ベッラレイア(Bella Rheia)とは、「うわーベッラレイアすごい脚!」である。
……もとい、2004年生まれの日本の競走馬である。鹿毛の牝馬。
ナリタトップロードの代表産駒で、8年前に父がクビ差届かなかった府中2400のクラシックタイトルに、父と同じく1番人気で挑むも、あと9cmだけ届かなかった、なんというかあの父にしてこの娘ありな馬。
父ナリタトップロード、母*マリスターII、母父Baldskiという血統。
父は1999年のクラシック三冠でテイエムオペラオー、アドマイヤベガと三強を形成した菊花賞馬で、6歳まで古豪として世代の強さを証明し続け、高い人気を誇った名馬。9歳で早世してしまったため産駒は3世代しか残せず、ベッラレイアはその初年度産駒である。
母はアメリカで17戦5勝の輸入繁殖牝馬。6歳違いで同名の牝馬がいたためマリスターIIと表記される。
母父ボールドスキはNijinsky産駒で、アメリカで27戦7勝の重賞未勝利馬。種牡馬入りしたのは、半兄に欧米でG1を11勝したExceller、半弟にエクリプス賞最優秀2歳牡馬のCapoteがいるという良血を買われてのことだろう。日本で走った産駒には1995年のデイリー杯3歳S2着、京成杯3歳S3着などがある*スキーミュージックがいる。
2004年2月27日、ノーザンファームで誕生。2004年のセレクトセールで2000万円(税抜)で落札された。最初のオーナーはシーキングザパールなどを所有した植中昌子で、植中オーナーは2007年をもって馬主を廃業したため、2008年からは社台グループの吉田勝己の所有となった。
平田厩舎のオレンジの頭絡と手綱、脚に巻いたオレンジのバンテージがトレードマークであった。
2005年に開業したばかりの栗東・平田修厩舎に入厩。デビューはやや遅れ、3歳となった2007年1月21日、京都・芝1600mの3歳新馬戦。6.6倍の4番人気だったが、「調教で乗ったときにインパクトがありました。返し馬でもオッという感じで、今日は自信があったので終いだけの気持ちでした」とレース後に語った秋山真一郎を背に、中団から上がり3Fで2位に0.7秒差をつける33秒8の豪脚を繰り出して3馬身差の圧勝デビューを飾る。
この強い勝ち方で遅まきながらクラシックを目指すことになったベッラレイアだったが、この後の彼女はとにかく運に恵まれなかった。クイーンカップ(GIII)に登録するも抽選除外。仕方ないので翌週のアーリントンカップ(GIII)に登録するもこっちも抽選除外。やむを得ずアーリントンカップの翌日のすみれステークス(OP)に出走したが、アルナスライン(父アドマイヤベガ)に振り切られて3着。収得賞金は加算できずに終わる。
それでも桜花賞に一縷の望みをかけてフラワーカップ(GIII)に登録したが、なんとまたまた抽選除外。そんなことある? 親父もGI馬なのにジャパンカップ除外を食らってたけど、そんな不運さは似なくていいのに……。仕方なく同日の中京・芝1800mのあざみ賞(500万下)に出走、最後方から直線で大外一気、断然の上がり最速でブチ抜いて2勝目を挙げる。
結局桜花賞は断念し、優駿牝馬に目標を切り替えたベッラレイアは、トライアルのフローラステークス(GII)に出走した。前走の豪快な勝ちっぷりもあり、単勝1.8倍という断然の1番人気に支持される。
内の1枠2番から中団に構えたベッラレイアだったが、スローペースの展開となり、4コーナーで馬群が詰まってくる中でも完全に馬群に包囲された状態。直線を向いたときには完全に前が壁、後方で全く進路が状況に追い込まれる。先頭では3番人気イクスキューズが逃げ切りを図る体制、ベッラレイアは絶体絶命。
しかしそこからなんとか大外に持ち出して進路を確保した秋山騎手とベッラレイアは、残り300mから猛然と追い上げる。一気に十数頭をごぼう抜きすると、逃げ粘るイクスキューズと真ん中を追い上げてきたミンティエアーをまとめて並ぶ間もなく差し切り、ゴールへと飛び込んだ。
外から2番のベッラレイア! 外からベッラレイア! ミンティエアーイクスキューズ!
