アドマイヤオーラ 単語


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アドマイヤオーラ

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アドマイヤオーラAdmire Aura)とは、2004年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。

キラキラの良血と素質とを持ち、種牡馬としても大成した可能性を持ちながら、結局「同世代の名牝2頭に勝った唯一の同期牡馬」として記憶されることになった、一言で言えば「持ってない馬」。

主な勝ち鞍
2007年:弥生賞(JpnⅡ)シンザン記念(JpnⅢ)
2008年:京都記念(GⅡ)

概要

父アグネスタキオン、母ビワハイジ、母父Caerleonという血統。
圧倒的な強さを見せながら故障で早期引退した「幻の三冠馬」であり、*サンデーサイレンスの後継としてリーディングサイアーにも輝いた父と、自身もGⅠ馬であり、繁殖では彼を含め重賞馬6頭を産んだ母をもつ、キラッキラの良血馬である。
彼はタキオン産駒としては2世代目なので上記は後世の目から見た評価になるが、タキオンは初年度産駒からGⅠ馬(NHKマイルカップを勝ったロジック)を出しており、ビワハイジも2005年の菊花賞でディープインパクトを追いつめた後のYogibo宣伝部長アドマイヤジャパンを出しており、彼がデビューした段階でも既に充分に見栄えのいい血統であったのは間違いない。ちなみにビワハイジから言わずと知れた名牝ブエナビスタが産まれるのは、彼が競走デビューする8ヶ月前のことである。

2004年2月19日、ノーザンファームで誕生。オーナーはもちろん、「アドマイヤ」冠名でおなじみ近藤利一だった。

オーラ持ってない伝説

やべー牝馬を倒したらやべー牝馬に蹴散らされ

アドマイヤドンやアドマイヤムーンも所属した栗東の松田博資厩舎に入厩。デビューは2006年11月4日の京都、父内国産馬限定の芝1600mの新馬戦。鞍上は武豊を迎え、同じタキオン産駒のグッドラックアワーと同オッズ(2.2倍)の1番人気に支持される。ここは2番手で先行すると、グッドラックアワーら後続を寄せ付けず半馬身差で押し切りデビュー勝ちを飾る。
……ちなみにこのグッドラックアワーも続く未勝利戦を勝ったあと、ラジオNIKKEI杯2歳Sで骨折し予後不良になってしまった、なんとも持ってない馬であった。

ともかくアドマイヤオーラは続いて12月の中京2歳S(OP)に出走。ここでも同じくタキオン産駒と人気を分け合い2.5倍の2番人気。彼を抑え2.2倍の1番人気になったのは、同期のとんでもない牝馬だった。そう、あのダイワスカーレットである。
2番手で先行するダイワスカーレットを見ながら8頭立ての真ん中あたりを進み、直線でダイワスカーレットを猛然と追いかけるが、止まらないダイワスカーレットを最後まで捕らえきれず半馬身差の2着。とはいえ3着ゴールドキリシマは5馬身突き放し、ダスカに負けない力があるところを示す。

3戦目は年が明け、1月のシンザン記念(JpnⅢ)。鞍上は岩田康誠。ここでなんと再びダイワスカーレットと相まみえることになった。1番人気はそのダスカ(1.9倍)、2番人気は朝日杯2着のローレルゲレイロ(3.0倍)で、アドマイヤオーラは4.4倍の3番人気。この3強対決というオッズである。
レースは4番人気のエイシンイッキが大逃げを打ち、オーラはスタート直後はダスカの前にいたが、ダスカが掛かり気味に前に出て行ったため、ダスカの後ろにつける位置取りに。直線で2番手のエーシンビーエルが抜け出したところへ、ダスカと馬体を併せて外から一気に急襲する。前半の掛かりでやや脚を使ったダスカに対し、冷静にレースを進めた分だけキレ味を残したオーラは、上がり33秒3の鋭い末脚で一気にダスカを置き去りにし、1馬身半差をつける完勝。見事にリベンジを果たし重賞初勝利を挙げた。
ちなみに3着はローレルゲレイロで、3連複210円という超ガチガチの決着であった。

