諸兵科連合とは、近・現代の陸軍において、複数の兵科を組み合わせてお互いに弱点を補い合い、各兵科の能力を最大限に発揮できる部隊を編制しよう!というドクトリン(概念)である。
凄く簡単に言うと「ジャンケンのグー、チョキ、パーを合わせたら超強くね!?」という認識でだいたいあってる。
英語では「Combined Arms(コンバインドアームズ)」、陸上自衛隊においては「諸職種連合」と呼称される。
(平和主義を貫く日本国の陸上自衛隊において「兵科」などと言う概念は存在しません!)
また、これにより構成される部隊は「諸兵科連合部隊」や「~戦闘団」と呼ばれる。
近・現代の軍事を語る上で外すことが出来ない要素の1つであり、軍事初心者を悩ませる要素の1つでもある。
古代や中世の諸兵科連合がどうとか、マケドニアのファランクスや、長篠の戦いの信長軍鉄砲隊がどうとかは、
とっととWikipediaに丸投げしといて、 本記事ではもっぱら近・現代の諸兵科連合について解説する。
さて、ここで読者の方に1つ質問。
戦場の花形であり、走攻守全てに秀でた能力を持つ「戦車」?
陸軍の根幹を成し、軽快な機動性とあらゆる状況に対応出来る柔軟性を持つ「歩兵」?
或いは、戦場の女神と例えられる圧倒的な火力を持つ「砲兵」?
縦横無尽に空を飛びまわり地上部隊を攻撃する「攻撃ヘリ」だろうか?
あ~、そこ、「AC」とか「MS」とか言った奴、あとで教官室までくるように…
え? 「核兵器」? それやると社会的というか国際的に死亡するので無しです。いいね?
A、そんなものは存在しません。
現実はフィクションほど甘くない。何であれ、長所があるものには短所も付いてくるもの。
現代戦を担う前述の4つの兵科も、それぞれ弱点を抱えている。
以下、主な戦闘兵科の長所と短所をまとめてみた。
(カッコ内は日本・陸上自衛隊における職種名。)
兵科名 | 長所 | 短所 |
---|---|---|
歩兵科 (普通科) |
||
機甲科 | ||
砲兵科 (特科) |
||
航空科 |
このように各兵科とも幾つかの弱点を有している。
それら弱点を補完しなければ、兵科部隊が能力を最大限に発揮するのを阻害し、
時としてその兵科部隊を壊滅にさせてしまう。
以下、これまでの戦史における戦いを例に解説する。
※ただし、分かり易さを重視している為、正確とは言い難かもしれません。
より詳しい戦史に関しては各自wikiなどを参照してください。
諸兵科連合において、特に戦車と歩兵が協力することを「歩戦共同」と言う。 はい!ここ試験に出すぞ~。
歩戦共同は、火力と防御力に劣る歩兵部隊が戦車の支援を受け、視界と小回りに劣る戦車部隊が歩兵の支援を受けると言う「現代における戦車運用の基本」と言っても良いドクトリンである。
歩戦共同に関してはこのサイトに詳しい。(リアル系FPS ARMA2のサイトだけど。)
「第四次中東戦争」とは、1974年にイスラエルとエジプト・シリアの間で起きた戦争である。
この第四次中東戦争において、イスラエル軍はメルカバ戦車の生みの親でもあるイスラエル・タル将軍が考案した「オールタンク・ドクトリン」を採用しており、戦車部隊を中核とする機甲師団を多数編制していた。
