ネームヴァリュー(Name Value)とは、1998年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
中央ではクラシックに出走したもののその後は条件馬止まりだったが、船橋に移籍してから開花し帝王賞を制したダートの女傑。2024年現在、帝王賞を勝った最後の牝馬である。
主な勝ち鞍
2002年:京成盃グランドマイラーズ(南関東GⅢ)、ファーストレディー賞(南関東GⅢ)
2003年:帝王賞(GⅠ)、TCK女王盃(GⅢ)、大井記念(南関東GⅡ)、東京記念(南関東GⅡ)
父Honour and Glory、母*マジソンカウンティ、母父Seattle Slewという血統の持込馬。
父オナーアンドグローリーはMan o' War系のアメリカの馬で、1996年のGⅠメトロポリタンハンデキャップの勝ち馬。種牡馬としてもわりと地味ではあったが、日本では他に母父としてロンドンタウンなどを輩出している。
母はアメリカで2戦未勝利。
母父シアトルスルーは1977年のアメリカ三冠馬。種牡馬としても成功を収め、日本でも直系にあたる*パイロや*シニスターミニスターが種牡馬として活躍している。
Man o' War系ということでお気づきの方もいるだろうが、カルストンライトオ、サニングデールと同じく、21世紀ではすっかり珍しくなったゴドルフィンアラビアン系の馬である。……というか21世紀になって日本でGⅠを勝ったゴドルフィンアラビアン系の馬はこの3頭だけ。カルストンライトオとサニングデールに比べて忘れられがちな気がする。直系の存続とは関係ない牝馬だから仕方ないか……。
1998年3月3日、後にダービー馬ロジャーバローズを生み出す静内町(現:新ひだか町)の飛野牧場で誕生。中央時代の馬主は深見富朗(ディープスカイの馬主・深見敏男の義父)。地方移籍時に富岡真治の所有に変わり、2003年からは故郷の飛野牧場の所有となった。
※本馬の現役期間は2001年の馬齢表記変更を挟みますが、本記事では一部レース名を除き現表記(満年齢)に統一します。
ダンツシアトルやイシノサンデーで知られる栗東の山内研二厩舎に入厩したネームヴァリューは、2歳の8月、札幌の芝1800mの新馬戦で松永幹夫を鞍上にデビュー。単勝1.5倍の断然人気に応えて逃げ切り楽勝すると、続く同条件のコスモス賞(OP)も3着以下を10馬身以上ぶっちぎって圧勝。一躍牝馬路線の注目馬となる。
ところがテイエムオーシャンに次ぐ2番人気に支持された阪神3歳牝馬S(GⅠ)で馬群に揉まれて掛かってしまい10着惨敗したのがケチのつき始め。明けて3歳となっての前哨戦のオープン特別2戦も5着、4着とパッとせず評価はガタ落ちし、桜花賞(GⅠ)では単勝95.9倍の12番人気で特に見せ場なく11着、優駿牝馬(GⅠ)ではついに最低18番人気となりやはり見せ場なく10着。
その後は半年ちょっと休んで自己条件の1600万下のマイル戦で復帰したが掲示板にも載れず、格上挑戦した京都牝馬S(GⅢ)でも12頭立て10着。また5ヶ月弱休んでいるうちに降級。夏の函館の1000万下で芝1200mを試すもやはり掲示板にも載れず、よくいる単なる早熟馬で終わりかけていた。
ところが復帰3戦目の函館、1800mに距離を戻したかもめ島特別で3着と復調気配を見せると、続く札幌の芝1800m・大倉山特別を逃げ切って約2年ぶりの勝利を挙げる。続く同条件のHBC賞(1000万下)は逃げられず7着に沈んだが、芝2000mに延長したUHB賞(1000万下)を再び逃げ切り4勝目を挙げた。
しかし夏競馬が終わればもう得意の札幌開催はない。ここまで露骨な札幌専用機じゃなあ……と思われたのかどうかは定かでないが、このあとネームヴァリューは船橋競馬場の川島正行厩舎に移籍することになった。
しかし、よもやこれが最大のファインプレーになろうとは、果たして誰が想像したか。
そんなわけで南関東にやって来たネームヴァリュー。転厩初戦は南関東GⅢの京成盃グランドマイラーズ。ここではデビュー以来無傷の17連勝中のベルモントアクターが断然人気で、佐藤隆騎手を迎えたネームヴァリューはそれに次ぐ2番人気だったが、牡馬を蹴散らして4馬身差で圧勝。
続く大井の牝馬限定重賞・ファーストレディー賞(南関東GⅢ)も2馬身差で快勝すると、年末の東京大賞典(GⅠ)でも中央の牡馬たちを相手に、ゴールドアリュールの4着に好走し、この年のNARグランプリ最優秀牝馬を受賞した。
地方ダート。札幌の洋芝を得意としたネームヴァリューの真の適性が見つかった瞬間だった。
明けて5歳、馬主が故郷の飛野牧場に変わり、初戦のTCK女王盃(GⅢ)では堂々1番人気に支持されると、3番手のインで進めて直線で断然の末脚を発揮し2馬身差で快勝。交流重賞初勝利を挙げる。
続くエンプレス杯(GⅡ)は直線競り負けてジーナフォンテン(カジノフォンテンの母)の3着。
牡馬相手のダイオライト記念(GⅡ)ではカネツフルーヴの大逃げを2番手で追ったが逃げ切られ、リージェントブラフにもあっさりかわされて3着。とはいえカネツフルーヴとリージェントブラフはどちらも交流GⅠ馬。牝馬の馬券圏内はホクトベガ以来と、充分に実力を見せた結果であった。
続くマリーンカップ(GⅢ)は中団でのレースになってしまい伸びず4着。うーん右回りの大井で距離が長い方が良さそう、ということでか、大井ダート2600mの大井記念(南関東GⅡ)に向かうと、主戦の佐藤騎手ではなく石崎隆之が騎乗したが、早め先頭から5馬身差で圧勝し重賞4勝目を挙げた。
