弁とは、以下のことを表す。
- 弁(瓣) - 花びらのこと
- 弁(瓣) - 管を通る気体や液体の流量を制御する装置のこと
- 弁(瓣) - 心臓の弁膜のこと
- 弁(辯) - 方言の名につく接尾辞
人名
漢字として
弁は、4つの異なる漢字に対応している。弁、辨の新字体、瓣の新字体、辯の新字体である。また、辮の書き換えに使われる場合がある(辮髪→弁髪)。
弁
- 意味
- 礼装のときにつける冠、冠を被る、下位の武官、恐れおののく、という意味がある。また卞と通じて、急ぐ、抃と通じて、打つ、たたく、般と通じて、たのしい、という意味がある。
- 〔説文解字〕の本字は㝸で〔説文・巻八下〕に「冕なり。周には㝸と曰ひ、殷には吁と曰ひ、夏には收と曰ふ」とある。弁は、覍の異体字として載っている。
- 字形
- 冠の象形。〔説文〕に「皃に從ひ、象形」とある。
- 音訓
- 音読みはヘン、ハン(漢音)、ベン(呉音)、訓読みは、かんむり。
- 規格・区分
- 常用漢字であり、小学校5年で習う教育漢字である。JIS X 0213第一水準。1946年に当用漢字に採用され、1981年に常用漢字になった。
- 声符
- 弁を声符とする漢字には、𡊄、拚、昪、𥿋、𨠒、閞、𤲙などがある。
- 語彙
- 弁纓・弁言・弁行・弁髦
異体字
- 㝸は、〔説文〕の本字。
- 𢍘は、〔説文〕に「籒文の覍、廾に從ふ、上は象形」とある籀文。
- 𢍍は、〔康煕字典〕が〔説文〕にある籀文とする字。
- 𢍙は、〔五音篇海〕が籀文とする字。
- 𠭛は、〔説文長箋〕の弁の本字。
- 覍は、〔正字通〕に㝸の譌字とある俗字。JIS X 0212補助漢字。
辨
- 意味
- 旧字体は辨で、新字体が弁。辦は別の字。
- 識別する、わきまえる、言い訳する、治める、裁く、用意する、という意味がある。また遍と通じて、あまねく、変と通じて、かわる、返と通じて、かえす、辯と通じて議論する、という意味がある。
- 〔説文解字〕の本字は辧で〔説文・巻四〕に「判つなり」とある。
- 字形
- 形声で声符は辡。
- 音訓
- 音読みはヘン、ハン(漢音)、ベン(呉音)、訓読みは、わかつ、わきまえる、あまねく。
- 規格・区分
- 常用漢字表に参考字体として載っている。JIS X 0213第二水準。
- 語彙
- 弁護(辨護)・弁訟(辨訟)・弁証(辨証)・弁償(辨償)・弁析(辨析)・弁知(辨知)・弁別(辨別)・弁明(辨明)・弁論(辨論)・弁惑(辨惑)
異体字
瓣
- 意味
- 旧字体は瓣で、新字体が弁。
- 花びら、花びらのような、ウリの種、ウリの果実などの一かけら、球根などの一かけら、という意味がある。また、液体や気体の出入りを調節する部品・部分、という意味がある。
- 〔説文解字・巻七〕に「瓜の中實なり」とある。
- 字形
- 形声で声符は辡。
- 音訓
- 音読みはハン(漢音)、ベン(呉音)。
- 規格・区分
- 常用漢字表に参考字体として載っている。JIS X 0213第二水準。
- 語彙
- 瓣膜(辨膜)
辯
- 意味
- 旧字体は辯で、新字体が弁。
- 論争する、理論だてて話す、言い訳する、巧みに言う、言論に長けた、用意する、という意味がある。また徧と通じて、あまねく、貶と通じて、おとしめる、変と通じて、変わる、辨と通じて分かつ、という意味がある。
- 〔説文解字・巻十四〕に「治むるなり」とある。
- 字形
- 形声で声符は辡。
- 音訓
- 音読みはヘン(漢音)、ベン(呉音)、訓読みは、わかつ。
- 規格・区分
- 常用漢字表に参考字体として載っている。JIS X 0213第二水準。
- 語彙
- 弁給(辯給)・弁護(辯護)・弁才(辯才)・弁士(辯士)・弁辞(辯辞)・弁正(辯正)・弁知(辯知)・弁難(辯難)・弁別(辯別)・弁明(辯明)・弁論(辯論)
異体字
- 𠷊は、〔集韻〕に「巧言なり。亦た辯に作る」とある異体字。
- 𦌽は、〔字彙補〕に辯と同じとある異体字。
- 䛒は、〔字彙補〕が本字とする字。また「北齊の造る所なり」とある。
- 𧩵は、〔字彙〕に辯と同じとある異体字。
- 𨐾は、〔篇海類編〕に辯と同じとある異体字。
- 簡体字は辩。
関連項目