エジプト・シリア連合軍の奇襲によるシナイ半島の占領から始まった第四次中東戦争の初戦、シナイ半島の守備を担当していた「マンドラー機甲師団」が反撃に出たのだが、戦車部隊の機動に他の歩兵・砲兵部隊が追い付くことが出来ず、なんやかんやで結果的に「RPG-7」や対戦車ミサイル「AT-3 サガー」など備える エジプト軍の強固な
防御陣地へ戦車部隊のみで突撃することになってしまい、開戦からたった3日でマンドラー機甲師団は部隊の3分の2を失う大損害を受けてしまった。 (この戦いが、後に戦車不要論を生む事になったのはまた別の話である。)
このように、たとえ陸戦の王者たる戦車であっても、歩戦共同が砲兵部隊の十分な火力支援が無い状況では容易に撃破されてしまうのである。
ノモンハン事件とは、1939年に満州国とモンゴル人民共和国の国境線をめぐって日ソ間で発生した紛争のこと。
誰か記事書いてよ…
満州国が主張していた国境線をソ連・モンゴル連合軍が越えたことから始まったノモンハン事件において、
当時満州国の防衛を担っていた関東軍は3個歩兵連隊を基幹とする第23師団により反撃に出たが、 日本軍の
4~5倍というソ連軍の圧倒的な物量に太刀打ちできず、思うように作戦が進まなかった。
焦った関東軍は、増援として虎の子の機甲部隊であった「第七師団」の戦車連隊を基幹とした「安岡支隊(八九式中戦車:120両・装甲車:19両)」を派遣するも、ソ連軍機甲部隊(戦車:498両・装甲車:385両)の物量の前に部隊の半数を失う大損害を受け、早々に撤退してしまった。また、砲兵部隊も日本軍の火砲:92門に対し、ソ連軍は
火砲:542門を展開しており、こちらもソ連軍の圧倒的な砲撃の前にまともな砲撃が出来ず、仕舞には歩兵部隊から「こっちが撃つと倍の砲弾が返ってくるから頼むから撃たないでくれ」と頼まれる始末だった。
残された歩兵部隊は、ソ連機甲部隊に対し戦車・砲兵部隊の支援が皆無な中、火炎瓶や対戦車地雷などで果敢に立ち向かったものの、 その圧倒的な物量の前に歩兵部隊の各防御陣地は分断、各個撃破されていった。
このように、たとえ歩兵部隊が強固な防御陣地を構築していたとしても、戦車・砲兵部隊からの十分な支援を
受けられなければ非常に脆弱なのである。
「ブレクール砲塁攻略戦」とは、第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦における作戦の1つ。
海外ドラマ「バンド・オブ・ブラザーズ」の2話にも描かれており、現在でも戦術やリーダーシップの実例として取り上げられる有名な戦いである。
上陸地点の1つであるユタ・ビーチに砲撃を加え、連合軍の上陸を妨げているドイツ軍の砲兵陣地を破壊する為、
第101空挺師団所属の歩兵13名が砲兵陣地を攻撃し、これを破壊・制圧した。
元々、この砲兵陣地はドイツ軍第6降下猟兵の1個大隊が守備する予定だったのだが、実際に到着したのは砲兵陣地が破壊された後だった。意味ねえ…
このように、砲兵部隊と言うのは敵に接近されて近接戦闘に突入してしまうと、その脆弱性が明るみに出てしまう。
念の為に言っておくが、砲兵さんも砲を撃つ訓練の他に、ちゃんと銃を撃つ訓練をしている。しかし、所詮本業ではない為、近接戦闘のプロである歩兵にはとてもじゃないが歯が立たないのである。仕方ないね!
