼ばれていた。
なお、「Sarcotaces」でGoogle画像検索するとコブトリジイサン属のメスの異様な姿を見ることができる。数十mmに達する大きな種もいるのでインパクト大。
カクレムシ科の寄生虫は水産上価値のある魚にも寄生するが、内部寄生性で魚の頭部感覚器官などに寄生する為、外側から見えず市場では普通問題とならない。が、コブトリジイサン属の寄生虫は瘤を形成するので商品価値を著しく下げてしまう。
関連リンク
関連項目
脚注
- *長澤和也、上野大輔、日本産魚類に寄生するカクレムシ科(新称)Philichthyidaeカイアシ類の目録(1926-2016年)
- *ヒゲキホウボウとカナダダラは分類学的にとても離れた魚なので、カナダダラから見つかった種が本当にコマイコブトリなのかは検討が必要とされている。
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