ニューヨーク市警察(New York City Police Department、NYPD)とは、アメリカ合衆国のニューヨーク市が設置する自治体警察である。
ニューヨーク市警察はニューヨーク市の警察機関で、全米一の規模を誇る。職員数は4万人近くであり、その規模は日本の警視庁に匹敵する。日本人の感覚における「市の部局」と比べると、相当大きな組織といえるだろう。かつてニューヨーク市の警察機関としては公共交通警察(鉄道警察隊のようなもの)などいくつかあったが、組織再編で他の市警察機関を吸収して現在の形になった。
日本で言うところの公安委員会。警察の運営及び治安政策に関してマネジメントを行う。日本の公安委員会と決定的に違うのは、警察委員会は基本的にフルタイムで働くということ。また委員も地元の名誉職なのではなく、具体的な施策の実施を提言し、NYPDを管理する。委員会は委員長1名、副委員長1名の他、各専門分野ごとに担当委員を設置。これは企業で言うと社長、副社長、分野毎の担当取締役のようなもの。日本の公安委員とは異なり、警察委員全員に階級章と身分証明バッジがある。市警本部長が四ツ星なのに対し、委員で三ツ星、副委員長で四ツ星、委員長は五ツ星。
(概念を誤解しているところがあるかも、そこは勘弁)
| 役職 | 階級章 |
| Police Comissioner 警察委員長 |
★★★★★ |
| First Deputy Comissioner 副警察委員長 |
★★★★ |
| Deputy Comissioner (警察委員) |
★★★ |
実際に警察業務を行う警察本体。本部長1名と分野毎に局長13名が置かれ、各局長は各々の局を掌握する。
NYPDの階級は以下のようになっている。但しNYPDに限った話ではないが、必ずしも対訳となる日本警察の階級と、役職の中身が同等と言うわけではない。アメリカの自治体警察と比較するなら、旧警察法時代の自治体警察の階級とその役職を参考にした方がより参考にしやすい可能性もないわけではない。また他の市警察などと階級呼称が同じでも、組織の中での職責が異なることもある。
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階級 |
役職 | 階級章 |
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Chief of Department 警視総監 |
警察本部長 | ★★★★ |
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Bureau Chief 警視監 |
局長 | ★★★ |
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Assistat Chief 警視長 |
警ら管区長など | ★★ |
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Deputy Chief 警視正? |
★ | |
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Inspector 警視または警視正 |
分署長 | 鷲章 |
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Deputy Inspector 警視 |
分署長 | 葉章 |
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Captain 警部 |
分署長 | ┃┃ |
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Lieutenant 警部補 |
刑事分隊長 |
┃ |
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Sergeant 巡査部長 |
三つのシェブロン | |
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Detective Police Officer 巡査・刑事 |
なし |
上記のうち、巡査部長~警部までは昇進試験によって選ばれる。それより上の階級は昇進試験を受けた後、警察委員長の決済により選ばれる。
刑事(Detective)は単なる職種ではなく、それで一個の階級になっている。巡査が刑事試験に合格して任命されると、刑事の階級とバッジが付与される。刑事はその中で、一級から三級(First Grade~Third Grade)に分かれている。新任の刑事は三級に序せられ、実績により二級、一級へと昇進する。給与はニ級刑事で巡査部長と同程度、一級刑事で警部補と同程度となる。一級刑事が巡査部長に昇進しても給与水準はそのまま維持されるので、巡査部長程度に下がることはない。また刑事局以外の部署へ異動になったとしても、巡査部長への昇進がなければ階級は刑事のままである。
地域警察を担う警ら局。街中で見かける制服のお巡りさんの大半がここに所属している。
警ら局は市内を以下の8管区にわけ、それぞれに管区長を設置している。管区内には複数の分署が置かれ、所轄内での治安維持を行う。各管区本部には機動特務班(Borugh Task Force)があり、これは専用のパトカーを有する執行隊で、管区内で発生した事案において必要に応じ対処する。