こういったシチュエーションで砲兵同士でのガチンコバトルすると第一次世界大戦の「ヴェルダンの戦い」みたく大変なことになる。簡単にいうとジャンケンのグーを相手が斃れるまでお互い出し続けるという消耗戦。まぁ、相手が要塞なので歩兵もなかなか近づけなかったので、この例における「空挺師団」による奇襲攻撃がいかに有効かがお分かり頂けるかと。
「独ソ戦」とは第2次大戦において、ナチスドイツとソビエト連邦の間で行われた戦争のことである。
1941年、ドイツ軍の「バルバロッサ作戦」発動による奇襲攻撃から始まった独ソ戦序盤、制空権を確保したドイツ空軍は地上攻撃を開始した。ただでさえ、ドイツ軍の機甲師団に押されまくっていたソ連軍は機動を制限され身動きが取れず、そこにドイツ空軍の攻撃機や、かの「空飛ぶ魔王」の急降下爆撃機「Ju87 スーツカ」の攻撃を受けたことにより大損害を被り、多くの歩兵・戦車・火砲を失うこととなった。
結果として、ソ連はその圧倒的な物量(урааа!!)でドイツ軍を押し潰すことが出来たからいいものの、
制空権を掌握していない状況下で地上部隊が作戦行動を行えば大損害は必至だという事が証明された。
※ただし、これはあくまで制空権を失うと航空部隊と地上部隊の両方を相手にしなきゃいけなくなるから損害がマッハで増えるよ!という事であり、制空権さえ握れば空軍だけで敵地上部隊を完全に殲滅できるというワケではない。何故なら、地上部隊はバラキューダなどごく簡単な偽装で航空部隊の目を欺く事ができるからである。実際、イラク戦争においてはチートな空軍力を誇る米軍が実施した空爆でも地上部隊を一掃する事は出来ず、機甲師団などの地上部隊がとどめを刺す事になった。
ここまで長々と説明してきたが、つまりどうすればいいのかというと、
3.砲兵は、自軍の勢力下、または守備部隊の適切な援護下に入ること
この5つをきちんと守れば、各戦闘兵科がお互いに長所を発揮することができるだろう。
教官「この5つの規則を守ること。いいね?」 IDF・日本軍・独軍・ソ連軍「アッハイ!」
もちろん、例外は常に存在する。
作戦はいつも万全の体勢で臨めるとは限らないし、天候の変化など何らかの理由で自軍の火力支援が得られない可能性もある。このような状況の中で、我の短所をカバーし、長所を生かすのが指揮官の腕の見せ所である。
ちなみに、RTSゲーム「R.U.S.E.」や陸戦シミュレーション「コンバットミッション」をプレイすれば指揮官視点で体験出来る。一個人(兵科)視点で体験するにはFPSゲーム「バトルフィールド」シリーズのコンクエストモードで割と簡単でおおよそだが、体験出来る。歩兵は「戦車無いと拠点とれねぇ!」だし、戦車は「おい!RPGでフルボッコされてるぞ!歩兵何処だよ...」だし、砲兵は「遠距離攻撃してたら敵戦車突っ込んできた...」だし、「地上部隊が航空機にレイプされてる。これはひどい」だし、航空機は「敵の戦闘機なんとかしてくれ...」 ・・・まぁ、だいたいあってる。
さて、ここまで諸兵科連合について解説してきたが、肝心なことが抜けていることにお気付きだろうか?
これに気付くか、 気付かないかで軍オタとしてのレベルが大きく広がる。
また、これに気付くことが出来たのならば、軍オタ初心者卒業と言ってもいいだろう。
では、その肝心なものとは何か?
兵站とは、戦闘部隊を支える為に行われる、物資の補給、整備、輸送、衛生、施設の構築・維持など
戦線後方で行われる活動の事。兵站に関しては、アンサイクロペディアの兵站の記事が割と詳しく分かり易い。
→まさか大百科記事に「兵站」の記事が出来るとは、たまげたなぁ…。しかもスゴイ情報量なのに分かり易い。
兵站部隊とは、この兵站業務を担い、前述の戦闘兵科以外の兵科である「支援兵科」で構成される部隊のこと。
燃料や弾薬の輸送、兵器の整備、防御陣地の構築など、戦闘には参加しないが、前線の戦闘部隊達を影から支えるとっても、とっても重要な存在なのであり、戦闘部隊が活動するには兵站部隊からの支援が不可欠である。
そのため、諸外国の軍隊では全軍の約半数である50%以上を兵站部隊が占めている。
我々、一般人が想像したり、自衛隊の募集パンフレットを飾る「歩兵」や「戦車兵」、「パイロット」なんてものは、軍隊を構成する要素のほんの1つに過ぎず、その影でコツコツ任務に励んでいる兵士がいる事を憶えておいて欲しい。
では、ここで兵站部隊を構成する各支援兵科を紹介しよう。