うわーベッラレイアすごい脚!
ベッラレイア差し切りましたー!
ナリタトップロード産駒初の重賞制覇、開業3年目の平田師もこれが嬉しい重賞初制覇。新馬戦やあざみ賞で見せた豪脚が紛れもなく一線級のものであることを示し、ベッラレイアはオークスへと堂々たる名乗りを挙げた。そして長谷川アナの「うわーベッラレイアすごい脚!」は彼女の代名詞となった。
さて、2007年クラシック世代といえば、言わずと知れたウオッカとダイワスカーレットの世代である。しかしウオッカは日本ダービーに向かい、桜花賞でこの2頭と3強と呼ばれたアストンマーチャンも距離適性を鑑みて回避。となれば桜花賞馬ダイワスカーレットが大本命……かと思ったら、なんとダスカも熱発で回避となる。
結果、この年の優駿牝馬(GI)は56年ぶりの桜花賞連対馬不在。ダスカとウオッカ以外の桜花賞組はこの2頭に完全に相手にされていなかった。となれば、前走のトライアル、同じ府中で圧巻の末脚を見せたベッラレイアに人気が集まるのは自然な流れである。2.6倍の1番人気。デビュー11年目の秋山真一郎にとっても、悲願のGI初制覇の最大のチャンスと言えるレースであった。
スタートを決めたベッラレイアは前目の6番手に構え、逃げ宣言の16番人気スマートストームが緩みのないハイペースで逃げる展開を追走する。
直線に入って馬場の真ん中に進路を確保すると、横に広がった馬群の中から早めに抜け出しを図る。残り400mを過ぎたところで早くも先頭。あとは自慢の末脚で押し切るだけ――。
だがそこに、道中からぴったりとベッラレイアを後ろでマークしていた芦毛の馬が襲いかかった。
5番人気の外国産馬、福永祐一ローブデコルテ!
外からベッラレイア、さあ! ステッキを一発二発、
さらに外からミンティエアー、坂を登る!
ミンティエアーか、青い帽子ベッラレイア、外からミンティエアー、
ベッラレイア先頭、残り200、
一番外から! 一番外から! 一番外からラブカーナが突っ込んでくる!
さらにはローブデコルテ! ローブデコルテが2番手!
並ぶ! 内で、ベッラレイア! ベッラレイア! 外からローブデコルテ!
並んだー!!!!
2頭が内外離れた横並びでゴール。写真判定の末、僅か9cm差でローブデコルテに軍配が上がった。
結果としては早仕掛けが祟り、後ろの馬に目標にされてしまった形。前走で前が詰まった反省からか前目の好位につけたが、予想以上のハイペースに加えて、早めのスムーズな抜け出しが逆に仇となってしまうという、なんというかまさに親父のように間が悪いとしか言いようのない負け方であった。
というかこのオークス、自身も鞍上もGI初勝利がかかったレースで、直線早め抜け出しで勝ったと思った瞬間、後ろの外からきた馬番2番の馬に差し切られて1番人気で2着に敗れるというレース展開に加え、1着馬の勝ちタイム2:25.3と、自身の上がり3F35秒0まで父ナリタトップロードの1999年日本ダービーと同じである。なにもそんなところまで親父を忠実になぞらなくても……。
結局、秋山騎手と平田師のGI初制覇はこの5年後、カレンブラックヒルのNHKマイルカップでのことになる。
秋はローズステークス(GII)から始動。武豊に乗り替わり、ダイワスカーレットとの初対決を迎えた。逃げるダイワスカーレットに対し1枠1番から内の5番手の好位で進め、直線で最内を突き、上がり最速33秒2の末脚でダイワスカーレットを追いかけたが、止まらないダイワスカーレットに振り切られて2着。
敗れはしたもののダスカに半馬身差まで迫ったことで、引き続き武豊とともに迎えたラスト一冠、秋華賞(GI)では、ウオッカ(2.7倍)、ダイワスカーレット(2.8倍)と人気を分け合い、3.8倍の3番人気に支持される。4番人気ローブデコルテが20.0倍だったので、完全なこの3頭の3強対決というオッズだった。
レースは最後方でウオッカをマークして進めたが、4コーナーでウオッカが早めに上がっていったのに対し、ベッラレイアは直線入口で最後方。これではいかに末脚自慢の彼女といえど、ダイワスカーレットの先行力に対してはあまりにも後ろすぎた。ウオッカを超える上がり最速32秒9を叩き出す豪脚も、中継画面の外でのことに終わってしまい無念の4着。