各地域の治安を担う分署。日本にかつて存在した分署は警察署の出張所のようなものだったが、NYPDの分署はそれ自体が日本の警察署に相当する。警ら局に所属する分署は概ね番号が振られているが、欠番もあるので番号の数だけ分署が存在すると言うわけではない。また警ら局以外の部局も分署に相当する屯所を市内に設置している。刑事局は分署に刑事分隊を配置している。
分署に設置される防犯部隊。街頭を警備し、管轄の犯罪を抑止するのが目的。班長はLieutenant(警部補)があてられる。捜査員には私服で活動するものが多く、Police Officerでも私服で任務に就くこともある。
NYPDの刑事部門。日本で言うところの都道府県警察刑事部に相当。発生した事件の捜査をする刑事の他、科捜研や鑑識班、爆弾処理班なども擁する。
刑事局は市内を4つの管区にわけ、管区本部は管轄での捜査活動を監督する。刑事管区長はAssistant Chief(警視長)があてられる。
日本で言うところの所轄署刑事課。市内の分署に設置され、管轄内で発生した刑事事件の捜査にあたる。分隊長は警部補(Lieutenant)が配置され、この分隊長が日本の所轄署刑事課長に相当する。
分隊は上位の刑事管区の監督を受ける。例えばマンハッタンにある第1分署刑事分隊であれば、マンハッタン刑事管区がこれを監督するというもの。
刑事を支援する刑事局の部署の一つ。以下の部門を擁する。
刑事を支援する部署の一つ。科技術を用いて事件の解決を支援する。
逃亡犯のデータを保存し、また補充捜査を行い検挙する部署。
凶悪事件などを専門に扱う部署。
旧ニューヨーク市鉄道警察。かつてはNYPDとは別のニューヨーク市の警察機関だったが、1995年にNYPDに統合され、鉄道警察局となった。統合以前から今日まで、ニューヨーク地下鉄の治安維持を担当している。市内を四つの管区にわけ、夫々に幾つかの分駐所が設置されている。
旧ニューヨーク市住宅公団警察。鉄道警察局と同様に、NYPDとは別の警察機関であった。やはり1995年に統合され、市警の部局となる。任務は市営住宅における治安維持で、市内を3つの管区に分けて各管区に分駐所を設置している。
NYPDは市内を通過する州自動車道での治安維持のため、交通局にハイウェイパトロールを編成している。このハイウェイパトロールは伝統を保持しているためか、他の部局の制服警官とは異なる特徴を有する。分駐所は市内5箇所に設置。また後述するボランティア警官による補助警察隊も配置されている。
上3つを見てWW2ドイツ軍将兵が思い浮かんだ奴、ちょっと署まで来てもらおうか。戦車抜きで戦車猟兵大隊送りだ。
特殊作戦局に所属する、NYPDの特殊部隊。SWATのようなものだが、ESUがレスキュー業務を所管している点でLAPDのSWATなどとは大きく異なる。警視庁で言うと、レスキュー隊+SIT突入編成に近い。その為、所謂SWATの装備の他にレスキュー機材を保有している。市内で発生した事故や凶悪事件に速やかに対応するため、市内10箇所に地区担当の特殊対応分隊を配置し、さらに1分隊を本部直轄の予備部隊としている。
全米各地の警察には市民ボランティアによる補助警察制度があるが、NYPDにも同様の補助警察隊がある。但し他都市の補助警察官が拳銃を携行し、正規警察官と同様の職務をする場合もあるのに対し、NYPDは拳銃を携行しない点が異なる。当然危険な任務は担えないので、市内のパトロールで住民の苦情を聞き、あるいは問題を把握し正規警官に伝えるのが主な任務。日本で例えると、交番勤務に戻った青島巡査部長が吉田のおばあちゃんに会い、オレオレ詐欺に引っかからないようにチラシを配布したり、いざと言う時は副総監の息子さんか近くの警察に相談するように促したり、「そういえば孫が最近、家の近くで変な車を見ると言ってねぇ」といった話を聞いたりすることに相当する。
補助警察隊のパトカーには大きく「Auxiliary」とかかれ、両袖のワッペンにも同様の刺繍がされ、正規警官とは区別しやすい。とは言え基本的な権限は正規警官と同じなので、水風船爆弾を投げつけたりすれば公務執行妨害や暴行で逮捕されるので注意。
全部きちんとした授章基準があるが編集者は良く分からなかったので、真面目な情報を読みたい人は英語版wikiの「Medals of the New York City Police Department」の項目を参照。また日本語の対訳は、今回編集者が適当に思いつきでつけたものなので、あまり気にしないでください。
けん銃はダブルアクションのみのオートマチックで、執行実包は9mm口径のホローポイントである。銃はSIG P226、S&W5946、グロック19の3種類。
ニューヨーク市警察では随時、警察官を募集しています。未経験者大歓迎!。和気藹々としたフレンドリーな職場で、楽しい仲間が待ってるよ!。とてもやりがいのある仕事で、ちゃんと職歴にもなります。みなさんもお洒落な街・ニューヨークで、警察の仕事をしてみませんか?。
NYPDは1845年、それ以前からある市の夜警を土台に編成された。以来166年の歴史を刻むが、その中で多数の警察官が職務中に命を落としている。市警の公式記録としては、1849年のトーマス・リンチ巡査が最初の殉職者である。これは現在に連なる市警体制が出来上がって、且つ殉職であると認められたものであるので、非公式なものも含めればさらに数は多い。
1960年代~80年代は殉職者が多かったが、90年代に入り治安が改善されると殉職者も減少に転じる。