※ただし、諸兵科連合と関わりの薄い音楽隊や憲兵、主計科については省略させて頂きます。
戦闘部隊が活動する戦場には、塹壕、土提、地雷原、河川など、部隊の進撃を妨げる様々な障害が存在する。 また、軍が正常に機能する為には駐屯地や物資集積所、防御陣地などといった施設の設置・修復も、前線部隊を支える為には不可欠である。というか、これが無いとまともに戦えない。
そこで、これらの仕事を一手に引き受けるのが"戦場の土建屋"の異名を持つ
「工兵科」
である。 (陸上自衛隊においては「施設科」と呼称される。)工兵科に所属する兵士は「工兵」と呼ばれている。
工兵は英語で「Military Engineer(ミリタリー・エンジニア)」と呼ばれており、兵士としてよりも技術者としての色合いが強い兵科である。(実際、旧日本軍で「工兵科」と言えば、そこらの歩兵とは違う高学歴の兵士が多く所属しており、エリート兵科として見られていたらしい。)
工兵科という兵科は1つだが、工兵は「戦闘工兵」と「建設工兵」の2種類に分けられる。
戦闘工兵は、前線部隊に直接随伴して支援を行う工兵の事で、防御陣地や地雷原など敵の侵攻を妨げる障害の構築、自軍の進撃を妨げる地雷やバリケード、トーチカなど敵が設置した障害の排除などが主な任務である。
戦闘工兵車を使ったり、火炎放射器や「M202」をぶっ放すのも戦闘工兵のお仕事。ゲームなどのフィクション作品によく出てくるタイプ。
また、戦闘部隊に随伴するため、アメリカ海軍の「Sea Bee」のように、ある程度戦闘訓練も積んでたりする。
「戦闘工兵」と聞くと某絶命宇宙ゲームで宇宙最強のエンジニアが工具一つで敵対勢力を壊滅させている様が想像されるが、あぁ言うのとは(基本的に)違います。とは言えアイザックさんは商船海兵隊にて訓練を受けているので戦闘工兵なのだろうか...
建設工兵は、戦線の後方で橋や道路、駐屯地などより大規模な土木作業を担う工兵の事で、大きな河川に
「架橋戦車」や「パネル橋」で橋を架けたり、海外派遣された時に駐屯地などを設営するのが主な任務である。
測量や地図の作成を行ったり、大規模な防御陣地を構築するのも建設工兵のお仕事。
装備には、ショベルカーやバケットローダーなど、民生品をODカラーに塗り替えただけのものが多い。
アメリカのように国によっては平時にも国土建設の一環として、大規模なインフラ整備に携わっていたりもする。
軍隊の神経といえる通信網を構成する兵科。通信科に所属する兵士は「通信兵」と呼ばれ、彼ら無しでは
軍は正常に機能しなくなり、烏合の衆に過ぎなくなってしまうと言っていいだろう。
戦闘部隊において、通信兵がいなければ、部隊がおかれている状況を司令部に報告できず、増援部隊や火力支援を要請することも出来ない。さらに、味方部隊との連携も十分にとれなくなり、最悪同士討ちまで誘いかねない。
司令部においても、通信兵がおらず、各部隊を繋ぐ通信網を構築することが出来なければ、前線の状況が分からないまま十分な指揮が出来ず、そのまま部隊は壊滅してしまうだろう。
このように、通信兵は現代の軍隊において、非常に重要な存在なのである。
しかし、通信兵の任務はそれだけでない。通信網の構築に加えて、それらを構成する通信機材の整備・維持、
ネットワークの管理・保全、敵に対する欺瞞・妨害や、敵からの電子的攻撃に備える電子戦、部隊の映像・写真撮影など、その任務は多岐に渡る。近年は、サイバーテロへの対処も重要な任務となっている。
(そして体力的に割とキツい。特に有線引っ張るのとか。基地通信隊は割と楽らしいが…)
また、ことフィクションにおいて通信兵は、衛生科の「衛生兵」と並んでなにかと死傷率が高い。 (映画「スターリングラード(2001年)」とかね...)
通信科が軍の神経なら、輸送科は「軍隊の血液」に例えられる。
輸送科が輸送する弾薬や燃料や糧食などの補給物資が無ければ、筋肉たる戦闘部隊は戦う事が出来ないため、
いずれ「アパム!弾持ってこい!アパーム!」状態になって壊滅し、軍全体も機能不全を起こすことになる。
(ここらへんは、SLGやFPSをプレイしたことのある方なら、理解しやすいのではないだろうか。
肝心なところで弾薬切れ!とか燃料切れ!とかになってたこ殴りにされた経験が一度はあるはず…)
その為、補給を軽視した戦争や軍隊は、壊滅したり負けるたりすることが多い。
ナポレオン軍とか、日本軍とか、帝国陸軍とか、帝国海軍とか… (え?最後の方全部同じだって?)
