対潜哨戒機 単語


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タイセンショウカイキ

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対潜哨戒機とは、潜水艦の天敵である。

概要

水艦戦闘を想定した、哨戒(パトロールの意)」である。

※日本語では単に「哨戒機」とも略されることも多い。

広大な海洋を優雅に飛び回る潜水艦ハンター。
高性能な探知機材を満載し、水面下の潜水艦を捜索・発見・追跡・攻撃する能力を持つ航空機である。

「そんなに暗く冷たい水中が好きなら、そのまま沈んでるといいよ… 永遠にな

彼に鈍足な潜水艦が発見されれば、もはや逃げ場はない。

広大な海に囲まれた日本には必須の装備。

固定翼機と、回転翼機(哨戒ヘリコプター)のタイプがある。
固定翼機は小型~中型の旅客機をベースに開発される場合もある。(P-3C、P-8など)
哨戒ヘリは自国艦船に搭載・離発着できる「艦載機」である場合が多い。(項目参照)

※特に記載がない限り、現代の対潜哨戒機を紹介していく。

よく分からないので、簡単にまとめて

一行でまとめると
「隠れている潜水艦を探して、見つけたら魚雷をプレゼントするのが主な仕事」である。

飛行機型とヘリコプター型の2タイプがある。
(もちろん水上の怪しい船も捜索・攻撃できる)

…ただし海は広いな大きいな、水面上は見通しが良いとはいえ、水中捜索の場合は話は別。
領海全てが相手の隠れ場所であり、どこにいるか容易に分からない。今この瞬間にも領海内に他国の潜水艦がいるかもしれないのが怖い所である。

水は水深が深いほど急速に透明度を失い、また潜水艦自体も黒いため近距離であっても肉眼では発見できない。[1]

基本的に相手は浮上して来ない(その瞬間に居場所がバレる)ため、攻撃される心配はない。

ただし相手は移動できるため、一度捜索した場所が安全という保証はない。

様々な機能・アイテムを駆使しつつ潜水艦を探してみよう!
捜索に失敗すると、自国の高価なでっかい船が海の藻屑になるのでよろしく。[2]
 

対潜哨戒機がなかったらどうなる?

元祖&最強のステルスである潜水艦を放っておけば、自国の船はあっというまに海の藻屑。
でかい艦はもちろん、輸送船を沈没させられる「通商破壊」は戦時中も広く行われていた。

これが船や飛行機、ヘリコプターの攻撃ならば攻撃直前に気づいて対処できるかもしれないが
潜水艦の一撃は何の前触れもなくぶち込まれ、しかも水中から一番美味しい所(弱点)を頂かれてしまう。沈没を免れても航行不能など甚大なダメージは避けられない。

下手するとワンサイドゲームで無双される可能性もある。

飛行機がやらなくても、軍艦がやれば良いのでは?
  • 船の速度では遅すぎ、広範囲の捜索には時間が掛かりすぎる。
    • …かといって大量の船で人海戦術を行う訳にはいかない。(他の海域がガラ空きになってしまう)
    • あえて書くなら、軍用の艦船=民間の船より速い訳ではない。
      • (船舶の特性は該当項目を参照)
  • 充分な装備を持った船は大勢の乗組員が必要で、国によっては人的余裕がない。
    • P-3Cでは乗員11名だが、小型の艦船でも20~40人近くの乗員が必要。
  • 水上の船は遠距離からでも発見できるが、水中の潜水艦は遠距離から容易に発見できない。
    • 相手を見つける=相手も自分を見つけ、攻撃を撃ち込まれる可能性がある。

やはり「少人数で素早く捜索する」できるのは便利である。

その他の脅威

実は前述のように敵の潜水艦=魚雷で艦船を沈めるだけではない。

全ての潜水艦が以下の機能・武装を有している訳ではないが
不透明な水面下では細かい艦種の識別までは不可能なため、リスクが無い訳ではない。

端的にまとめれば
「潜水艦は浮上したらバレるし、陸に上がれないから良いのでは?」という訳ではない点に注意。

※弾道ミサイル発射に関しては超長距離の射程があり、領海に入る必要がないため除外。

秘密裏に特殊部隊を輸送してくることも

敵の潜水艦から特殊部隊[3]が出発し、偵察や破壊活動を行う。
小型潜水艇(輸送潜水艇)等を用いて近隣の海域まで接近するパターンが多い。[4]