ここ最近はまた殉職者が増加に転じたが、昔と比べるとその傾向は大きく異なる。まず、2001年にアメリカ同時多発テロが発生した折には、世界貿易センタービル倒壊により一日で23名が殉職した。さらに2004年以降になると、911テロに起因した何らかの疾病で死亡したとされ、殉職扱いになるものが増加。ここ5年間程度の傾向を見ると、この疾病は殉職の理由として最も多いものとなっている。
殉職者の階級は巡査が多いが、巡査部長、警部補、警部、警視といった管理職の者も目立つ。また所属は20分署警ら課やマンハッタン南部警ら管区、ミッドタウン南分署などマンハッタンに拠点を置く部署の者に限らない。77分署、73分署、104分署及び同刑事分隊、122分署刑事分隊など広範囲の所属に渡っている。
その理由として、911に起因した疾病の特性と、事件発生以後の対応が考えられる。まず疾病の特徴は、粉塵を吸ったことによる呼吸器障害や癌である。次に911テロ発生時には市内各所から応援が駆けつけ、倒壊後は行方不明者の捜索を市警総出の状態で行った。つまり当日臨場した、また事故直後から捜索を行った多くの者が粉塵を吸い込んだために、このような状況になったといえるだろう。粉塵を吸ったことによる被害はNYPDに限らず、ニューヨーク市消防や民間の作業員も同様である。 この粉塵被害が広まった原因としては、早すぎる安全宣言があったのではという指摘もある。
2011年1月、彼らを救済するための英雄救済法が大統領の署名により成立した。(おせーよ)
NYPDは男女比がほぼ半々に近い。女性警察官の構成比は全米平均で10~20%程度なので、NYPDは突出してその割合が高いといえるだろう。また有色人種(マイノリティ)の割合も高く、現在では巡査においては白人より有色人種の方が多い。Detective(刑事)では4割程度がマイノリティ出身。Sergeant(巡査部長)以上の管理職階級になると構成比率は減るが、今後は増加していくことが考えられる。
全米一の規模と、欲望渦巻く危険な大都会を管轄する警察なだけに、数多の名誉と不名誉がある。数々の大事件やテロに立ち向かい市民の尊敬を浴びる一方で、数々の汚職や不適切な法執行、果ては違法駐車の取り締まりに対する逆恨みで市民の怒りも買う。
(これは記事主の個人的研究になっちゃうけど、綱紀の問題はやっぱり給与も関係あるんじゃねぇかな。例えばLAPDの警官募集サイトによると、高卒初任基本給は$45,226。一方NYPDの募集サイトを見ると、同じような場合で基本給は$41,975。NYPDの方はマウスをあわせると、すぐにマークがクルクル回って総支給額が出ちゃうが。 この募集サイトを見ると、NYPDの警官がLAPDの初任基本給に並ぶのに1年半以上かかる。地価は全米でも高い方の地域に住まなければならないのに。「16ブロック」で汚職警官を演じたブルース・ウィリスも、「NYPDの警官は安い給料で危険な仕事をさせられている」と言ったらしい。ソースは16ブロックのパンフレット。)
代表的な不祥事としては、クィーンズ地区での黒人青年射殺事件がある。サイレン及びパトライト、警官を示すレイドジャケットなどを私用しない覆面パトカーの私服警官が、被害者らが乗った車を強制的に止めようとして逃げられそうになり、多数の弾丸を撃ち込んで射殺したもの。これらは内規違反となる。(注:刑事裁判では無罪となった)
名誉としては中国人の管理売春組織の摘発などがある。これは中国から騙して女を連れてきて強制的に売春をさせていた、チャイニーズアメリカンの主犯らを逮捕したもの。事件のドキュメントではないが、チョウ・ユンファの「NYPD15分署」 でも同じような話が描かれている。また先述のように9/11では単年度としては異例となる多くの殉職者を出し、ビル粉塵による二次被害者もでた。
NYPDは令状を管理・検索するシステムを導入したが、正式運用前のテスト時にとある善良な老夫婦のデータを入力した。これは正式運用開始前に消されるはずだったが、担当者がドジっ娘だったのか開始後もそのまま残ってしまう。お陰で老夫婦の家には覚えのない嫌疑で数十回も家宅捜索が入ってしまった。夫婦は何度も苦情を訴えデータは消されるはずだったが、再びドジっ娘スキルを発揮してデータは残ってしまった(編集者注:華麗にスルーしていた可能性も)。しかしこの問題を報道が取り上げたことで発覚し、警察は謝罪しなければならなくなった。
市警本部長がチーズケーキを持って謝罪に訪れると、本部長がやってきたことに気をよくした老夫婦は、孫の写真を見せるなどして喜んだと言う。疑いの晴れた爺さんと婆さんは、仲良く平和に暮らしたとさ。めでたし~めでたし~。
名誉不名誉多くの出来事をその歴史に綴るNYPDだけに、様々なメディアで題材として取り上げられてきた。ドラマでは「NYPDブルー」や「サード・ウォッチ」、「Law&Order」、「刑事コジャック」など。映画では「ブルースチール」「セルピコ」など。小説では「87分署シリーズ」が、アイソラというニューヨークをモデルにした架空の街を舞台としながらも、NYPDの刑事の活躍をリアル描いた。
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最終更新:2025/12/07(日) 06:00
最終更新:2025/12/07(日) 06:00
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