また、機甲科の戦車や砲兵科の自走砲、歩兵科のIFVなどは全て輸送科のトレーラーが運んでいる。
彼らがいなければ、戦闘部隊は戦場に辿り着く事さえ出来ないのである。
軍内における衛生面の管理を担当する兵科。衛生科に所属する兵士は走る死亡フラグ「衛生兵」と呼ばれる。
平時の健康管理や防疫、戦時においては衛生兵による負傷者の治療・搬送や、野戦病院の開設などが衛生科の任務である。 もし、衛生兵がいなければ、負傷者に対して適切な治療が行えず、例え助かる命だとしても助からなくなってしまう。また、部隊が活動する戦場は御世辞にも衛生的とは言い難く、兵士たちがどんな病気にかかるか分からない。展開している地域に応じて適切な予防や治療を行うのも衛生兵の重要な役割なのである。
突撃銃を始めとする小火器や、無反動砲や携行ミサイルなどの重火器、果ては戦車や装甲車などの車両まで
軍が装備しているあらゆる兵器の整備を行う兵科。日常の簡単な整備は歩兵や戦車兵など各兵科の兵士が行っているが、より高度な整備は武器科の兵士が行う。(それでも、ダメならメーカー送るけどね…)
また、機甲科部隊に随伴し、戦車の整備や故障時の回収を行う「装甲回収車(戦車回収車とも)」は本来武器科の装備であるが、戦車と共に行動する事が多いので戦車部隊に配属されている。そして、日本国内においては、工事現場などで発見される不発弾の処理も武器科が担っている。
(ただし、海中で発見されるものについては、海上自衛隊の爆発物処理隊が処理を担当している。)
ちなみに、各兵科の装備を整備しなければならない為、教育期間中は陸軍に配備されている様々な装備を
いじりまわして資料にして教育を受ける事が出来る。
(本州で89式装甲戦闘車や99式自走榴弾砲を触れるのは、富士教導団と土浦の武器学校だけ!)
機械というものは、多かれ少なかれ故障する物である。それが、劣悪な環境で使用され、銃弾や砲弾や爆弾を受ける戦車を始めとする兵器ともなれば、まず故障は避けられないだろう。故障しなくとも、予防の為の定期点検を走行距離や砲発射数によって実施しなければならない。
彼ら武器科の整備兵たちがいなければ、陸戦の王者たるの戦車も60tの鉄塊に過ぎなくなってしまうのである。
燃料、糧食などの調達・管理・整備や、兵士へ給食・給水、入浴、洗濯などの家事全般を担当する兵科。
軍隊において「食事」は特に気を使う要素である。
何せ、戦史にはメシがマズくて反乱がおきた軍隊がある程である。戦争と言うあらゆる無駄が削ぎ落された極限状態において、食事は兵士にとって唯一と言っていい娯楽であり、兵士の士気を保つ手段の1つである。
その為、軍は可能な限り兵士たちに温かい食事を食べさせられるよう努力している。
また、戦場においては「水」の確保も重要な要素である。綺麗な水を確保出来なければ、喉を潤す事も食事を作る事も体を洗うことも傷の手当てをする事も出来ない。
特に日本人にとっては、「入浴」が戦闘に疲れた心を癒す重要な存在であるようだ。
どっかの特務機関の三佐も「風呂は命の洗濯よ!」って言ってたし。
実際、2003年の自衛隊イラク派遣においても最初に作られた保養施設が「銭湯」だったんだとか。
ちなみに、アフガン派遣のフィンランド軍は「サウナ」を作ったらしい。えっ?
