ヨハネとは、欧米で見られる人名である。ヘブライ語の「主は恵み深い」を意味するヨーハーナーンに由来する。
キリスト教の聖典「新約聖書」には、イエス・キリストに洗礼を与えた人物「洗礼者ヨハネ」(バプテスマのヨハネ)と、イエス・キリストの直弟子(使徒)である「使徒ヨハネ」、の2名の有名な「ヨハネ」が登場する。
他には、イエスの使徒の「シモン・ペトロ」が、「ヨハネの子シモンよ」とイエスに呼びかけられる場面もある。つまりシモンの父親も「ヨハネ」という名前だったと思われる。ただしこの「シモンの父親のヨハネ」自身は、新約聖書に直接登場してはいない。
このように、イエスの周囲にそれぞれ別々の「ヨハネ」が3名も居たことがわかり、当時としてもよくある名前だったことが伺える。
さらに、新約聖書には「ヨハネ黙示録」という文書が含まれており、文中で筆者が自らを「ヨハネ」と名乗っている。
この黙示録の筆者「ヨハネ」は、伝統的には「使徒ヨハネ」と同一人物だと解釈されている。
だが、文中で「私は使徒ヨハネだ」と明言されているわけではないため、この「黙示録筆者ヨハネ」と「使徒ヨハネ」との同一性については議論がある。
新約聖書にはこの「ヨハネ黙示録」の他に、題名に「ヨハネ」と付く文書が4つ含まれている。「ヨハネ福音書」「ヨハネの第1の手紙」「ヨハネの第2の手紙」「ヨハネの第3の手紙」である。
これらの文書の著者も、伝統的には「使徒ヨハネ」だと見なされている。
だがこれらの文書では、「ヨハネ黙示録」と違って筆者が文中で「ヨハネ」だと名乗っているわけではない。そのため、これらの文書でも著者の素性について諸説がある。
キリスト教がヨーロッパで主たる宗教として広まった後、下記のように各国語において、聖書に登場する「ヨハネ」の名前を元とした男性名が一般的なものとなっていった。
主なヨハネの各国語対照
- John(ジョン):英語
- Jean(ジャン):フランス語
- Juan(フアン):スペイン語
- João(ジョアン):ポルトガル語
- Johannes(ヨハネス):ドイツ語・ラテン語
- Johan または Johann(ヨハン)
- Giovanni(ジョヴァンニ):イタリア語
- Evan(エヴァン):ウェールズ語
女性形
なお新約聖書のうち「ルカ福音書」には、「ヨハネ」の女性形と思われる名を持つ女性が一人登場しており、こちらは日本の聖書では一般的に「ヨハンナ」と表記される。
この「ヨハンナ」は、「マグダラのマリア」などと同じく、イエスの死後に彼の墓参りに行き、遺体が消失していることを確認し、イエスの復活を知った女性らの一員である。ただし4つある福音書の全てで名が挙げられている「マグダラのマリア」と異なり、「ヨハンナ」の名はルカ福音書でしか記されていないため、「マグダラのマリア」と比べると知名度は数段落ちる。
欧米でみられる女性名「ヨハンナ」「ジョヴァンナ」「ジェーン」「ジャンヌ」「ジョアンナ」「ハンナ」「フアナ」などは、この聖書に登場する女性「ヨハンナ」の名に由来するもの、あるいは、上記のような「ヨハネ」に由来した様々な男性名が女性形に転じたものである。
その他
「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場する堕天使・津島善子がヨハネを自称している。ただし、ヨハネという名前は上記のように元々男性名詞であるため、女性形の「ヨハンナ」や「ヨハナ」「ジョアンナ」などの方が女の子の名前としては自然である。
だが「洗礼者ヨハネ」や「使徒ヨハネ」は、聖書に登場する人物らの中でも特に有名なビッグネームである。中二病の子が自分で名乗る「なんか聖書っぽくてかっこいい名前」としては、やはり「ヨハンナ」よりは「ヨハネ」の方がしっくりくるのかもしれない。
関連項目
- キリスト教
- ラブライブ!サンシャイン!! / 津島善子 / 幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-
- 海外の姓名の一覧
- イワン / ジャン / ジョヴァンニ / ジョン / ハンス / フアン / ヤン / ヨハン
- ジェーン / ジャンヌ
- ヨハネの黙示録
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