数字に騙されるとは、数値を含む情報の解釈を誤ることではない。
前置き
ある番組の視聴率調査があったとして、
この番組は、全国の70%の人が視聴しています。
という情報が提示された時に、
「へぇ、たくさんの人が見てるんだな~!」
と思った人は、ちょっと待って欲しい。まずはこの段階で、「全国の70%って本当?」という疑問を抱くべきである。
通常、視聴率を調べる場合、いくつかの家庭のテレビに機械を取り付けてどの番組を見ているかを調べて、機械を取り付けた家庭の数に対する、特定の番組を視聴した家庭の数の割合を算出する。つまり、先程の情報は、「調査が適切に行われていると仮定すると、機械を取り付けた家庭のうち70%がその番組を視聴していたことになる。」ということを意味する。さらにそこから、「機械を取り付ける家庭の選び方に偏りがなければ、全国の視聴率もおよそ70%である。」ということが推定される。これを点推定という。この際、以下の点に注意すべきである。
- 全国の視聴率がぴったり70%である保証はない。あくまで推定である。ただし、家庭の選び方に偏りがなければ、70%に近い値である確率は高い。それでも、70%からかけ離れた値である確率もわずかであるが0ではない。
- 調査対象に偏りがある可能性がある。そうすると、全国の視聴率が70%であるとは到底いえなくなる。極端な場合、調査対象以外の家庭では全く視聴されていないという可能性もある。
- 調査対象の家庭に金銭を渡して視聴させたり、数値を改竄したりする不正行為が行われている可能性がある。ここまでくると最早ひねくれた見方であるが、可能性がない訳ではない。
世の中にはたくさんの情報が溢れており、その中には誤った情報、勘違いしやすい情報、意図的に相手を騙そうとする情報が紛れているので、情報を安易に鵜呑みにしないことが大切である。
などという前置きは置いといて…
本題
上記の例において、例えば「全国の視聴率はぴったり70%である。」などと勘違いしたとしよう。しかしそれは数字に騙されたのではない。情報全体を見て、あるいは聞いて勝手に勘違いしただけである。
仮に何者かが意図的に騙す目的で流した情報だとしても、騙したのは人間であり、7や0などの数字ではない。
数字というただの図形が人を騙すわけがなかろう。
すなわち、「数字に騙される」などというのは妄想であり、そのような現象は存在しないのである。
現象が存在しない以上、「数字に騙される」という言葉は存在しない、意味不明な言葉であるといえる。
関連項目
- 統計学
- 支持率
- 視聴率
- 日本語の誤用
- 誤用の多い日本語の一覧
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