構造式

構造式（こうぞうしき）とは、化学物質の構造を模式的に示した図式である。化学構造式とも。

概要

化学式

化学式（Chemical formula）は、物質の元素構成を示した式である。たとえば、地球上に普遍的に存在する「水」分子は、2つの水素原子と1つの酸素原子からなるため、その化学式は「H₂O」と表される。もう少し複雑な例として、酒類に含まれる「エタノール」分子は、2つの炭素原子、6つの水素原子、1つの酸素原子からなるため、その化学式は「C₂H₆O」と表される。

構造式

構造式（Structural formula）は、化学式のうち、物質の構造を模式的に示した式である。前述したようにエタノールの化学式は「C₂H₆O」である。しかしながら、「C₂H₆O」という化学式で表される物質はエタノールだけではない。ジメチルエーテルという物質の化学式も「C₂H₆O」と表されるため、化学式だけではこの2つの物質を区別できない。たとえ化学式が同じ（分子を構成している原子の種類と数が同じ）であっても、どのように結合しているか、どのような官能基を有するかによって性質が異なるため、構造を模式的に示した式が用いられる。

物質名	化学式	構造式		性質
エタノール	C2H6O	CH3CH2OH	H ─ H │ C │ H ─ H │ C │ H ─ O ─ H	沸点78℃ 常温で液体
ジメチルエーテル	C2H6O	CH3OCH3	H ─ H │ C │ H ─ O ─ H │ C │ H ─ H	沸点-24℃ 常温で気体

エタノールやジメチルエーテルのような単純な構造であれば上に示した構造式で構わないが、より複雑な構造をした化合物については、さらに抽象化された構造式も用いられる。化学式で「C₁₂H₁₂N₂O₃」と表される物質の構造式をいくつか挙げて説明する。

物質名	化学式	構造式	備考
ダゾキシベン	C12H12N2O3		抗血小板薬
ナリジクス酸	C12H12N2O3		抗菌薬
フェノバルビタール	C12H12N2O3		催眠薬 抗てんかん薬

上に示したように、原子間の単結合は1本の実線、n重結合はn本の実線で表される。炭素原子「C」や炭素原子に結合した水素原子「H」は基本的には省略されるが、「-OH」や「-NH-」の水素原子のような炭素以外の原子に結合した水素原子は省略されない。また、分かりやすくしたり紛らわしさを避けたりする目的で、水素原子（指示水素）を書くこともある。このような構造式は、区別のため「線角構造式」や「骨格構造式」と呼ばれる。

構造式

• 楔形の結合（）：結合が画面の奥から手前に伸びていることを表す。
• 破線の結合（）：結合が画面の手前から奥に伸びていることを表す。
• 波線の結合（〰〰）：両者の混合物（ラセミ体など）であることを表す。

構造式には、ほかにルイス構造式、ニューマン投影式、フィッシャー投影式、ハース投影式などがあり、必要に応じて使い分けられる。

関連動画

関連静画

関連項目

• 化学
  • 有機化学
• 薬学
• 理系ホイホイ
• 高度に抽象化された図
• 化合物の一覧