お客様の中にお医者様はいませんか?とは、旅客機・新幹線などで急病人が出た際に呼び掛けられることがある乗務員の言葉である。
概要
「ドクターコール[1]」と呼ばれるもので、実際に旅客機・新幹線を中心に行われることがある。「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんでしょうか?」など、表記ゆれが複数ある。直接大きな声で呼びかける場合もあるが、アナウンスを通じてマイクで呼びかける場合もあり、新幹線等の列車の場合は一気に呼びかけることが難しいため、アナウンスによる伝達が多い。
すぐに病院に行けるような場所ではない、閉鎖された環境であるため、客の中から医師を探している。250名が搭乗している旅客機で医師が乗っている確率は、日本であれば半分程度とされている。JALだけでも平均すると1日に1回以上はどこかの機内で医師を客の中から探す状況が起こっている。
…とはいっても、「専門の科が違う」「医療器具が限られる」などの理由により、実際に医師にできるのは「AEDや心臓マッサージなどの救急対応」「アナフィラキシーの際のアドレナリン投与による救命」「命が危篤かそうでないか、さらには緊急着陸・停車等を提言するかどうかの大まかな判断」程度であることが多い(それでも全くの専門外の一般人と比べると適切に判断・対応できる可能性が高いのだが…)。
実際に名乗り出るか?
アンケートではすぐに名乗り出ると回答した医師は20%程度にとどまっている。加えて「他に名乗り出る人がいない場合は名乗り出る」という場合も合わせると65%程度となるが、残りの34.4%は名乗り出ないと回答している。
これについては、日本では対応した医師に責任が問われる可能性がないとは言い切れないことが一因となっている。日本では、義務なく行った救命措置の法的責任については十分に法整備されておらず(詳しくは「善きサマリア人の法」の記事を参照)、航空会社の規則でも医師への補償はあるものの、「重過失の場合を除き」という但し書きがある。
JALやANAでは、2016年に「ドクター登録制度」を始めているため、この台詞を伝える前に、事前に登録した医師が搭乗していた場合に呼んで対応してもらう場合もある。しかし、登録していない医師もまだ多いため、現在でも客の中から医師を探す状況は続いている。
余談
なお、ごく稀に学会に出席するためなどの理由で医師が同じ乗り物に多く搭乗している場合もある。ストックホルムからロサンゼルスに向かっていた旅客機で心停止した乗客がいたが、学会に行く予定だった56人の心臓の専門医が搭乗していたため、助かったというパイロットの経験談もある[2]。また、マンチェスターからフロリダへの飛行機に乗っていた女性が心臓発作を起こした際、15人の心臓専門医に助けられたとする記事(MEDICAL NEWS TODAY
/The Guardian
)もある。
関連動画
関連静画
関連リンク
- 柳田理科雄「「お客様のなかに、お医者様はいらっしゃいませんか?」のアナウンス。飛行機に医師が乗ってる確率は?」(Yahoo!ニュース, 2023/02/09)
- 中山祐次郎「なぜ医者は「飛行機の中にお医者さんはいませんか」に手を挙げないのか?医師の本音」(Yahoo!ニュース, 2016/08/04)
- m3.com「機内ドクターコールに「迷わず名乗り出る」は2割」(2021/10/16)
- Forbes Japan「「機内にお医者様はいらっしゃいますか」はもう聞かない? ANA、JALの新施策」(2021/08/20)
- INGRID RAAGAARD「PILOT BERICHTET VON UNGLAUBLICHEM ZUFALL Herzstillstand im richtigen Moment」(Bild, 2023/02/13)
関連項目
脚注
- *ただし「ドクターコール」は、看護師などが医師に対し、患者の容体の急変を通報する場合も含む言葉である
- *タブロイド新聞「Bild」に掲載。その記事にはデンマークのタブロイド紙「Ekstra Bladet」に載っていたと書かれており、おそらくこちらの記事
が原典と思われる。実際の当時のニュース記事については、少なくとも当記事の初版作成者が探した範囲では確認されていない
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