途方もなく、彼女のことが好きだった。
その10文字を、僕は忘れないとは、持崎湯葉によるライトノベルである。
宮崎菫は一日に10文字しかしゃべれない。それ以上は声にならないのだ。スケッチブックで会話をする彼女は教室で浮いた存在だった。けれど不器用でも懸命に対話しようとする姿と、誰よりも純粋な心に、俺は惹かれていった。 図書館で勉強を教えてくれた時、横顔が気になって勉強どころじゃなかった。プールで見た水着が可愛すぎて、息が止まるかと思った。初めてケンカをして、初めて仲直りのキスをした――。「ありがとう」も、「ごめんなさい」も、「嬉しい」も、「大好き」も。 大切なことは10文字でみんな伝えられるって、そう思ってた。でも、菫が背負う過去の痛みも、菫の隣にいることの意味も、俺はわかっていなかったんだ――。
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最終更新:2025/12/14(日) 06:00
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