需品科には、これらの要望に答える為に「野外炊具1号」、「浄水セット」、「野外入浴セット」が配備されている。
需品科は戦場で戦う兵士たちの「心」を支える役割を担っているのである。
また、需品科は平時の戦場とも言われる災害派遣においても、被災した方々の生活と心を支えているようだ。
核兵器、生物兵器、化学兵器などの大量破壊兵器(NBC兵器)への対処を担う兵科。
主に、NBC兵器と検知と除染、NBC兵器の管理・運用を行う。運用はしてなくても教育の為に保有してたりもする。
第1次世界大戦において、塹壕による戦線の膠着状態を打破する為にもちいられた化学兵器は各国から大いに恐れられた。化学兵器は、わざわざ自隊が姿を見せ敵と銃弾を交じわすことなく、敵を無力化できるからである。
そこで、各国では化学兵器を含むNBC兵器が使用された際にその被害を最小限に抑える為に化学科を編制した。
化学科の適切な対処出来なければ、敵部隊と戦わずして部隊が全滅してしまうし、汚染された装備を再び
使用することや、汚染地域を浄化することも出来なくなる。
また、近年は地下鉄サリン事件など化学兵器を用いたテロ攻撃においてもその能力が発揮されている。
ここまで各支援兵科について説明してきたが、各兵科の短所については説明しなかった。
何故なのか?と言っても読者の方も薄々気づくかもしれないが、冒頭でも述べたように兵站部隊という部隊は前線に立って戦う部隊ではなく、それを構成する支援兵科の主要装備も、重機とか、通信機とか、トラックとか、医療機器とか、厳ついクレーン車とか、お風呂とか、スゴイ水鉄砲などなど他の部隊を支援するためのもので、自衛用の小銃などはあるが、戦うための装備はほとんど持っていない。
つまり、何が言いたいかというと、
殴られると、滅法弱い
のである。
持っている武器と言えば自衛用の小火器くらい、戦闘訓練もほどほどにしかしていないので、偵察部隊くらいなら追い払えるかもしれないが、機甲部隊みたいな
ガチな戦闘部隊が来ようものなら瞬く間に撃破されてしまうのである。
(どっかの島国の軍t…ゲフンゲフン、実力部隊は支援兵科を含む全部隊に対戦車兵器が行きわたってるらしいが…)
兵站部隊がいなければ戦闘部隊は活動できない。でも、敵の戦闘部隊とはまともに戦えない。
では、そんな兵站部隊たちをどうすればいいのかと言えば実に簡単、
のである。
特に、その影響が非常に大きい「補給部隊」を例に挙げると、補給活動が近くの部隊への補給なら問題ないが、
補給部隊の移動経路(補給線)が長くなればなるほど、前線の穴から侵入してきた敵部隊(主に特殊部隊やゲリラ)が奇襲できる機会も増えるので、補給部隊を護衛する必要が出てくる。これは場所が変わっても同じで、海上で補給艦などで構成される補給船団が長い海上の補給線(シーレーン)を移動する際は、船団に必ず護衛の船(護衛艦)が就くか、護衛の戦闘部隊が海域の安全を確保する(シーレーン防衛)。この補給船団の護衛を軽視していたのが太平洋戦争での帝国海軍であり、その結末がどうなったのかは、我々日本人が一番理解している。
(兵站・補給線確保の重要性に関しては是非、「大井篤」氏の記事を一読することをお勧めする。)
その他の支援兵科も自軍の勢力下にある安全な後方地域で活動するか、戦闘部隊の護衛を受ければいい。
戦闘部隊の連携も十分、兵站部隊からの支援もバッチリ!
これならいい加減戦えるようになっただろうし、この長い記事もいい加減終わるだろう。
そう思った読者も多いのではないか……?
まだだ!まだ終わらんよ!