この勝利で一気に世代牡馬の筆頭候補に躍り出たアドマイヤオーラ。鞍上を武豊に戻した弥生賞(JpnⅡ)では、朝日杯馬ドリームジャーニーらを抑え、単勝1.7倍の圧倒的1番人気に支持される。
6番手で冷静にレースを進めたアドマイヤオーラは、4コーナーで外に進路を確保しつつ先行集団に取り付くと、直線で力強く抜け出す。外からは6番人気ココナッツパンチが猛然と追い込んできたが譲らず、最後のもう一伸びで振り切って勝利。
武豊はこれで弥生賞3連覇。4戦3勝2着1回、堂々の世代筆頭としてクラシックに臨むことになった。

……ところが。親子2代制覇を目指した皐月賞(JpnⅠ)は4戦4勝のフサイチホウオーを抑え2.7倍の1番人気に支持されるも、スタートで出遅れてフサイチホウオーともども後方からのレースになってしまい、なんとか直線では上がり最速タイの脚で追い込んだものの、逃げたヴィクトリーとサンツェッペリンを捕らえるどころか、この2頭をハナ差まで追い込んだフサイチホウオーのような見せ場も作れず4着に完敗。

このレースと、2週間後にアドマイヤムーンがQE2世Cで追い込み不発で3着に敗れたレースがきっかけとなり、近藤利一オーナーと武豊が決裂。武豊はアドマイヤオーラのみならず、蜜月関係にあったアドマイヤ軍団の馬から降ろされることになり、この後の不振に繋がっていくことになる。これに関しては近藤オーナーよりも松田師が武豊を嫌ったとも言われているが……。
なんにせよ、競馬界のスーパースターである武豊が、ダービー直前にお手馬のクラシック有力馬、それもアドマイヤベガやアドマイヤグルーヴでおなじみだったアドマイヤ軍団の馬から降ろされるという報は、当時の競馬関係者やファンに結構な衝撃を与えた。

そんなこんなで、続く日本ダービー(JpnⅠ)では単勝12.7倍の4番人気まで評価を落とす。岩田康誠を鞍上に皐月賞の雪辱を期すオーラだったが、ここではまたも同期のとんでもない牝馬その2が64年ぶりの栄冠を目指しやって来ていた。そう、ウオッカである。
レースはフサイチホウオーやローレルゲレイロと同じような中団やや前目の位置で進めたが、直線でオーラが外に進路を確保しようとしているうちに内からどんどん突き抜けていくのはウオッカ。オーラも外に持ち出してフサイチホウオーを競り落とし追い込んだが、もはやウオッカの背中は遥か前。結局牝馬ウオッカに5馬身近く離された3着。なんとか馬券には絡んだが、直線でフラフラしたとかが言い訳になるような差ではなく、ぐうの音も出ない完敗であった。

レース後、左橈側手根骨の骨折が発覚。休養に入ることになった。タキオン産駒特有の脚元の弱さという問題は、彼もまた例外ではなかったのである……。

雪の京都にオーラパワー

幸い重篤な骨折ではなく、半年ちょっと休んで12月の鳴尾記念(GⅢ)で復帰。鞍上はここからあのダスカの主戦でもある安藤勝己が彼の主戦を務めることになる。故障明け・大外8枠ながらもドリームジャーニー、レインダンス、エイシンデピュティに次ぐ5.9倍の4番人気。
エイシンデピュティが平均ペースで逃げるの展開を後方待機し、枠なりに外を回して直線で猛然と追い込んだが、先行策から最後に抜け出したハイアーゲームと逃げ粘ったエイシンデピュティにクビ差届かず、同馬主のアドマイヤフジと3着同着。上がりは2位タイの33秒5で、末脚のキレ味を失っていないことを示す。

明けて4歳となり、初戦は1月の京都金杯(GⅢ)。またも8枠に入れられたが、前走の好内容から2.8倍の1番人気に支持される。好スタートながらも後ろに控え、今回も外から上がり最速で追い込んだが、内で逃げ粘ったエイシンデピュティにまたクビ差届かず2着。

2戦とも惜敗とはいえ内容は上々。好状態で2月の京都記念(GⅡ)に乗りこんだアドマイヤオーラの前に、アイツが再び現れた。ダービー制覇後は振るわないレースが続く中、ドバイを目指すウオッカである。ここでオーラはウオッカ(3.4倍)と人気を分け合い、3.3倍の1番人気に支持される。
雪のちらつく中、過去2戦と同様に後方に控えたアドマイヤオーラ。ウオッカはさらにその後ろに構えるが、道中やや折り合いを欠く。4コーナー、京都の下り坂で加速したオーラは、外を回して一気に進出、スローペースで逃げ粘るシルクフェイマスを外から猛追する。後ろからはウオッカが追いかけてくるが差は詰まらない。残り50mでシルクフェイマスを捕らえ、力強く抜け出したアドマイヤオーラが1と1/4馬身差をつけて先頭でゴールに飛び込んだ。

アドマイヤオーラ! アドマイヤオーラが差し切った完全復活!
鞍上安藤勝己、ダービー3着馬のアドマイヤオーラが、この世代、牝馬に負けてられないと、京都記念で完全復活!

