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安土桃山城とは、安土城の正式名称……だと思ってた？
そもそも…
以上。では、順番に説明していこう。
安土桃山とはなんぞや？
大前提として、安土城の正式名称は安土城である。正式名称が『安土桃山城』とかなんて事は一切ない。
『じゃあ、安土桃山時代の桃山ってなんなの？』という話になってくるのだが、この『桃山』というキーワードがややこしい事が、どうもこの問題を産んでいるようである。
伏見城とは、秀吉の隠居用の屋敷を出発点としたものであったが、秀吉の死後、伏見城の戦い、徳川家康の将軍宣下、大坂の陣を経て一国一城令が出されると二条城にその機能を譲り廃城となる。
廃城となった跡地は開墾され、桃の木が植えられた事で『桃山』という地名になったとされている。
このため「桃山にあった城」という意味合いで伏見城の事を桃山城や伏見桃山城と呼ぶのだが、上記のことから伏見城が現存した時代に桃山城と呼ばれた事は無い。北条早雲みたいである。
桃山の由来は上記なのだが、じゃあなぜ安土城と桃山（＝伏見城）なのかという話である。
この安土桃山時代という言葉は、日本史の時代区分において『織田信長と豊臣秀吉が中央政権を担った』事を意味するのだが、これは平安京が拠点だから平安時代、鎌倉が本拠だから鎌倉時代という時代区分の命名法則に合わせて「この時の中央政権を担った勢力の拠点を並べた」だけにすぎない。
なので後世で付けられた名前である桃山を使うよりは正式名称である伏見を使った『安土伏見時代』と呼んだ方が良いという声もあるのだが、そもそも論としてこの拠点の選定にも問題点がある。
本当にそこが拠点でいいのか？
さてここでとある事実を下記に記す。
お気づきであろうか？
大して住んでないのである。
信長は清州城と岐阜城を拠点とした期間の方が遥かに長く、秀吉に至っては伏見城は本来隠居用に作られた拠点である。秀頼の誕生と秀次事件の結果、秀吉が隠居の身でありながら君臨したが故に栄えた（秀吉死後、家康が大坂城に入ると廃れてしまった）という事実から見ても、豊臣政権の本拠地は大坂城である事は疑いようがない。
また通常大名は父祖代々の拠点を動かさないケースが一般的なのだが、信長は当時としては珍しく「本拠地をホイホイ変える」大名である（那古野城→清州城→小牧山城→岐阜城→安土城）。
ということで他の時代にならって本拠地ベースで呼ぶ事自体に無理があると考えられるようになってきた事から、最近は『織豊時代（しょくほうじだい）』と織田・豊臣の頭文字を取ってこう呼ぶことが増えているようである。
どうしてこうなった
安土城の知名度は圧倒的である。『信長の栄華を象徴する絢爛豪華な城が、信長の栄華の終わりを示すかのように失火により失われる』というのはドラマチックで強い印象を与える。
伏見城自体も知名度の高い城ではある（関ヶ原の戦いの発端である伏見城の戦いなどもあるし）のは間違いないのだが、これが桃山城とイコールになっている人が非常に少ないように思える。またその結末も『一国一城令に伴い、二条城にその機能を譲り廃城』と物悲しい印象を受ける。やはり城の最期は燃えてこそナンボなのか。
さらに『豊臣秀吉の城』と言われたら大概の人が『大坂城』を想像するだろう。相手があまりにも悪い。実際大百科の記事でも差がつけられているのは青くならない（≒記事がない）のを見ても明らかであろう。
伏見…桃山城…？
「伏見桃山城」というこの呼び方に妙な気持ち悪さを感じた貴方は鋭い。
上述の通り、現存した時代は伏見城で廃城となってからの桃山城なので、当然ながら「（日本史上に）伏見桃山城という城は無い」のである。通称として用いられる事もあるが、わざわざ長くする意味合いは薄い。
おそらく2つ呼び名があってわかりにくいからまとめてしまえば良いのでは？みたいな感じがあったと思われるのだが、通称と正式名称を組み合わせた呼び方なので妙な居心地の悪さがある。（鹿苑寺金閣とか）
だ が し か し
それが1964年に桃山丘陵にオープンした『伏見桃山城キャッスルランド』の目玉であった模擬天守である。この模擬天守が『伏見桃山城』と呼ばれている。
この模擬天守、見た目こそ伏見城を参考に作られてはいるが、れっきとした鉄筋コンクリート製である。現代において過去のお城の天守再建計画はよくあるが、そういったプロジェクトとは一線を画すものである。
乱暴に言ってしまえば、伏見城の跡地に建ってるだけのニセモノである。故にこの城は伏見城及び桃山城と呼ぶことは出来ないのだが、逆に言えば再現でもなんでもないので『伏見桃山城』と呼称しても問題がない。バグみたいな挙動である。
なお伏見桃山城キャッスルランドは2003年に閉園。取り壊される予定だったのが、地元住人の要望から残されると、京都市に無償譲渡され、現在では京都市の運営する伏見桃山城運動公園のシンボルとなっている。
…のだが、現在耐震強度が足りておらず建物内に入ることが出来ない。補強工事等に関しても京都市の財政事情を考えると絶望的である。というか建設段階から色々とケチってたらしい。マジか。
「伏見桃山」だけが正解の例もある
この桃山の土地には、明治天皇の陵があるのだがこれは『伏見桃山陵』が正解。
まとめ
- 安土城 - ある。正式名称。織田信長の終の拠点。大河ドラマで燃えがち。
- 伏見城 - ある。正式名称。豊臣秀吉の終の拠点。鳥居元忠の玉砕の地。
- 桃山城 - ある。伏見城の後世の呼び方。伏見城が現存した時代に呼ばれたことはない。
- 安土桃山城 - ない。安土城は安土城。桃山城は桃山城。それ以上でもそれ以下でもない。
- 伏見桃山城 - 作られてしまった。伏見城跡地にある鉄筋コンクリート製のパチモン。
- 安土駅 - ある。JR東海道本線。駅前に銅像がある。安土城跡地まで1.4km。
- 伏見駅 - ある。近鉄京都線。伏見稲荷は近くないし、なんなら愛知でもないよ。
- 桃山駅 - ある。JR奈良線。名前は桃山城でも、こっちは最寄りじゃないです。
- 安土桃山駅 - ない。西中島南方駅は許されても。県と府の合成駅名は許されなかった。
- 伏見桃山駅 - ある。京阪本線。ここが一番栄えてる。最寄り駅はこちらです。
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