残念だが、まだまだ終わらない。
ここまでの解説が主に諸兵科連合を構成する各部隊など「ハードウェア」についての解説だったと例えるなら、
この項では、現代戦の要であり諸兵科連合の「ソフトウェア」と言える「指揮・命令系統」と、それに関連する
諸兵科連合部隊である「戦闘団」について解説する。
さて、諸兵科連合とは冒頭で述べたとおり、
「複数の兵科を組み合わせてお互いに弱点を補い合い、各兵科の能力を最大限に発揮できる部隊を編制する」
というドクトリンである。
これだけ見ると、
「戦車とか歩兵とか砲兵の部隊を同じ戦場に集めて、一緒に行動させれればいいんでしょ?楽勝!楽勝!」
と思うかもしれないが、現実に行うのはそう簡単なものではない。
集めるのは各兵科部隊だけでなく、「指揮権」も集めなければならないからである。
指揮権とは、その名の通り「部隊を指揮するための権限」である。指揮権は、その部隊の指揮官に与えられており、指揮官は指揮権を行使して部隊を指揮する。
(余談だが、指揮官が「何らかの理由で」指揮権を行使できない場合、その指揮官の次に階級の高い者が指揮を執ることになる。この為、旧軍では余りに酷い指揮官が「誤射」で戦死することがよくあったとかなかったとか…。)
諸兵科連合部隊を編制する上で、この「指揮権」を1人の指揮官に統一しないと非常に苦労することになる。
軍隊と言うのは「ピラミッド型」の組織であり、命令系統は上から下へ、命令は上意下達で伝達されている。
また、指揮・統制を混乱させない為に、基本的には同列の部隊への並列の伝達経路は設置されていない。
つまり同列の部隊に何か要請したい事があった場合、いちいち司令部に要請して、司令部からその部隊に命令してもらわなければならないという事である。
例えば、指揮権の統一が成されていない諸兵科連合部隊(仮)で、機甲師団所属の戦車中隊が歩兵師団所属の砲兵中隊に火力支援要求をする場合、
1.中隊本部が大隊本部に砲撃を要請→2.大隊本部は師団司令部に砲撃を要請→3.師団司令部は砲兵師団司令部に砲撃を要請→4. 歩兵師団司令部が大隊本部に砲撃命令を下達→5.大隊本部が中隊本部に砲撃命令を下達
というように、5度も要請と命令下達を繰り返さねばならないため、とてもとても時間が掛かってしまう。
これでは刻一刻と状況が変化する戦闘にとてもじゃないが対応できない。
(もちろん、現場で臨機応変に対応して連携を執ることもある。太平洋戦争初戦のマレー作戦では、現地の陸軍の歩兵部隊と海軍陸戦隊の装甲車部隊の指揮官が戦場で言葉を交わし共に戦ったんだとか。)
また余談だが、これが陸海空軍での統合作戦になると、そりゃもうムチャクチャ大変なことになる。陸自の連隊長が「空自との合同演習がしたい」と言い出した日には、連隊幕僚の運用訓練幹部が泣いて謝る程度の大変さである。
この問題を解決する為に登場するのが、ここまで何度か言及されている「諸兵科連合部隊」である。
「諸兵科連合部隊」とはその名の通り、諸兵科連合によって構成される部隊のことである。通常編制における
「師団」、「旅団」、「混成団」、戦時編成においては後述する「戦闘団」などが該当する。
これらの部隊は諸兵科連合部隊としての機能が完結しているので、兵站さえ維持出来れば独立して作戦行動をとる事ができる。また、諸兵科連合部隊は非常に強力な存在であり、十分な錬度を有する諸兵科連合部隊の進撃を
止めることは、同規模か或いはそれ以上の規模の諸兵科連合部隊をぶつける以外には不可能である。
なので某進撃なアニメの「1人で一個旅団並の戦力」を持つとされる某兵長はかなりヤヴァイ存在であると言える。
あと、ハムエッグ好きの某一人旅団とかも。
戦闘団(英:Combat Team;CT) とは、 必要に応じて各兵科部隊を組み合わせて編成される諸兵科連合部隊のことである。この概念は第二次大戦中のドイツ軍が編制した「カンプ グルッペ(独:Kampf gruppe)」が先駆けとされている。基本的には連隊規模を基に編制されることから、単に戦闘団と言う場合は「連隊戦闘団」を表していることが多い。