そんなわけで迎えた大一番・帝王賞(GⅠ)。このとき単勝1.1倍という圧倒的1番人気だったのは言わずと知れたゴールドアリュール。イラク戦争のせいでドバイに行けなかった鬱憤を前走アンタレスSの圧勝で晴らし、めぼしい相手も既に勝負付けが済んでいるビワシンセイキやリージェントブラフだったので、ここではもう負ける理由がないというレベルだった。佐藤騎手に戻ったネームヴァリューはこの3頭に次ぐ4番人気に支持されてはいたが、単勝は25.1倍。現実的には勝てるとは思われていなかった。
さて、中央時代は逃げを得意としていたが、船橋移籍後は主に好位先行で結果を出してきていたネームヴァリュー。しかし昨年の東京大賞典ではゴールドアリュールに悠々逃げ切りを許してしまっている。ゴールドアリュールの後ろで競馬をしては勝ち目はない。――佐藤隆騎手は思い切ってスタートからグイグイ押していき、ゴールドアリュールの前で逃げを打った。
そのまま2番手で追いかけてくるゴールドアリュールを気にせずマイペースで逃げるネームヴァリュー。4コーナーを越えて直線に向いたとき、大井競馬場の歓声が悲鳴に変わる。ゴールドアリュールがズルズルと後退していくのだ。それを尻目にネームヴァリューは一気に後ろを突き放していく。ビワシンセイキが追いかけてきたが、ネームヴァリューの脚は止まらず、差はむしろ開く一方。そのまま後続を完全に置き去りに、ネームヴァリューは4馬身差をつけてゴール板を駆け抜けた。
鮮やかな逃げ切り圧勝で、交流開始以降3頭目となる牝馬による帝王賞制覇を果たしたネームヴァリュー。……ただこのレース、一般には「ゴールドアリュールが喘鳴症で惨敗してそのまま引退することになったレース」という印象ばかりが強く残り、ネームヴァリューの快挙に注目は集まらなかった。
実際、「牝馬の帝王賞制覇」は3年前にファストフレンドがやったばかりだったし、少し前にはファストフレンドをはじめゴールドティアラ、トゥザヴィクトリー、ブロードアピールといったダートの名牝が目白押しで、牝馬がダートで牡馬と渡り合うこと自体はさほど珍しいという印象ではなかったのである。
しかしあれから20年以上が経った2024年現在も、牝馬による帝王賞制覇はこのネームヴァリューが最後。彼女の次にダートで牡馬混合古馬GⅠ級を勝ったのは実に12年後の2015年JBCスプリント勝ち馬コーリンベリー。それ以降もサンビスタとショウナンナデシコしかいない。ファストフレンドやゴールドティアラと同様、それが快挙であったことが時が経つほどに明らかになってくるのだった。
ネームヴァリューはその後、石崎騎手が騎乗した大井・ダート2400mの東京記念(南関東GⅡ)も貫禄を見せて7馬身差で圧勝。秋の交流GⅠ戦線でも活躍が期待されたが……引き続き石崎騎手と挑んだJBCクラシック(GⅠ)では3番人気に支持されたが、スタートで出負けして中団からになってしまい、見せ場なくアドマイヤドンの4着。久々の中央となったジャパンカップダート(GⅠ)ではミルコ・デムーロが騎乗、前目の3番手につけたものの直線で呑まれて10着撃沈。年末の東京大賞典(GⅠ)では佐藤騎手が戻ったもののここも最内枠から逃げられず9着に沈み、このレースを最後に現役引退、繁殖入りとなった。
なお、帝王賞の勝利が評価され、2003年のNARグランプリ年度代表馬を受賞した。
引退後は故郷の飛野牧場で繁殖入り。直仔の活躍馬は初仔のピサノエミレーツ(父*ブライアンズタイム)が岩手の重賞を勝った程度ではあったが、8頭の仔のうち5頭の牝馬が繁殖入りして血を繋いでいる。
ネームヴァリューは2017年で繁殖を引退。その後も飛野牧場で余生を過ごしている。飛野牧場の社長は「この馬は最後まで面倒を見る」と明言しており、大事にされているようだ。
船橋での相棒だった佐藤隆騎手は2006年に落馬事故で急逝してしまったが、ネームヴァリューは末永く元気でいてほしいものである。
Honour and Glory 1993 鹿毛 |
Relaunch 1976 芦毛 |
In Reality | Intentionally |
My Dear Girl | |||
Foggy Note | The Axe | ||
Silver Song | |||
Fair to All 1986 鹿毛 |
Al Nasr | Lyphard | |
Caretta | |||
Gonfalon | Francis S. | ||
Grand Splendor | |||
*マジソンカウンティ 1991 鹿毛 FNo.19-b |
Seattle Slew 1974 黒鹿毛 |
Bold Reasoning | Boldnesian |
Reason to Earn | |||
My Charmer | Poker | ||
Fair Charmer | |||
Steal a Kiss 1983 鹿毛 |
Graustark | Ribot | |
Flower Bowl | |||
Queen's Paradise | Summer Tan | ||
Regal Seal |
掲示板
掲示板に書き込みがありません。
急上昇ワード改
最終更新:2024/05/03(金) 00:00
最終更新:2024/05/03(金) 00:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。