  • 偵察によって陸上部隊の情報(装備・人数・位置座標・地形・障害物)が筒抜けにされる。
    • 偵察によって得た情報を元に、長距離からの精密誘導兵器等によって、沿岸を警戒する部隊や対空兵器、対艦兵器を効率的に壊滅させられてしまう。(着弾観測も行う)
    • 近年は個人携行型の小型偵察ドローンも存在するため、より一層の偵察の幅も広がる。
    • 隊員は精鋭ではあるものの、基本的には人数的に劣勢なため直接的な交戦は避けたい。[5]
  • 防衛上の大きな穴が開くことで、結果的に後続(敵側)の大規模な上陸や侵攻が容易となってしまう。
    • 上陸・侵攻時に味方の舟艇や航空機を誘導し、また周囲を警戒する。
    • 必ずしも大型の揚陸艦で来るとは限らず、小型~中型の上陸用舟艇や中型ヘリコプターによる上陸もあるため一概には言えない。

また水中破壊工作/水中爆破工作を行う部隊自体は多くの国が保有しており、手の内を明かしたくないことから他国が「詳しく公開していない=そういう装備を持っていない」という保証はない。近年の中国軍などは充分な資金力もある。(日本との比較兵力表に関しては 中国軍 の記事を参照)

機雷を敷設される可能性もある

潜水艦によって水中から敷設可能な機雷(水上/水中の地雷)も存在するため、放っておけば海が機雷だらけの危険な海域にされるかもしれない。これでは敵の潜水艦がいなくても危険であり、味方艦船の行動を大きく制限されてしまう。

用途

飛行機・ヘリで若干異なるが、捜索・攻撃機能は大抵付属している。

  • 【水中目標】敵の潜水艦を捜索・追尾または攻撃する。
  • 【水上目標】不審な船舶や敵の艦船を捜索・追尾または攻撃する。
  • 自国海域、自国艦船の周囲を飛び回り、敵の潜水艦に警戒する。
  • その他、海上の監視警戒、安全パトロール。
  • 哨戒ヘリコプターの場合は特性が若干異なる。
    • ホバリング(空中静止)が可能で、固定翼機よりも取り回しが利き便利な面も多い。
      • ただし速度・搭載量・航続距離・行動半径[6]は固定翼機には劣る。
    • 陸上~艦上における物資・人員輸送
      • ただし対潜機材を下ろさないと輸送可能量は減る。
    • ホイストクレーンによる人員の吊り上げが可能。(基本的に標準装備されている)
      • 着艦できない小型艦船に対しても人員輸送が可能。
      • 救難活動や隊員の回収において、対象を機内に収容できる。
    • 船に戻って整備や燃料補給が可能。(着艦可能な艦に限る)…艦載機の特権。
    • ヘリのほうが行動半径は狭いが、つきっきりで見回りをしてくれる点は有利。
    • 不審船に乗り込み制圧する臨検、その空中援護などにも使用される。
    • もちろん陸上に対して特殊部隊などを投入・回収も可能。
      • その場合は不要な対潜機材は取り外され、通常の多用途機のように使われる。
実際に使われた例
  • 2001年、九州南西海域工作船事件の際、最初に北朝鮮の不審船を発見。(P-3C)
  • 2009年より、ソマリア沖の海賊に対する警戒監視も行っている。(P-3C)
  • 2011年、東日本大震災時は海上の空母等を基地として救援物資の輸送を行う。(米海軍SH-60等)

武装

爆雷 かつての対潜主力兵器。水中へ沈ませる爆弾。
機雷 水上/水中の「地雷」。いわゆる設置型トラップ。
航空機からの空中投下により迅速に敷設可能なもの。
※装備可能というだけで、必須の装備ではない。
魚雷 空中投下型。主に潜水艦に対して使用される。
対戦車ミサイル 小型艦艇に対して使用される。
元の用途から沿岸の装甲車両にも攻撃可能。
西側ではAGM-114(ヘルファイア)など。
対艦ミサイル 大型艦艇に対して使用される。
飛行機型のほうが長射程&強力なものを装備できる。
機関銃 【哨戒ヘリ】不審船等に対しての射撃による攻撃・警告を行う。
臨検や特殊部隊の輸送/回収時の援護にも用いられる。

その他、翼下などの機外搭載用のパイロン等に取り付け可能なもの。(ガンポッド・ロケット弾など)