戦闘団の編成(後述の編成表を参照。)は、最も規模が大きく戦闘団の中核となる部隊(主に歩兵 / 戦車連隊)の司令部の指揮下に、戦車部隊や砲兵部隊など各兵科部隊を配属されており、これら部隊の指揮を戦闘団長(連隊長)に執らせる。これにより師団司令部に要請しなくてもスムーズに支援を行う事が出来るようになる。
さらに、戦闘団の編成は変えることが出来るので、その戦線の状況に合わせて柔軟に対応する事も出来る。
「なら、わざわざ編成しなくても、普段から戦闘団編成にしとけばいいのに…」、と思う方がいるかも知れないが、
これは、普段は単一兵科で部隊を編成しておいた方が色々ラクだからである。
企業の一地方営業所に過ぎない場所に、特殊機械や、ショベルカーや、トレーラーや、大型トラックや、中トラや、軽トラをごちゃまぜに置いていたら、維持費も整備の手間も大変である。また、燃料や部品、弾薬も種類の違うものを別々に管理しなくてはならないのでめんどくさい。さらに、それらを操る乗員も扱う機器が違うのでそれぞれ別の教育を受けさせなければならないのでめんどくさい。また、それぞれ所属する兵科の違う隊員たちの書類をまとめて処理・管理するのもめんどくさい。とにかく手間もお金もかかるのである。
また、軍隊も所詮は国の組織の1つに過ぎない。国民の皆様から頂いた血税を可能な限り無駄を無くして有効に活用しなければならないのである。
(まあ、どっかの軍隊は常に旅団規模の諸兵科連合部隊を編制してたりするが…)
ここでは、より具体的に諸兵科連合部隊の編成を、陸上自衛隊の諸兵科連合部隊である
「連隊戦闘団(英:Regimental Combat Team;RCT」の編成を例に解説する。
陸上自衛隊では、普通科/戦車連隊を基幹に師団に所属している特科大隊、戦車/普通科大隊、偵察隊、施設大隊、通信大隊、後方支援連隊から部隊を配属して戦闘団を編成する。
以下、その編制例である。
ここでは諸兵科連合部隊の具体的な作戦を、我が国最大の公開演習である「富士総合火力演習」を例に解説する。
「富士総合火力演習」を見た事が無い人は、まずこちらを見て頂きたい。
(45分もあるので時間が無い人&メンドくさい人はYoutubeで「総合火力演習 ダイジェスト」とでも検索して欲しい…)
↓現代戦の基礎知識を学ぼう! ↓制空権の確保は大事
↓補給線の確保・防衛も大事 ↓現代戦の要、兵站について学ぼう!
掲示板
141 ななしのよっしん
2023/03/01(水) 14:44:09 ID: 1X5r24sAJr
大隊戦術群の構成だと根本的に歩兵が足りてないのも問題だったはずだが
142 ななしのよっしん
2023/05/18(木) 16:15:46 ID: FCj7LTZyhf
ロシアも諸兵科連合でやってきたけど機能するかどうかはまた別なのか
形だけ整えてもダメと言うのが難しいね
143 ななしのよっしん
2024/12/02(月) 18:32:25 ID: CYxU9D5f7M
大隊戦術群ってのは要はミニ陸軍なわけよ
なので、ゲームみたいに"同規模の部隊同士"で戦えば大抵は勝利出来ると思う
まず大隊戦術群は規模が小さいので側面や背面からの攻撃にめっぽう弱い。当然ロシアもアホではないので別の部隊と連携して行動するわけだが、一々他の部隊に援護してもらう必要があるので移動が遅くなる
次に火力支援。全ての部隊に砲兵とロケット砲兵がいるのは確かに強いけど、逆に言えばそこにいる部隊しか使えないとも言える。少ない砲でちまちま攻撃するよりは、一箇所に集めて一斉に攻撃した方が効率的
更に指揮の問題。大隊戦術群は何でも出来るがゆえ、指揮官はそれを全て指揮する必要がある。歩兵や戦車の指揮が得意な指揮官が必ずしも火砲や電子戦が得意なわけじゃないし、そもそも攻撃部隊と電子戦が同じ担当だったりと無茶苦茶忙しい
最後に補充の問題。戦闘で消耗したり、攻撃するために他の部隊に◯◯貸して~ってのがやりにくい。コンパクトな部隊なので1つ部隊が抜かれたら大隊戦術群が丸ごと機能不全に陥
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最終更新:2024/12/12(木) 06:00
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