垂直避難とは
災害時に安全な場所と空間を確保するために上下垂直方向に避難することである。
概要
簡単で原理を説明するなら、「水は低い場所を流れる」
いかに強烈な濁流や土砂が押し寄せてきた場合でも
それらは物理的に重力には逆らえないため、低所を突き抜けて流れる性質がある。[1]
- 居住範囲を2階にしておくだけでも
夜間や就寝時でも異変に気付き、巻き込まれる、救助が来るまでの時間稼ぎにもなる。 - 川の氾濫や津波といった水害の際に用いられる場合が多い。
- 低所を突き抜けていくことから、土砂災害に対しても一定の効果がある。
- ほんの少しでも高い位置(海抜/標高)にいるだけで生存率は倍々で高くなる。
- 相手は河川と海、土砂災害の場合は山も含める。
本来は起きる前に危険地域から避難するのが望ましい。
事前にハザードマップ等を確認し、気象情報などの収集するといった対策、危機管理も必要である。
利点
在宅型(家の中で行うもの)
- 次のような、外へ出るのが危険な場合でも実施できる。
- 2階に上がるだけなら、子供でも容易。
- 2階以上の家に住んでいれば無条件で可能。
- 最悪の場合は屋根/屋上に登れば+1階分の高さの猶予が手に入る。
- 既に高層階・海抜30m以上の場所に住んでいる場合はその時点でだいたい安心。
- 外へ逃げるのが面倒(後述)
屋外・高台型
いわゆる「高台に避難する」である。
こんな時は要注意
- 大きな地震の後。
- 大雨・豪雨・台風などで地盤が緩んでいる。
- 標高が低い。
- 家の周囲に山の斜面や大きな高低差がある。
- 家の周囲に海、大きな河川がある。
- 川の水が濁る、川や井戸の水量が急に減る、異音がするといった各種予兆はある。
- 津波が来る前には引き潮がある、地震後しばらくの時間がある…まったく関係ない。
- 過去に災害が起きていない=これからも起こらない保証はない。
逃げるのが面倒
どうせ何も起きないし、自分だけは大丈夫。今まで大丈夫だったし。
家の2階に上がるだけなら簡単である。
ただし相手が階層以上の規模や、家屋を破壊する威力であった場合は保証できない。
大地震などは、外に飛び出して高い建物や高台を目指した方が賢明である。
- 勘違いされる場合もあるため、念のために書いておくと
逃げなかった結果…
情報を得ながら自分で逃げなかったにも関わらず、ただのクレーマーに成り下がってはいけないし
失った生命財産までは完全に補償はしてくれない点に注意。以下は実例。
「逃げなさい」と言うんじゃなくて、「沈みます」と教えてほしかった
対策
- 大事なものはあらかじめ2階以上に保管しておく、
- 2階以上を居室・寝室にしておけば、いざというときに時間を稼げる。
- 周囲の高い建物を知っておく。(マンション・団地など)
- 市町村の公開しているハザードマップを確認する
- 家を買う場合は、付近の地形や、土砂崩れや水害も考慮した上で土地を選ぶ。
- やばいと思ったら、理由にかかわらず自分一人でもすぐ逃げる。(→津波てんでんこ)
- 特に大きな地震等があった場合は、2階程度の家よりも高い建物を目指すのも手。
「垂直避難しなくても、タワーマンションの高層階に住めば最強!」かもしれないが、エレベーターが止まってしまうなど脆弱性が露呈しているため、今後の生活も考えると一概に有利とはいえない。[3]
海抜を知る
自分の家や職場といった生活圏の海抜を知るのもひとつの手である。
海抜が低ければ、海から遠くとも津波や河川を遡上した激流に襲われる可能性はある。
「住んでいる海抜なんて分からないよ!」と思った方もいるだろう。
国土地理院の地図によって簡単に調べることができる。
海抜の例として東京駅は約3m、大阪駅は0.4m、名古屋駅は2.2mである。
意外と低いが、垂直避難する建物には困らないのは救いである。
※地域によっては電柱などに「ここは海抜○○m」とご丁寧に書いてある場合もある。
水害に備えていた地域
参考までに
かつて犠牲者を多く輩出した水害だらけの暴れ川と呼ばれた木曽三川の流域[4]においては家を嵩上げしたり避難用の船を屋根に常備する、さらに嵩上げされた避難所(食料備蓄あり)を設置するといった対策もなされた。
現在そこまで地区単位で改造すると時間とコストが掛かるため、高所避難した方が良いかも。
想定外
垂直避難の説明を述べたが、万能ではなく例外もある。
- 濁流や土石流が巨大すぎ、建物ごと飲み込まれる、押し流される、破壊されてしまう。
- 地形によっては濁流が一か所に集中してしまい、想定以上の威力を持つ
- 地形によっては濁流が迂回するなど死角となり、気付いた時には手遅れとなる。
- 古い建物においては、水害以前に地震などの初撃で破壊されてしまう。
非常に大きな地震や記録的な豪雨が来ている際などは、その点も留意して頂きたい。
せっかくのチャンスに逃げ遅れれば、相手は無理ゲー以上のラスボスである。
関連項目
脚注
- *※例外として河川を遡上してくる津波もあるため、絶対安全ではない。
- *単純に交通の便が悪いだけの場合もあるが。
- *電気ガス水道が停止し、物資補給・買い出しのため、30階以上を階段で上り下りするなどの重労働。
- *愛知県~岐阜県間の3つの巨大河川。それぞれが非常に大きくしかも暴れ川なので、大雨でも来ようものなら一瞬で無理ゲーのラスボスと化す。
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