エリザベス女王杯は筋肉痛で回避し、3歳シーズンは終了。この休養の間に前述の通り植中オーナーが最後の所有馬だった彼女を手放し馬主を廃業したため、4歳からは吉田勝己の所有となり、勝負服も吉田家のものとなった。
結局半年以上休み、明けて4歳は秋山真一郎に手綱が戻ってヴィクトリアマイル(GI)から始動したが、伏兵エイジアンウインズのウオッカ撃破の裏で見せ場なく8着。
その後も牝馬重賞を中心に重賞戦線で戦ったものの、自慢の末脚は衰えず後方から上がりは最速か2位で掲示板は確保するものの、前から抜け出した馬には届かないという展開ばかりでひたすら勝ちきれないレースが続き、5歳の府中牝馬ステークス(GIII)2着のあとに鼻出血を発症、現役引退。フローラSのあと、勝利を挙げることはできなかった。通算17戦3勝。
結局、彼女がナリタトップロード産駒唯一の中央重賞馬となった。古馬となってからも決して走りは衰えなかったが勝ちきれず、道悪になるとてんでダメなところまで親父に似ていた。あのナリタトップロードの仔、祖父サッカーボーイ譲りのド派手な豪脚ということもあって人気は高く、生涯17戦のうちデビュー戦以外は全て3番人気以内だった。
出たいレースにことごとく除外を食らう不運、若手の鞍上と掴みかけた夢をあとほんの少しで逃したオークス、同期にはとんでもないバケモノが2頭おり、古馬となっては勝ちきれず……なんというかそういう間の悪いところまで含めて、「ナリタトップロードの代表産駒」という言葉が相応しい馬だったのかもしれない。
引退後はノーザンファームで繁殖入り。10頭の仔を産んだが、今のところこれといった産駒はない。
2023年3月7日、出産時の内出血のため死亡。19歳だった。
残された産駒10頭のうち牝馬は5頭、うち1頭(ベッラレジーナ)は豪州に輸出、1頭(ウチノオジョウサマ)は既に用途変更となっているが、残る3頭のうち2頭、2番仔のベッライリスと5番仔のカラレイアは繁殖として現役である(残り1頭、2020年産のトゥルーサンライズは2023年に引退、繁殖入りしたのかどうかは今のところ不明)。貴重なナリタトップロードの血をファミリーとして繋いでいけるだろうか。
ナリタトップロード 1996 栗毛 |
サッカーボーイ 1985 栃栗毛 |
*ディクタス | Sanctus |
Doronic | |||
ダイナサッシュ | *ノーザンテースト | ||
*ロイヤルサッシュ | |||
*フローラルマジック 1985 黒鹿毛 |
Affirmed | Exclusive Native | |
Won't Tell You | |||
Rare Lady | Never Bend | ||
Double Agent | |||
*マリスターII 1991 鹿毛 FNo.3-o |
Baldski 1974 黒鹿毛 |
Nijinsky II | Northern Dancer |
Flaming Page | |||
Too Bald | Bald Eagle | ||
Hidden Talent | |||
Pink Dove 1984 栗毛 |
Argument | Kautokeino | |
Arantelle | |||
Perfect Pigeon | Round Table | ||
Pink Pigeon |
クロス:Northern Dancer 5×4(9.38%)、Nasrullah 5×5(6.25%)
掲示板
1 ななしのよっしん
2023/05/05(金) 02:30:08 ID: UDZJ9aFlrV
最期の子は無事に産まれたんかな?
2 ななしのよっしん
2023/05/05(金) 02:53:05 ID: yizMSFABOK
>>1
調べたら残念ながら生後直死だった模様
https://
急上昇ワード改
最終更新:2024/11/08(金) 13:00
最終更新:2024/11/08(金) 13:00
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