ピコカキコ:VCAエンベロープで遊ぶとは、ピコカキコで音色を作る際に使われるVCAエンベロープ(@E1)を使って遊ぶ記事、すなわちこのページのことである。
なお、この記事はピコカキコについてある程度知っている事を前提に書かれている。これからピコカキコを始めてみようとお考えの方はまずは「ニコニコ大百科:ピコカキコヘルプ」辺りの記事を見ることをお薦めする。
具体的な音色についてはこちらが詳しい。原理についてはこちらを参照。
概要
VCAエンベロープ(Voltage Controled Amplifier Envelope)とはピコカキコなどの電子音楽で豊かな音色をつくるためのコマンドの一つである。ADSR Envelopeとも呼ばれる。具体的には音の強さ(音強)を変化させて各楽器に特徴的な音を再現する。
音とはなにか――音高・音強について
解説に入る前に「音」について簡単に解説をしておく。音には「音の高さ」を表す音高(ピッチ)と「音の強さ」を表す音強がある。最も単純な正弦波(サイン波)を例に図示すると以下のようになる。
波の上下の振れ幅が音の強さを、左右の波の間隔が音高を表す。上下の振れ幅が大きくなると大きな音に、左右の間隔が狭くなると高い音になる。VCAエンベロープはこのうちの上下の振れ幅(音強)を指定するものである。
なお音の強さには2つの種類がある。一つは物理的な量としての強さであり通常dB(デシベル)で計測される。もう一つは心理的な量であり、通常Phon(ホン)で計測される。実は人間の耳は物理的に大きな音が鳴ったからと言ってそのまま知覚するわけではない。等量の音強であっても音の高さの違いによって大きく感じられる場合も小さく感じられる場合もある(詳しくはこちらを参照)。エンベロープが変化させる量は「物理量としての音強(dB)」である。
エンベロープのコマンド
エンベロープを指定するパラメータは4つ。[Attack][Decay][Sustain][Release]である。以下のように指定する。
@E1,[Attack],[Decay],[Sustain],[Release]
それぞれのパラメータを図解すると以下のようになる。
Attack[0~]
Attackとは最大音量(@VやVで指定された値)に達するまでに要する時間である。打楽器やピアノは、叩いた瞬間が最大音量であるためこの値が0であることが多い。トランペットなどの管楽器やヴァイオリンなどの弦楽器では立ち上がりに若干の時間がかかるためこの値が1以上になる。
時間の指定単位は[attack]/127秒である。[attack]に127を指定すると、最大音量に達するまでに1秒を要することになる。Attackには0以上の整数が指定される。127を越えてもよい。
Attackの開始時の音量は必ず0とは限らない。詳細は後述する。
@E1,0,0,128,0 → @E1,5,0,128,0 → @E1,15,0,128,0 → @E1,100,0,128,0 | |
Decay[0~]
Decayとは最大音量からSustain音量(次項で説明する)に達するまでに要する時間である。ドラムのようにたたいてすぐに音が小さくなるものはこの値が小さい。トライアングルのようによく響くものはこの値が大きくなる。
指定単位は[Decay]/127秒である。Attackと同様0以上の整数が指定される。127を越えてもよい。
@E1,0,10,0,0 → @E1,0,20,0,0 → @E1,0,50,0,0 → @E1,0,100,0,0 → @E1,0,200,0,0 → @E1,0,500,0,0 | |
Sustain[0~(127)~]
Decayのあとどれほど音が小さくなるかを指定するものである。他のパラメータと異なり音強の割合を指定する。最大音量のまま音が鳴るのであれば[Sustain]=127である(トランペットなどの管楽器はこの形に近い)。打楽器やピアノは最初の発音の後減衰して0になるためSustainの値は0である。
指定単位は比であり[Sustain]/127(最大音量)である。通常の楽器の再現ではこの値は127を越えることはないが、127以上の値を指定することも可能である[1]。DPCMで音強が弱い時にはこの値を大きくすることで最大音量以上の音を鳴らすことができる。
後述の多段エンベロープを使用していない場合、または多段エンベロープの最後のSustainの場合は指定した音量がキーオフ(ピアノで言えば鍵盤から手を離した時)まで持続されることになる。
@E1,0,50,0,0 → @E1,0,50,20,0 → @E1,0,50,60,0 → @E1,0,50,100,0 → @E1,0,50,127,0 → @E1,0,50,250,0 | |
Release[0~]
キーオフ後、音が完全に止まるまでに要する時間である。余韻の長さであり、この値が大きいと音が長く残ることになる。
指定単位は[Release]/127秒で ある。Attackと同様0以上の整数が指定される。127を越えてもよい。
@E1,0,50,60,0 → @E1,0,50,60,30 → @E1,0,50,60,60 → @E1,0,50,60,80 → @E1,0,50,60,120 → @E1,0,50,60,260 | |
音作りのヒント
基本は以下の3種類である(以下の記述はこちらを参照)。
- Attack,Decay,Releaseが0の時。ピーッと一直線の音・・・①
- Attack,Sustain,Releaseが0の時。ポーンと減衰する音・・・②
- Attack,Releaseが0でSustainが127以下の時。テンーとちょっと小さくなってから伸びる音・・・③
加えて以下のような点を把握しておくとよいだろう。
例)
上述の①→ |
出典はこちら |
注意点
Attackの開始音量は必ず0では無く直前の演奏状況によって変わる。例えば
と記述されていた場合、C に付いては音量0から127まで24/127秒で立ち上がるが、以降の DEFG については 開始音量が127からのスタートとなり、音量は127から24/127秒で127まで、すなわちいきなり最大音量で演奏されることとなる。また、
Q12 @Q0 @E1,24,0,127,64 CDEFG;
と記述されていた場合、C に付いては音量0から127まで24/127秒で立ち上がるが、以降の DEFG に付いては 開始音量が減衰中の音量(テンポ・音長がデフォルトの場合、上例では96相当になる)からスタートとなる。
多節エンベロープ
DecayとSustainを連ねて書くことにより、より複雑な音色をつくることができる。
@E1,[Attack],[Decay1],[Sustain1],[Decay2],[Sustain2],...,[Release]
例)
@E1,0,5,90,150,10,30 (ピアノの音の伸びはこの形に近い)→ @E1,0,5,40,15,110,30 → @E1,0,5,10,20,120,30,30,10,100,30 | |
多節エンベロープのTips
最初のAttack, Decay, Sustainをともに0にし、次のDecay&Sustainで実質上の音の立ち上げ(≒Attack)を指定することで、同音量からの立ち上げを再現することができる。
Q16 @Q0 @E1,24,0,127,0 → Q12 @Q0 @E1,24,0,127,64 *** 以下多節エ ンベロープ*** Q16 @Q0 @E1,0,0,0,24,127,0 → Q12 @Q0 @E1,0,0,0,24,127,64 |
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音量モードとエンベロープ
エンベロープの指定が同一でも、音量モード(X[n])によってエンベロープの形は変わる。
音量モードX0におけるエンベロープの形 |
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音量モードX1におけるエンベロープの形 |
音量モードX2におけるエンベロープの形 |
関連コミュニティ
関連項目
ピコカキコの教則・テクニック | |
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ピコカキコ / ピコカキコ関連記事の一覧 |
脚注
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