――KBS京都 森谷威夫アナ

6着に終わったウオッカにダービーのリベンジを果たし、高らかに復活を告げたアドマイヤオーラ。この勝利でドバイデューティーフリーの追加招待が届き、前年のアドマイヤムーンに続くアドマイヤ冠での連覇を目指して、ウオッカとともにドバイへ乗りこむこととなった。

ダイワスカーレットに続いてウオッカも撃破し、2007年クラシック世代の牡馬の誇りを守るべく世界へ羽ばたくアドマイヤオーラ。がんばれオーラ! 負けるなオーラ! 君のオーラは輝いている! アドマイヤオーラのこれからの活躍にご期待ください!

~完~

アドマイヤのオーラが……消えた……?

いや、もちろんこんなところでアドマイヤオーラの競走生活は終わったわけではない。ないのだが……結論から言えば、この2008年京都記念が、彼の最後の輝きであった。

ウオッカとともに乗りこんだドバイデューティーフリー(GⅠ)は全く歯が立たず、4着に踏ん張ったウオッカの後ろで9着。帰国して金鯱賞(GⅡ)に1番人気で乗りこんだが、道悪に泣いて直線で伸びず6着。
続いてファン投票で9位の票を得て宝塚記念(GⅠ)に参戦したが、前走に続いての雨の重馬場は彼の脚には負担が大きすぎたのかもしれない。最下位14着に沈み、今度は右橈側手根骨の骨折が発覚。またも休養に入ることになり、4歳秋はそのまま全休となった。

明けて5歳、1月の京都金杯で復帰。実績を買われて1番人気に支持されたが4着。そして連覇を目指した京都記念では、輪乗りの最中に跛行が認められ競走除外。人気していたため11億円分の馬券が返還になった。そしてこの後、1年以上の長期休養に入ることになる。

6歳となり、あれもう引退したんじゃないの?と思われかけていたところに、5月の金鯱賞で1年3ヶ月ぶりに復帰。なんたってダスカとウオッカに勝った馬だし、前年には2歳下の半妹ブエナビスタが牝馬二冠を達成したし、もう一花……という期待も空しく特に見せ場もなく5着。
陣営はブエナビスタとの兄妹対決も期待されていた宝塚記念を回避し、長期休養で足りなくなった収得賞金を稼ぐために福島の福島テレビオープン(OP)に向かったが、ここでも勝てず3着。

どうも相次いだ故障で、脚を庇って走る癖がついてしまったらしい。8月の小倉記念(GⅢ)は右肩跛行でまたも競走除外。今度は軽症だったようで同月の新潟記念(GⅢ)に向かったが、終始後方のまま、ブービーから9馬身も離された最下位17着。

もうこのまま走らせるのは可哀相、という話になったらしく、このレースを最後に現役引退となった。

最後まであまりにも持ってない

良血に加えて妹のブエナビスタの活躍もあり、優駿スタリオンステーションで種牡馬入り。しかし種付け数自体初年度からそう多くなかった上に受胎率もイマイチで種付け数は減少。

2014年から産駒がデビューし始めたが、その矢先、2015年3月3日、放牧先での故障の精密検査の結果、左前肩甲骨の粉砕骨折と診断され予後不良。僅か11歳の短い生涯を終えた。

残された産駒は5世代でたった92頭。受胎率が低い上に肌馬の質は推して知るべしである。これで結果が出るはずがない。……はずがなかったのだが。

オーラの夭折した矢先、2015年に初年度産駒のクロスクリーガーが兵庫CSを勝って重賞初制覇を飾ると、JDD2着、レパードSを勝利し中央重賞初制覇。2016年には同じく初年度産駒のノボバカラがダート重賞3勝を挙げ、そしてついには15頭しかいない4年目の産駒から、2020年・2021年のマイルCS南部杯を連覇したアルクトスが出た。
種付け数と肌馬の質を考えれば驚異的な成績である。もし生きていれば、ひょっとしたらゴールドアリュールやキングカメハメハと鎬を削るダートのトップクラスの種牡馬になっていたのかもしれない。