装備

潜水艦を発見するための高性能なコンピュータや装備が詰まっている。

※機体が大型な固定翼機のほうがより高性能な機材を詰める。

磁気探知機(MAD) 巨大な金属の塊である潜水艦から出る「磁場の乱れ」を検知する。
電波探知機(ESM) 潜水艦といえど、たまには国や仲間と通信が必要である。
…その隙を見逃さず探知するもの。
こっそりスマホをいじってる生徒を見つけるようなものである。
ソナー(広義) ・水中の広範囲に音波を発信し、反射波で物体の有無を検出する。
・水中の音響探知(聴音)も行う。(スクリュー音など)
いわゆる水中のレーダー。

漁船等が「魚群探知機」として使っているが、あれより強力。
※ソナー自体は水上艦艇・潜水艦にも付属している。
※これ自体が魚雷のように攻撃してくれる訳ではない。

対潜哨戒機に関しては、次項の2つがある。
ソノブイ
(空中投下型のソナー)
空中からポトポト連続投下し、直線上に展開するソナー。
いわゆる設置型の検知トラップ。検知情報を常に哨戒機へ発信する。
有効範囲に潜水艦が入れば発見される。

細長い円筒形で、戦車の砲弾くらいのサイズがある。
アンテナだけ残し探知部分は沈んで待機する。
バッテリーが切れると内部に完全注水され自沈する使い捨て。

機内から再装填可能なものも多い。
機体の小さい哨戒ヘリでは携行本数に限度がある。
ディッピングソナー
(吊下式ソナー)
【哨戒ヘリ用】機体からぶら下げて使うソナー。
使用中は動けないが、好きな場所へ持っていける。
探知状況は機内のモニターによって確認する。

使用後は吊り上げて機内収容し、また繰り返し利用可能。
(結構でかいため、少々機内のスペースを取りがち)
前方監視型赤外線装置(FLIR) 温度差を視覚化する熱源映像装置。
いわゆるサーマルサイト。(→暗視装置)
昼間・夜間・悪天候でも長距離の目標補足や遭難者の発見が可能。
他の航空機、航空機以外にも幅広く使われている。

夜間・悪条件下における飛行や水上目標に対して使われる。
ただし水中は透視できない。(水面の温度を表示してしまうため)

その他、ミサイル警報装置、チャフ/フレアディスペンサー、増槽[7]など。

代表的な哨戒機

記事がなくても構いませんが、記事のあるものはそちらを優先。

固定翼機(戦後)
  • P-1(海上自衛隊)
  • P-3C / オライオン
  • P-8 / ポセイドン
回転翼機(哨戒ヘリコプター)
  • AS532
  • AW159
  • Ka-25
  • Ka-27
  • Ka-28
  • MCH-101 / AW-101
  • Mi-14
  • S-58 / HSS-1
  • SH-2
  • SH-3 / HSS-2 - シーキング
  • SH-60 - シーホーク
  • リンクス
  • KV-107II-3

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関連項目

  • 航空機
    • 飛行機 / ヘリコプター
    • 艦載機
    • 軍用機の一覧
  • 船舶
    • 潜水艦 / 不審船
    • 軍用艦艇の一覧
  • 魚雷
  • 対戦車ミサイル
  • 対艦ミサイル
  • 海 / 水中
    • 海軍 / 海上自衛隊
  • 軍事関連項目一覧
  • 天敵
  • 乗り物
  • 敵の潜水艦を発見!

脚注

  1. *隠密性が自慢の潜水艦が水上から肉眼で発見できてしまったら、その時点で潜水艦失格である。
  2. *イージス艦は約1000億円以上などザラであり、艦種によってはさらに多くの兵士や装備、物資も海の藻屑になればこの額では済まない。この辺りは「空母」の百科記事で詳しく説明されている。
  3. *特殊部隊そのものが精鋭であるし、水中破壊工作は一般の兵士レベルでは不可能である。(潜水機材など各種装具の操作はもちろん、水面に顔を出せない水中で現在位置を確認しつつ長時間作業…というだけで大きな危険が伴う)
  4. *秘密裏に潜入するため、潜水艦から隊員を乗せた小型潜水艇が出発するのは米海軍特殊部隊のネイビーシールズ等でも行っている。もちろん隊員の存在が露呈しないよう、潜水艇自体は遠くの水中に残して隊員のみで上陸する。各種荷物を背負ったまま水中の長距離遠泳も行えるよう訓練されているため、生身の人間だからと油断はできない。
  5. *映画やゲームのように少人数で沿岸の敵の基地で無双するのは難しい。十分な火力支援があるなら別であるが。
  6. *行動半径…航続距離の半分。この範囲内であれば出発地点へ帰還できる距離。
  7. *着脱式の追加燃料タンク。広義には大小複数のサイズがある。
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