アドマイヤオーラ。結局彼の名前は主に「ダイワスカーレットとウオッカの両方に勝った馬」として残ることになった。成績にムラが多かったウオッカはともかく、通算12戦8勝2着4回のダイワスカーレットに勝った馬は、彼の他にはウオッカ(2回)とマツリダゴッホしかいない。ハマったときの末脚のキレ味は間違いなく世代トップクラスで、ダイワスカーレットに完勝したシンザン記念、ウオッカを置き去りにした京都記念の強さはレース映像を見てもらうだけで解ってもらえるはずである。
もし相次いだ故障がなければ。あるいはあのときドバイに行かなければ。それとも産駒の傾向を考えると、彼の脆い脚はダートを走らせるべきだったのか……。種牡馬として大成した可能性も含め、いずれにしても結局想像の域を出ない。

ここ一番で力を発揮しきれず、競走馬としても種牡馬としてもこれからというところで躓いてしまう、なんとも「持ってない馬」だったアドマイヤオーラ。だが、産駒重賞馬3頭のうち、クロスクリーガーこそ夭折してしまったものの、ノボバカラとアルクトスが2023年から種牡馬入りしたことで、彼は父アグネスタキオンのサイアーラインを繋ぐという、牡馬の競走馬として最大の使命は果たしたと言える。「ダスカとウオッカに勝った馬」から「アルクトス・ノボバカラの父」として父タキオンの血を広げていけるだろうか。

血統表

アグネスタキオン
1998 栗毛
*サンデーサイレンス
1986 青鹿毛
Halo Hail to Reason
Cosmah
Wishing Well Understanding
Mountain Flower
アグネスフローラ
1987 鹿毛
*ロイヤルスキー Raja Baba
Coz o' Nijinsky
アグネスレディー *リマンド
イコマエイカン
ビワハイジ
1993 青鹿毛
FNo.16-c
Caerleon
1980 鹿毛
Nijinsky II Northern Dancer
Flaming Page
Foreseer Round Table
Regal Gleam
*アグサン
1985 青毛
Lord Gayle Sir Gaylord
Sticky Case
Santa Luciana Luciano
Suleika

クロス:Hail to Reason 4×5(9.38%)、Turn-to 5×5(6.25%)

主な産駒

  • クロスクリーガー (2012年産 牡 母ビッグクィーン 母父*ブライアンズタイム)
    • 主な勝ち鞍 2015年兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ)、2015年レパードS(GⅢ)
  • ノボバカラ (2012年産 牡 母ノボキッス 母父*フレンチデピュティ)
    • 主な勝ち鞍 2016年かきつばた記念(JpnⅢ)、プロキオンS(GⅢ)、カペラS(GⅢ)、 2020年さきたま杯(JpnⅡ)
  • アルクトス (2015年産 牡 母ホシニイノリヲ 母父*シンボリクリスエス)
    • 主な勝ち鞍 2020年・2021年マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnⅠ)、2019年プロキオンS(GⅢ)、2021年さきたま杯(JpnⅡ)

関連動画

関連リンク

関連項目

  • 競馬
  • 競走馬の一覧
  • 2007年クラシック世代
  • サンデーサイレンス系
  • ダイワスカーレット / ウオッカ
  • アグネスタキオン / ビワハイジ
  • アドマイヤジャパン / ブエナビスタ / トーセンレーヴ
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  • 2 ななしのよっしん

    2022/10/26(水) 18:09:24 ID: dgG+ma4ZT8

    アルクトスの父ってことしか知らなかったがこんな馬だったのか
    色んな馬で惜しい馬だったんだな

  • 👍
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    0
  • 3 ななしのよっしん

    2024/08/17(土) 13:48:54 ID: ivxfAGmmCK

    >>1
    半妹ブエナビスタがウマ娘化したので、これからどこまで「ブエナビスタのきょうだい」がアプリ内で拾われるかで決まるかな。一応ビワハイジ産駒重賞馬組の馬主達とサイゲは連絡が取れてる(他の所有馬がウマ娘化済)ので。

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  • 4 ななしのよっしん

    2024/09/25(水) 14:05:00 ID: wKqYa5MPhf

    ビワハイジ&スカーレットブーケ「同父の禁断の恋…!?」
    オーラ「母さん!?誤解だよー!」

    馬なりシンザン記念のこのシーンすきw

  • 👍
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